訳あり伯爵の余命を伸ばす性行

塩チーズ

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訳あり伯爵の余命を伸ばす性行

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アリアは朝露に濡れた畑の土を踏みながら、いつものように薬草を摘んでいた。
十九歳。両親を亡くしてから五年、村一番の貧しい小屋で独り暮らしをしている。魔力はほとんどなく、せいぜい擦り傷を少し早く治す程度。それでも村人からは「薬草娘」と呼ばれ、細々と生きてきた。

その朝、黒い馬車が村の入り口に止まった。
王宮の紋章が刻まれた旗が風に揺れ、村人たちは息を呑んだ。
降りてきたのは、銀髪の騎士団長だった。

「アリア・ローレル。王命により、公爵エリオン・ヴァルドランのもとへ参れ」

理由は告げられなかった。ただ「拒否は許されない」という言葉だけが重く響いた。
馬車の中で、アリアは震えながら考えた。
自分に何の価値があるのか。
貧しい村娘が、なぜ公爵の名が出るような場所に呼ばれるのか。



ヴァルドラン公爵邸は、夜の湖のように静かで冷たかった。
案内された広間には、黒い長衣をまとった男が一人立っていた。
エリオン・ヴァルドラン。三十歳を少し過ぎたばかりの公爵。
青白い肌、深い藍色の瞳。美しく、しかしどこか壊れかけているように見えた。

「座れ」

低い声が響く。
アリアは言われるまま、革張りの椅子に腰を下ろした。

「私は呪われている」

「古の血呪いだ。魔力が枯渇し、肉体が内側から腐っていく。医師も魔術師も匙を投げた。残された時間は、おそらく半年もない」

公爵の低い声で告げられるものに、アリアは息を呑んだ。

「ただ、一つの方法がある」

彼は淡々と続けた。

「適合する魔力を持つ女性と、肉体的に結ばれること。行為のたびに、相手の魔力が私の体内に流れ込み、呪いの進行を遅らせる。完全に治すことはできないが……少なくとも、死を遠ざけることはできる」
「なぜ……私、なんですか」
「適合検査の結果だ。君の魔力の波長が、私の呪いと唯一共鳴する。共鳴する確率は……0.003パーセント以下だったらしい」

公爵は初めて視線を逸らした。
まるで自分が恥ずかしいことを口にしているかのように。

「君に選択肢はない。王命だ。結婚は形式上のもの。だが毎晩、私と寝なければならない。それが条件だ」

アリアは唇を噛んだ。
逃げられない。
村に帰れば、焼き払われると言われていた。

「……わかりました」
「なら、今夜からだ」



寝室の空気は重く、燭台の炎が壁に長い影を落としていた。アリアはベッドの端に座り、白い寝間着の裾を握りしめていた。心臓の音が耳に響く。公爵、エリオンは部屋の中央に立ち、ローブをゆっくりと脱いだ。彼の体は細く引き締まっていたが、呪いの黒い血管が肌に浮き出ていて、痛々しかった。

「怖がる必要はない」

エリオンは静かに言った。声にわずかな優しさが混じっていたが、それは義務的なもののように聞こえた。彼はベッドに近づき、アリアの隣に腰を下ろした。手がアリアの肩に触れ、ゆっくりと寝間着の紐を解く。布地が滑り落ち、彼女の肌が露わになる。






「息を吐いて、リラックスしろ」

そう言って、ゆっくりと押し入ってきた。

「すまない……痛いか?」

彼の声に、初めての気遣いが感じられた。アリアは首を振り、涙を堪えた。

「……大丈夫です」

やがて痛みは薄れ、代わりに満ち足りた感覚が広がった。エリオンが腰を動かし始めると、アリアの体は自然に彼を迎え入れるようになった。

絶頂が近づくと、何かが見えない力のように繋がる感覚があった。アリアの魔力が、エリオンの体に流れ込んでいく。呪いの黒い痕が一瞬、薄くなるのが見えた。最後にエリオンが強く腰を打ちつけ、アリアの中で熱を放つ。アリアもまた、体を震わせて頂点に達した。
行為が終わると、エリオンはアリアを抱きしめたまま、荒い息を吐いた。

