76 / 515
二章 〜下級魔物使い〜
十八話 私を見捨てないで
しおりを挟む
簡単なあらすじ『ロシバ地方にて……ジェリアちゃんが、クボタさんを何処かに連れて行きたいようです』
彼女の指し示す方向へと進むにつれ、嫌な予感が急速に胸の内で成長するのがはっきりと分かった。
何故ならば、その方向からはどすどすと何かが動くような重厚感ある音が聞こえて来るのだから……
そして、とうとう側にある水面がはためくようにまでなってしまった……つまり音の主が、もうすぐそこにいると言う事だろう。
その頃にはもう、俺は逃げ出したくて仕方が無かったが……しかし。
ジェリアは相変わらず俺の腕にしがみ付いたまま、離れる様子もなければ引き返そうとする素振りすら見せずにいた。
そんな彼女は……一体。
危険に身を晒してまで、俺に何をさせようと言うのだろうか?
「……アレ、見て」
だが、ジェリアはやっと足を止めたかと思うと、今度は草藪に身を隠しつつ俺にそう言う。
そこで俺もまた、ジェリアと同じように身を隠した後、彼女の示す方向へとそっと視線を動かした。
すると……とんでもないものがそこにいた。
巨大なスライムが、どすどすと例の音を響かせながら移動していたのだ。
間違い無くミドルスライムよりも2、3倍以上デカいと思われる、本当に大きな大きなスライムが。
「…………ジェ、ジェリアちゃん。
ア、アレがどうかしたの?……いや、どうもしないよ早く帰ろうよ!」
「クボタさん……私ね。
初めて貴方と出会った時、凄く嬉しかったの。
一つの魔物としてならそこそこいるけど、パートナーとしてもスライムが好きな人なんて殆どいなかったから」
俺の言葉を無視してジェリアは語り出す。
そんな彼女の表情は、いつの日か見たように曇りがかっていた。
まあ、そこから大事な話である雰囲気を感じ取れない程、鈍感では無いつもりではあるが……
しかし、目の前の状況も考え、俺はひとまず彼女を帰宅へと再度促す。
「ジェリアちゃん、とりあえずその話は別の場所に行ってからにしない?」
「お願い、聞いて。
でね、私に魔物使いとは何たるかを教えてくれた人も、勿論そうじゃなかったのよ。
それで、私はその人に感化されてつい、過ちを犯してしまった……
あの子を逃してしまったの。
私の大切な、あの子を……」
そこで話を終えた彼女は、今一度スライムへと視線を移す。
まあ、その様子から大体の事情は分かった。
恐らく、その師匠のような奴に『相棒にするならもっと強い魔物にしろ』とか何とか言われたジェリアは、元々育てていたスライムを野に返してしまい。
そして、それをずっと後悔していたのだろう……と、そんな所だろうか。
「そっか……ところでなんだけどさ。
ジェリアちゃん、アレは本当に〝その子〟なの?」
「間違い無いわ。あそこを見て」
そう言ってジェリアは、スライムの頭頂部辺りを指差した。
(スライムに頭頂部など無いのだが、まあこれはあくまでも比喩表現のようなものだ)
「アレは私があの子にあげた首飾りよ」
すると、そこには……なるほど確かに。
球体の天辺には、きらきらと輝く薄紫の高そうな首飾りが存在している。
つまり、ジェリアの言っている事は真実なのであろう。ただ……スライムが大き過ぎて、それはもうティアラみたいになってしまってはいるが。
「それなら、間違い無いか。
……で?ジェリアちゃん。君はどうしたいの?」
俺は自身が、答えを急ぎ過ぎている事には気が付いていたが、ためらわずそう言った。
何故ならばそれは、早くしなければスライムが何処かに行ってしまいそうでもあったし。
それに、ジェリアが俺に何かを求めるならば。
それを具体的に説明してもらわなければ、彼女のために動けないからだ。
「私は……私はこの時をずっと待っていたの。
だから頑張ってFランクにもなったし、何かと理由をつけて色々な場所にもあの子を探しに行ったわ。
アライアンスになってくれた貴方にもそうやって依頼に行く事を強要したわね、それはごめんなさい」
ジェリアはそこで込み上げてくる涙を止めるためか一旦言葉を区切り、再び語りを続ける。
今までの彼女の行動にはそんな意味があったのか。
と、俺は思いつつも口には出さず、ジェリアの話を聞くのに徹していた。
「それでこの前、貴方にザキ地方の事を聞いて確信したわ。
あの子はここにいるって、やっぱり私が初めてあの子にあげた餌だった、ラッカソウの種があるここにいるんだって。
今を逃せば、もうあの子には二度と会えないかもしれない……だから!だから私は!私はあの子に戻って来てほしいの!」
そこで再び言葉を止めたジェリアは、俺に顔を向け、頬を伝う涙を曝け出している事にも構わずこう言った。
「クボタさん……貴方にはそれを側で見ていて欲しいの。
何故だか分からないけれど涙が溢れてきて、あの子にしっかりと気持ちを伝えられるか心配だから」
それを聞いた俺は、ジェリアの頭の上にいるプチ男で優しく彼女の涙を拭き取りながら、言った。
「……分かった。
俺に出来る事も、君の気持ちもね」
(帰ろうよ!正直めちゃくちゃ怖いわ!)
