バズる子

野花マリオ

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バズる子

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――拡散注意。衝撃、実弾入り。



「1」

ーー【鐘技中学校|2年D組】ーー

 「バズる」ってのは、もはや現代の呪いだ。
 誰かがつぶやき、誰かが拡散し、誰かが炎上し、誰かが消える。

 でもウチの学校には、“文字通り”バズる子がいた。

 名前は【砲撃 詠】(ほうげき うた)。
 あだ名は「バズる子」。SNSで話題になると、実際に“物理的に”バズる。
 つまり、誰かがネットでバズると、詠がその本人の元に現れ、バズーカを撃ち込むのである。

「やばっ、この絵、5000RT超えてる!」

 そう言ったその日。俺の親友・翔太は、顔面ごと黒板に叩きつけられていた。
 粉々になったのは、黒板か、彼の夢か──。



「2」

ーー【詠の法則】ーー

 彼女は普段、無口で静かだ。
 教室の隅の窓際で、ずっとスマホをいじっている。

 でも“誰かがバズった”とわかると──

 詠はスッと立ち上がり、
 机の中から真っ白なバズーカ砲を取り出す。
 しかも、これが妙に軽やかに“パコッ”と組み立てられる。
 そして、その日のうちに──

ドン!!!!!!

 どこからともなく、轟音とともに“ターゲット”が破壊される。

 最初は都市伝説だった。
 でももう、5人目が“バズって爆散”してる。
 その全員、拡散数5000を超えていた。

 何かの法則だと思ってたら、黒板にチョークでこう書かれていた。

「RT爆、承認しました」



「3」

ーー【ターゲット:俺】ーー

 ……やらかした。
 俺、やらかした。

 なんの気なしに投稿した“学校あるある4コマ漫画”が、
 深夜から朝にかけて拡散され──今、8,200リツイート。

 通知が止まらない。震える手でスマホを見ると、詠からDMが来ていた。

「おめでとう。バズったね」
「今日、行くね。ちゃんと爆発してね」

 すぐに逃げ出した。

 教室からトイレ、体育館、用務員室、屋上、地下倉庫──
 なのに、どこへ逃げても、詠は現れる。

 制服にバズーカを担いで、笑いもせず、ただ、正面から──



「4」

ーー【バズーカ、発射】ーー

「待ってくれ! もう消す! 投稿、削除する!」

 叫んだ俺の目の前で、詠はスマホを操作していた。

ピッ。

「削除しても、もう見られたよね?」

 バズーカ砲の銃口が俺に向く。
 照準スコープに、俺の顔が、SNSのプロフィール画像と重なっていた。

「バズったものは、消えないんだよ」

 そして、

ドオォォォンン!!!

 爆音。

 ……次の瞬間、俺は、なぜか教室にいた。



「5」

ーー【残るのは“いいね”だけ】ーー

 教室には、誰もいなかった。
 スマホを見ると、俺のアカウントは消されていた。ログインもできない。

 でも──俺の投稿だけは、残っていた。
 いいね:13万。RT:23万。引用:数えきれず。

 俺の声は誰にも届かないのに、
 俺の“つぶやき”だけが、永遠に拡散され続けていた。

 ──詠は言っていた。

「バズるってのは、拡散の代償を誰かが受け取るってことなんだよ」



「6」

ーー【再び、ミドリの光】ーー

 1年後。
 また、誰かが“バズった”。

 投稿:「体育祭で起きた笑える放送事故w」
 拡散数:5,700RT

 教室の隅で、誰かが囁く。

「あ、バズる子、来るよ……」
「バズーカ持って……もう、来るよ……」

 ミドリの瞳に、バズーカが光る。
 照準の中心には──おまえの顔が映っている。




「バズったな、お前」
――それが、彼女の合図。

バズる子 完
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