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師弟編
第5話 また会う日まで。
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その後俺はティアドラに腕を引かれ孤児院へと向かう。
今日の街掃除の仕事は免除にしてもらうようにシスターにお願いしてくれるとのことだ。
正直、街掃除も身体のトレーニングになってるから出来れば行きたい、彼女にそういうと「生意気だ」とか言われてデコピンされた。
貴女のデコピンはもはやデコピンの威力じゃありません。
気付けばゴボーにやられた怪我は、彼女の回復薬で完全に治っていた。
俺は孤児院の扉を開く。
中では孤児院のシスターことマリーが俺達が食べた昼食の皿洗いをしていた。
扉を開けた音が聞こえたのかこちらを振りかえる。
「おや、シリウス。忘れ物かい?……ってティアドラじゃないか!久しぶりだねぇ、もう来てくれたのかい?」
マリーはティアドラに気づくと喜色をあらわにする。
「あぁ、魔力のない少年というのが気になったのでな。……それにしてもお主、また一段と貫禄がでてきたのぅ」
マリーはハハハと笑いながらテーブルの椅子を引く。
ティアドラはその椅子に腰を掛ける。
そこから二人は互いの思い出話に花を咲かせ始めた。
俺は二人の話を小耳にはさみながら隅っこの椅子に座り虚空を眺めていた。
……俺空気になってない?
気を引こうとしておもむろに筋トレを始めてみるが、彼女たちは俺のことなど眼中にないようだった。
……悲しいです。
気付けば夕方になっていた。
相変わらずティアドラはマリーと親し気に話している。
話の内容から察するにどうやらシスターが敏腕魔術師だったというのは本当らしい。
ってかティアドラって見た目すごく若そうだけど一体何歳なんだろう。
シスターと思い出話ができるってことは結構年取ってそうだけど。
スクワットしながらそんなことを考えていると、彼女はおもむろに俺の方を見る。
「いやぁ、今日は人と久しぶりにたくさん喋ったな……そういえばマリー、あれ、貰うぞ」
ティアドラは俺の方に親指を向ける。
……ん?俺は自身の後ろを見る。
後ろには俺達孤児が清掃に使う箒があった。
あんなのが欲しいのか。
俺は気を利かせて箒を取りティアドラに渡す。
「ん?……なんじゃこれは。お主流の忠誠の証かの?」
首を傾げながら箒を受け取る。
「ん?忠誠?……これが欲しかったんだろ、掃除でもするのか?」
ティアドラは俺から受け取った箒をまじまじと見る。
しばらく経った後何かに気づいたのかため息をつく。
「はぁ……ワシが言ったのはお主のことじゃ。先ほどのことをもう忘れたのか、ワシと強くなる方法を見つけるのじゃろう?ならワシのところに来い、そのほうが手っ取り早い」
先ほどとは仰いますがティアドラさん。
貴女シスターと話し始めて何時間経ったと思っているんですか?
もう夕方なんですけど。
ってか思い出話の中で貴女召使が欲しいとか、ちょうどいいのが見つかったとか言ってましたよね。
それ、僕のことじゃないのですか?
「なんじゃ、いやなのか?」
すねたように頬を膨らます。
「いやじゃないけど……」
「なら決まりじゃ!さっそく準備をするぞい!」
強引な人だ……。
俺はそう思いながらも自分が必要とされていることに、少しだけ喜びを感じていた。
俺が荷物の準備をしていると、街掃除を終えた孤児達が次々と帰ってくる。
シスターは俺をボコボコにしていたゴボーが目に入ると、「教育だ!」とかいいながら目を吊り上げて奴をボコボコにしていた。
弱肉強食って怖いですね。
日も沈みかけている。
俺は大した量ではない自分の荷物をまとめて、孤児院の前に立っていた。
「では行くか……の」
俺はティアドラと共に歩き出そうとする。
「孤児院の者に別れの挨拶はしなくてよいのか?」
「あぁ、いいんだ」
孤児達にはサボり魔と思われており、あまりよく思われていない。
シスターや先生達も……俺のこと、気味悪がってたしな。
歩を進めようとすると後ろから唐突に声が聞こえた。
「シリウス!……私にくらい挨拶してくれてもいいんじゃないのかい?」
俺は後ろを振り返る。
そこには恰幅のいい女性が両手を腰に当て、立っていた。
「シスター……」
マリーはゆっくりと俺に近づき、頭に手を乗せるとガシガシと乱暴に撫で始めた。
そのあと軽々と俺を持ち上げると力いっぱい抱きしめてきた。
「本当にもうしわけない。私じゃどうすることも出来なかった。あなたの力のこと、あなたの周りの環境のこと、知っていながら何も変えることは出来なかった。本当に、ごめんなさい。私にこんなことをいう資格はないかもしれないが……これからのあなたに、数多の幸福があらんことを」
俺は過去を思い出す。
魔法に憧憬を抱く俺に何度も魔法を見せてくれたシスター。
魔力が発現しない俺を目一杯慰めてくれたシスター。
風邪で寝込んだ時は付きっ切りで看病してくれたシスター。
……そして今ここで、俺を抱きしめてくれている。
「シスター、ありがとう。俺、この孤児院に来てよかった」
貴女に会えてと言いたかったのだが、それはすごく、恥ずかしかった。
俺の言葉にマリーの力が緩む。
ふと彼女の顔をみると涙の跡が見えた。
「何泣いてるんだい、バカだねぇ。ティアドラにこき使われて……元気で暮らすんだよ。……いつでも帰っておいで」
どうやら俺も泣いているらしい。
今日は俺、泣かされてばかりだ。
俺は少しだけ、家族というものの温かさを知ったのだ。
また会う日まで、シスター。
今日の街掃除の仕事は免除にしてもらうようにシスターにお願いしてくれるとのことだ。
正直、街掃除も身体のトレーニングになってるから出来れば行きたい、彼女にそういうと「生意気だ」とか言われてデコピンされた。
貴女のデコピンはもはやデコピンの威力じゃありません。
気付けばゴボーにやられた怪我は、彼女の回復薬で完全に治っていた。
俺は孤児院の扉を開く。
中では孤児院のシスターことマリーが俺達が食べた昼食の皿洗いをしていた。
扉を開けた音が聞こえたのかこちらを振りかえる。
「おや、シリウス。忘れ物かい?……ってティアドラじゃないか!久しぶりだねぇ、もう来てくれたのかい?」
マリーはティアドラに気づくと喜色をあらわにする。
「あぁ、魔力のない少年というのが気になったのでな。……それにしてもお主、また一段と貫禄がでてきたのぅ」
マリーはハハハと笑いながらテーブルの椅子を引く。
ティアドラはその椅子に腰を掛ける。
そこから二人は互いの思い出話に花を咲かせ始めた。
俺は二人の話を小耳にはさみながら隅っこの椅子に座り虚空を眺めていた。
……俺空気になってない?
