奴隷ダンジョン

甘い肉

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序章

3話:スキル

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 ゴンッ!
(ぐっっ!いってぇぇぇ)
 頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けて目を覚ました木度

 ズキズキと響く鈍痛に頭を押さえながら
 目を開けると其処は……


 壁とゴツイ男に挟まれ、後ろの岩のような壁に頭をぶつけて目を覚ました木渡は、今が戦闘中だと直ぐに分かった

 木渡を軽々と背負ったゴツイ男より頭二つはデカイ狼のような顔をした……人間?

 嫌々…そんな訳あるか…よく見ろ、どう見ても狼男だ

 灰色の体毛で包まれてるがムキムキ感が半端無い
 ゲームとは違う生々しく、デカイ狼の顔と目が合った気がして思わずゴツイ男の背中に隠れていると

 自分を狙ったように、上から巨大な拳が振り下ろすように落ちてくる
(ひぃぃぃぃぃぃっ!何っじゃこりゃああああっ!)


 木渡を背負ったゴツイ男が身体を逸らせながら
振り下ろす狼男の拳を、左腕に嵌めた小さな盾で弾いた


 ゴオオォォォン!

 どう見ても木度の顔よりデカイ拳が地面にめり込み地響きが走る


「ナルミっ!とべぇっ!」


 その声に脊椎反射のように従ったゴツイ男が全力で横っ飛びすると
 紫色の髪をしたアイツが銃口を狼男に向け引き金を絞る

 地球の物とは少し違うデザインのライフルからは
 光の矢が走り、光の線が狼男の身体を突き抜けると直径10cmぐらいの風穴を開けた
 撃たれた狼男はそのまま倒れ…特に何も残さず消えていった


「よし、行くぞ…ナルミ、奴隷は無事だろうな?」
「…無事です」
 ゴツイ男が返事する


(こいつ…ナルミって言うのか…名前と見た目が全然似合ってないな)


「20階層は雑魚も結構強いし…難儀ですねえー」
 小判鮫っぽい奴が紫頭の男の右側をガードする様に歩きながらまた話し掛けていた

「だがこの辺まで来ないとスキル持ち中々出ないからな…最近は低階層だとスキル無しも確立上がったんじゃねえか?」
 いきなり木度をぶん殴った男は面倒くさそうでは有るが、受け答えはしっかりしている


「まぁ俺たちはリキッドさんに付いていけば奴隷の中ではダントツ幸せ何で!何処までも着いて行きますよ」

 もう1人の見た目30代のオッサンが小判鮫の反対側で、紫頭をガードするように歩き

「ふん、役に立つ間は良い思いもさせてやるさ、お前たちのやる気次第って事を忘れるなよ?」
 それにもやはり紫頭がキチンと返事を返している

(コイツはリキッドって呼ぶんだな……それにしてもナルミは無口なのか全然話さないな)

 別に男に抱きついて喜ぶ趣味は無いが
 巨木にしがみ付いてるような安定感で歩くより楽過ぎる、何より独りっきりの世界での体験が辛過ぎた

 寝たフリを続けるキドだが………背中に殺気が突き刺さる

 普段なら気付かない、だが長い時間異常な空間に居続けたせいか、暗闇の中で何かが身体を貫いてたあの時と似た感覚が背中に刺さる


 思わず振り返ると……


(げぇっ!さっさっきの奴よりデッケエ!)
 色も白くて身体もデカイ狼男が後ろに立っていた


 前を見ると誰も気付いてない
(どっどうする?どうすんだアレ!)


 白い狼男に必死に逃げてくれと祈るが、無駄だった


 トッ…トッ…


 デカイ図体の癖に音も立たず、軽やかに走りあっという間に距離が詰まる


「てっ敵だああああ!」


 キドの声に全員が振り返る


「白いウェアウルフ!ユニークか?!」


 ゴツイ男が盾役なのか正面から槍より短い棒に斧が付いた武器を構える
(馬鹿かあぁぁぁぁぁっ!あんなの無理に決まってんだろ!!逃げんだよ!)


 ナルミと呼ばれた男の背中からどうにか逃げようと暴れだす
 それに気を取られたナルミが一瞬の隙を見せる


 白いウェアウルフはそれを逃さず、一瞬で距離を詰めて地面を揺らす程の一撃をナルミの胸に撃ち抜いた

 どう見ても120kgはありそうなナルミと70kg近い木渡がその一撃で後ろに居た3人の隙間に吹き飛んで行く


 不意打ちを受けたナルミの胸には四つの穴が空き

 一撃で絶命した

 それはキドの胸まで貫通していた

(嘘だ……こんな……あっさり………あっありえねえ……)

 ナルミ達を葬った白いウェアウルフの拳はただの拳に戻っていた

 誰もナルミがアレで死んだとは思って居ない

「ナルミが戻るまで、お前らがガードしろ!防御優先だ!」

 紫頭のリキッドがそう言うと、両脇にいた小判鮫君と三枚目のおっさんが前に立つ

「ナルミィィィ!早く来い!」

 紫頭が叫ぶがナルミはもう動かない

 木渡は死体となった2人を上から見ていた

(は…はは…本当に死んじ待ったのか…………クソっ!クソクソクソクソクソクソクソーーーー!!)
 身体は無いが…自分が何かに引き寄せられ視界が2人から離れていく


(いっ嫌だ……死にたく無い………死にたく無いっ!!)
 上へと引き寄せられるのが止まった


 見下ろす視界の中でナルミの身体が赤いオーラに包まれていた
(死にたく…ないっ!)


