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67話-6、楽しければ、それでええ(閑話)
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宣言通りに、河童の流蔵が用意した具材を全て食べ切った花梨達は、満点の星空を眺めつつ、自然が織り成す幻想的な余韻を堪能した後。
流蔵の提案により、永秋にある露天風呂の一つである、『健康の湯』に浸かっていた。
健康の湯に浸かるのは花梨達も初めてで、お湯は底が見えない赤褐色をしており、薬屋の店内の匂いを凝縮させたような、薬味の強い独特な匂いを漂わせている。
しかし花梨達は、その独特な匂いをものともせず、肩までしっかりと浸かり、筋肉痛が起こり始めている身体を癒していった。
「ぬっはぁ~、全身に薬を塗ったような爽快感があるぅ~……。クセになりそう~」
「ふぇぁっ……、薬屋つむじ風の匂いがするわっ……」
「この匂い大好き」
剛力酒の副作用が切れ、茨木童子から人間の姿に戻った花梨、ゴーニャ、座敷童子の纏が、とろけた顔で健康の湯に現を抜かしている中。
その三人の隣で、陽気に鼻歌を歌っている流蔵が、空のおちょこに熱燗を注ぎ、クイッと飲み込んだ。
「いや~……。熱い相撲をした後の露天風呂と酒よ、たまらんのお~」
流蔵の腑抜けた独り言を耳にし、素朴な疑問が頭に浮かんだ花梨が、夜空を仰いでいた顔を流蔵に向ける。
「流蔵さんって、露天風呂によく来ているんですか?」
「ほぼ毎日来とるで。基本、この健康の湯にしか入らんがな」
「あっ、そうなんですね。だから流蔵さんと今まで会わなかったのかぁ」
浮かんだ疑問を解消できたものの、今日一日の中で点々と芽生え、頭の片隅に残っていた数々の疑問までも思い出し、質問を続ける。
「そういえば……。私の二つ名って、どのぐらいあるんですか?」
「あ~、せやな~……。最初に出来たのが西の無敗やろ? そこから三百戦錬磨、相撲の鬼神、相撲界の都市伝説、河童の天敵、おてんば相撲小娘……」
初めは心をくすぐるカッコ良さを感じていたが、続くに連れて雑になっていく二つ名に、花梨の口元がヒクつき出す。
「一撃張り手、無限突き飛ばし機、無慈悲な投げ飛ばし丸―――」
「あ、あの、もう大丈夫です……」
「なんや、もうええんか? まだ三十個以上はあるで?」
指を折りながら数えていた流蔵を止めるも、予想外の返答に花梨は、ま、まだそんなにあるのか……。と戦慄し、口元のヒクつきが顔中に移っていく。
そこから会話は途切れ途切れになり、各々は健康の湯に身を委ね、夜空で上演している天然のプラネタリウムに集中していった。
絶え間なく飛び交っている流星群が、天の川に重なるように流れているせいか。実際には聞こえるハズのない、壮大な星のせせらぎが聞こえ始めてきた。
柔らかな水の流れる音や、星々が放つ暖かみある光が擦れ合い、儚くも健気に弾けていくような、思わず耳を傾けてしまう幻聴。
目と耳の二感が夜空に奪われ、夜間にのみ体験できる風流を満喫していると、それに加えて熱燗に舌鼓を打っている流蔵が「いや~、しかし」と嬉々とした声を上げる。
「今日はお前さんが来てくれたから、ほんまに楽しかったわ」
「私もすごく楽しかったです。楽しすぎて、一日があっという間に終わっちゃいました」
「そうやなあ、今日は一日がやたらと短く感じたわ。あの日、お前さんがワシの店に来てくれなかったら、こんな時間は味わえんかったやろうなあ」
和やかな表情でいる流蔵の何気ない言葉に、花梨の心に突如として罪悪感が芽生え、鋭い針で刺されたような痛みが左胸に走った。
そもそも花梨は、ぬらりひょんの依頼と提案により『河童の川釣り流れ』に赴き、暇を持て余していた流蔵の為に、キュウリを与えて相撲を取ったに過ぎない。
そして、心を開いてくれた流蔵と共に釣りをし、釣った川魚を一緒に食べ、二人の相撲を橋の上から見ていた妖怪達が触発され、店は瞬く間に人気店になっていった。
全ての始まりと切っ掛けは、ぬらりひょんの河童の川釣り流れと流蔵を想う気持ちであり、花梨はただ、言われた通りに実行しただけである。
