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海の岩
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皆が居なくなった事に気づかずに釣りを続けていた。
「大物!!ゲット!」
一人で釣りを楽しんでいる。
クーラーボックスに魚を入れると、ビタン、ビタンと魚が跳ねている。
クーラーボックスで魚が跳ねるのとは別の音が聞こえる。
バシャン!バシャバシャ!!
(おっ!大物魚が跳ねてる!!……潮の変わり目か?釣れなくなるかな?まだイケるはずなんだけど……時間はあるし)
そんな風に考えながら釣りを投げ入れる。
ヒュンッと音がして、釣り糸がシュルシュルシュルと伸びる音の後、ポチャンとオモリの落ちる音。
波は静かで、自分のリールを巻く音とチャプチャプと防波堤に当たる波の音。
時々クーラーボックスの中で跳ねる魚の音だけだった。
「手応え無くなったなぁ~。大きな魚が追いかけてるのかなぁ?」
バシャバシャ……ビタン……ビタン……パチャン
シーン。
急に静かになる。チャプチャプ聴こえていた波の音さえも聴こえなくなった。
「ん?何か変だな……」
糸を巻き取る。キリキリキリキリキリ……
巻き終えると、友達に声を掛けようと振り返る。
「おい?!……あれ?居ない!?置いて帰ったのかあの二人?俺、釣りに夢中になり過ぎたかな?……まさか!!海に落ちたとかじゃないよな!?」
サッと小さなライトで海を照らしてみる。
小さなライトでは海面が見える程の光量は無い。小さく声をあげてみる。
「お……い!落ちてないよな?大丈夫か?」
ぴたん……ひた……ひた……ひた……
耳を澄ますと、湿った音と裸足で歩く音が聴こえる。
音のする方向へ小さなライトを向け、目を凝らして見ると色白でびしょ濡れ、裸足の女性が「ひたひた」と揺れながら近づいて来る。
「だ……だれ?……大丈夫か?な、なぁ!あんた大丈夫なのかよ!?」
暗闇の中立ち尽くす女性。
『色白』ではなく、血の気のない人……人でもない様子の女性。
ビタン……ビタン……
と自分の足元近くには、ずぶ濡れの白い腕。
「ひっ!!ひぃぃぃぃぃーー!!」
男は腰を抜かしそのままその場に座り込む。
ずぶ濡れの白い腕が男の足を掴む。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ~!!」
叫び声がこだまする。
今まで静かだった波の音が男の声をかき消すようにザザーンと大きな音を立てる。
ビタン……ピチャン……ピチャン……ピチャン……
腰を抜かしたまま後ずさると、ピチャピチャと水が滴り落ちる音と共に友達の男性が現れる。
「お……おいぃぃーー!!探したんだぞ!早く逃げよう!!やべぇよぉ~!!」
這いつくばりながら、友達の男性に近づくと、その男の顔に生気は無く虚ろな目をして血の気のない白い肌。
それはまるで死人がひとりでに歩いている様であった。
「う……嘘だろ~!」
友達の足にすがりつくが、何の反応も示さない。
濡れた白い腕が男の足を海の方向へ引っ張り始める。
海に落とされないように暴れてみたり、手を引き剥がそうとするが離れない。
「おぉ~い!助けてくれよぉ~!!俺が悪かったよ~!!」
半泣きになりながら、必死で友達に訴えるが只々立ち尽くしているだけで反応せず。
びしょ濡れの女がスッと片手を友達の肩に乗せると、操られるように動き出し男の手を引っぱり起き上がらせる。
フラつきながら立ち上がると、男は生気のない目の友達に
「あ……ありがとう~!み、見逃してくれるのか?」
立たせてくれたと思った男は少し喜んだ。
だがどうも様子がおかしい。
友達は男の腕を抱えると、海の方向へと歩きだしたのである。
