異世界魔物大図鑑 転生したら魔物使いとかいう職業になった俺は、とりあえず魔物を育てながら図鑑的なモノを作る事にしました

おーるぼん

文字の大きさ
56 / 515
二章 〜下級魔物使い〜

二話 登録をしよう

しおりを挟む
ジェリアの先導によって辿り着いたその場所で、俺はただひたすらに立ち尽くしていた。

「クボタさ~ん!早く来てくださいよ~!」

「まあ、初めて見たらああなる気持ちも分かるわ。
とりあえず受付だけ私達で済ませちゃいましょう、コルリス」

コルリスとジェリアの呆れたような声が聞こえたが、それでも俺は目前にある『Fランク用の闘技場』なるものから目を離すことが出来なかった。

Gランクの闘技場は、一言で言えば市営の体育館のような印象だった。

しかし、ここは……まるで、コロッセオのような見た目をしているのだ。

円形の建造物の壁面には無数にアーチ状の穴があり、天井部は開放されているので吹きさらし状態である。

少々無骨とも言えるこの闘技場だが、俺はむしろそれが良いと思う。

『戦う者とそれを見物する者、両者は目の前の戦いだけに集中すれば良いのだ。余計な物など必要無いだろう?』

とでも言いたげなこの造形は、まさしく男のロマンが詰まっているようにすら感じるからだ。

ちなみに、俺は本物のコロッセオは画像等でしか見たことがない……ただ。

だからこそここで、闘技場の壁面にもう一つ穴が空くくらいは見つめていても罰は当たらないだろう。

いやそれどころか、現地に行く旅費も浮いて一石二鳥だと思う。

ただ勿論、この世界にはイタリアなんて存在しないだろうが……

「クボタさん、まだ突っ立ってるんですか……ほら、早く行きますよ?」

俺の様子を見に戻って来たコルリスは、またもや呆れ顔を作って今度は俺の腕を引く。

「ゴメンゴメン、すぐ行くよ」

まあ、よくよく考えてみれば、この先闘技場には大会の度に来る事になるのだ。ならばその時にまたじっくりと見物すれば良いか。

そう自分に言い聞かせ、俺は入口へと歩き出した。



剣士、魔術士と違い、魔物使いは魔物の身体測定も登録時に実施されるのだが……事件はそこで起こった。

ルーが体重計に乗ってくれない。

全然乗ってくれないのだ。
そして、無理に乗せようとすると嫌がる。

まあ女の子だからという理由は分かるが……いやでも、魔物にもそんな感情あるのだろうか?

「ちょ!……二人も手伝ってよ!」

「すみませんクボタさん。
こればっかりは、ちょっと……」

「そうよねぇ……」

俺は三人でルーを体重計に乗せるべく、コルリスとジェリアに助けを求めた……が、女性陣は非協力的な態度を崩さないでいる。

「んむぅ~」

しかも、そうこうしているうちにルーがぐずり始めてしまった。

そして、それを見た周囲の人々は、俺を攻めるように睨み付ける。

いじめているように見えるのだろう……泣きたいのはこっちだ。

「あの……その子だけで乗るのが難しいようでしたら、その子と貴方のお二人で体重計に乗ってはもらえませんか?」

そこに助け舟を出したのは、数値を記録すべく俺達を待ち続けている会場のスタッフ的な女性だった。

「え?…….はっ!?
な、なるほど……その手があったか……!!」

それを聞いた俺は数秒後、彼女の目論見に気付き。

ややサイコパス的なその発言に驚いたものの、ひとまずは頷いて見せ、事を実行に移した。

「ルー、じゃあ俺も一緒に乗るからさ!
それなら良いだろう?ね?ね?」

…………コクリ

すると、ルーは暫く考えるような表情をした後、遂に首を縦に振ってくれ。

そして漸く、彼女は俺と共に目盛りの付いた大きな鉄板の上に立つ事が出来た。

ちなみに体重計の鉄板は大型の魔物も使用するので三畳程の大きさがあり、二人乗りは容易なのである。

「ふむふむ…155〇〇、と。
それではトロールの子、降りて頂いて結構ですよ」

(〇〇とは恐らくこの世界での体重の単位なのだろう……が、この時はよく聞き取れなかった)

「辛かったねルーちゃん、もう大丈夫よ……」

「アンタ……可哀想!」

その後、ルーはすぐさま二人の元へと駆けて行き、コルリスとジェリアは彼女を大袈裟過ぎるリアクションで迎える。

まるで、生き別れた姉妹が再会したかのような光景だ……しかし、俺は『何やってんだコイツら』としか思わなかった。

「で?どのくらいでしたか?」

俺はスタッフ的な女性に尋ねる。

ルーの体重が気にならないと言えば、まあ嘘になるが……

でも、そう言った邪な考えを起こして聞いたのではないぞ?俺自身の体重が知りたかっただけだ。

「90〇〇ですね」

「えっ!そんなに!?」

俺は思わず、自分の腹部に手を当てていた。

確か単位は、ほぼ名称が違うだけ……つまり、俺の体重は約90kgとなる。

(う~ん、そこまで贅肉は無いはずなんだけどなぁ……)

「ん?あぁ、貴方は65〇〇ですよ。

90〇〇はあの子です」

「えぇ!?」

と思いきや、予想以上に重かったのは〝俺じゃない方〟であったようだ。

だがそれにしても……筋肉量が多いのは分かるが、ルーがそこまで重かったとは完全に予想外だった。

体重を知られたくなかったのもこれなら理解出来る。勿論、それがトロールだとしてもだ。

「でも、トロールとしては小さな部類ですし、それにあの見た目から察するに筋肉の重さでしょうから、恥ずかしがる必要は全く無いと思うんですけどね」

やはりと言うべきか、スタッフ的な女性は微笑みを浮かべ俺と似たような意見を述べた。

恐らく、フォローを入れておくべきだと判断したのだろう……どうやらこのお姉さん、ややサイコパス寄りの思考が垣間見えるとは言え、割と良い人であるようだ。

「……まあ、それもそうですね」

「ええ。
では次に、そこのスライムを……ヒィィ!!」

すると、突如としてスタッフお姉さんの顔が強張る。

それは間違い無く、俺の背後から放たれている殺気によるものだろう。

そして……それは。
ルーから俺へと向けられたものだ。

何故分かるのかって?
いや、むしろ分からない方がどうかしている。

鉄板が光を反射させているせいで、真後ろに立っているルーが俺にも見えてしまっているのだ……な?これで分からない方がおかしいだろう?

て言うか怖い、怖過ぎる。
背後を取られている事よりも、無表情なのがまた怖い。その重圧はまるで大型魔物のようだ。

推測だが、彼女はこう言いたいのだろう?

『聞いたのか……?私の体重を……』と。

……俺はその瞬間、死を覚悟したが。

スタッフお姉さんの持っていた肉のお陰でルーの機嫌は一瞬にして直り、一命を取り留めた。

何でも、会場にいるスタッフは魔物が何らかの理由により手が付けられなくなった場合に、それを落ち着かせるため餌を常備しているのだそうだ。

で、これを聞いた俺は。
次からは自分もそうしよう、と心に誓ったのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした

渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞! 2024/02/21(水)1巻発売! 2024/07/22(月)2巻発売!(コミカライズ企画進行中発表!) 2024/12/16(月)3巻発売! 2025/04/14(月)4巻発売! 応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!! 刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました! 旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』 ===== 車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。 そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。 女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。 それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。 ※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

処理中です...