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本編
3 ※
男の後を追って歩き出した時、胸が重力に引っ張られる感覚がした。
「ぁ」
自分がブラを着けていないことに思い当たる。
慌てて両腕で自分を抱き締めるように胸を隠した。
みのりは元から乳首が常に出ている体だ。
薄らとだが、服の上からでも乳首の位置が分かる程に。
もしかして見られたかと思うと恥ずかしくて泣けてくる。
(見られた?破廉恥だと思われた?)
(…もう本当に最悪…先にブラを召喚しとけば良かった)
一人だから平気だと思っていた自分が恨めしくなった。
(どうしよう…)
男の後ろをトボトボとついていきながらも必死に考えるが、良案は浮かんで来ない。
洞窟の目の前で男が止まった。
早くしろとばかりに、クイッと首で洞窟を示される。
みのりは胸が見えないように早足に男の前を通り、洞窟の中に入っていく。
その様子を男は眼で追っていた。
洞窟の中はひんやりとしていた。
外は段々と気温が上がり初夏のような陽気になっているが、中は涼しく心地良い。
外から見た時は奥の方が暗くなっていて中の広さは分からなかったが、天井は高く奥行きはそれほど広くはない。
中は入り口よりも幅が広くなっており、大体10畳程のスペースがあった。
壁は岩で出来ており、触ってみると湿った感じはなく冷たく固い。
床も壁と同じく岩で覆われているが、何だか自然に出来たとは思えないくらい平らだった。
マイナスといえば湿気が多いところか。
(もしかして女神様がこの洞窟作ってくれたのかな?)
(洞窟で生活とかちょっとワクワクする)
アウトドアなど経験が無く、洞窟に住むと言う状況に楽しくなる。
(しばらくの住居にはちょうど良さそう)
せっかく『召喚』が使えるのだからなるべく快適に過ごせるようにしよう、と必要な物を考える。
(まずは寝床かな、直置きは寒いからすのこを全体に敷いて、カーペットとかラグで足元を暖かくしよう)
『召喚』ページを開き、
(『なるべく目の細かくて頑丈なすのこ』出ろ)
(この洞窟がちょうど埋まるくらいの数が欲しい)
とあわせて念じる。
すると、ぽんっという効果音と共に洞窟の中央辺りの空間が歪み、要望通りのすのこが重なって出現した。
(良かった、ちゃんと召喚できた)
(あの(多分)狼の獣人さんは望んでないのに出てきて、完全にイレギュラーだったもんな)
拗らせているコミュ障なみのりには、いきなりの獣人(それも美男)との邂逅に先程まで心臓が破裂しそうだった。
すのこは一枚一枚それなりの重さがあったが、なんとか洞窟の中に敷き詰める。
思ったよりも時間は掛からなかった。
(次は厚いカーペットとベッドと…それから姿見!)
召喚で何でも出せるのならば、気になっていた自分の顔が見てみたい。
早速姿見を召喚すると、目の前に等身大のそれが現れた。
「これが私…」
姿見には平凡な顔をした女が写っている。
近づいて良く見る。
一重は実は肉に埋もれていたからで、奥二重だったようだ。
でも大きいわけではない、アーモンド型だ。
鼻は大きいでも小さいでもなく、評すると普通。
唇はピンク色で血色が良いおちょぼ口。
決して美少女ではないが、親しみのある平凡な顔だった。
スッと自分の顔だと受け入れられた。
「こんな顔してたんだね」
ちゃんとプロデュース出来なかった前世の体を思う。
彗星が衝突する前に置いてきてしまった体。
(絶対に大切にする、もう後悔しない)
と心に決めた。
それから住まいづくりに戻って、カーペットとベッドを出して配置する。
ベッドはここら辺に出て欲しいと念じると、指定した場所にちゃんと出てきてくれた。
「よし、良いかな…あ、そうだった」
最後にブラを手元に召喚する。
今のうちにブラを着けてしまおうと、洞窟の入り口を伺いながら入り口から死角になっている壁際に寄った。
