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スピンオフ「デュインズ」
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「さて、ダンジョンには用はないし、とっとと帰ろうか。ギルドに戻るから、ユージーンの口のやつはとってあげて」
「煩いのですが、構いませんか?」
「大丈夫、大丈夫」
「承知しました」
ユージーンがうるさいのは仕方ないが、口を塞いだままギルドに帰るのはいただけない。これでも貴族で、お坊ちゃまだ。
ユージーンがアリス達の素性をバラそうとしたところで、誰も信じないだろう。あの魔王よりも強い存在だ、などと言われても「ダンジョンに閉じ込められて気が触れてしまった」などと思われるに違いない。
それに本当に鬱陶しいのならば、魔術で黙らせてしまえばいいのだ。
「ふ、フンッ!」
「気に食わない~っ」
「食べちゃ駄目だよ、ベル」
「まずそうですもん、食べませんよ」
アリスは〈転移門〉を展開する。もはや真面目に階段を歩く理由などないのだ。
ロッティとネルは一度見ていたため、動揺することはなかった。しかし二人が初めて〈転移門〉を見たその間に、ぐっすりと眠っていたユージーンは大袈裟とも呼べるほどの反応だった。
「な、なんだあれは!?」
「あれは〈転移門〉だ。あれはSランクだから――ここで言う高位魔術、となるのか?」
「こっ、高位だと!? 無詠唱でか!?」
「アリス様は日常生活で使われるから、詠唱とか関係ないんだよね~」
「……私たちも最初は驚きましたよ」
ロッティが呆れながら、ユージーンに同意する。
ユージーンなんぞと同じ気持ちになんてなりたくなかったが、これに限っては仕方の無いことだ。
レベル200を超えた魔王など、ロッティの今までの経験が何だったのか問いただしたくなるほどの規格外さだ。
「ベルはこのままついてくるんでしょ?」
「はい。恐れながら同行させて頂きたく……」
「いいよ。コソコソしてないで一緒においで」
「ありがとうございます!」
一同は〈転移門〉をくぐり、ダンジョンの一階層目へと戻った。
あとはギルドへ向かい、報告を上げるだけだ。
「行方不明のパーティーを連れてきました」
「ま、まあ……! 本当に……!? ありがとうございました! た、ただ今報酬をご用意しますね!」
アリスからの報告を受けた受付スタッフの表情は、奇跡を見たような顔だ。彼らが潜ったダンジョンを知っていれば、当然だろう。
それに依頼を受けたのは、冒険者になったばかりの〝初心者〟だ。ミイラ取りになるつもりで送り出していたのだろう。
慌ててカウンターの裏へと走り、報酬の用意をし始めた。
「ところで、大賢者に会うにはどうしたらいいの?」
「それは……予定を取り付けなければいけないはずです。あの方はお忙しいので」
「へー、めんどくさいんだね」
「姉上、自宅への侵入を試みてはいかがですか?」
「それは最終手段だね」
「その際はぜひ、あたしに!」
「ありがと、ベル」
至極当然のように犯罪に走ろうとするアリスらを見て、ロッティは恐怖を通り越して呆れていた。つくづく、この人物達が人間ではないと痛感する。
「で、どうやって予約すればいいの?」
「それは……一般人は……」
「もったいぶらないでよ」
「はっ、早くても三ヶ月、大抵は一年待ちなんです」
「はあ?」
「そいつは金持ちだろう。そいつが予約したら繰り上げられるか?」
こんな男でも、ユージーン・フィッツクラレンツは伯爵家である。三男という微妙なポジションではあるものの、ただの冒険者のロッティやネルと比べれば権力はある。
一般人が申し込むよりかは、その恩恵によって優先度が上がるだろう。
「……フンッ」
「立場を理解していないようですね」
「面倒だから殺すか、幻惑で傀儡にでもしよっか」
「流石です、姉上」
「ほい」
「……ッ!?」
唯一の問題といえば、ユージーン本人がその気ではないということ。
だがアリスにかかれば、やる気なんて存在しないようなもの。たかが人間がレベル200の魔王に抗うなんて、不可能である。
