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前原美影の視点
第三話:下手くそな道化師
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月曜日の朝。 教室の扉を開けると、そこには、目に見えない有刺鉄線が張り巡らされていた。
その発生源は、間違いなく垣原瞬くんだった。 彼は席に着くなり、教科書をバリケードのように積み上げ、頑なに私の方を見ようとしない。背中全体から「俺は今、不機嫌だ」「話しかけるな」というオーラを、これでもかというほど放出している。
(……あちゃー)
私は心の中で、小さく苦笑した。 土曜日のデートは楽しかったはずなのに。日曜の朝のメッセージも、既読はついたのに返信はなかった。 どうやら彼は、あの「平和で穏やかな時間」を消化しきれず、自分の中で勝手にこじらせてしまったらしい。 「こんなに順調なのはおかしい」「裏があるんじゃないか」と疑心暗鬼になっているのか、あるいは単に、私が彼の想定通りに動かないことに苛立っているのか。
私は、あえていつも通りに振る舞うことにした。 彼の有刺鉄線を、素手で撫でてやるように。
「おはよう、瞬くん!」
声をかけると、彼はビクリと肩を跳ねさせ、逃げるように「……おう」とだけ返して、席に座り込んでしまった。 クラスメイトたちがニヤニヤしながら見ている。 私は気にせず、自分の席へ向かった。
(不器用だなぁ)
彼が私を避ければ避けるほど、彼の中の「私」という存在が大きくなっている証拠だ。 無視されるのは少し寂しいけれど、それ以上に、彼のその子供っぽい抵抗が、なんだか愛らしくも見えた。 私は長期戦を覚悟した。彼が自分の殻に閉じこもるなら、私はその殻の外で、根気強くノックし続けるだけだ。
しかし、水曜日の昼休み。 彼は、私の予想の斜め上を行く行動に出た。
「美影、今日もお弁当? 外で食べよー」 「うん、いいよ」
親友の結衣たちと一緒に、中庭へ向かう。 蒸し暑い曇り空。湿気が肌にまとわりつく不快な天気だった。 いつものケヤキの木陰にシートを広げていると、少し離れたベンチの方から、わざとらしいほど大きな笑い声が聞こえてきた。
「えー! 瞬くん、マジでー?」
甘ったるい声。二組の綾香さんだ。 そして、その隣には、瞬くんがいた。 彼は、綾香さんの肩に触れんばかりの距離で座り、何かを話し込んでいる。綾香さんがキャハハと笑いながら彼を叩く。彼はそれを受け入れ、さらに身を乗り出して……。
ドクン、と。 心臓が、嫌な音を立てた。
視界の端が、チリチリと焼けるように熱くなる。 胃の腑に、冷たい石を落とされたような重み。
(……何、してるの)
一瞬、思考が真っ白になりかけた。 嫉妬? うん、これは嫉妬だ。 自分の彼氏(仮)が、目の前で他の女の子とあんな風にイチャイチャしていたら、面白くないに決まっている。 胸の奥から、黒い感情が湧き上がってくる。「やめてよ」と叫びたい衝動。駆け寄って、二人の間に割って入りたい衝動。
でも。 その衝動に突き動かされる寸前で、私の目が、ある「違和感」を捉えた。
瞬くんの視線だ。 彼は、綾香さんと楽しそうに話しているふりをしながら、その実、一秒ごとにチラチラと、こちらを窺っているのだ。 まるで、舞台の上で演技をしながら、客席の反応を気にする三流役者のように。
彼の顔には、心からの楽しさなんて微塵もない。あるのは、「どうだ、見ているか?」「嫉妬しているか?」「俺はこんなにモテるんだぞ」という、焦りと虚勢だけ。
(……なんだ)
その瞬間、私の中に湧き上がっていた黒い感情が、シューッと音を立てて冷めていくのがわかった。
これは、浮気じゃない。 ただの「見せつけ(パフォーマンス)」だ。 私を怒らせるためだけの、私を不安にさせるためだけの、安っぽいお芝居。
綾香さんは、ただの道具に使われているだけだ。 そして私は、彼が期待する「観客」の役割を求められている。 私がここで顔を真っ赤にして怒ったり、泣き出したりすれば、彼の「作戦」は大成功。彼は「やっぱり俺のことが好きなんだ」と安心し、歪んだ満足感を得るだろう。
(……馬鹿にしてる)
私を、じゃない。 自分自身を、そして、綾香さんを。 人の気持ちを試すために、他人を利用するなんて。そんなダサいこと、してほしくなかった。