外の男の気配を気にするが、何も音がしないから大丈夫だろう。
貫頭衣の裾をたくし上げて少し前屈みになり、なるべく前は隠しながらブラを装着しようとする。
お尻は丸見えだし、前も裾が上がってしまっているためちゃんと隠れているかは分からない。
(はやく、はやく)
入り口のすぐ近くに男がいるのを意識すると、焦って手元が震えてしまうためなかなかホックを止められなかった。
(う~、新品だからやりづらい)
「おい、…」
急に声がしてバッと顔を上げる。
男が洞窟の入り口からこちらを見ていた。
サーと血の気がひく。
「ぁ、ぁの…」
何か弁解をしようとするが、ハクハクと口は開閉するだけだ。
咄嗟に蹲り体と顔を男から隠した。
少しの間が空いた後、
「あぁぁああ、くそっっ」
という男の声が聞こえた。
「っ」
みのりはその声にビクつく。
どうしようどうしようと息を殺して存在を消す事だけに全力を注ぐ。
「なんなんだ、誘ってるのか…?」
ぶつぶつと男は呟き、ガッガッと大股でみのりに近づいていく。
「ひっ」
腕を掴まれ引き上げられると同時に、思わず男の顔をみのりは見てしまった。
彼の黄金色の瞳はギラついてこちらを見ていた。
まるで獲物を狩る狼の様だ。
「っ」
文字通りに食べられると思い、自然と体が固まる。
「ベッドも用意して、期待してたのか?」
嘲る様に男が笑う。
俵担ぎにされ、大股にベッドへと運ばれた。
「あ」
抵抗もろくにできないまま、投げ出された体の上に男が覆いかぶさってくる。
大きな節くれだった手が服の裾から入り、恥骨から腹部をなぞり上げ胸を揉んできた。
「や、まって、、んぁ」
いきなり与えられた刺激に妙な声が出そうになって、慌てて口を覆う。
初めて男に触られる羞恥と恐怖で視界がぼやけてくる。
こんな行動をする彼が信じられなくて、涙の溜まった目で見上げる。
男と視線がぶつかった。
「その顔は男を誘うだけだって分かってるのか?」
「…ん…んん…ふ…ぅ♡」
「こんな匂いさせて乳首勃たせて、上目遣いの可愛い顔してパイパン見せつけて……他の男にもやってるのか?」
怒ったようなドスの効いた声で話しながら、男は首筋に顔を埋めて匂いを嗅いでくる。
それだけでは終わらずに舐め上げられ、耳の中を熱く濡れた舌で嬲られた。
「…ん♡…んぁ♡…」
男からは腰にくるようないい匂いがして、それを嗅ぐと頭が酩酊する様にくらくらとする。
「…ん!?…んん♡…んぅ♡…」
胸をやわやわと揉んでいた手が、乳首に触れてきた。
さすさす♡こりこり♡カリカリ♡とされると眦から涙が出てしまうくらい気持ち良い。
「…んん♡…ふぁ♡…んぅ♡♡…」
ゾクゾクとした刺激が背筋を這い上がり、もっとと乳首を突き出すように背を逸らしてしまう。
足の間がじゅんっ♡と切なくて、膝をすりすりと擦り合わせる。
「…ん~♡……んんぅ♡」
「みのり、手をどけろ」
イヤイヤと首を振る。
すると、男が両手を頭上に縫い付けてしまった。
「ぁあ♡……んぅ!」
抑えていた喘ぎ声が出てしまうが、続く喘ぎは重ねられた唇が吸い取る。
ちゅ、ちゅ、ちゅぷ、
「…ん…ふ…んん…」
初めこそバードキスだったそれは段々と深くなり、彼の分厚い舌が口内を縦横無尽に荒らしてくる頃には、鼻で酸素を取り込むのに必死で抵抗も碌にできなかった。
舌を吸い上げられ擦られると、ゾクゾクとして下腹部に熱が集まる。
口の端からどちらのものか分からない唾液が溢れた。
最後に舌をちゅ~と吸われながら離されると、銀の糸がお互いの舌を繋いでふつりと途中で断ち切れた。
はふはふ♡と息継ぎをしながら、離れていく美しい顔をぼーっと眺める。
「はぁ…どこもかしこも柔らかいな」
より色が濃くなった黄金色の瞳に浮かぶのが情欲だと、今更ながらにみのりは気付いた。
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