気を引こうとしておもむろに筋トレを始めてみるが、彼女たちは俺のことなど眼中にないようだった。
……悲しいです。
気付けば夕方になっていた。
相変わらずティアドラはマリーと親し気に話している。
話の内容から察するにどうやらシスターが敏腕魔術師だったというのは本当らしい。
ってかティアドラって見た目すごく若そうだけど一体何歳なんだろう。
シスターと思い出話ができるってことは結構年取ってそうだけど。
スクワットしながらそんなことを考えていると、彼女はおもむろに俺の方を見る。
「いやぁ、今日は人と久しぶりにたくさん喋ったな……そういえばマリー、あれ、貰うぞ」
ティアドラは俺の方に親指を向ける。
……ん?俺は自身の後ろを見る。
後ろには俺達孤児が清掃に使う箒があった。
あんなのが欲しいのか。
俺は気を利かせて箒を取りティアドラに渡す。
「ん?……なんじゃこれは。お主流の忠誠の証かの?」
首を傾げながら箒を受け取る。
「ん?忠誠?……これが欲しかったんだろ、掃除でもするのか?」
ティアドラは俺から受け取った箒をまじまじと見る。
しばらく経った後何かに気づいたのかため息をつく。
「はぁ……ワシが言ったのはお主のことじゃ。先ほどのことをもう忘れたのか、ワシと強くなる方法を見つけるのじゃろう?ならワシのところに来い、そのほうが手っ取り早い」
先ほどとは仰いますがティアドラさん。
貴女シスターと話し始めて何時間経ったと思っているんですか?
もう夕方なんですけど。
ってか思い出話の中で貴女召使が欲しいとか、ちょうどいいのが見つかったとか言ってましたよね。
それ、僕のことじゃないのですか?
「なんじゃ、いやなのか?」
すねたように頬を膨らます。
「いやじゃないけど……」
「なら決まりじゃ!さっそく準備をするぞい!」
強引な人だ……。
俺はそう思いながらも自分が必要とされていることに、少しだけ喜びを感じていた。
俺が荷物の準備をしていると、街掃除を終えた孤児達が次々と帰ってくる。
シスターは俺をボコボコにしていたゴボーが目に入ると、「教育だ!」とかいいながら目を吊り上げて奴をボコボコにしていた。
弱肉強食って怖いですね。
日も沈みかけている。
俺は大した量ではない自分の荷物をまとめて、孤児院の前に立っていた。
「では行くか……の」
俺はティアドラと共に歩き出そうとする。
「孤児院の者に別れの挨拶はしなくてよいのか?」
「あぁ、いいんだ」
孤児達にはサボり魔と思われており、あまりよく思われていない。
シスターや先生達も……俺のこと、気味悪がってたしな。
歩を進めようとすると後ろから唐突に声が聞こえた。
「シリウス!……私にくらい挨拶してくれてもいいんじゃないのかい?」
俺は後ろを振り返る。
そこには恰幅のいい女性が両手を腰に当て、立っていた。
「シスター……」
マリーはゆっくりと俺に近づき、頭に手を乗せるとガシガシと乱暴に撫で始めた。
そのあと軽々と俺を持ち上げると力いっぱい抱きしめてきた。
「本当にもうしわけない。私じゃどうすることも出来なかった。あなたの力のこと、あなたの周りの環境のこと、知っていながら何も変えることは出来なかった。本当に、ごめんなさい。私にこんなことをいう資格はないかもしれないが……これからのあなたに、数多の幸福があらんことを」
俺は過去を思い出す。
魔法に憧憬を抱く俺に何度も魔法を見せてくれたシスター。
魔力が発現しない俺を目一杯慰めてくれたシスター。
風邪で寝込んだ時は付きっ切りで看病してくれたシスター。
……そして今ここで、俺を抱きしめてくれている。
「シスター、ありがとう。俺、この孤児院に来てよかった」
貴女に会えてと言いたかったのだが、それはすごく、恥ずかしかった。
俺の言葉にマリーの力が緩む。
ふと彼女の顔をみると涙の跡が見えた。
「何泣いてるんだい、バカだねぇ。ティアドラにこき使われて……元気で暮らすんだよ。……いつでも帰っておいで」
どうやら俺も泣いているらしい。
今日は俺、泣かされてばかりだ。
俺は少しだけ、家族というものの温かさを知ったのだ。
また会う日まで、シスター。
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