「……ありがとう。これで、少し生き延びられる」

アリアは答えられず、ただ彼の胸に顔を埋めた。涙が一筋、頬を伝う。この夜は、まだ義務だった。



それから毎晩、同じ儀式が繰り返された。最初の一週間は、アリアにとって苦痛と羞恥の連続だった。エリオンの体に触れるたび、呪いの冷たさが伝わり、心が凍りつくようだった。行為の後、彼はすぐに背を向け、眠りにつく。アリアは一人、ベッドの端で体を丸め、村の故郷を思い浮かべていた。

「これが私の運命、なのかな……」

しかし、二週間目に入ると、少しずつ変化が訪れた。エリオンの呪いの痕が薄くなり、彼の肌に血色が戻り始めたのだ。ある夜、行為の前に彼はアリアの手を取った。

「君の魔力は、本当に効いている。ありがとう」

言葉に温かみが加わっていた。アリアは驚いて彼を見た。藍色の瞳が、初めて柔らかく見えた。
その夜のセックスは、いつもより穏やかだった。

絶頂の瞬間、二人は互いの名を呼び合った。

「アリア……」
「エリオン様……」

行為の後、エリオンはアリアを抱きしめたまま、話しかけた。

「君の村の生活は、どうだった?」

アリアは戸惑いながら、薬草摘みの思い出を語った。彼は静かに聞き、時折笑みを浮かべた。

「君の声は、落ち着く」

そんな言葉が、心の距離を少し縮めた。
三週間目になると、毎晩の儀式は義務を超え始めていた。エリオンはアリアの体を愛おしむように触れ、キスを深く交わすようになった。アリアもまた、彼の呪いの痛みを思い、優しく背中を撫でる。




ある日の絶頂の後、エリオンはアリアの髪を撫でながら言った。

「君がいなければ、私は孤独だった」

アリアの心に、温かなものが芽生え始めた。エリオンはただの公爵ではなく、苦しむ人間だった。毎日の会話が増え、宮廷の話、呪いの過去、互いの孤独を共有するようになった。心の距離が近づくにつれ、セックスはより親密なものになった。エリオンはアリアの好みを覚え、彼女を先に絶頂へ導くようになった。アリアも彼の体を積極的に触れ、呪いの痕を優しくキスする。義務が、互いの慰めへと変わっていった。



一ヶ月が過ぎ、エリオンの余命は明らかに延びていた。呪いの進行が止まり、医師団が驚くほどだった。宮廷では噂が広がり、王から正式な結婚の勅命が下った。

「契約結婚を、本物の婚姻へ移行せよ」

それは、アリアを公爵夫人とするものだった。
だが、アリアの心は複雑だった。エリオンとの距離は近くなっていたが、まだ「愛」と呼べるものか確信が持てなかった。ある夜、儀式の前にエリオンはアリアを庭園に連れ出した。月明かりの下、二人きりで座る。

「アリア……君は、私の命の源だ。でも、それだけじゃない。君がいると、心が安らぐ」

彼はアリアの手を取り、指輪を嵌めた。

「本当の妻になってくれ」

アリアの胸が熱くなった。涙が溢れ、頷いた。

「はい……エリオン様」

その夜のセックスは、これまでで最も深いものだった。腰の動きが徐々に速くなり、絶頂が同時に訪れる。魔力が流れ込む感覚が、愛の絆のように感じられた。

翌日、宮廷で結婚式が執り行われた。アリアは白いドレスを着て、エリオンの隣に立った。誓いの言葉を交わし、指輪を交換する。村娘から公爵夫人へ。身分の壁を超え、心の距離が埋まった末の結実だった。
それからも毎晩の儀式は続いたが、それは治療ではなく、愛の表現となった。エリオンはアリアを抱きながら囁く。

「君が夫人でよかった」

アリアは微笑み、応える。

「私も……あなたと一緒にいられて」

呪いの影はまだ残るが、二人は共に歩む道を選んだ。異世界の夜は、温かく続いていく。
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