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序章
第0話 全ての原点。
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その空は厚い雲で覆われている。
今にも雨が降り出しそうだ。
とある山の頂上付近、その森の中にポツンとある家の前に彼らは居た。
一人は黒髪の少年、そしてもう一人は褐色の肌に銀髪の女性だった。
その女性の見た目は……常時であれば蠱惑的な美貌を醸し出していたであろう。
だが今は……血が通っていないかのように顔が青ざめており、その美貌も鳴りを潜めている。
理由は彼女の身体を見れば明らかだった。
その身体には傷や打撲痕が体中にあり、至るところから血が流れている。
特に酷いのは腹部に付いた大きな裂傷だ。
彼らが居る地を真っ赤に染め上げている。
彼女は地に横たわり、それを少年が抱えていた。
「どうやら……ワシは最期の瞬間をお前と共に過ごしたかったらしい。最期に……お主に会えてよかった。本当に……」
彼女は微かな声で呟く。
少年はその言葉に反応すると、それを否定するかのように全力で首を横に振った。
「嫌だ、俺を置いていかないでくれ!……もう一人は嫌なんだ!!」
もうこの世界で一人だなんて……俺はきっと耐えられない。
少年は悲痛な声でそう訴えるが、横たわる彼女は弱々しく首を横に振る。
「もう分かっておるじゃろう。……じゃから、お願いじゃから、聞いておくれ」
彼女の息はすでに絶え絶えだ。
彼は涙を出すまいと必死に堪えながら頷き、彼女の顔を見つめる。
「お主がこの世界に転生したこと……魔力を持っていないこと……ワシの弟子となり薬師となったこと……これまでお主に起こったこと、きっと全てに意味がある、ワシはそう信じておる」
彼女は愛おしいものを見つめるような目つきだった。
「じゃから……訓練を続けるのじゃ……薬師として……戦士として……そうすればいずれ来る運命にも……きっと抗える」
「*****がいてくれないと俺は強くなれない!……だから……ッ」
言葉の続きを止めるように彼女は少年の頬を撫でる。
「そんなことはない。……お主はワシなんかよりもはるかに優秀で真面目で……勤勉じゃ。2年も経てば……それこそ、ワシなんか足元にも及ばなくなるだろう」
少年はその言葉を否定するかのように首を振る。
だが彼女は真っすぐに彼を見つめる。
その目は彼の将来を疑っていない。
「もし……この世界の真実を知りたくなったら……ヒントをやろう。そのときは……『最悪の勇者』について調べるのじゃ……お主なら……この答えにたどり着くじゃろう」
そう言うと彼女は両手で少年の顔を持ち自身の顔の前まで移動させる。
「さぁ、目を見せておくれ……ワシはお主の瞳の色が好きなのじゃ……何者にも染まらぬ、漆黒の瞳が」
彼女の目を見つめる。
すると少年の頬を伝って落ちた雫が彼女の顔を濡らす。
彼女は少年の目を見ると安心したかのように息を吐く。
「あぁ……これまで長く生きてきたが……死ぬ間際になってこれほど命が惜しくなるとは……もう少し、少しだけでいいから……お主の成長を見たかったよ……」
涙が止めどなく流れていく。もう止めることは出来ない。
彼女はその涙を指で掬う。
「なんじゃ……その程度で泣くのか……****は……泣き虫、じゃのぅ」
そういう彼女の頬にも自身の目から零れた雫が伝っている。
どこかで……聞いた言葉。
彼女から感じる力が弱くなっていく。
このまま目を閉じるかと思われたが、何かを思い出したかのように唐突に目を見開いた。
「あぁ、そうじゃった……忘れておったよ……。今のこの時であればお主に……『力』を与えることができる」
「力……?」
少年が首を傾げると、彼女は何か呪文のような言葉をつぶやく。
「我……*****は……最愛の弟子、****を護る……剣とならん。願わくば……この世界で魔力を持たず生まれてしまった彼の……孤独の共有者とならんことを」
すると彼女の身体が淡い光に包まれていき、少しづつ透明になっていく。
少年は彼女の名を懸命に呼ぶ。
だが彼女は唯そんな彼を見ながら微笑むのみだった。
「少し早いが……成人の祝いとしよう。ワシはここで死ぬが……魂はお主と共にある。誰よりも強くなれ!我が最愛の弟子****よ!」
そう言い残すと同時に彼女の肉体が消えた。
その日、少年は最愛の家族を失った。
彼女を抱きしめていたはずの彼の腕の中には……美しい銀色の光を放つ一本の曲刀があった。
そして彼は唐突に理解する。
この剣は彼女に与えられた……彼の為だけの曲刀であることを。
彼は一人になった。……だが一人じゃなくなった。
彼は『*****』を抱きしめ、唯々泣いた。
雨が段々と強くなっていく。
彼の心模様を反映するかのように。
彼は心に、そして抱える剣に誓う。