アリスが息をするように魔術をかければ、ユージーンは一瞬にして金縛りにかかる。ビタリと体が動かなくなれば、心なしか表情がこわばった。
「お待たせしました! こちら、報酬です!」
「どうも~」
「あら……? そちらの男性、顔色が……」
「ああ、疲れが出ちゃったみたいです~。ダンジョンに閉じ込められれば、そうなりますよ。心配なんでこのまま家まで送るつもりです」
「そうだったんですね。ではお願いいたします」
冒険者ではよくあることなのか、スタッフはそれ以上口を出さなかった。アリスとしても好都合だ。
それにもともとユージーンの性格はよく知っていたのだろう。無事に帰ってきただけで、ギルドにとっても十分だ。
スタッフはニコリと笑顔を向けて、アリスたちを送り出した。
アリスは報酬を得て、パーティーメンバーを連れてギルドから出ていく。
ユージーンは硬直したままだったが、子供のように大粒の涙を流しながら、鼻水もたれ流している。金縛りのため拭えないということを加味しても、あまりにも汚い。
顔中の全てから液体が溢れ出ているその姿は、いつものプライドの高いお坊っちゃまとは大違いだ。
「ふぅーっ、うぅー、うぶぶ、げほっ、ウー!」
「は? 何言っている? 汚いぞ」
「ゴメンゴメン。会話能力も封じてあるんだ。うるさい子だったし……」
「人気のない場所に行きましょうか」
「だね~」
一同はその足で、ギルドの近くの人気のない場所にまで移動する。暗がりで大通りから隠れているその場所は、何が起こってもわからないだろう。
表通りは冒険者で賑わっているため、多少騒いだところで見つかりはしない。
アリスは周囲を確認して、ユージーンの金縛りを解除した。
すると次の瞬間、ユージーンはすぐさま地に伏せた。ピッシリと両手の指を揃えて地面につけて、頭をこすりつけるように低くした。
ガタガタブルブルと震えているものの、あまりにも美しい土下座がそこにはあった。
「おねがいじます、ごろざないでェー!! なんでもずるっ、おねがいじまずぅうぅ!!」
「うわっ、本当にうるさいな……」
「クッ、ふ、フククク……! 醜いですねぇ、愛らしいですよぉ、さっきよりずっと美味しそうです。アリス様グッジョブですっ♡」
「う、うん。ありがとう。…………食べちゃ駄目だよ?」
「食べませんって!」
「た、食べる!? ひぃい! すみません、すみません!」
ユージーンはベルのお眼鏡にかなうような美青年ではないものの、ユージーンの漏らした感情は〝美食家〟たる彼女を唸らせるには十分だ。
感情を抜き取られた人間の味気なさを知っている以上、ユージーンの激しい恐怖や絶望は、素晴らしいスパイスだ。
ゴクリとよだれを飲み込めば、アリスも怪訝そうに睨む。せっかく手に入れて築き上げた道を、食べられては困るのだ。
ユージーンもユージーンで、今更ながらアリス達が人ならざるものだと把握したようで。アリスが発する一言一句を、疑わずプライドに左右されずに受け入れている。
アリスのいう「食べる」という言葉も、ユージーン自身を食らうことだとすぐに察知した。
というよりも、ベルから捕食者たるギラついた笑みを向けられれば、誰だってそう思うだろう。
「食べない食べない」
「母上の言うとおりだ。僕達の命令に素直に従ってくれるなら、何もしない。さっきまでの態度が続くようなら、傀儡として使い、死のうが関係ない。僕らが勇者や英雄では無いこと、よく理解しろ」
リーベはそう言い終えると、チラリとロッティとネルを一瞥する。
彼女達にも言っているつもりだったので、「お前達も理解しているな?」と目で訴える。
ロッティとネルはリーベと視線がかち合うと、ビクリと体を震わせた。そして即座に言いたいことを汲み取って、首がちぎれるのではないかというくらいに縦に振った。
「あ、あの、僕、すぐにッ! だっ、大賢者様との予約を取り付けます!」
「おー、話が分かって助かるよ~」
「は、はいっ! 失礼しますっ!」