その事を無意識の内に隠し、今まで付き合ってきた事を今ここで初めて自覚してしまい、芽生えた罪悪感が大きく膨らんでいった。
はち切れんばかりに増していく罪悪感に耐え切れなくなり、人知れず表情を曇らせていた花梨は、流蔵の顔を潤んだ上目遣いで覗いた後、頭を深く下げた。
「す、すみません流蔵さんっ!」
「んー? どうしたんや急に?」
「その……、初めて河童の川釣り流れに来た時の事なんですが……。キュウリをいっぱいあげた事も、相撲をした時の事も全て、私の意思ではなかったんです……」
「……どういう事や?」
当時の出会いの種明かしをしてしまった花梨は、下げていた頭を少しだけ上げ、俯いたまま懺悔を続ける。
「えと、なんと言うか……。暇している流蔵さんの相手をしてほしいと、とある方に言われまして……。キュウリを用意したのも、相撲を取ったのも、全てはとある方の提案でして、私の、意思では……」
「ふむ……」
声に一切の覇気無い花梨の暴露話に、流蔵は右眉を跳ね上げると、何かを思案しているような顔を夜空に向けた。
そこから無言になり、熱燗を静かにすする。空になったおちょこに熱燗を注ぎ込むと、流蔵は全てを察した眼差しを花梨に戻した。
「その、とある方っちゅうのは、誰なんや?」
「あの、その……。ぬ、ぬらりひょん様、です……」
未だに俯いている花梨が、気まずさを含んだ返答をすると、流蔵は笑みをこぼして「ふふっ」と弾んだ声を漏らす。
「せやか、やっぱりぬらりひょんさんやったか。また助けられてもうたなあ。ほんまあの人には、頭が上がらんわ」
流蔵の無邪気な様子でいる声に、花梨は俯かせていた頭を上げ、首を傾げた。
「また、ですか?」
「ああ、こっちの話や。お前さん、自分の意思ではないとか言ったな? 釣りをした時も、交代制相撲対決リレーをした時も、自分の意思ちゃうんか?」
「いえっ。それは自分の意思です」
花梨の力強い否定に、流蔵の口角が僅かに上がる。
「なら、今日ワシの所に来たのは、ぬらりひょんさんの提案か? 自分の意思か?」
「それも自分の意思ですっ。流蔵さんにリベンジがしたくて、相撲がしたくて来ました」
「ふむふむ、そうかそうか」
本音を語る花梨に、流蔵は嬉しそうに相槌を打ち、「そんじゃあ、最後の質問や」と口にした。
「ワシと一緒に相撲を取ったり、一緒に飯を食ってる時、お前さんは楽しかったか?」
「はいっ、とっても楽しかったです!」
明るく元気な花梨の即答に、満足そうに微笑んだ流蔵が、ご機嫌に熱燗を飲み込んだ。
「それならええ。自分の意思では無いとか、指示を受けたとか、ワシにはまったく関係あらへん。その時その時が楽しければ、それでええ」
「えっ……? それで、いいんですか?」
「ええんや。完全な結果論やが、ワシはお前さんにも助けられてるんやで? あの日に、あのタイミングでお前さんが来てくれたからこそ、今のワシがあるんや」
流蔵も偽りのない本音を語り出すと、温かみのある優しい表情になり、ふわっとほくそ笑む。
「客がまったく来なかった店が大繁盛し、相撲仲間がぎょーさんでき、体が足りないほど楽しい毎日を送っとる。これは全て、ぬらりひょんさんとお前さんのお陰や。ほんま、ありがとうな」
多大なる感謝を込めつつ頭を軽く下げると、流蔵は「そんでや」と付け加え、水かきがついている右手を花梨に差し伸べた。
「良き親友として、最高のライバルとして、これからもよろしくやで、花梨」
「流蔵さん……」
芽生えた罪悪感を全て振り払い、作られた出会いをも受け入れてくれて、感謝までしてくれた流蔵に、花梨は胸を強く打たれ、瞳に思わず涙を滲ませる。
そして、弱っていた心を救われた花梨も、湯に沈めていた右手を流蔵に差し伸べ、緑色の右手を強く握り締めた。
「はいっ! これからもずっと、ずっとよろしくお願いします!」
「ああ。ずっとずっと、よろしくやで」
湯の温度よりも熱い握手を交わし、再度結ばれる固い絆。その結束した絆を確かめ合い、充分に噛み締めると、握手を解いた流蔵がニヤリと笑う。
「今回はお前さんに引き分けてもうたが、次はそうはいかんで? ワシはまだまだ強くなれる。覚悟しときい」
「ふっふ~ん、私だって負けませんからね! 勝つまで何度もリベンジをして、必ずや流蔵さんを超えてみせます!」
「おお、楽しみにしとるで!」
二人の無敗が、新たなる決意表明をした後。健康の湯では、二つの明るく無邪気な笑い声が響き渡り、しばらくの間止む事はなかった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
花梨と決して解けない絆を結んだ、次の日の昼下がり。
今日は店が定休日であり、やる事が無くて暇を持て余している流蔵は、キセルの煙で薄っすらと白く染まっている支配人室に訪れていた。
片手には、竹の葉で包んでいる三匹のイトウを携えており、そのイトウをぬらりひょんに見せびらかし、陽気な笑みを浮かべる。
「ぬらりひょんさん、ええイトウが釣れたんで持ってきましたで」
「おお、イトウか。ならば後で、酒を用意せねばなるまいな」
酒を飲める口実を作ったぬらりひょんが、声を弾ませて言うと、流蔵は自前で用意したビニールを床に敷き、持ってきたイトウをその上に置いた。
そして、ほがらかな表情でキセルを吸っているぬらりひょんに顔を戻すと、本題に入るべく口を開く。
「しかし、ぬらりひょんさんも悪いお人や」
「む? どういう意味だ?」
突拍子もない流蔵の話に、ぬらりひょんは思わず眉をひそめる。
「花梨の事や。ワシの店に花梨を寄こしたのは、ぬらりひょんさんなんやろ? 花梨から全部聞きましたで」
「なっ……! ……あいつめ、余計な事を言いおって」
微塵も予想だにしていなかった言葉に、ぬらりひょんは目を丸くし、その目を流蔵から逸らしつつ、ばつが悪そうにキセルの白い煙を吐いた。
「何を思ったまでかは知らんですが、急にワシに謝ってきてな。そのまま全部教えてくれましたわ」
「……そうか、花梨が言った事は全て正しいだろう。ワシが花梨をお前さんの店に寄こしたんだ。暇しているお前さんの相手をしてやってほしい、とな」
「せやか、それを確認したかったんや。ならぬらりひょんさんには、またお礼をせなあかんですわ」
「お礼?」
「せや。こんな素敵な出会いの切っ掛けを作ってくれたんや。何度感謝しても足りませんわ。ぬらりひょんさん、独りだったワシを花梨と会わせてくれて、ほんまにありがとうございます」
屈託の無い満面の笑みでいる流蔵が、頭の皿にある水が零れないようお辞儀をすると、ぬらりひょんは口元を緩ませつつ話を続ける。
「お前さん、花梨の事をかなり気に入っとるな?」
「ええっ、そりゃもう! 花梨はもう、ワシの中では切っても切れない良き親友であり、最高のライバルですわ!」
昨日、健康の湯で花梨に話した事を、一辺の恥を見せる事無く、嬉々としながらぬらりひょんに打ち明ける流蔵。
その純粋な言葉にぬらりひょんも嬉しくなったのか、自然と誇らしげな表情になり、再びキセルの煙をふかした。
「ならよかった。ワシの指示で花梨をお前さんの所に向かわせた事が分かったら、関係が悪くなると危惧していたが、どうやらその心配はなさそうだな」
「んなもん、絶対にありえまへん。むしろ、明かしてくれてありがたいと思ってます。もしずっと分からないままでいたら、こうやってぬらりひょんさんに感謝できへんかったですからね」
「ふっ、そうか。お前さんも律儀な奴だ。これからも花梨の事を、よろしく頼む」
「ええ、もちろんですわ!」
さも当然のように流蔵が宣言すると、ぬらりひょんは口角をニヤリと上げ、おもむろに書斎机の引き出しを開けて漁り始める。
しばらくすると、中から超特濃本醸造酒を取り出し、書斎机の上にドンッと音を立てて置いた。
「お前さん、今日は店が休みで暇だろう? ちょっとワシと付き合え。花梨について語り合おうぞ」
「おっ、ええですねえ。とことん付き合ったりますよ!」
片や、娘を溺愛する親バカのスイッチが入り。片や、親友と最高のライバルとしてのスイッチが入り、酒とツマミを嗜みつつ、愛娘と良き親友について熱く語り合っていく二人。
そして、その語り合いは夜中まで続き、挙句の果てには朝日が顔を出すまで終わる事はなかった。
―――流蔵と別れた後の、花梨の日記
今日は流蔵さんにリベンジを果たすべく、河童の川釣り流れに行って来た!
朝の十時ぐらいに行けば、すぐに流蔵さんと相撲が取れると思っていたけど、どうやらその考えは甘かったようでね……。
河川敷にある土俵の前から橋の上でまで、信じられない程に長い長蛇の列が作られていたよ。初めて目にした時は、すごくビックリしちゃったや。
こりゃあ当分勝負はお預けだと悟って、私も橋の上から流蔵さんの相撲を観戦していたけど、相当強くなっていたなぁ。
洗練された無駄が一切無い動き、相手の力を利用して受け流す技。そして、その相手を粉砕する剛力。どれを見ても最高峰だったよ。
それで、人間の姿でいたら参考にすらならなかったから、剛力酒を飲んで茨木童子になり、改めて流蔵さんの戦いを眺めていたんだけど、そこで一人の鬼さんに声を掛けられてね。
いくつか質問されて答えたら、「西の無敗が帰って来たーー!」って、急に大声で叫んだかと思うと、瞬く間に行列を作っていた妖怪さん達に囲まれていったんだ。
最初は何がなんだか分からなかったけど、鬼さん達の言葉に触発されていく内に、変なスイッチが入っちゃって……。
その後に、場の雰囲気に合わせて喋りつつ、背後に大群を率いて河川敷に下りていったんだ。(あの時の応援コールと待遇……、ちょっと気持ちよかったなぁ)
そして、久々に流蔵さんと土俵の上で対峙して、そこから熱い戦いが始まった……、ハズだったんだけど、力の差が歴然でね。
前は茨木童子になれば、力はほぼ互角だったんだけども、今はまったく歯が立たず、あっという間に土俵際まで追いやられちゃった。
始まってものの数秒で負けるかと思いきや、流蔵さんの力がいきなり弱まり、チャンスだ! と躍起になった途端、不意にゴーニャの悲鳴が上がったんだ。
何事かと焦ったけど、どうやら原因は私の顔のようで、纏姉さんに手鏡を借りて顔を確認してみたら、すごい有様になっていた……。
なんて表現したらいいかなぁ? もはや龍? ギザギザが増した牙に、爬虫類染みた瞳。その瞳もまたおっかなくってね、自分でも驚いちゃったや。
でもそこからだ。よく分からないけど力の差が埋まったようで、やっと対等に流蔵さんと相撲が取れるようになったよ!
力は均衡し、技を繰り出すも、違う技で返しての力と技の応酬合戦! いやぁ~、ものすごく熱い戦いだったなぁ。
それで、そのまま二十分以上戦った結果、勝敗は引き分けで終わってしまった。最後は特殊な突き出しで勝負をしたんだけども、お互いに土俵外に吹っ飛び、あえなくの引き分けだったよ。
悔しいなぁ、本当に悔しいっ! 流蔵さんの連勝は止められたものの、引き分けだもんな~。もう少し私に力があれば、勝てていたかもしれない……。
次こそは勝ちたいなぁ。いや、絶対に勝つ! とは言ってみたけれど、どうすればいいんだろ? ……茨木童子の姿で筋トレをすればいいのかな?
そして戦いの後に、とても美味しい塩ちゃんこを食べて、流蔵さん達と一緒に露天風呂に浸かってきたよ!
戦いの後の塩ちゃんこと露天風呂よ、堪らなかったよねぇ~。極限にお腹がすいている時に食べた塩ちゃんこ。限界まで疲れた体で浸かった露天風呂。もう、最高だったよ!
あと、最後に。
流蔵さんと一緒に露天風呂に浸かってる時に、流蔵さんの何気ない一言で、私の心の中に罪悪感が芽生えたんだ。
だから、流蔵さんに初めてお店に行った時の流れをバラしちゃったんだけども……。流蔵さんは怒るどころか、笑いながらその流れを一蹴してくれた。
その時その時が楽しければ、それでええ。ってね。同時に、ぬらりひょん様と私に助けられたとも言ってきて、逆に感謝までされちゃった。
真実を話しちゃったから、関係が悪くなるかと思っていたけれど、これも逆で。むしろ前よりも固い絆が結ばれた、そんな気がする。
そう言えばぬらりひょん様は、流蔵さんに何をしたんだろう? ちょっと気になるから、今度聞いてみようかな?
流蔵の提案により、永秋にある露天風呂の一つである、『健康の湯』に浸かっていた。
健康の湯に浸かるのは花梨達も初めてで、お湯は底が見えない赤褐色をしており、薬屋の店内の匂いを凝縮させたような、薬味の強い独特な匂いを漂わせている。
しかし花梨達は、その独特な匂いをものともせず、肩までしっかりと浸かり、筋肉痛が起こり始めている身体を癒していった。
「ぬっはぁ~、全身に薬を塗ったような爽快感があるぅ~……。クセになりそう~」
「ふぇぁっ……、薬屋つむじ風の匂いがするわっ……」
「この匂い大好き」
剛力酒の副作用が切れ、茨木童子から人間の姿に戻った花梨、ゴーニャ、座敷童子の纏が、とろけた顔で健康の湯に現を抜かしている中。
その三人の隣で、陽気に鼻歌を歌っている流蔵が、空のおちょこに熱燗を注ぎ、クイッと飲み込んだ。
「いや~……。熱い相撲をした後の露天風呂と酒よ、たまらんのお~」
流蔵の腑抜けた独り言を耳にし、素朴な疑問が頭に浮かんだ花梨が、夜空を仰いでいた顔を流蔵に向ける。
「流蔵さんって、露天風呂によく来ているんですか?」
「ほぼ毎日来とるで。基本、この健康の湯にしか入らんがな」
「あっ、そうなんですね。だから流蔵さんと今まで会わなかったのかぁ」
浮かんだ疑問を解消できたものの、今日一日の中で点々と芽生え、頭の片隅に残っていた数々の疑問までも思い出し、質問を続ける。
「そういえば……。私の二つ名って、どのぐらいあるんですか?」
「あ~、せやな~……。最初に出来たのが西の無敗やろ? そこから三百戦錬磨、相撲の鬼神、相撲界の都市伝説、河童の天敵、おてんば相撲小娘……」
初めは心をくすぐるカッコ良さを感じていたが、続くに連れて雑になっていく二つ名に、花梨の口元がヒクつき出す。
「一撃張り手、無限突き飛ばし機、無慈悲な投げ飛ばし丸―――」
「あ、あの、もう大丈夫です……」
「なんや、もうええんか? まだ三十個以上はあるで?」
指を折りながら数えていた流蔵を止めるも、予想外の返答に花梨は、ま、まだそんなにあるのか……。と戦慄し、口元のヒクつきが顔中に移っていく。
そこから会話は途切れ途切れになり、各々は健康の湯に身を委ね、夜空で上演している天然のプラネタリウムに集中していった。
絶え間なく飛び交っている流星群が、天の川に重なるように流れているせいか。実際には聞こえるハズのない、壮大な星のせせらぎが聞こえ始めてきた。
柔らかな水の流れる音や、星々が放つ暖かみある光が擦れ合い、儚くも健気に弾けていくような、思わず耳を傾けてしまう幻聴。
目と耳の二感が夜空に奪われ、夜間にのみ体験できる風流を満喫していると、それに加えて熱燗に舌鼓を打っている流蔵が「いや~、しかし」と嬉々とした声を上げる。
「今日はお前さんが来てくれたから、ほんまに楽しかったわ」
「私もすごく楽しかったです。楽しすぎて、一日があっという間に終わっちゃいました」
「そうやなあ、今日は一日がやたらと短く感じたわ。あの日、お前さんがワシの店に来てくれなかったら、こんな時間は味わえんかったやろうなあ」
和やかな表情でいる流蔵の何気ない言葉に、花梨の心に突如として罪悪感が芽生え、鋭い針で刺されたような痛みが左胸に走った。
そもそも花梨は、ぬらりひょんの依頼と提案により『河童の川釣り流れ』に赴き、暇を持て余していた流蔵の為に、キュウリを与えて相撲を取ったに過ぎない。
そして、心を開いてくれた流蔵と共に釣りをし、釣った川魚を一緒に食べ、二人の相撲を橋の上から見ていた妖怪達が触発され、店は瞬く間に人気店になっていった。
全ての始まりと切っ掛けは、ぬらりひょんの河童の川釣り流れと流蔵を想う気持ちであり、花梨はただ、言われた通りに実行しただけである。
その事を無意識の内に隠し、今まで付き合ってきた事を今ここで初めて自覚してしまい、芽生えた罪悪感が大きく膨らんでいった。
はち切れんばかりに増していく罪悪感に耐え切れなくなり、人知れず表情を曇らせていた花梨は、流蔵の顔を潤んだ上目遣いで覗いた後、頭を深く下げた。
「す、すみません流蔵さんっ!」
「んー? どうしたんや急に?」
「その……、初めて河童の川釣り流れに来た時の事なんですが……。キュウリをいっぱいあげた事も、相撲をした時の事も全て、私の意思ではなかったんです……」
「……どういう事や?」
当時の出会いの種明かしをしてしまった花梨は、下げていた頭を少しだけ上げ、俯いたまま懺悔を続ける。
「えと、なんと言うか……。暇している流蔵さんの相手をしてほしいと、とある方に言われまして……。キュウリを用意したのも、相撲を取ったのも、全てはとある方の提案でして、私の、意思では……」
「ふむ……」
声に一切の覇気無い花梨の暴露話に、流蔵は右眉を跳ね上げると、何かを思案しているような顔を夜空に向けた。
そこから無言になり、熱燗を静かにすする。空になったおちょこに熱燗を注ぎ込むと、流蔵は全てを察した眼差しを花梨に戻した。
「その、とある方っちゅうのは、誰なんや?」
「あの、その……。ぬ、ぬらりひょん様、です……」
未だに俯いている花梨が、気まずさを含んだ返答をすると、流蔵は笑みをこぼして「ふふっ」と弾んだ声を漏らす。
「せやか、やっぱりぬらりひょんさんやったか。また助けられてもうたなあ。ほんまあの人には、頭が上がらんわ」
流蔵の無邪気な様子でいる声に、花梨は俯かせていた頭を上げ、首を傾げた。
「また、ですか?」
「ああ、こっちの話や。お前さん、自分の意思ではないとか言ったな? 釣りをした時も、交代制相撲対決リレーをした時も、自分の意思ちゃうんか?」
「いえっ。それは自分の意思です」
花梨の力強い否定に、流蔵の口角が僅かに上がる。
「なら、今日ワシの所に来たのは、ぬらりひょんさんの提案か? 自分の意思か?」
「それも自分の意思ですっ。流蔵さんにリベンジがしたくて、相撲がしたくて来ました」
「ふむふむ、そうかそうか」
本音を語る花梨に、流蔵は嬉しそうに相槌を打ち、「そんじゃあ、最後の質問や」と口にした。
「ワシと一緒に相撲を取ったり、一緒に飯を食ってる時、お前さんは楽しかったか?」
「はいっ、とっても楽しかったです!」
明るく元気な花梨の即答に、満足そうに微笑んだ流蔵が、ご機嫌に熱燗を飲み込んだ。
「それならええ。自分の意思では無いとか、指示を受けたとか、ワシにはまったく関係あらへん。その時その時が楽しければ、それでええ」
「えっ……? それで、いいんですか?」
「ええんや。完全な結果論やが、ワシはお前さんにも助けられてるんやで? あの日に、あのタイミングでお前さんが来てくれたからこそ、今のワシがあるんや」
流蔵も偽りのない本音を語り出すと、温かみのある優しい表情になり、ふわっとほくそ笑む。
「客がまったく来なかった店が大繁盛し、相撲仲間がぎょーさんでき、体が足りないほど楽しい毎日を送っとる。これは全て、ぬらりひょんさんとお前さんのお陰や。ほんま、ありがとうな」
多大なる感謝を込めつつ頭を軽く下げると、流蔵は「そんでや」と付け加え、水かきがついている右手を花梨に差し伸べた。
「良き親友として、最高のライバルとして、これからもよろしくやで、花梨」
「流蔵さん……」
芽生えた罪悪感を全て振り払い、作られた出会いをも受け入れてくれて、感謝までしてくれた流蔵に、花梨は胸を強く打たれ、瞳に思わず涙を滲ませる。
そして、弱っていた心を救われた花梨も、湯に沈めていた右手を流蔵に差し伸べ、緑色の右手を強く握り締めた。
「はいっ! これからもずっと、ずっとよろしくお願いします!」
「ああ。ずっとずっと、よろしくやで」
湯の温度よりも熱い握手を交わし、再度結ばれる固い絆。その結束した絆を確かめ合い、充分に噛み締めると、握手を解いた流蔵がニヤリと笑う。
「今回はお前さんに引き分けてもうたが、次はそうはいかんで? ワシはまだまだ強くなれる。覚悟しときい」
「ふっふ~ん、私だって負けませんからね! 勝つまで何度もリベンジをして、必ずや流蔵さんを超えてみせます!」
「おお、楽しみにしとるで!」
二人の無敗が、新たなる決意表明をした後。健康の湯では、二つの明るく無邪気な笑い声が響き渡り、しばらくの間止む事はなかった。
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花梨と決して解けない絆を結んだ、次の日の昼下がり。
今日は店が定休日であり、やる事が無くて暇を持て余している流蔵は、キセルの煙で薄っすらと白く染まっている支配人室に訪れていた。
片手には、竹の葉で包んでいる三匹のイトウを携えており、そのイトウをぬらりひょんに見せびらかし、陽気な笑みを浮かべる。
「ぬらりひょんさん、ええイトウが釣れたんで持ってきましたで」
「おお、イトウか。ならば後で、酒を用意せねばなるまいな」
酒を飲める口実を作ったぬらりひょんが、声を弾ませて言うと、流蔵は自前で用意したビニールを床に敷き、持ってきたイトウをその上に置いた。
そして、ほがらかな表情でキセルを吸っているぬらりひょんに顔を戻すと、本題に入るべく口を開く。
「しかし、ぬらりひょんさんも悪いお人や」
「む? どういう意味だ?」
突拍子もない流蔵の話に、ぬらりひょんは思わず眉をひそめる。
「花梨の事や。ワシの店に花梨を寄こしたのは、ぬらりひょんさんなんやろ? 花梨から全部聞きましたで」
「なっ……! ……あいつめ、余計な事を言いおって」
微塵も予想だにしていなかった言葉に、ぬらりひょんは目を丸くし、その目を流蔵から逸らしつつ、ばつが悪そうにキセルの白い煙を吐いた。
「何を思ったまでかは知らんですが、急にワシに謝ってきてな。そのまま全部教えてくれましたわ」
「……そうか、花梨が言った事は全て正しいだろう。ワシが花梨をお前さんの店に寄こしたんだ。暇しているお前さんの相手をしてやってほしい、とな」
「せやか、それを確認したかったんや。ならぬらりひょんさんには、またお礼をせなあかんですわ」
「お礼?」
「せや。こんな素敵な出会いの切っ掛けを作ってくれたんや。何度感謝しても足りませんわ。ぬらりひょんさん、独りだったワシを花梨と会わせてくれて、ほんまにありがとうございます」
屈託の無い満面の笑みでいる流蔵が、頭の皿にある水が零れないようお辞儀をすると、ぬらりひょんは口元を緩ませつつ話を続ける。
「お前さん、花梨の事をかなり気に入っとるな?」
「ええっ、そりゃもう! 花梨はもう、ワシの中では切っても切れない良き親友であり、最高のライバルですわ!」
昨日、健康の湯で花梨に話した事を、一辺の恥を見せる事無く、嬉々としながらぬらりひょんに打ち明ける流蔵。
その純粋な言葉にぬらりひょんも嬉しくなったのか、自然と誇らしげな表情になり、再びキセルの煙をふかした。
「ならよかった。ワシの指示で花梨をお前さんの所に向かわせた事が分かったら、関係が悪くなると危惧していたが、どうやらその心配はなさそうだな」
「んなもん、絶対にありえまへん。むしろ、明かしてくれてありがたいと思ってます。もしずっと分からないままでいたら、こうやってぬらりひょんさんに感謝できへんかったですからね」
「ふっ、そうか。お前さんも律儀な奴だ。これからも花梨の事を、よろしく頼む」
「ええ、もちろんですわ!」
さも当然のように流蔵が宣言すると、ぬらりひょんは口角をニヤリと上げ、おもむろに書斎机の引き出しを開けて漁り始める。
しばらくすると、中から超特濃本醸造酒を取り出し、書斎机の上にドンッと音を立てて置いた。
「お前さん、今日は店が休みで暇だろう? ちょっとワシと付き合え。花梨について語り合おうぞ」
「おっ、ええですねえ。とことん付き合ったりますよ!」
片や、娘を溺愛する親バカのスイッチが入り。片や、親友と最高のライバルとしてのスイッチが入り、酒とツマミを嗜みつつ、愛娘と良き親友について熱く語り合っていく二人。
そして、その語り合いは夜中まで続き、挙句の果てには朝日が顔を出すまで終わる事はなかった。
―――流蔵と別れた後の、花梨の日記
今日は流蔵さんにリベンジを果たすべく、河童の川釣り流れに行って来た!
