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旅立ち編
第58話 魔界から来た鬼人族の娘。そして。
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「どうしてって……貴方、自分の言っていることが分かっているの?人でありながら魔族の手助けをしようなんて……。もし、私が魔族だとして……怖くはないの?」
彼女は警戒の眼差しを向ける。
それだけ俺の言っていることがおかしいというのだろうか。
「怖い……か。世間一般だとそうなんだろうけど……俺、魔族に育てられたからさ。……魔族だからとか、人だからとか……そういうの、よく分からないんだ」
そう言いながら俺はプエルの頭を撫でる。
彼は気持ちよさそうに目を細めていた。
「魔族に……育てられた?」
彼女はまだもや驚愕している。
先ほどから怖がったり笑ったり驚いたり……忙しい人だ。
「あぁ、その人はもう……いないんだけど、俺はその人……魔族である師匠に色々と教えてもらった。戦う技術や知識はもちろん何より……」
師匠と共に過ごした日々を思い出し、言葉を止める。
「……何より?」
彼女はその先を促すように尋ねてきた。
俺は腰に刺さった曲刀の柄を優しく撫でる。
その動作が気になったのか彼女もチラリと曲刀に目をやり、不思議そうに首を傾げる。
「人と魔族の違いなんて……見た目ぐらいしか変わらないんだってこと。魔族だって腹が減って腹の虫を鳴らすこともあれば、満腹になれば眠くもなる。オヤツを捨てられてへこむこともあれば、新しい発見をして小躍りする程喜んだりもする。……本質は同じなんだよ。人も魔族も。この世界に生きる同じ生き物だ。……なら、おかしいとは思わないか?……同じ生き物なのに……これまでずっと殺し合いをしてきたことが。……俺はそんな世界を、変えたい」
俺が想いを告げると彼女は訝し気な顔をする。
「そんなことが本当に出来ると思っているの?この世界が今まで紡いできた……『歴史』そのものと戦うというの?今まで誰にも成し得なかった、そのことに」
絶対に出来っこない。彼女の目はそう言っているような気がした。
だが俺は諦めたりはしない。
「あぁ、師匠は俺になら出来るといっていた。ならば俺は俺の信じる師に誓う。俺は……彼女が望んだ……人と魔族が共存できる世界を作り上げる」
鞘から曲刀を抜き出し、天に掲げる。
これは偽りのない、俺の本心だ。
「ありえない、こんなの異端よ、異端。そんなこと出来っこない……だけど……もし、出来るのなら……」
彼女はしばらくの間首を横に振りながら何かを呟いていたようだったが、やがて意を決したように口を開く。
「あの……私……」
彼女は何かの魔法を唱える。すると頭に光に包まれる。それが薄くなっていくと……見覚えのある2本の角が生えていた。
「実は魔族……鬼人族なんです。騙すようなことをしてしまってごめんなさい。魔族だと知られるのが……怖かった」
彼女は申し訳なさそうに頭を下げる。
騙してたつもりだったのだろうが……。
「……やっぱりそうじゃないかとは思ってたよ」
俺はなんとなく察していた。
「え?気づいてたの?」
彼女は意外そうな顔をしていたが……。
「だって人にしては重「ゴンッ!!!」」
頭が割れる程の衝撃。
何かと思い彼女の方を見ると、それが彼女の拳であったことに気づく。
その顔には青筋が立っている。どうやら相当に怒っているようだ。
「こ……これはこの防具!防具が重いのよ!!私は人よりも軽いわ!……たぶん」
衝撃で目玉が飛び出るかと思った。
ティアドラに勝るとも劣らない力の持ち主の様だ。
彼女もよく俺の頭をしばいていたな。
俺は痛む頭を摩りながら、なんだか懐かしい気持ちになっていた。
「ご、ごめんなさい」
まだ殴られた理由はよく分かっていないがとりあえず謝っておく。
こういう時はこうしておけば大体上手くいく。
すると幾分か機嫌を戻したようで、彼女は腕を組み、こちらを睨みつける。
「ふん、この調子で人と魔族が共存できる世界なんて作ることが出来るのかしら」
女性のことも理解できていないのに。
彼女はそう締めくくる。
だが俺に迷いはない。
「出来るよ」
断言する俺に彼女は睨むのを止め、困惑する。
「な、なんでそんなに自信満々なのよ」
「だって君は俺の言葉を信じて……自分から魔族だって打ち明けてくれただろ?人と魔族が互いに理解し、信頼することができるということを……君自身が証明してくれた。だから、必ず出来る」
真っすぐ彼女の目を見つめる。
彼女の顔は赤くなり、恥ずかしくなったのか視線を逸らす。
「そ、それは……そうなのかもしれないけど」
小さな声で呟く彼女。
俺は曲刀を鞘にしまい、彼女へ手を差し出す。
「俺の名はシリウス・フォーマルハウト。この山で薬師をしている。……君は?」
差し出した手をしばらくじっと見つめる。
そして更に顔を赤くしながら彼女は手を差し出し、握手をする。
「私は……イブキ・ドレッドノート。魔界から来た鬼人族で……『前魔王』の娘よ」
…………え?