ユージーンは素早く、そして深々と頭を下げた。行動一つ一つに焦りを感じられて、早々にこの場所から去りたいという気持ちがひしひしと伝わる。
自身がなにも抵抗の出来ぬまま死ぬかも知れない、という事実を突きつけられたからだろう。
今まであれだけ驕り高ぶっていた彼だったが、その慢心も圧倒的なレベル差の前では粉々に砕け散ってしまったのだ。
プライドが高くても、結局は自分の命が最優先なのは当たり前のことだ。
素早く最敬礼をしたユージーンは、そのまま逃げるように立ち去って行った。
すぐに次の行動に移ってくれるという点では褒め称えたいが、ベルとリーベにとっては「アリスをもてなしもせず放置した金持ち」という印象が残る。
「あ、行っちゃった……」
「雇用主のあたしたちを放置ですか」
「まあまあ」
「――あ、あの」
「!」
「私たちは……」
今度、恐る恐る聞いてきたのは、ロッティだ。ネルも不安そうに見つめてくる。
アリスらと契約を結んだ手前、もう〝ユージーンの護衛〟とだけで動くことは不可能である。
金銭が絡んでいる以上、ユージーンの人命は優先度が高いものの、自身らの命も関わるアリスたちとの契約はもっと優先される。
ここで勝手な行動を取ることは、彼女達にとっては難しい。
「暫くは待機。仕事しててもいいよ。言伝はギルドにするから、毎日立ち寄って」
「わかりました!」
「そ、それじゃあ失礼しますっ」
ユージーンほどではなかったが、ロッティとネルもそそくさとその場をあとにした。
誰もがエンプティのような態度を取れと言うわけではないが、ここまで怯えられてしまうとアリスも少々寂しいのである。
しかしそんなことで長いことくよくよしているわけでもない。とっとと気分を切り替えて、この長い空き時間をどう消費するか考える。
頭を回転させようとしたところ、先程手に入った金銭がチャリンと音を立てた。武器や防具、アイテムなどを買う必要のないアリスたちにとっては、潤沢と言っていいほどの資金だ。
多少のつまみ食いならば、たいした出費でもないほどに。
「お金が入ったし、ご飯にでもしよーよ」
「母上の思う通りに」
「異世界ご飯ですかー! 楽しみですねっ」
「うんうん」
そうしてアリスたちは、異世界の料理を堪能したのであった。
「煩いのですが、構いませんか?」
「大丈夫、大丈夫」
「承知しました」
ユージーンがうるさいのは仕方ないが、口を塞いだままギルドに帰るのはいただけない。これでも貴族で、お坊ちゃまだ。
ユージーンがアリス達の素性をバラそうとしたところで、誰も信じないだろう。あの魔王よりも強い存在だ、などと言われても「ダンジョンに閉じ込められて気が触れてしまった」などと思われるに違いない。
それに本当に鬱陶しいのならば、魔術で黙らせてしまえばいいのだ。
「ふ、フンッ!」
「気に食わない~っ」
「食べちゃ駄目だよ、ベル」
「まずそうですもん、食べませんよ」
アリスは〈転移門〉を展開する。もはや真面目に階段を歩く理由などないのだ。
ロッティとネルは一度見ていたため、動揺することはなかった。しかし二人が初めて〈転移門〉を見たその間に、ぐっすりと眠っていたユージーンは大袈裟とも呼べるほどの反応だった。
「な、なんだあれは!?」
「あれは〈転移門〉だ。あれはSランクだから――ここで言う高位魔術、となるのか?」
「こっ、高位だと!? 無詠唱でか!?」
「アリス様は日常生活で使われるから、詠唱とか関係ないんだよね~」
「……私たちも最初は驚きましたよ」
ロッティが呆れながら、ユージーンに同意する。
ユージーンなんぞと同じ気持ちになんてなりたくなかったが、これに限っては仕方の無いことだ。
レベル200を超えた魔王など、ロッティの今までの経験が何だったのか問いただしたくなるほどの規格外さだ。
「ベルはこのままついてくるんでしょ?」
「はい。恐れながら同行させて頂きたく……」
「いいよ。コソコソしてないで一緒においで」
「ありがとうございます!」
一同は〈転移門〉をくぐり、ダンジョンの一階層目へと戻った。
あとはギルドへ向かい、報告を上げるだけだ。
「行方不明のパーティーを連れてきました」
