転生しようとしたら魔族に邪魔されて加護が受けられませんでした。おかげで魔力がありません。

ライゼノ

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師弟編

第50話 竜王対勇者。

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ティアドラは遺跡の入り口があった場所にたどり着く。
現在その入り口は巨大な岩で覆われており、中に入ることは出来ない。
昔、彼女が塞いだのだ。
誰もここに入ることが出来ない様に。
だがもう無意味だろう。
勇者達が来る以上、遅かれ早かれこの場所は露見するだろう。
ならば……竜族の王として、彼女は待ち構えよう。


彼女は岩に手を触れ、魔法を発動させる。
すると岩は赤熱していき、徐々に融解していく。
ドロドロとなった岩は彼女の手にも付着しているが、気にも留めていない。
竜族であるが故に熱に対する耐性が高いのだ。
気付けば巨大な岩はもう原型をとどめておらず、その後ろに遺跡へと続く洞窟が出現する。
彼女は「こんなものか」と呟くと手を軽く振り、手に着いた溶岩を払うと洞窟の奥へと進むのだった。



遺跡の広間へたどり着いた。

辺りに一切の音はなく、コツコツと只彼女の足音だけが響き渡る。
しばらく歩き、遺跡奥にある大きな扉にたどり着くと彼女はその扉にそっと触れた。


この奥にはこの世界の成り立ちそのものの歴史が記されている。
だが……開ける方法は彼女にも分からない。


「あやつは……何と言っていたかのぅ」


かつてこの遺跡を造った友が遺跡に鍵をかけた。
笑いながら彼女に「開ける方法が分かるか?」と問いかけてきたが……最後まで分からなかった。
友はその答えを言わずに逝ってしまったのだ。
たしか……ヒントは聞いたような気がする。


友がこの世を去って以来、彼女はここを護り続けている。
何故かは分からない。だがそうしなければならない気がした。


ティアドラは扉から手を離すと扉前の階段に腰かける。



さぁ……いつでも来い。


彼女は王者の風格を漂わせ、来る者を待ち続けた。






どのくらい時間が経っただろうか。
数時間とも……数分とも思える。
この遺跡内に彼女以外の音が混じり始める。
その音は時間が経つごとに大きくなり、それが会話の音であることが分かる。


「来たか……」


彼女がそう呟くと遺跡に4人の若者が姿を現した。


「……ん?誰だお前?ここで何をしている」


先頭を歩く赤髪の男が問いかける。
確か西国ウルストの勇者、ベネッド・ファフニール。


「それはこちらの台詞じゃな。お主らこそ……このような場所に何の用じゃ?」


ティアドラは妖艶な笑みを浮かべながら手に顎を乗せる。
平素であれば見惚れる程の笑みであったが、この状況では相手に気味の悪さしか与えない。


「ベネッド、気を付けるんだ。こんな場所にいるなんて普通の人じゃない。……たぶん魔族だ。それも相当に、強い」


ベネッドを制し、錫杖をこちらへ向ける金髪の男。
南国ミスーサの勇者、アリト・アルレーシャ。
ティアドラの底知れぬ魔力を感知しているのであろう。


「あなた……一体何者なのよ……」


警戒心を露わにして斧を構える緑髪の女性。
北国ノキタスの勇者、エルナ・コルネフィオス。
その手は少し震えている。



ティアドラは立ち上がり、その雰囲気をガラリと変化させる。


「貴様ら……自分の立場という物が分かっておらぬのか?誰の前だと思っている。白銀竜『ティアドラ』が問うておるのじゃ……何をしに来た!女神の犬どもが!」


彼女の声は遺跡中に響き渡る。
その声に反射的に彼らは武器を構え、散開する。


「アイツが白銀竜かよ……もっとデカイと思ってたぜ」


ベネッドは大盾を構えて槍を持つ茶髪の大男に目配せする。
東国アラズマの勇者、サルガス・ラスタバン。
彼はそれに頷くと皆の先頭に出る……が。


「待つんだ、エルナ!」


エルナが皆の態勢が整う前にティアドラに突貫する。

目にもとまらぬその速さは何かの魔法を発動させているようだった。瞬く間に彼女に接近する。

小柄な体形に似合わない巨大な斧を振りかぶり、彼女に向かって力任せに振り下ろす。

鋭い金属音と衝撃、普通の人であれば何もすることが出来ずに絶命するであろう。

だが彼女の前に立つのは竜族の王だ。


「まだまだ打ち込みが足らぬ、な」


何処かから取り出した曲刀で容易く受け止められてしまう。
エルナは周りの言葉が耳に入っていない様で、目を見開き、殺意をむき出しにしながら斧を振り回し続ける。


「アトリア様を馬鹿にしたアトリア様を馬鹿にしたアトリア様を馬鹿にした……」


どうやら彼女は女神を熱狂的なまでに崇拝しているようだった。
彼女の様子に気づいたティアドラはため息をつく。


「愚かな……正に操り人形じゃのう……」


彼女の言葉はエルナを更に激高させる。


「貴様ぁ!!」


怒りと共に斧を振るう勢いは増していく。
だがその攻撃は酷く単調なものになっていた。
このような未熟な心でワシを殺そうなどと……。


「……つまらぬ」


しばらくの間、彼女の攻撃を気だるげに受け止めているだけだったティアドラは、そう吐き捨てるとエルナの攻撃を弾き、隙だらけとなったその身体に曲刀を振り下ろす。
エルナは思わず身を強張らせるが……待っても自身の身体が両断されることはなかった。


「オレの後ろに下がれ!少しは頭を冷やせ、このバカが!」


大盾で膝をつきながらもなんとかティアドラの攻撃を防いだサルガスが悪態をつく。
このままこの男も殺してしまおうかと思ったティアドラだが何かに気づき、彼から距離を取る。
すると彼女がいた場所の上から光の槍が降り注ぐ。


「これは厄介な相手だね……」


額に浮かんだ冷や汗を腕で拭うアリト。
彼の魔法で生まれた一瞬の隙に、ベネッドはエルナを安全な場所まで引きずる。


「女神も言ってただろう!生半可な力じゃコイツは殺せないと!態勢を整えるぞ!」


ベネッドの言葉で彼らは陣形を組みなおす。
先頭にサルガス、その後ろにベネッドとエルナが横に並び、後列がアリトの並びだ。


「ふふふふふ。ワシを殺す気なのか……。ガキどもが面白いことを言う。かかってくるがいい!白銀竜ティアドラに歯向かったものがどうなるか、その身体に刻み込んでやろう!」


こうして竜王と勇者達の戦いが始まる。
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