彼女は警戒の眼差しを向ける。
それだけ俺の言っていることがおかしいというのだろうか。
「怖い……か。世間一般だとそうなんだろうけど……俺、魔族に育てられたからさ。……魔族だからとか、人だからとか……そういうの、よく分からないんだ」
そう言いながら俺はプエルの頭を撫でる。
彼は気持ちよさそうに目を細めていた。
「魔族に……育てられた?」
彼女はまだもや驚愕している。
先ほどから怖がったり笑ったり驚いたり……忙しい人だ。
「あぁ、その人はもう……いないんだけど、俺はその人……魔族である師匠に色々と教えてもらった。戦う技術や知識はもちろん何より……」
師匠と共に過ごした日々を思い出し、言葉を止める。
「……何より?」
彼女はその先を促すように尋ねてきた。
俺は腰に刺さった曲刀の柄を優しく撫でる。
その動作が気になったのか彼女もチラリと曲刀に目をやり、不思議そうに首を傾げる。
「人と魔族の違いなんて……見た目ぐらいしか変わらないんだってこと。魔族だって腹が減って腹の虫を鳴らすこともあれば、満腹になれば眠くもなる。オヤツを捨てられてへこむこともあれば、新しい発見をして小躍りする程喜んだりもする。……本質は同じなんだよ。人も魔族も。この世界に生きる同じ生き物だ。……なら、おかしいとは思わないか?……同じ生き物なのに……これまでずっと殺し合いをしてきたことが。……俺はそんな世界を、変えたい」
俺が想いを告げると彼女は訝し気な顔をする。
「そんなことが本当に出来ると思っているの?この世界が今まで紡いできた……『歴史』そのものと戦うというの?今まで誰にも成し得なかった、そのことに」
絶対に出来っこない。彼女の目はそう言っているような気がした。
だが俺は諦めたりはしない。
「あぁ、師匠は俺になら出来るといっていた。ならば俺は俺の信じる師に誓う。俺は……彼女が望んだ……人と魔族が共存できる世界を作り上げる」
鞘から曲刀を抜き出し、天に掲げる。
これは偽りのない、俺の本心だ。
「ありえない、こんなの異端よ、異端。そんなこと出来っこない……だけど……もし、出来るのなら……」
彼女はしばらくの間首を横に振りながら何かを呟いていたようだったが、やがて意を決したように口を開く。
「あの……私……」
彼女は何かの魔法を唱える。すると頭に光に包まれる。それが薄くなっていくと……見覚えのある2本の角が生えていた。
「実は魔族……鬼人族なんです。騙すようなことをしてしまってごめんなさい。魔族だと知られるのが……怖かった」
彼女は申し訳なさそうに頭を下げる。
騙してたつもりだったのだろうが……。
「……やっぱりそうじゃないかとは思ってたよ」
俺はなんとなく察していた。
「え?気づいてたの?」
彼女は意外そうな顔をしていたが……。
「だって人にしては重「ゴンッ!!!」」
頭が割れる程の衝撃。
何かと思い彼女の方を見ると、それが彼女の拳であったことに気づく。
その顔には青筋が立っている。どうやら相当に怒っているようだ。
「こ……これはこの防具!防具が重いのよ!!私は人よりも軽いわ!……たぶん」
衝撃で目玉が飛び出るかと思った。
ティアドラに勝るとも劣らない力の持ち主の様だ。
彼女もよく俺の頭をしばいていたな。
俺は痛む頭を摩りながら、なんだか懐かしい気持ちになっていた。
「ご、ごめんなさい」
まだ殴られた理由はよく分かっていないがとりあえず謝っておく。
こういう時はこうしておけば大体上手くいく。
すると幾分か機嫌を戻したようで、彼女は腕を組み、こちらを睨みつける。
「ふん、この調子で人と魔族が共存できる世界なんて作ることが出来るのかしら」
女性のことも理解できていないのに。
彼女はそう締めくくる。
だが俺に迷いはない。
「出来るよ」
断言する俺に彼女は睨むのを止め、困惑する。
「な、なんでそんなに自信満々なのよ」
「だって君は俺の言葉を信じて……自分から魔族だって打ち明けてくれただろ?人と魔族が互いに理解し、信頼することができるということを……君自身が証明してくれた。だから、必ず出来る」
真っすぐ彼女の目を見つめる。
彼女の顔は赤くなり、恥ずかしくなったのか視線を逸らす。
「そ、それは……そうなのかもしれないけど」
小さな声で呟く彼女。
俺は曲刀を鞘にしまい、彼女へ手を差し出す。
「俺の名はシリウス・フォーマルハウト。この山で薬師をしている。……君は?」
差し出した手をしばらくじっと見つめる。
そして更に顔を赤くしながら彼女は手を差し出し、握手をする。
「私は……イブキ・ドレッドノート。魔界から来た鬼人族で……『前魔王』の娘よ」
…………え?
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