「お……おい!!やめろ!!やめてくれ!魚も逃がすから!!なっ!嫌だ!誰かーーー!」
叫び声も虚しく、男は友達と真っ暗闇の海の中へ。
揺れる海面から見えたのは女の満面の笑顔。
溺れないように泳ぐが、友達に腕を掴まれ思うように泳げない。
足をバタつかせていたが、足にも急に違和感が……
海の底にゆらゆらと揺れる髪の毛。
釣りに一緒に来ていた女友達が両足を掴んで笑っているのである。
「ヒィッ!!もうダメだ……」
と思い沈みかけた瞬間、何かが手に当たった。男は必死に片手でそれに掴まり、最後の力を振り絞った。
それはあの大きな山の様な岩だった。
ツルリツルリと滑るのだが、このままでは連れて行かれる。
必死に
「すまん!すまん!!俺のせいで」
と心の中で叫び岩にすがりつこうと暴れ続けていると、たまたま夜の漁に出かけていた小舟の漁師が変に跳ねる海のしぶきに気づき男を発見する。
「おーい!!あんた人?だよな?大丈夫か!?今コレ(救命浮輪)投げるから掴まれ!!それっ!」
男は間一髪の所で命を救われた。
夜の海は危険だからとその日は海の上を照らして探す程度で終わった。
海上保安庁も来たが、発見できず。
翌日、他の漁師や海上保安庁が周辺を捜索したが友達2人は帰らぬ人となって見つかった。
後日、現場に居た友達含め男も説教と罰金、反省文や書類やらを書かされた。
男はそれ以来釣りには出掛けなかった。
友達を巻き込んでしまった事をとても悔やんだ。悔やんでも悔やみきれなかった。
腕の周りと足首には彼らの無念の跡が痣(あざ)となって残った。
一生の戒めだと思っている男は、何故自分だけが生かされたのか……
あの濡れた女性は海の神様だったのか?立ち入り禁止に同じように入って命を落とした人なのか……今となっては知るすべはない。
もしかしたら、言い伝える為に生かされたのかもしれない。
『立ち入り禁止』
そんな看板を見かけると何故か気になるのは人間の性分なのだろうか?
あの景色の良い防波堤に人が数人立っている。
今日もまた立ち入り禁止の柵の前で釣り人や観光客が何かを企んでいるようだ……。
「大物!!ゲット!」
一人で釣りを楽しんでいる。
クーラーボックスに魚を入れると、ビタン、ビタンと魚が跳ねている。
クーラーボックスで魚が跳ねるのとは別の音が聞こえる。
バシャン!バシャバシャ!!
(おっ!大物魚が跳ねてる!!……潮の変わり目か?釣れなくなるかな?まだイケるはずなんだけど……時間はあるし)
そんな風に考えながら釣りを投げ入れる。
ヒュンッと音がして、釣り糸がシュルシュルシュルと伸びる音の後、ポチャンとオモリの落ちる音。
波は静かで、自分のリールを巻く音とチャプチャプと防波堤に当たる波の音。
時々クーラーボックスの中で跳ねる魚の音だけだった。
「手応え無くなったなぁ~。大きな魚が追いかけてるのかなぁ?」
バシャバシャ……ビタン……ビタン……パチャン
シーン。
急に静かになる。チャプチャプ聴こえていた波の音さえも聴こえなくなった。
「ん?何か変だな……」
糸を巻き取る。キリキリキリキリキリ……
巻き終えると、友達に声を掛けようと振り返る。
「おい?!……あれ?居ない!?置いて帰ったのかあの二人?俺、釣りに夢中になり過ぎたかな?……まさか!!海に落ちたとかじゃないよな!?」
サッと小さなライトで海を照らしてみる。
小さなライトでは海面が見える程の光量は無い。小さく声をあげてみる。
「お……い!落ちてないよな?大丈夫か?」
ぴたん……ひた……ひた……ひた……
耳を澄ますと、湿った音と裸足で歩く音が聴こえる。
音のする方向へ小さなライトを向け、目を凝らして見ると色白でびしょ濡れ、裸足の女性が「ひたひた」と揺れながら近づいて来る。
「だ……だれ?……大丈夫か?な、なぁ!あんた大丈夫なのかよ!?」
