44 / 515
一章 〜雑魚魔物使い〜
二十五話 敵情視察は一同で
しおりを挟む
本日、俺と戦う予定だった魔物が依頼の最中に負傷し、それが原因で棄権したらしい。
その結果、俺は無傷で決勝進出となり、別ブロックの準決勝は午後から午前中に繰り上げられたようだ。
そこでほぼ間違い無く、緑の魔物はその一戦に勝利し、決勝に上がって来る事だろう。
となれば、観戦して情報を集めるのは必須だ。
身支度は既に終わっている。
さて、では少し早いが闘技場に出発するとしよう。
……と、思っていたのだが、来客だ。
「おはようございますクボタさん!!」
出掛けようとした矢先、現れたのはサイロ君だった。
しかも、普段とは違い軽装である。
「おはようサイロ君。
仕事中……では、無さそうだね」
今日の彼は、サンダルっぽい履き物に膝丈の短パンとシャツ一枚、と言ったコーディネートだ。
そこから推察するに、恐らく今日のテーマは『夏休み』なんだろうな……まあ、知らんけども。
「ええ、今日は休み……だったんですが。
親方に言われて大事な物を渡しに来たんです」
そうかそうか、でもごめん。
やっぱりその格好だと、何だかちょっと気が抜けるな。
「大事な物?サンディさんから?」
「はい……クボタさん。
驚かないで聞いてください……何と!!
クボタさんに昇格試合の通知が届いてますよ!!
いや~、ホント凄いっすねクボタさん!!
これに合格したら確か、Gランク史上最速っすよ!!」
おお、マジか!?
……では無くて。
それはそれは。
俺にとっては何ともタイムリーな通知だ。
だがそうとなれば、ジェリアの雪辱を晴らすためにも合格では無く、勝利を目標に挑まなければならないだろう。
「お!俺にもやっと来たんだ!
じゃあ早速で悪いけど、渡してもらえるかな?」
「勿論っす!!はいどうぞ!!」
そうして、サイロ君から古ぼけた封筒を手渡された俺は。すぐに中身を引っ張り出してそれを読んでみる……すると。
そこにあった記述に、俺は酷く驚かされる事となった。
「…………!?
サ、サイロ君!!
キミはこの事を……!?」
「いや、一応規則なんで、直接聞かされてはいません……けど、大体は知ってました。
でも、俺が応援してるのはクボタさんですから!!」
そして、その記述とは……
『貴殿は今回出場しているカムラ杯の決勝戦を以て、それを昇格試合とする。
相手は先遣隊ゴブリン、魔物使いは……』
……サンディ!!
しかし、サンディさんも大きく出たな……あ、見た目の話では無くて。
何しろ、あちらのブロックは準決勝すらまだなんだぞ?
なのにもう、決勝の相手を自らと決めているのだ……余程、自信があるのだろう。
「確かに、その宣言は傍から見れば自信過剰だと思われるかもしれませんけど。でも実際、親方はスゲー強いですから。
あと、意外と催し事が大好きなんすよね。
まあ通知を見たら一発で分かるとは思いますけど」
闘技場の観客席で俺の隣に腰掛け、そう話しているのはこれまたサイロ君。
彼も試合観戦に誘ってみた所、一つどころか二つ返事ですぐに付いて来たのだ。
まあ、どうしても俺に通知を渡す係がやりたかっただけで、前にも言ったように今日彼は休みらしいからな。恐らくだが暇だったのだろう。
「……ん?
ごめん、何処か聞き逃しちゃったかな?
催し事と今回の件は関係無くない?」
「あそっか、クボタさんは何も知らないんでしたね……でも、昇格試合の決まりくらいは流石に知ってますよね?」
「おま……それは知ってるよ。
確か対戦相手は、他人に教えちゃダメなんだよね?」
「はい。と、それに加えて本来は『観客無しで厳粛に行われる』って言うのもあります。
じゃあだったら何で、親方は決勝を昇格試合にしたかって言うとですね。
戦いを熱くするために……
何て言ったら良いかな、ええと……」
……ああ、なるほどね。
イベント事が大好きだからこそ、あの人は注目馬である俺との試合を、その決まりを無視してでも観客に盛り上げてもらいたいってワケか。
「その戦いの盛り上げ役が欲しかった……的な?」
「そうそう!そんな感じです!」
「あっそう……
それで、一つ気になったんだけどさ。
一応、サンディさんが昇格試合の相手だって事は、俺しか知らないだろうからルール……じゃなくて、決まりには違反してないみたいだけど。
勝手にこの試合は昇格試合にする……とか、そんな事まで決めても良いの?」
「親方は運営側ですから全く問題無いです。
それにGランクですよ?テキトーでも大丈夫ですって」
……まーた『Gランクだから』で済むのか。
本当、言葉通りテキトーなんだな。
「それより、良いんですか?
