異世界魔物大図鑑 転生したら魔物使いとかいう職業になった俺は、とりあえず魔物を育てながら図鑑的なモノを作る事にしました

おーるぼん

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二章 〜下級魔物使い〜

十八話 私を見捨てないで

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簡単なあらすじ『ロシバ地方にて……ジェリアちゃんが、クボタさんを何処かに連れて行きたいようです』



彼女の指し示す方向へと進むにつれ、嫌な予感が急速に胸の内で成長するのがはっきりと分かった。

何故ならば、その方向からはどすどすと何かが動くような重厚感ある音が聞こえて来るのだから……

そして、とうとう側にある水面がはためくようにまでなってしまった……つまり音の主が、もうすぐそこにいると言う事だろう。

その頃にはもう、俺は逃げ出したくて仕方が無かったが……しかし。

ジェリアは相変わらず俺の腕にしがみ付いたまま、離れる様子もなければ引き返そうとする素振りすら見せずにいた。

そんな彼女は……一体。
危険に身を晒してまで、俺に何をさせようと言うのだろうか?

「……アレ、見て」

だが、ジェリアはやっと足を止めたかと思うと、今度は草藪に身を隠しつつ俺にそう言う。

そこで俺もまた、ジェリアと同じように身を隠した後、彼女の示す方向へとそっと視線を動かした。

すると……とんでもないものがそこにいた。

巨大なスライムが、どすどすと例の音を響かせながら移動していたのだ。

間違い無くミドルスライムよりも2、3倍以上デカいと思われる、本当に大きな大きなスライムが。

「…………ジェ、ジェリアちゃん。

ア、アレがどうかしたの?……いや、どうもしないよ早く帰ろうよ!」

「クボタさん……私ね。
初めて貴方と出会った時、凄く嬉しかったの。

一つの魔物としてならそこそこいるけど、パートナーとしてもスライムが好きな人なんて殆どいなかったから」

俺の言葉を無視してジェリアは語り出す。
そんな彼女の表情は、いつの日か見たように曇りがかっていた。

まあ、そこから大事な話である雰囲気を感じ取れない程、鈍感では無いつもりではあるが……

しかし、目の前の状況も考え、俺はひとまず彼女を帰宅へと再度促す。

「ジェリアちゃん、とりあえずその話は別の場所に行ってからにしない?」

「お願い、聞いて。
でね、私に魔物使いとは何たるかを教えてくれた人も、勿論そうじゃなかったのよ。

それで、私はその人に感化されてつい、過ちを犯してしまった……

あの子を逃してしまったの。
私の大切な、あの子を……」

そこで話を終えた彼女は、今一度スライムへと視線を移す。

まあ、その様子から大体の事情は分かった。

恐らく、その師匠のような奴に『相棒にするならもっと強い魔物にしろ』とか何とか言われたジェリアは、元々育てていたスライムを野に返してしまい。

そして、それをずっと後悔していたのだろう……と、そんな所だろうか。

「そっか……ところでなんだけどさ。
ジェリアちゃん、アレは本当に〝その子〟なの?」

「間違い無いわ。あそこを見て」

そう言ってジェリアは、スライムの頭頂部辺りを指差した。

(スライムに頭頂部など無いのだが、まあこれはあくまでも比喩表現のようなものだ)

「アレは私があの子にあげた首飾りよ」

すると、そこには……なるほど確かに。
球体の天辺には、きらきらと輝く薄紫の高そうな首飾りが存在している。

つまり、ジェリアの言っている事は真実なのであろう。ただ……スライムが大き過ぎて、それはもうティアラみたいになってしまってはいるが。

「それなら、間違い無いか。
……で?ジェリアちゃん。君はどうしたいの?」

俺は自身が、答えを急ぎ過ぎている事には気が付いていたが、ためらわずそう言った。

何故ならばそれは、早くしなければスライムが何処かに行ってしまいそうでもあったし。

それに、ジェリアが俺に何かを求めるならば。
それを具体的に説明してもらわなければ、彼女のために動けないからだ。

「私は……私はこの時をずっと待っていたの。
だから頑張ってFランクにもなったし、何かと理由をつけて色々な場所にもあの子を探しに行ったわ。

アライアンスになってくれた貴方にもそうやって依頼に行く事を強要したわね、それはごめんなさい」

ジェリアはそこで込み上げてくる涙を止めるためか一旦言葉を区切り、再び語りを続ける。

今までの彼女の行動にはそんな意味があったのか。

と、俺は思いつつも口には出さず、ジェリアの話を聞くのに徹していた。

「それでこの前、貴方にザキ地方の事を聞いて確信したわ。

あの子はここにいるって、やっぱり私が初めてあの子にあげた餌だった、ラッカソウの種があるここにいるんだって。

今を逃せば、もうあの子には二度と会えないかもしれない……だから!だから私は!私はあの子に戻って来てほしいの!」

そこで再び言葉を止めたジェリアは、俺に顔を向け、頬を伝う涙を曝け出している事にも構わずこう言った。

「クボタさん……貴方にはそれを側で見ていて欲しいの。

何故だか分からないけれど涙が溢れてきて、あの子にしっかりと気持ちを伝えられるか心配だから」

それを聞いた俺は、ジェリアの頭の上にいるプチ男で優しく彼女の涙を拭き取りながら、言った。

「……分かった。
俺に出来る事も、君の気持ちもね」

(帰ろうよ!正直めちゃくちゃ怖いわ!)

そう叫ぶもう一人の俺を、どうにか抑えながら。
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