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旅立ち編
第70話 世知辛い世の中だということを実感しました。
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俺達は店を出て商店街の方へと向かう。
ニット帽の効果はあったようで先ほどよりは人目も減ってきている。
とりあえずは大丈夫なようだ。
イブキも心なしか安心しているように見えた。
そうこうしている間に商店街のある通りへとたどり着く。
そこは左右に様々な商店が立ち並び人で溢れかえっている。
各店の前にはその店の従業員と思しき人たちが立っており、道行く人に声を掛けている。
余りの喧騒に若干気圧されつつ、俺達はこそこそとその通りを歩く。
「お、あの人なんか良さそうじゃないか?」
俺は少し離れた所で馬車に荷物を運びこんでいる商人を指さす。
恐らくこれから何処かへ発つのであろう。
それがウルスト方面だといいのだが。
イブキの方を見ると若干顔色を悪くしながら頷いた。
どうやら少し人に酔ったらしい。
俺はその商人の元へ向かい、声を掛ける。
「こんにちは!これから何処へ向かうんですか?」
俺の声に反応した商人は手を止め、額ににじむ汗を腕で拭きながらこちらを振り返った。
その商人の見た目は……低い身長に小太りの身体、それでいて鼻の下には立派なチョビ髭が蓄えられている、如何にもゲームの世界の商人といった容貌であった。
「ん?……これからウルストの教会都市セイファートまで行商に行くのじゃが……何か用か?」
彼はどことなく俺達を警戒しているようだった。
それもそうだろう。
この世界の治安は前の世界……日本と比べて良いものとはいえない。
街中では監視カメラのようなものがないため空き巣や強盗といった被害も当然のようにあるし、街道を行けば盗賊に襲われるリスクもある。
そんな中でも遠方へ行商に行くというのは、襲われるリスク以上の見返りがあるからなのだろう。
俺達の魂胆もそこにある。
商人らが望むのは……安全な旅路。
「ちょうどよかった!実は俺達もウルストへ行きたいんです。……よかったら同行させてもらえないでしょうか?結構腕も立つので護衛も出来ます!」
彼らの安全な旅路に必要な物、それは強力な護衛だ。
俺達は馬車の護衛を名目にウルストまで連れて行って貰おうと考えていたのだ。
正直、勝算はかなりある……はずだった。
「ふむふむ。……たしかに冒険者ギルドの方へ護衛の依頼は出しておるが……お主らも冒険者か?それならば冒険者ギルドカードを見せてくれ」
そう言って彼は俺達に向かって手を出す。
冒険者ギルドカード……。
なんだか懐かしい響きだ。
……何処にあったっけ?……鞄?
俺は慌てて鞄を漁り、奥底から少し汚れたギルドカードを取り出す。
2年前にルギウスで使用して以来、ずっと鞄の奥にしまっていたのだ。
それを商人に見せる。
「……ランクG!?……悪いが出直してくれ。子供の遊びには付き合っておれん。……お嬢ちゃんもランクGか?」
彼はイブキにも尋ねるが、彼女はどういうことか分かっていないようで首を傾げる。
「そんな物私持っていないけど……」
すると商人はこれ見よがしに大きなため息をつく。
「私の出している護衛のランクはCだ。ランクCになったら……その時はお願いするよ」
そう言うと再び荷物を積み込む作業を始めた。
俺は声をかけるタイミングを伺うが、彼はもうこちらを見向きもしない。
俺達は諦めてそこから離れることにした。
だけど……大丈夫、他の人にも声かければ……きっと!