暗闇の中立ち尽くす女性。
『色白』ではなく、血の気のない人……人でもない様子の女性。
ビタン……ビタン……
と自分の足元近くには、ずぶ濡れの白い腕。
「ひっ!!ひぃぃぃぃぃーー!!」
男は腰を抜かしそのままその場に座り込む。
ずぶ濡れの白い腕が男の足を掴む。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ~!!」
叫び声がこだまする。
今まで静かだった波の音が男の声をかき消すようにザザーンと大きな音を立てる。
ビタン……ピチャン……ピチャン……ピチャン……
腰を抜かしたまま後ずさると、ピチャピチャと水が滴り落ちる音と共に友達の男性が現れる。
「お……おいぃぃーー!!探したんだぞ!早く逃げよう!!やべぇよぉ~!!」
這いつくばりながら、友達の男性に近づくと、その男の顔に生気は無く虚ろな目をして血の気のない白い肌。
それはまるで死人がひとりでに歩いている様であった。
「う……嘘だろ~!」
友達の足にすがりつくが、何の反応も示さない。
濡れた白い腕が男の足を海の方向へ引っ張り始める。
海に落とされないように暴れてみたり、手を引き剥がそうとするが離れない。
「おぉ~い!助けてくれよぉ~!!俺が悪かったよ~!!」
半泣きになりながら、必死で友達に訴えるが只々立ち尽くしているだけで反応せず。
びしょ濡れの女がスッと片手を友達の肩に乗せると、操られるように動き出し男の手を引っぱり起き上がらせる。
フラつきながら立ち上がると、男は生気のない目の友達に
「あ……ありがとう~!み、見逃してくれるのか?」
立たせてくれたと思った男は少し喜んだ。
だがどうも様子がおかしい。
友達は男の腕を抱えると、海の方向へと歩きだしたのである。
「お……おい!!やめろ!!やめてくれ!魚も逃がすから!!なっ!嫌だ!誰かーーー!」
叫び声も虚しく、男は友達と真っ暗闇の海の中へ。
揺れる海面から見えたのは女の満面の笑顔。
溺れないように泳ぐが、友達に腕を掴まれ思うように泳げない。
足をバタつかせていたが、足にも急に違和感が……
海の底にゆらゆらと揺れる髪の毛。
釣りに一緒に来ていた女友達が両足を掴んで笑っているのである。
「ヒィッ!!もうダメだ……」
と思い沈みかけた瞬間、何かが手に当たった。男は必死に片手でそれに掴まり、最後の力を振り絞った。
それはあの大きな山の様な岩だった。
ツルリツルリと滑るのだが、このままでは連れて行かれる。
必死に
「すまん!すまん!!俺のせいで」
と心の中で叫び岩にすがりつこうと暴れ続けていると、たまたま夜の漁に出かけていた小舟の漁師が変に跳ねる海のしぶきに気づき男を発見する。
「おーい!!あんた人?だよな?大丈夫か!?今コレ(救命浮輪)投げるから掴まれ!!それっ!」
男は間一髪の所で命を救われた。
夜の海は危険だからとその日は海の上を照らして探す程度で終わった。
海上保安庁も来たが、発見できず。
翌日、他の漁師や海上保安庁が周辺を捜索したが友達2人は帰らぬ人となって見つかった。
後日、現場に居た友達含め男も説教と罰金、反省文や書類やらを書かされた。
男はそれ以来釣りには出掛けなかった。
友達を巻き込んでしまった事をとても悔やんだ。悔やんでも悔やみきれなかった。
腕の周りと足首には彼らの無念の跡が痣(あざ)となって残った。
一生の戒めだと思っている男は、何故自分だけが生かされたのか……
あの濡れた女性は海の神様だったのか?立ち入り禁止に同じように入って命を落とした人なのか……今となっては知るすべはない。
もしかしたら、言い伝える為に生かされたのかもしれない。
『立ち入り禁止』
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