怒りがなかったわけじゃない。むしろ、さっきよりも深い、静かな怒りが湧いた。 でも、その怒りを彼にぶつけてやるのは、今じゃない。 ここで私が取り乱せば、彼は味を占める。これから先も、不安になるたびに私を試すようになるだろう。そんな関係、絶対に嫌だ。
私は、深呼吸を一つした。 湿った空気を吸い込み、肺の中で冷やして、吐き出す。
(乗らないよ、瞬くん)
あなたのその挑発には、乗ってあげない。 私は、あなたが期待するような「嫉妬に狂う女」にはならない。 そんな安い脚本で、私の心を動かせると思わないで。
私は顔を上げ、彼の視線を、まっすぐに受け止めた。 彼がビクリとしたのがわかる。 「さあ、どうする?」と身構えている彼に向かって、私は。
ふわり、と笑ってみせた。
作り笑顔じゃない。 「はいはい、頑張ってるね」「お疲れ様」という、呆れと、少しの皮肉と、そして「そんなことしても無駄だよ」という余裕を込めた、力の抜けた笑顔だ。
そして、小さく会釈をした。 「楽しそうで何よりです」とでも言うように。
彼は、凍りついたようだった。 鳩が豆鉄砲を食らったような顔で、口を半開きにしている。 その表情が、なんだか滑稽で、少しだけ可哀想で、胸が痛んだ。
私は視線を外し、結衣の方へ向き直った。 「あ、ごめん。話の途中だったよね」
「え、美影? 今の……」 結衣が心配そうに私を見ている。彼女にも、あのお芝居は見えていただろう。
「ううん、なんでもない。ただのクラスメイトだよ」
私は、努めて明るく言った。 心臓はまだ、少しだけ早く打っている。 平気なわけがない。傷つかなかったわけがない。 好きな人が、他の女の子と仲良くしている光景なんて、演技だとわかっていても、網膜に焼き付いて離れない。
でも、私は私のプライドを守った。 「試される女」ではなく、「動じない女」であることを選んだ。
背中越しに、瞬くんの気配が小さくなっていくのを感じる。 彼は今頃、自分の投げたボールが空振りに終わったことに呆然としているだろう。
(ごめんね)
心の中で、小さく謝る。 あなたの望む反応をしてあげられなくて。 でもね、瞬くん。 愛っていうのは、相手を試して安心するものじゃないと思うんだ。 信じて、委ねて、初めて手に入るものだと思うんだ。
いつかあなたが、その下手くそな演技をやめて、仮面を外して、素顔のままで私に向き合ってくれるまで。 私は、何度でもあなたの期待を裏切り続けるよ。
湿った風が、中庭を吹き抜けていく。 どんよりとした曇り空の下、私は一口だけ残っていた卵焼きを口に運んだ。 少ししょっぱくて、でも甘い味がした。
その発生源は、間違いなく垣原瞬くんだった。 彼は席に着くなり、教科書をバリケードのように積み上げ、頑なに私の方を見ようとしない。背中全体から「俺は今、不機嫌だ」「話しかけるな」というオーラを、これでもかというほど放出している。
(……あちゃー)
私は心の中で、小さく苦笑した。 土曜日のデートは楽しかったはずなのに。日曜の朝のメッセージも、既読はついたのに返信はなかった。 どうやら彼は、あの「平和で穏やかな時間」を消化しきれず、自分の中で勝手にこじらせてしまったらしい。 「こんなに順調なのはおかしい」「裏があるんじゃないか」と疑心暗鬼になっているのか、あるいは単に、私が彼の想定通りに動かないことに苛立っているのか。
私は、あえていつも通りに振る舞うことにした。 彼の有刺鉄線を、素手で撫でてやるように。
「おはよう、瞬くん!」
声をかけると、彼はビクリと肩を跳ねさせ、逃げるように「……おう」とだけ返して、席に座り込んでしまった。 クラスメイトたちがニヤニヤしながら見ている。 私は気にせず、自分の席へ向かった。
(不器用だなぁ)
彼が私を避ければ避けるほど、彼の中の「私」という存在が大きくなっている証拠だ。 無視されるのは少し寂しいけれど、それ以上に、彼のその子供っぽい抵抗が、なんだか愛らしくも見えた。 私は長期戦を覚悟した。彼が自分の殻に閉じこもるなら、私はその殻の外で、根気強くノックし続けるだけだ。
しかし、水曜日の昼休み。 彼は、私の予想の斜め上を行く行動に出た。
「美影、今日もお弁当? 外で食べよー」 「うん、いいよ」
親友の結衣たちと一緒に、中庭へ向かう。 蒸し暑い曇り空。湿気が肌にまとわりつく不快な天気だった。 いつものケヤキの木陰にシートを広げていると、少し離れたベンチの方から、わざとらしいほど大きな笑い声が聞こえてきた。
「えー! 瞬くん、マジでー?」
甘ったるい声。二組の綾香さんだ。 そして、その隣には、瞬くんがいた。 彼は、綾香さんの肩に触れんばかりの距離で座り、何かを話し込んでいる。綾香さんがキャハハと笑いながら彼を叩く。彼はそれを受け入れ、さらに身を乗り出して……。