俺は気を持ち直し、他の商人にも声をかけることにする。
俗にいう下手な鉄砲撃ちゃ当たる理論だ。
金に困っている商人が依頼料をケチって雇ってくれるかもしれない。
そう思っていた時期も……ありました。
「あぁ?ランクG?だれがお前になんて頼むかよ!」
「アンタ、面白いこと言うわね。一度頭の中を医者に診てもらうことをお勧めするわ。良い医者、紹介しましょうか?」
「ランクG……で護衛……。フッ……・・アハハハハハハ!!」
もうかれこれ10人目ぐらいだろうか。
俺は半ば半泣きの状態で声を掛け、そしていつも通り断られる。
護衛の話だけでなく、こちらから金銭を差し出して同行させてもらおうとも試みたが……法外な金額を要求された。俺の全財産でも全く足りない。
「ねぇ・・もう止めて、他の手法を探しましょう?貴方は……頑張ったわよ」
背後からイブキが俺の服の裾を引きながら憐憫の籠った声をかけてくる。
俺はゆっくりと頷くとスゴスゴと引き下がり、近くに合った噴水のある公園のベンチに腰掛けた。
少し考えればすぐに分かる。
彼ら商人達が求めている護衛、それは『身分が証明出来る』こと、かつ『戦闘の腕が立つ』ことなのだ。
身分が証明できても弱くては護衛としての意味がない。
例え極めて高い戦闘能力を有していたとしても、何処の誰だか分からなければ逆に護衛に襲われる可能性もある。
彼らは商人だ。
相手を見極める必要がある。
そんな彼らにとって冒険者ギルドカードという物は良い判断材料なのだろう。
そのランクが低い……そもそも持っていないなんていう俺達なんて門前払いされて当然だ。
さて……どうしたものか。
俺は大きなため息をつく。
そんな俺を見ながらイブキは開いた。
「その……『冒険者ギルドカード』って何なの?みんなそれを見て貴方のことを笑って……なんか今さらになって腹が立ってきたわ。……とっちめてこようかしら」
彼女は腕を組んでぷりぷりしている。
俺は乾いた笑いをしながら彼女を制する。
「ははは。そんなもんだよ、世間にとっての俺なんて。冒険者ギルドカードってのはね……」
俺はイブキに冒険者ギルドについての説明をする。
先日彼女にはアトラスの説明をする際に冒険者ギルドの成り立ちの説明はしていたため、今回はもっと詳細な話……ランク付けやどのような依頼を受けるのことが出来るか等を話した。
説明の途中から気にはなっていたのだが……何故だか彼女はソワソワしていた。
気になって彼女の顔を見ると……その目はキラキラと輝いていたのだ。
「……という訳なんだけど……どうかしたか?」
説明を終えた俺は、不審に思い彼女に尋ねる。
すると彼女はおもむろに口を開いた。
「私も冒険者ギルドに登録するわ!そしてランクを上げてさっきの奴らを見返してやればいいのよ!そしたらお金も入るし、護衛も出来る。いいこと尽くめじゃない!」
どうやら彼女は俺の話を聞いて冒険者に憧憬を抱いたらしい。
気持ちは凄く分かる……分かるが。
「そんなこと言うけど……ランクCまで上がるのにどれほど時間がかかるか分からないぞ?それに早くお父さん探さなくていいのか?」
彼女の目的は前魔王である父を探すこと。こんなところで油を売っているわけにはいかないのではないだろうか。
「そんなことと言いますがシリウスさん、貴方ここにいつまで滞在するつもりなのかしら?滞在するにもお金はいるでしょう?お金は減るし、いろんな商人に嘲笑されて心もすり減る……正直、そんな貴方なんて見てられないわ!依頼を受けたほうがよっぽど健全よ!……お父様も多分許してくれる……うん」
確かにそうかもしれないが……いいのか?前魔王の娘さん。
「あ!ここで依頼を受けてたらお父様の情報が入ってくるかもしれないし!」
そんな取ってつけたような言い訳を聞きながら腕を組み考える。
商人に同行出来ないのなら……このまま徒歩でウルストまで行くことになるのだろうか。