「俺は……彼女の夢を……」
これがこの物語の主人公、シリウス・フォーマルハウトの原点である。
今にも雨が降り出しそうだ。
とある山の頂上付近、その森の中にポツンとある家の前に彼らは居た。
一人は黒髪の少年、そしてもう一人は褐色の肌に銀髪の女性だった。
その女性の見た目は……常時であれば蠱惑的な美貌を醸し出していたであろう。
だが今は……血が通っていないかのように顔が青ざめており、その美貌も鳴りを潜めている。
理由は彼女の身体を見れば明らかだった。
その身体には傷や打撲痕が体中にあり、至るところから血が流れている。
特に酷いのは腹部に付いた大きな裂傷だ。
彼らが居る地を真っ赤に染め上げている。
彼女は地に横たわり、それを少年が抱えていた。
「どうやら……ワシは最期の瞬間をお前と共に過ごしたかったらしい。最期に……お主に会えてよかった。本当に……」
彼女は微かな声で呟く。
少年はその言葉に反応すると、それを否定するかのように全力で首を横に振った。
「嫌だ、俺を置いていかないでくれ!……もう一人は嫌なんだ!!」
もうこの世界で一人だなんて……俺はきっと耐えられない。
少年は悲痛な声でそう訴えるが、横たわる彼女は弱々しく首を横に振る。
「もう分かっておるじゃろう。……じゃから、お願いじゃから、聞いておくれ」
彼女の息はすでに絶え絶えだ。
彼は涙を出すまいと必死に堪えながら頷き、彼女の顔を見つめる。
「お主がこの世界に転生したこと……魔力を持っていないこと……ワシの弟子となり薬師となったこと……これまでお主に起こったこと、きっと全てに意味がある、ワシはそう信じておる」
彼女は愛おしいものを見つめるような目つきだった。
「じゃから……訓練を続けるのじゃ……薬師として……戦士として……そうすればいずれ来る運命にも……きっと抗える」
「*****がいてくれないと俺は強くなれない!……だから……ッ」
言葉の続きを止めるように彼女は少年の頬を撫でる。
「そんなことはない。……お主はワシなんかよりもはるかに優秀で真面目で……勤勉じゃ。2年も経てば……それこそ、ワシなんか足元にも及ばなくなるだろう」
少年はその言葉を否定するかのように首を振る。
だが彼女は真っすぐに彼を見つめる。
その目は彼の将来を疑っていない。
「もし……この世界の真実を知りたくなったら……ヒントをやろう。そのときは……『最悪の勇者』について調べるのじゃ……お主なら……この答えにたどり着くじゃろう」
そう言うと彼女は両手で少年の顔を持ち自身の顔の前まで移動させる。
「さぁ、目を見せておくれ……ワシはお主の瞳の色が好きなのじゃ……何者にも染まらぬ、漆黒の瞳が」
彼女の目を見つめる。
すると少年の頬を伝って落ちた雫が彼女の顔を濡らす。
彼女は少年の目を見ると安心したかのように息を吐く。
「あぁ……これまで長く生きてきたが……死ぬ間際になってこれほど命が惜しくなるとは……もう少し、少しだけでいいから……お主の成長を見たかったよ……」
涙が止めどなく流れていく。もう止めることは出来ない。
彼女はその涙を指で掬う。
「なんじゃ……その程度で泣くのか……****は……泣き虫、じゃのぅ」
そういう彼女の頬にも自身の目から零れた雫が伝っている。
どこかで……聞いた言葉。
彼女から感じる力が弱くなっていく。
このまま目を閉じるかと思われたが、何かを思い出したかのように唐突に目を見開いた。
「あぁ、そうじゃった……忘れておったよ……。今のこの時であればお主に……『力』を与えることができる」
「力……?」
少年が首を傾げると、彼女は何か呪文のような言葉をつぶやく。
「我……*****は……最愛の弟子、****を護る……剣とならん。願わくば……この世界で魔力を持たず生まれてしまった彼の……孤独の共有者とならんことを」
すると彼女の身体が淡い光に包まれていき、少しづつ透明になっていく。
少年は彼女の名を懸命に呼ぶ。
だが彼女は唯そんな彼を見ながら微笑むのみだった。
「少し早いが……成人の祝いとしよう。ワシはここで死ぬが……魂はお主と共にある。誰よりも強くなれ!我が最愛の弟子****よ!」
そう言い残すと同時に彼女の肉体が消えた。
その日、少年は最愛の家族を失った。
彼女を抱きしめていたはずの彼の腕の中には……美しい銀色の光を放つ一本の曲刀があった。
そして彼は唐突に理解する。
この剣は彼女に与えられた……彼の為だけの曲刀であることを。
彼は一人になった。……だが一人じゃなくなった。
彼は『*****』を抱きしめ、唯々泣いた。
雨が段々と強くなっていく。
彼の心模様を反映するかのように。
彼は心に、そして抱える剣に誓う。
「俺は……彼女の夢を……」
これがこの物語の主人公、シリウス・フォーマルハウトの原点である。
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