 無我夢中…何でそうなったのか分からない、ただそれだけを渇望するキドは、吸い込まれる様にナルミの身体に引き寄せられ…同化した


 上から見下ろしてた筈が何故か地面が目の前にある


(なんだ、このゴツイ手は?)


「ナルミィィィ!早く起きろ!いつ迄寝てるつもりだ!さっさと来い!」

 その声に身体が勝手に反応し身体を起こす
 ズルリと背中に居た木渡の死体が地面に落ちた

 ナルミはそれを振り返る事も出来ずに走り出す

 胸に空いた筈の穴は消えている

 走りながらナルミと同化した木渡は勝手に動く身体について考えていた
(何でだっ!逃げ出したいのにアイツの言葉に全然逆らえない………隷属の紋章……なんだそれ?……これは……ナルミの記憶なのか?)

 同化した木渡の魂とナルミの身体がマッチしナルミの記憶が木渡の意識に入ってくる

 戦い方が、体の動かし方が、分かってくる

 木渡からすればこの世界はゲームの中のようにも見えるが、だが何もかもがリアル過ぎる

 直接意識に流れ込んでくるナルミの記憶と身体の反応は瞬く間にキドの支配下に治まっていた

 死んでも離さなさかった短いハルバードのような武器を握りしめ、視界に捉えた白いウェアウルフに狙いを定める

 キドより余裕でデカイ190cmは超えそうなナルミの身体が筋肉を盛り上げて地面を蹴ると、ヒュンッと前で戦う仲間の頭上を軽々と飛び越えて、眼下に白いウェアウルフの肩口に目掛けて腕を振り下ろす、ハルバードがしなり、振り下ろした腕に後から着いてくる鋭い斧が白い身体を引き裂いていく

 肉と骨が裂かれて砕ける感覚に悪寒が走り武器を離して地面に着地すると

「よし!跳べえ!ナルミっ!」

 またアイツの命令で身体が勝手に反応しヘッドスライディングの様に飛んでいく

 紫頭のリキッドが火線を確保した瞬間に引き金を絞り

 光の線が再び矢のように駆け抜け、白いウェアウルフの胸を貫く

「ウオオオオォォォォォ………」

 雄叫びを上げ身体を地面に落とし…やがて消え
 そして…毛皮のような何かが残った

(あれは……ウェアウルフの…素材って奴か)

 小判鮫君がそれを拾い、紫頭のリギットに手渡すと
 リキッドは肩から掛けたバックの中に入れていく
 どう見ても入る大きさじゃないのに吸い込まれていくみたいにスルスルと入っていく


(マジックバック……本当に異世界に来たんだ……で、俺は何でナルミと同化したんか?………これが俺のスキル…なのか?)


「ナルミィお前が吹っ飛んだ時は焦ったぜ」

 小判鮫君と三十路風のオッサンが近寄って来た

「俺は…大丈夫…」
「あぁぁあっ…奴隷君は死んじまったか…まぁ仕方ねーな」

 紫頭のリキッドが吹っ飛んだままの木渡の死体をみて悔しそうに言う

「まぁあの勢いで吹っ飛んでナルミと一緒に壁に当たれば…仕方ないですよ…」

 死因は全然違うが小判鮫の言葉に納得したようだ

「それで…どうします?もう一回階層主をヤリに行きますか?」

 オッサンが次の指示を確認すると

「……いや…攻略は1日1回だ、今日はもう帰ろう」

「そうですか…分かりました」

 出口に向かって歩き出すリキッドとその後ろをついていく2人
 そしてナルミと同化した木渡も大人しく着いていく

 ナルミは普段から話かけられない限りは自分からは滅多に話さない奴だった

 今の木渡にはそれが救いだった

 この世界の事、自分の立場、何故同化したのか?
 考えないと行けない事が山ほどあった

 歩く途中…自分の死体を横目に通り過ぎる

 胸に穴が空いてるがうつ伏せになっていてそこは見えない
 まるで眠っているみたいだった

 死体は放置される…勝手にダンジョンが吸収するからだと、ナルミの記憶が教えてくれた


(……俺はもうナルミだ…そう割り切るしか無い……)


 ナルミとなったキドは、異世界を歩き始めた
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