奥さん大変な事になってますよ?」
「いやだからコルリスは……え?
……ああっ!!コルリスちゃん大丈夫!?」
皆の分のおやつを持ってきたせいで魔物達にもみくちゃにされていたコルリスを助け、無事観戦のお供は全員に行き渡った。
また、引き剥がしたプチ男とケロ太はすぐに喧嘩するのでサイロ君とコルリスの膝の上に。そしてルーは俺とサイロ君の間に座らせた。
「ルーちゃんは本当にカワイイっすね!
でも、何か今日は美味そうな匂いがするような?」
サイロ君はルーを見て騒いでいる。
ちなみに彼女から芳しい匂いがするのは、さっき出店の食べ物に接近し過ぎたせいで、髪にタレがちょっと付いてしまったからだ。
そして、そんな嗅いでいると腹の減りそうな香水を付けたルーは。
突然俺とサイロ君の服の端を掴ると、今度はニコニコと笑いながら、まるで羽ばたくかのような仕草を始めた。
「えへへ、本当にカワイイなぁ……
でもルーちゃん、一体どうしたのかなぁ?」
「多分、試合が始まるから教えてくれてるんだと思うよ」
「……あっ!すっかり忘れてた!」
おいおい忘れるなよ。お前の親方の試合だぞ?
ルーばっかり見ているからそうなるんだ……まあ良い。
では、キミの親方のお手並み拝見させてもらおう。
その結果、俺は無傷で決勝進出となり、別ブロックの準決勝は午後から午前中に繰り上げられたようだ。
そこでほぼ間違い無く、緑の魔物はその一戦に勝利し、決勝に上がって来る事だろう。
となれば、観戦して情報を集めるのは必須だ。
身支度は既に終わっている。
さて、では少し早いが闘技場に出発するとしよう。
……と、思っていたのだが、来客だ。
「おはようございますクボタさん!!」
出掛けようとした矢先、現れたのはサイロ君だった。
しかも、普段とは違い軽装である。
「おはようサイロ君。
仕事中……では、無さそうだね」
今日の彼は、サンダルっぽい履き物に膝丈の短パンとシャツ一枚、と言ったコーディネートだ。
そこから推察するに、恐らく今日のテーマは『夏休み』なんだろうな……まあ、知らんけども。
「ええ、今日は休み……だったんですが。
親方に言われて大事な物を渡しに来たんです」
そうかそうか、でもごめん。
やっぱりその格好だと、何だかちょっと気が抜けるな。
「大事な物?サンディさんから?」
「はい……クボタさん。
驚かないで聞いてください……何と!!
クボタさんに昇格試合の通知が届いてますよ!!
いや~、ホント凄いっすねクボタさん!!
これに合格したら確か、Gランク史上最速っすよ!!」
おお、マジか!?
……では無くて。
それはそれは。
俺にとっては何ともタイムリーな通知だ。
だがそうとなれば、ジェリアの雪辱を晴らすためにも合格では無く、勝利を目標に挑まなければならないだろう。
「お!俺にもやっと来たんだ!
じゃあ早速で悪いけど、渡してもらえるかな?」
「勿論っす!!はいどうぞ!!」
そうして、サイロ君から古ぼけた封筒を手渡された俺は。すぐに中身を引っ張り出してそれを読んでみる……すると。
そこにあった記述に、俺は酷く驚かされる事となった。
「…………!?
サ、サイロ君!!