ドクン、と。 心臓が、嫌な音を立てた。
視界の端が、チリチリと焼けるように熱くなる。 胃の腑に、冷たい石を落とされたような重み。
(……何、してるの)
一瞬、思考が真っ白になりかけた。 嫉妬? うん、これは嫉妬だ。 自分の彼氏(仮)が、目の前で他の女の子とあんな風にイチャイチャしていたら、面白くないに決まっている。 胸の奥から、黒い感情が湧き上がってくる。「やめてよ」と叫びたい衝動。駆け寄って、二人の間に割って入りたい衝動。
でも。 その衝動に突き動かされる寸前で、私の目が、ある「違和感」を捉えた。
瞬くんの視線だ。 彼は、綾香さんと楽しそうに話しているふりをしながら、その実、一秒ごとにチラチラと、こちらを窺っているのだ。 まるで、舞台の上で演技をしながら、客席の反応を気にする三流役者のように。
彼の顔には、心からの楽しさなんて微塵もない。あるのは、「どうだ、見ているか?」「嫉妬しているか?」「俺はこんなにモテるんだぞ」という、焦りと虚勢だけ。
(……なんだ)
その瞬間、私の中に湧き上がっていた黒い感情が、シューッと音を立てて冷めていくのがわかった。
これは、浮気じゃない。 ただの「見せつけ(パフォーマンス)」だ。 私を怒らせるためだけの、私を不安にさせるためだけの、安っぽいお芝居。
綾香さんは、ただの道具に使われているだけだ。 そして私は、彼が期待する「観客」の役割を求められている。 私がここで顔を真っ赤にして怒ったり、泣き出したりすれば、彼の「作戦」は大成功。彼は「やっぱり俺のことが好きなんだ」と安心し、歪んだ満足感を得るだろう。
(……馬鹿にしてる)
私を、じゃない。 自分自身を、そして、綾香さんを。 人の気持ちを試すために、他人を利用するなんて。そんなダサいこと、してほしくなかった。
怒りがなかったわけじゃない。むしろ、さっきよりも深い、静かな怒りが湧いた。 でも、その怒りを彼にぶつけてやるのは、今じゃない。 ここで私が取り乱せば、彼は味を占める。これから先も、不安になるたびに私を試すようになるだろう。そんな関係、絶対に嫌だ。
私は、深呼吸を一つした。 湿った空気を吸い込み、肺の中で冷やして、吐き出す。
(乗らないよ、瞬くん)
あなたのその挑発には、乗ってあげない。 私は、あなたが期待するような「嫉妬に狂う女」にはならない。 そんな安い脚本で、私の心を動かせると思わないで。
私は顔を上げ、彼の視線を、まっすぐに受け止めた。 彼がビクリとしたのがわかる。 「さあ、どうする?」と身構えている彼に向かって、私は。
ふわり、と笑ってみせた。
作り笑顔じゃない。 「はいはい、頑張ってるね」「お疲れ様」という、呆れと、少しの皮肉と、そして「そんなことしても無駄だよ」という余裕を込めた、力の抜けた笑顔だ。
そして、小さく会釈をした。 「楽しそうで何よりです」とでも言うように。
彼は、凍りついたようだった。 鳩が豆鉄砲を食らったような顔で、口を半開きにしている。 その表情が、なんだか滑稽で、少しだけ可哀想で、胸が痛んだ。
私は視線を外し、結衣の方へ向き直った。 「あ、ごめん。話の途中だったよね」
「え、美影? 今の……」 結衣が心配そうに私を見ている。彼女にも、あのお芝居は見えていただろう。
「ううん、なんでもない。ただのクラスメイトだよ」
私は、努めて明るく言った。 心臓はまだ、少しだけ早く打っている。 平気なわけがない。傷つかなかったわけがない。 好きな人が、他の女の子と仲良くしている光景なんて、演技だとわかっていても、網膜に焼き付いて離れない。
でも、私は私のプライドを守った。 「試される女」ではなく、「動じない女」であることを選んだ。
背中越しに、瞬くんの気配が小さくなっていくのを感じる。 彼は今頃、自分の投げたボールが空振りに終わったことに呆然としているだろう。
(ごめんね)
心の中で、小さく謝る。 あなたの望む反応をしてあげられなくて。 でもね、瞬くん。 愛っていうのは、相手を試して安心するものじゃないと思うんだ。 信じて、委ねて、初めて手に入るものだと思うんだ。
いつかあなたが、その下手くそな演技をやめて、仮面を外して、素顔のままで私に向き合ってくれるまで。 私は、何度でもあなたの期待を裏切り続けるよ。
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