……掛かる日数や移動時の食費等を考えると現実的ではないような気がする。
ならば彼女の言う通りしばらくはここを拠点にした方がいいかもしれない。
「ねぇ……やっぱり、ダメ……かしら」
彼女が諦めの混じった声で呟く。
その目は酷く悲しそうだった。
俺は慌てて否定する。
「いや、イブキの言う通りしばらくはこの街で依頼を受けながら情報収集しようか!」
そう言うと彼女の顔がパッと明るくなる。
こうして俺達は思い立ったが吉日と言わんばかりに冒険者ギルドへと向かうのだった。
ニット帽の効果はあったようで先ほどよりは人目も減ってきている。
とりあえずは大丈夫なようだ。
イブキも心なしか安心しているように見えた。
そうこうしている間に商店街のある通りへとたどり着く。
そこは左右に様々な商店が立ち並び人で溢れかえっている。
各店の前にはその店の従業員と思しき人たちが立っており、道行く人に声を掛けている。
余りの喧騒に若干気圧されつつ、俺達はこそこそとその通りを歩く。
「お、あの人なんか良さそうじゃないか?」
俺は少し離れた所で馬車に荷物を運びこんでいる商人を指さす。
恐らくこれから何処かへ発つのであろう。
それがウルスト方面だといいのだが。
イブキの方を見ると若干顔色を悪くしながら頷いた。
どうやら少し人に酔ったらしい。
俺はその商人の元へ向かい、声を掛ける。
「こんにちは!これから何処へ向かうんですか?」
俺の声に反応した商人は手を止め、額ににじむ汗を腕で拭きながらこちらを振り返った。
その商人の見た目は……低い身長に小太りの身体、それでいて鼻の下には立派なチョビ髭が蓄えられている、如何にもゲームの世界の商人といった容貌であった。
「ん?……これからウルストの教会都市セイファートまで行商に行くのじゃが……何か用か?」
彼はどことなく俺達を警戒しているようだった。
それもそうだろう。
この世界の治安は前の世界……日本と比べて良いものとはいえない。
街中では監視カメラのようなものがないため空き巣や強盗といった被害も当然のようにあるし、街道を行けば盗賊に襲われるリスクもある。
そんな中でも遠方へ行商に行くというのは、襲われるリスク以上の見返りがあるからなのだろう。
俺達の魂胆もそこにある。
商人らが望むのは……安全な旅路。
「ちょうどよかった!実は俺達もウルストへ行きたいんです。……よかったら同行させてもらえないでしょうか?結構腕も立つので護衛も出来ます!」
彼らの安全な旅路に必要な物、それは強力な護衛だ。
俺達は馬車の護衛を名目にウルストまで連れて行って貰おうと考えていたのだ。
正直、勝算はかなりある……はずだった。
「ふむふむ。……たしかに冒険者ギルドの方へ護衛の依頼は出しておるが……お主らも冒険者か?それならば冒険者ギルドカードを見せてくれ」
そう言って彼は俺達に向かって手を出す。
冒険者ギルドカード……。
なんだか懐かしい響きだ。
……何処にあったっけ?……鞄?
俺は慌てて鞄を漁り、奥底から少し汚れたギルドカードを取り出す。
2年前にルギウスで使用して以来、ずっと鞄の奥にしまっていたのだ。
それを商人に見せる。
「……ランクG!?……悪いが出直してくれ。子供の遊びには付き合っておれん。……お嬢ちゃんもランクGか?」
彼はイブキにも尋ねるが、彼女はどういうことか分かっていないようで首を傾げる。
「そんな物私持っていないけど……」
すると商人はこれ見よがしに大きなため息をつく。
「私の出している護衛のランクはCだ。ランクCになったら……その時はお願いするよ」
そう言うと再び荷物を積み込む作業を始めた。
俺は声をかけるタイミングを伺うが、彼はもうこちらを見向きもしない。
俺達は諦めてそこから離れることにした。
だけど……大丈夫、他の人にも声かければ……きっと!