キミはこの事を……!?」
「いや、一応規則なんで、直接聞かされてはいません……けど、大体は知ってました。
でも、俺が応援してるのはクボタさんですから!!」
そして、その記述とは……
『貴殿は今回出場しているカムラ杯の決勝戦を以て、それを昇格試合とする。
相手は先遣隊ゴブリン、魔物使いは……』
……サンディ!!
しかし、サンディさんも大きく出たな……あ、見た目の話では無くて。
何しろ、あちらのブロックは準決勝すらまだなんだぞ?
なのにもう、決勝の相手を自らと決めているのだ……余程、自信があるのだろう。
「確かに、その宣言は傍から見れば自信過剰だと思われるかもしれませんけど。でも実際、親方はスゲー強いですから。
あと、意外と催し事が大好きなんすよね。
まあ通知を見たら一発で分かるとは思いますけど」
闘技場の観客席で俺の隣に腰掛け、そう話しているのはこれまたサイロ君。
彼も試合観戦に誘ってみた所、一つどころか二つ返事ですぐに付いて来たのだ。
まあ、どうしても俺に通知を渡す係がやりたかっただけで、前にも言ったように今日彼は休みらしいからな。恐らくだが暇だったのだろう。
「……ん?
ごめん、何処か聞き逃しちゃったかな?
催し事と今回の件は関係無くない?」
「あそっか、クボタさんは何も知らないんでしたね……でも、昇格試合の決まりくらいは流石に知ってますよね?」
「おま……それは知ってるよ。
確か対戦相手は、他人に教えちゃダメなんだよね?」
「はい。と、それに加えて本来は『観客無しで厳粛に行われる』って言うのもあります。
じゃあだったら何で、親方は決勝を昇格試合にしたかって言うとですね。
戦いを熱くするために……
何て言ったら良いかな、ええと……」
……ああ、なるほどね。
イベント事が大好きだからこそ、あの人は注目馬である俺との試合を、その決まりを無視してでも観客に盛り上げてもらいたいってワケか。
「その戦いの盛り上げ役が欲しかった……的な?」
「そうそう!そんな感じです!」
「あっそう……
それで、一つ気になったんだけどさ。
一応、サンディさんが昇格試合の相手だって事は、俺しか知らないだろうからルール……じゃなくて、決まりには違反してないみたいだけど。
勝手にこの試合は昇格試合にする……とか、そんな事まで決めても良いの?」
「親方は運営側ですから全く問題無いです。
それにGランクですよ?テキトーでも大丈夫ですって」
……まーた『Gランクだから』で済むのか。
本当、言葉通りテキトーなんだな。
「それより、良いんですか?
奥さん大変な事になってますよ?」
「いやだからコルリスは……え?
……ああっ!!コルリスちゃん大丈夫!?」
皆の分のおやつを持ってきたせいで魔物達にもみくちゃにされていたコルリスを助け、無事観戦のお供は全員に行き渡った。
また、引き剥がしたプチ男とケロ太はすぐに喧嘩するのでサイロ君とコルリスの膝の上に。そしてルーは俺とサイロ君の間に座らせた。
「ルーちゃんは本当にカワイイっすね!
でも、何か今日は美味そうな匂いがするような?」
サイロ君はルーを見て騒いでいる。
ちなみに彼女から芳しい匂いがするのは、さっき出店の食べ物に接近し過ぎたせいで、髪にタレがちょっと付いてしまったからだ。
そして、そんな嗅いでいると腹の減りそうな香水を付けたルーは。
突然俺とサイロ君の服の端を掴ると、今度はニコニコと笑いながら、まるで羽ばたくかのような仕草を始めた。
「えへへ、本当にカワイイなぁ……
でもルーちゃん、一体どうしたのかなぁ?」
「多分、試合が始まるから教えてくれてるんだと思うよ」
「……あっ!すっかり忘れてた!」
おいおい忘れるなよ。お前の親方の試合だぞ?
ルーばっかり見ているからそうなるんだ……まあ良い。
では、キミの親方のお手並み拝見させてもらおう。
0
あなたにおすすめの小説
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした
渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞!
2024/02/21(水)1巻発売!
2024/07/22(月)2巻発売!(コミカライズ企画進行中発表!)
2024/12/16(月)3巻発売!
2025/04/14(月)4巻発売!
応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!!
刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました!
旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』
=====
車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。
そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。
女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。
それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。
※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる