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魚釣り
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兄が、魚釣りから帰宅した。玄関に向かって
「おかえり」
と、声をかける。
元気のない声で
「ただいま……」
と、帰って来る。
顔面蒼白で、しょぼんとした表情で台所へ。
何も釣れなかったのかと思って、冷やかすつもりで兄の下へ駆け寄る。
大きな魚を一匹流し台の中へ入れている。
「凄っ大きい魚捕れたのに何で凹んでんの?」
凹む意味が分からなかった。
あきらかに、顔色が悪いし、元気がない。
ぽつりと兄が話し始める。
「釣りに行く前に変な話するからだろぅ~!※ケンムンの話するから……大きいの釣れたからいいけどけど、変な目に遭った。」
❨……そういえば、兄をおちょくってケンムンが出るかもよ?と、3時間前に笑いあったんだった。兄もノリノリだった筈なのに……❩
と、思い出す。
「何があったの?」
と、問う。
魚を捌きながら兄が話し始める。
家を出た後、車に乗って今日の釣り場を探していた。
人が居なくて、ゆっくり釣れる場所。
遠くから次々と実家に近づく感じで車を走らせる。
自宅から4つ集落を離れた場所は、良いポイントだが、日も暮れたというのに大きな作業船が電気を煌々(こうこう)と昼間と同じ位の明るさでまだ仕事をしている。
「ブラック企業かな……ここは駄目だな。おつです。」
独り言を車の中で呟き移動する。
3つ目と2つ目の集落には、先客が数人。
釣りの最中に話しかけられる事を嫌がる兄は諦めて地元の浜へ帰ってきた。
地元の海。
港の入り口手前には広場があり、岸壁近く中央に申し訳程度の街灯がひとつ。
海に向かって立つと、左側には川があり、海に沿ってL字型の波止場がある。
防波堤は、約2メートルの幅で高さも2メートルほどの波消しブロックある。先端に行くと、高さが5メートル程に上がり、ハシゴか波消しブロックに乗って、上に上がるしか方法がないのである。
波止場は、薄暗く少しだけ街灯の光が当たる程しかない。電灯は必需品である。
5メートル上がった防波堤には先客が居る。
ゆらゆらと揺れる灯りが見える。
「チッ先客か……今日はツイてない。上に久々行ってみたかったんだがしかたない。」
兄は諦め、防波堤手前の波消しブロックの上に上がり、川と海の間目掛けて釣り糸を投げて釣り始める。
(潮があまり合わないな……あの人早く帰らないかな?)
独りで考え事しながら釣りをしている。
川と海の間では釣れないので、海側に場所を変える。やはり上にいる人はゆらゆらと電気を付けている。
(電気つけっぱなし……何か釣れてるのか?暗い方が釣れるのにな)
小さな魚を釣りながら、気になっていると
防波堤近く、車が近付く。兄が車を停めている所付近からパタンパタンとドアが閉まる音が2つ。
電気を煌々と点け、キャッキャ言いながら近づいてくるカップルが居た。
(う~わ~また変な邪魔が来たな……)
内心兄は思ったが、カップルは
「こんばんは~。」
と、話しかけ兄の後ろを素通り。防波堤の先の方へキャッキャ騒ぎながら歩いていく。
何処に行くのか兄は目で追う。
(防波堤の先端人が居るけどな……どっちも可哀想。知り合いなら良いけど)
と、思いながら釣りをしている。
「星が綺麗に見える~。」
と、騒いでいる。防波堤波消しブロックに反射して声が響いてくる。
(釣り人の邪魔にならなきゃいいが……!?)
ふと気づく。
さっきまで居たはずの人、ゆらゆら揺れていた灯りが無いのである。
カップルの持っているLEDのライトだけが煌々と防波堤の上を照らしているのである。
兄は、少し混乱する。
確かに人は居たのだ。
帰ったか?とも考えたが、足音も明かりも無く自分の後ろを通るのは不可能なのである。
2メートルの幅しかない場所で、辺りは真っ暗。自分のクーラーボックス等も後ろに置いてあるので、人が通れば避けたりするだろうし、兄の経験から必ず足音が聴こえるハズなのである。
海に落ちたとしても、落ちた音がするはずだし……
考えを巡らせていると、急に大きな魚が釣れた。
針から魚を外し、クーラーボックスに入れる。
考えると、ますます怖くなる。
ゾクリとする。聴こえるのは波の音とカップルの声だけ。
(うん。帰ろう……)
急いで車に乗り込む。
辺りを見回すと、自分の車とカップルの車だけ。
後は何も無いのである。
港までは遠いので、徒歩でなんて到底ムリな話。オートバイも車も、ましてや自転車さえも無いのだから。
眼下に広がるのは、海と防波堤、ポツンと立つ街灯と広場だけ……
鳥肌がたつ。外は夏の暑い風が吹いているのに。
「妹とあんな話するんじゃなかった……」
顔面蒼白の意味を理解した。
わざと
「ケンムンに騙されたから、大きい魚捕れたわけね!」
と、おどけてみせるが兄は恐怖が取れない様だった。
「じゃあ、見間違いか、海に落ちたか。」
ため息をつかれてしまった。
「……幽霊だったとか?」
ジロリと兄に睨まれ、話すのをやめた。
本当に肝を冷やしたらしい。
兄が無事ならいいか。人も落ちてないし。
真相は闇の中。
兄は話さない。
ケンムンなら怖がればイタズラされて、怖がらなければ恩恵をくれる。と言い伝えられている。
兄が見たのは幽霊か、ケンムンか……
好奇心も良いけれど、詮索するのはほどほどに。ケンムンに出逢っても無事とは限らないので、自己責任でお願いします。
※ケンムンとは
奄美大島に古くから伝わる妖怪や精霊。
海岸やガジュマルの樹の近くで目撃されている。
「おかえり」
と、声をかける。
元気のない声で
「ただいま……」
と、帰って来る。
顔面蒼白で、しょぼんとした表情で台所へ。
何も釣れなかったのかと思って、冷やかすつもりで兄の下へ駆け寄る。
大きな魚を一匹流し台の中へ入れている。
「凄っ大きい魚捕れたのに何で凹んでんの?」
凹む意味が分からなかった。
あきらかに、顔色が悪いし、元気がない。
ぽつりと兄が話し始める。
「釣りに行く前に変な話するからだろぅ~!※ケンムンの話するから……大きいの釣れたからいいけどけど、変な目に遭った。」
❨……そういえば、兄をおちょくってケンムンが出るかもよ?と、3時間前に笑いあったんだった。兄もノリノリだった筈なのに……❩
と、思い出す。
「何があったの?」
と、問う。
魚を捌きながら兄が話し始める。
家を出た後、車に乗って今日の釣り場を探していた。
人が居なくて、ゆっくり釣れる場所。
遠くから次々と実家に近づく感じで車を走らせる。
自宅から4つ集落を離れた場所は、良いポイントだが、日も暮れたというのに大きな作業船が電気を煌々(こうこう)と昼間と同じ位の明るさでまだ仕事をしている。
「ブラック企業かな……ここは駄目だな。おつです。」
独り言を車の中で呟き移動する。
3つ目と2つ目の集落には、先客が数人。
釣りの最中に話しかけられる事を嫌がる兄は諦めて地元の浜へ帰ってきた。
地元の海。
港の入り口手前には広場があり、岸壁近く中央に申し訳程度の街灯がひとつ。
海に向かって立つと、左側には川があり、海に沿ってL字型の波止場がある。
防波堤は、約2メートルの幅で高さも2メートルほどの波消しブロックある。先端に行くと、高さが5メートル程に上がり、ハシゴか波消しブロックに乗って、上に上がるしか方法がないのである。
波止場は、薄暗く少しだけ街灯の光が当たる程しかない。電灯は必需品である。
5メートル上がった防波堤には先客が居る。
ゆらゆらと揺れる灯りが見える。
「チッ先客か……今日はツイてない。上に久々行ってみたかったんだがしかたない。」
兄は諦め、防波堤手前の波消しブロックの上に上がり、川と海の間目掛けて釣り糸を投げて釣り始める。
(潮があまり合わないな……あの人早く帰らないかな?)
独りで考え事しながら釣りをしている。
川と海の間では釣れないので、海側に場所を変える。やはり上にいる人はゆらゆらと電気を付けている。
(電気つけっぱなし……何か釣れてるのか?暗い方が釣れるのにな)
小さな魚を釣りながら、気になっていると
防波堤近く、車が近付く。兄が車を停めている所付近からパタンパタンとドアが閉まる音が2つ。
電気を煌々と点け、キャッキャ言いながら近づいてくるカップルが居た。
(う~わ~また変な邪魔が来たな……)
内心兄は思ったが、カップルは
「こんばんは~。」
と、話しかけ兄の後ろを素通り。防波堤の先の方へキャッキャ騒ぎながら歩いていく。
何処に行くのか兄は目で追う。
(防波堤の先端人が居るけどな……どっちも可哀想。知り合いなら良いけど)
と、思いながら釣りをしている。
「星が綺麗に見える~。」
と、騒いでいる。防波堤波消しブロックに反射して声が響いてくる。
(釣り人の邪魔にならなきゃいいが……!?)
ふと気づく。
さっきまで居たはずの人、ゆらゆら揺れていた灯りが無いのである。
カップルの持っているLEDのライトだけが煌々と防波堤の上を照らしているのである。
兄は、少し混乱する。
確かに人は居たのだ。
帰ったか?とも考えたが、足音も明かりも無く自分の後ろを通るのは不可能なのである。
2メートルの幅しかない場所で、辺りは真っ暗。自分のクーラーボックス等も後ろに置いてあるので、人が通れば避けたりするだろうし、兄の経験から必ず足音が聴こえるハズなのである。
海に落ちたとしても、落ちた音がするはずだし……
考えを巡らせていると、急に大きな魚が釣れた。
針から魚を外し、クーラーボックスに入れる。
考えると、ますます怖くなる。
ゾクリとする。聴こえるのは波の音とカップルの声だけ。
(うん。帰ろう……)
急いで車に乗り込む。
辺りを見回すと、自分の車とカップルの車だけ。
後は何も無いのである。
港までは遠いので、徒歩でなんて到底ムリな話。オートバイも車も、ましてや自転車さえも無いのだから。
眼下に広がるのは、海と防波堤、ポツンと立つ街灯と広場だけ……
鳥肌がたつ。外は夏の暑い風が吹いているのに。
「妹とあんな話するんじゃなかった……」
顔面蒼白の意味を理解した。
わざと
「ケンムンに騙されたから、大きい魚捕れたわけね!」
と、おどけてみせるが兄は恐怖が取れない様だった。
「じゃあ、見間違いか、海に落ちたか。」
ため息をつかれてしまった。
「……幽霊だったとか?」
ジロリと兄に睨まれ、話すのをやめた。
本当に肝を冷やしたらしい。
兄が無事ならいいか。人も落ちてないし。
真相は闇の中。
兄は話さない。
ケンムンなら怖がればイタズラされて、怖がらなければ恩恵をくれる。と言い伝えられている。
兄が見たのは幽霊か、ケンムンか……
好奇心も良いけれど、詮索するのはほどほどに。ケンムンに出逢っても無事とは限らないので、自己責任でお願いします。
※ケンムンとは
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