「ま、まあ……! 本当に……!? ありがとうございました! た、ただ今報酬をご用意しますね!」
アリスからの報告を受けた受付スタッフの表情は、奇跡を見たような顔だ。彼らが潜ったダンジョンを知っていれば、当然だろう。
それに依頼を受けたのは、冒険者になったばかりの〝初心者〟だ。ミイラ取りになるつもりで送り出していたのだろう。
慌ててカウンターの裏へと走り、報酬の用意をし始めた。
「ところで、大賢者に会うにはどうしたらいいの?」
「それは……予定を取り付けなければいけないはずです。あの方はお忙しいので」
「へー、めんどくさいんだね」
「姉上、自宅への侵入を試みてはいかがですか?」
「それは最終手段だね」
「その際はぜひ、あたしに!」
「ありがと、ベル」
至極当然のように犯罪に走ろうとするアリスらを見て、ロッティは恐怖を通り越して呆れていた。つくづく、この人物達が人間ではないと痛感する。
「で、どうやって予約すればいいの?」
「それは……一般人は……」
「もったいぶらないでよ」
「はっ、早くても三ヶ月、大抵は一年待ちなんです」
「はあ?」
「そいつは金持ちだろう。そいつが予約したら繰り上げられるか?」
こんな男でも、ユージーン・フィッツクラレンツは伯爵家である。三男という微妙なポジションではあるものの、ただの冒険者のロッティやネルと比べれば権力はある。
一般人が申し込むよりかは、その恩恵によって優先度が上がるだろう。
「……フンッ」
「立場を理解していないようですね」
「面倒だから殺すか、幻惑で傀儡にでもしよっか」
「流石です、姉上」
「ほい」
「……ッ!?」
唯一の問題といえば、ユージーン本人がその気ではないということ。
だがアリスにかかれば、やる気なんて存在しないようなもの。たかが人間がレベル200の魔王に抗うなんて、不可能である。
アリスが息をするように魔術をかければ、ユージーンは一瞬にして金縛りにかかる。ビタリと体が動かなくなれば、心なしか表情がこわばった。
「お待たせしました! こちら、報酬です!」
「どうも~」
「あら……? そちらの男性、顔色が……」
「ああ、疲れが出ちゃったみたいです~。ダンジョンに閉じ込められれば、そうなりますよ。心配なんでこのまま家まで送るつもりです」
「そうだったんですね。ではお願いいたします」
冒険者ではよくあることなのか、スタッフはそれ以上口を出さなかった。アリスとしても好都合だ。
それにもともとユージーンの性格はよく知っていたのだろう。無事に帰ってきただけで、ギルドにとっても十分だ。
スタッフはニコリと笑顔を向けて、アリスたちを送り出した。
アリスは報酬を得て、パーティーメンバーを連れてギルドから出ていく。
ユージーンは硬直したままだったが、子供のように大粒の涙を流しながら、鼻水もたれ流している。金縛りのため拭えないということを加味しても、あまりにも汚い。
顔中の全てから液体が溢れ出ているその姿は、いつものプライドの高いお坊っちゃまとは大違いだ。
「ふぅーっ、うぅー、うぶぶ、げほっ、ウー!」
「は? 何言っている? 汚いぞ」
「ゴメンゴメン。会話能力も封じてあるんだ。うるさい子だったし……」
「人気のない場所に行きましょうか」
「だね~」
一同はその足で、ギルドの近くの人気のない場所にまで移動する。暗がりで大通りから隠れているその場所は、何が起こってもわからないだろう。
表通りは冒険者で賑わっているため、多少騒いだところで見つかりはしない。
アリスは周囲を確認して、ユージーンの金縛りを解除した。
すると次の瞬間、ユージーンはすぐさま地に伏せた。ピッシリと両手の指を揃えて地面につけて、頭をこすりつけるように低くした。
ガタガタブルブルと震えているものの、あまりにも美しい土下座がそこにはあった。
「おねがいじます、ごろざないでェー!! なんでもずるっ、おねがいじまずぅうぅ!!」
「うわっ、本当にうるさいな……」
「クッ、ふ、フククク……! 醜いですねぇ、愛らしいですよぉ、さっきよりずっと美味しそうです。アリス様グッジョブですっ♡」