俺は気を持ち直し、他の商人にも声をかけることにする。
俗にいう下手な鉄砲撃ちゃ当たる理論だ。
金に困っている商人が依頼料をケチって雇ってくれるかもしれない。
そう思っていた時期も……ありました。
「あぁ?ランクG?だれがお前になんて頼むかよ!」
「アンタ、面白いこと言うわね。一度頭の中を医者に診てもらうことをお勧めするわ。良い医者、紹介しましょうか?」
「ランクG……で護衛……。フッ……・・アハハハハハハ!!」
もうかれこれ10人目ぐらいだろうか。
俺は半ば半泣きの状態で声を掛け、そしていつも通り断られる。
護衛の話だけでなく、こちらから金銭を差し出して同行させてもらおうとも試みたが……法外な金額を要求された。俺の全財産でも全く足りない。
「ねぇ・・もう止めて、他の手法を探しましょう?貴方は……頑張ったわよ」
背後からイブキが俺の服の裾を引きながら憐憫の籠った声をかけてくる。
俺はゆっくりと頷くとスゴスゴと引き下がり、近くに合った噴水のある公園のベンチに腰掛けた。
少し考えればすぐに分かる。
彼ら商人達が求めている護衛、それは『身分が証明出来る』こと、かつ『戦闘の腕が立つ』ことなのだ。
身分が証明できても弱くては護衛としての意味がない。
例え極めて高い戦闘能力を有していたとしても、何処の誰だか分からなければ逆に護衛に襲われる可能性もある。
彼らは商人だ。
相手を見極める必要がある。
そんな彼らにとって冒険者ギルドカードという物は良い判断材料なのだろう。
そのランクが低い……そもそも持っていないなんていう俺達なんて門前払いされて当然だ。
さて……どうしたものか。
俺は大きなため息をつく。
そんな俺を見ながらイブキは開いた。
「その……『冒険者ギルドカード』って何なの?みんなそれを見て貴方のことを笑って……なんか今さらになって腹が立ってきたわ。……とっちめてこようかしら」
彼女は腕を組んでぷりぷりしている。
俺は乾いた笑いをしながら彼女を制する。
「ははは。そんなもんだよ、世間にとっての俺なんて。冒険者ギルドカードってのはね……」
俺はイブキに冒険者ギルドについての説明をする。
先日彼女にはアトラスの説明をする際に冒険者ギルドの成り立ちの説明はしていたため、今回はもっと詳細な話……ランク付けやどのような依頼を受けるのことが出来るか等を話した。
説明の途中から気にはなっていたのだが……何故だか彼女はソワソワしていた。
気になって彼女の顔を見ると……その目はキラキラと輝いていたのだ。
「……という訳なんだけど……どうかしたか?」
説明を終えた俺は、不審に思い彼女に尋ねる。
すると彼女はおもむろに口を開いた。
「私も冒険者ギルドに登録するわ!そしてランクを上げてさっきの奴らを見返してやればいいのよ!そしたらお金も入るし、護衛も出来る。いいこと尽くめじゃない!」
どうやら彼女は俺の話を聞いて冒険者に憧憬を抱いたらしい。
気持ちは凄く分かる……分かるが。
「そんなこと言うけど……ランクCまで上がるのにどれほど時間がかかるか分からないぞ?それに早くお父さん探さなくていいのか?」
彼女の目的は前魔王である父を探すこと。こんなところで油を売っているわけにはいかないのではないだろうか。
「そんなことと言いますがシリウスさん、貴方ここにいつまで滞在するつもりなのかしら?滞在するにもお金はいるでしょう?お金は減るし、いろんな商人に嘲笑されて心もすり減る……正直、そんな貴方なんて見てられないわ!依頼を受けたほうがよっぽど健全よ!……お父様も多分許してくれる……うん」
確かにそうかもしれないが……いいのか?前魔王の娘さん。
「あ!ここで依頼を受けてたらお父様の情報が入ってくるかもしれないし!」
そんな取ってつけたような言い訳を聞きながら腕を組み考える。
商人に同行出来ないのなら……このまま徒歩でウルストまで行くことになるのだろうか。
……掛かる日数や移動時の食費等を考えると現実的ではないような気がする。
ならば彼女の言う通りしばらくはここを拠点にした方がいいかもしれない。
「ねぇ……やっぱり、ダメ……かしら」
彼女が諦めの混じった声で呟く。
その目は酷く悲しそうだった。
俺は慌てて否定する。
「いや、イブキの言う通りしばらくはこの街で依頼を受けながら情報収集しようか!」
そう言うと彼女の顔がパッと明るくなる。
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