朝の十時ぐらいに行けば、すぐに流蔵さんと相撲が取れると思っていたけど、どうやらその考えは甘かったようでね……。
河川敷にある土俵の前から橋の上でまで、信じられない程に長い長蛇の列が作られていたよ。初めて目にした時は、すごくビックリしちゃったや。
こりゃあ当分勝負はお預けだと悟って、私も橋の上から流蔵さんの相撲を観戦していたけど、相当強くなっていたなぁ。
洗練された無駄が一切無い動き、相手の力を利用して受け流す技。そして、その相手を粉砕する剛力。どれを見ても最高峰だったよ。
それで、人間の姿でいたら参考にすらならなかったから、剛力酒を飲んで茨木童子になり、改めて流蔵さんの戦いを眺めていたんだけど、そこで一人の鬼さんに声を掛けられてね。
いくつか質問されて答えたら、「西の無敗が帰って来たーー!」って、急に大声で叫んだかと思うと、瞬く間に行列を作っていた妖怪さん達に囲まれていったんだ。
最初は何がなんだか分からなかったけど、鬼さん達の言葉に触発されていく内に、変なスイッチが入っちゃって……。
その後に、場の雰囲気に合わせて喋りつつ、背後に大群を率いて河川敷に下りていったんだ。(あの時の応援コールと待遇……、ちょっと気持ちよかったなぁ)
そして、久々に流蔵さんと土俵の上で対峙して、そこから熱い戦いが始まった……、ハズだったんだけど、力の差が歴然でね。
前は茨木童子になれば、力はほぼ互角だったんだけども、今はまったく歯が立たず、あっという間に土俵際まで追いやられちゃった。
始まってものの数秒で負けるかと思いきや、流蔵さんの力がいきなり弱まり、チャンスだ! と躍起になった途端、不意にゴーニャの悲鳴が上がったんだ。
何事かと焦ったけど、どうやら原因は私の顔のようで、纏姉さんに手鏡を借りて顔を確認してみたら、すごい有様になっていた……。
なんて表現したらいいかなぁ? もはや龍? ギザギザが増した牙に、爬虫類染みた瞳。その瞳もまたおっかなくってね、自分でも驚いちゃったや。
でもそこからだ。よく分からないけど力の差が埋まったようで、やっと対等に流蔵さんと相撲が取れるようになったよ!
力は均衡し、技を繰り出すも、違う技で返しての力と技の応酬合戦! いやぁ~、ものすごく熱い戦いだったなぁ。
それで、そのまま二十分以上戦った結果、勝敗は引き分けで終わってしまった。最後は特殊な突き出しで勝負をしたんだけども、お互いに土俵外に吹っ飛び、あえなくの引き分けだったよ。
悔しいなぁ、本当に悔しいっ! 流蔵さんの連勝は止められたものの、引き分けだもんな~。もう少し私に力があれば、勝てていたかもしれない……。
次こそは勝ちたいなぁ。いや、絶対に勝つ! とは言ってみたけれど、どうすればいいんだろ? ……茨木童子の姿で筋トレをすればいいのかな?
そして戦いの後に、とても美味しい塩ちゃんこを食べて、流蔵さん達と一緒に露天風呂に浸かってきたよ!
戦いの後の塩ちゃんこと露天風呂よ、堪らなかったよねぇ~。極限にお腹がすいている時に食べた塩ちゃんこ。限界まで疲れた体で浸かった露天風呂。もう、最高だったよ!
あと、最後に。
流蔵さんと一緒に露天風呂に浸かってる時に、流蔵さんの何気ない一言で、私の心の中に罪悪感が芽生えたんだ。
だから、流蔵さんに初めてお店に行った時の流れをバラしちゃったんだけども……。流蔵さんは怒るどころか、笑いながらその流れを一蹴してくれた。
その時その時が楽しければ、それでええ。ってね。同時に、ぬらりひょん様と私に助けられたとも言ってきて、逆に感謝までされちゃった。
真実を話しちゃったから、関係が悪くなるかと思っていたけれど、これも逆で。むしろ前よりも固い絆が結ばれた、そんな気がする。
そう言えばぬらりひょん様は、流蔵さんに何をしたんだろう? ちょっと気になるから、今度聞いてみようかな?
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