「う、うん。ありがとう。…………食べちゃ駄目だよ?」
「食べませんって!」
「た、食べる!? ひぃい! すみません、すみません!」
ユージーンはベルのお眼鏡にかなうような美青年ではないものの、ユージーンの漏らした感情は〝美食家〟たる彼女を唸らせるには十分だ。
感情を抜き取られた人間の味気なさを知っている以上、ユージーンの激しい恐怖や絶望は、素晴らしいスパイスだ。
ゴクリとよだれを飲み込めば、アリスも怪訝そうに睨む。せっかく手に入れて築き上げた道を、食べられては困るのだ。
ユージーンもユージーンで、今更ながらアリス達が人ならざるものだと把握したようで。アリスが発する一言一句を、疑わずプライドに左右されずに受け入れている。
アリスのいう「食べる」という言葉も、ユージーン自身を食らうことだとすぐに察知した。
というよりも、ベルから捕食者たるギラついた笑みを向けられれば、誰だってそう思うだろう。
「食べない食べない」
「母上の言うとおりだ。僕達の命令に素直に従ってくれるなら、何もしない。さっきまでの態度が続くようなら、傀儡として使い、死のうが関係ない。僕らが勇者や英雄では無いこと、よく理解しろ」
リーベはそう言い終えると、チラリとロッティとネルを一瞥する。
彼女達にも言っているつもりだったので、「お前達も理解しているな?」と目で訴える。
ロッティとネルはリーベと視線がかち合うと、ビクリと体を震わせた。そして即座に言いたいことを汲み取って、首がちぎれるのではないかというくらいに縦に振った。
「あ、あの、僕、すぐにッ! だっ、大賢者様との予約を取り付けます!」
「おー、話が分かって助かるよ~」
「は、はいっ! 失礼しますっ!」
ユージーンは素早く、そして深々と頭を下げた。行動一つ一つに焦りを感じられて、早々にこの場所から去りたいという気持ちがひしひしと伝わる。
自身がなにも抵抗の出来ぬまま死ぬかも知れない、という事実を突きつけられたからだろう。
今まであれだけ驕り高ぶっていた彼だったが、その慢心も圧倒的なレベル差の前では粉々に砕け散ってしまったのだ。
プライドが高くても、結局は自分の命が最優先なのは当たり前のことだ。
素早く最敬礼をしたユージーンは、そのまま逃げるように立ち去って行った。
すぐに次の行動に移ってくれるという点では褒め称えたいが、ベルとリーベにとっては「アリスをもてなしもせず放置した金持ち」という印象が残る。
「あ、行っちゃった……」
「雇用主のあたしたちを放置ですか」
「まあまあ」
「――あ、あの」
「!」
「私たちは……」
今度、恐る恐る聞いてきたのは、ロッティだ。ネルも不安そうに見つめてくる。
アリスらと契約を結んだ手前、もう〝ユージーンの護衛〟とだけで動くことは不可能である。
金銭が絡んでいる以上、ユージーンの人命は優先度が高いものの、自身らの命も関わるアリスたちとの契約はもっと優先される。
ここで勝手な行動を取ることは、彼女達にとっては難しい。
「暫くは待機。仕事しててもいいよ。言伝はギルドにするから、毎日立ち寄って」
「わかりました!」
「そ、それじゃあ失礼しますっ」
ユージーンほどではなかったが、ロッティとネルもそそくさとその場をあとにした。
誰もがエンプティのような態度を取れと言うわけではないが、ここまで怯えられてしまうとアリスも少々寂しいのである。
しかしそんなことで長いことくよくよしているわけでもない。とっとと気分を切り替えて、この長い空き時間をどう消費するか考える。
頭を回転させようとしたところ、先程手に入った金銭がチャリンと音を立てた。武器や防具、アイテムなどを買う必要のないアリスたちにとっては、潤沢と言っていいほどの資金だ。
多少のつまみ食いならば、たいした出費でもないほどに。
「お金が入ったし、ご飯にでもしよーよ」
「母上の思う通りに」
「異世界ご飯ですかー! 楽しみですねっ」
「うんうん」
そうしてアリスたちは、異世界の料理を堪能したのであった。
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