そう叫ぶもう一人の俺を、どうにか抑えながら。
彼女の指し示す方向へと進むにつれ、嫌な予感が急速に胸の内で成長するのがはっきりと分かった。
何故ならば、その方向からはどすどすと何かが動くような重厚感ある音が聞こえて来るのだから……
そして、とうとう側にある水面がはためくようにまでなってしまった……つまり音の主が、もうすぐそこにいると言う事だろう。
その頃にはもう、俺は逃げ出したくて仕方が無かったが……しかし。
ジェリアは相変わらず俺の腕にしがみ付いたまま、離れる様子もなければ引き返そうとする素振りすら見せずにいた。
そんな彼女は……一体。
危険に身を晒してまで、俺に何をさせようと言うのだろうか?
「……アレ、見て」
だが、ジェリアはやっと足を止めたかと思うと、今度は草藪に身を隠しつつ俺にそう言う。
そこで俺もまた、ジェリアと同じように身を隠した後、彼女の示す方向へとそっと視線を動かした。
すると……とんでもないものがそこにいた。
巨大なスライムが、どすどすと例の音を響かせながら移動していたのだ。
間違い無くミドルスライムよりも2、3倍以上デカいと思われる、本当に大きな大きなスライムが。
「…………ジェ、ジェリアちゃん。
ア、アレがどうかしたの?……いや、どうもしないよ早く帰ろうよ!」
「クボタさん……私ね。
初めて貴方と出会った時、凄く嬉しかったの。
一つの魔物としてならそこそこいるけど、パートナーとしてもスライムが好きな人なんて殆どいなかったから」
俺の言葉を無視してジェリアは語り出す。
そんな彼女の表情は、いつの日か見たように曇りがかっていた。
まあ、そこから大事な話である雰囲気を感じ取れない程、鈍感では無いつもりではあるが……
しかし、目の前の状況も考え、俺はひとまず彼女を帰宅へと再度促す。
「ジェリアちゃん、とりあえずその話は別の場所に行ってからにしない?」
「お願い、聞いて。
でね、私に魔物使いとは何たるかを教えてくれた人も、勿論そうじゃなかったのよ。
それで、私はその人に感化されてつい、過ちを犯してしまった……
あの子を逃してしまったの。
私の大切な、あの子を……」
そこで話を終えた彼女は、今一度スライムへと視線を移す。
まあ、その様子から大体の事情は分かった。
恐らく、その師匠のような奴に『相棒にするならもっと強い魔物にしろ』とか何とか言われたジェリアは、元々育てていたスライムを野に返してしまい。
そして、それをずっと後悔していたのだろう……と、そんな所だろうか。
「そっか……ところでなんだけどさ。
ジェリアちゃん、アレは本当に〝その子〟なの?」
「間違い無いわ。あそこを見て」
そう言ってジェリアは、スライムの頭頂部辺りを指差した。
(スライムに頭頂部など無いのだが、まあこれはあくまでも比喩表現のようなものだ)
「アレは私があの子にあげた首飾りよ」
すると、そこには……なるほど確かに。
球体の天辺には、きらきらと輝く薄紫の高そうな首飾りが存在している。
つまり、ジェリアの言っている事は真実なのであろう。ただ……スライムが大き過ぎて、それはもうティアラみたいになってしまってはいるが。
「それなら、間違い無いか。
……で?ジェリアちゃん。君はどうしたいの?」
俺は自身が、答えを急ぎ過ぎている事には気が付いていたが、ためらわずそう言った。
何故ならばそれは、早くしなければスライムが何処かに行ってしまいそうでもあったし。
それに、ジェリアが俺に何かを求めるならば。
それを具体的に説明してもらわなければ、彼女のために動けないからだ。
「私は……私はこの時をずっと待っていたの。
だから頑張ってFランクにもなったし、何かと理由をつけて色々な場所にもあの子を探しに行ったわ。
アライアンスになってくれた貴方にもそうやって依頼に行く事を強要したわね、それはごめんなさい」
ジェリアはそこで込み上げてくる涙を止めるためか一旦言葉を区切り、再び語りを続ける。
今までの彼女の行動にはそんな意味があったのか。
と、俺は思いつつも口には出さず、ジェリアの話を聞くのに徹していた。
「それでこの前、貴方にザキ地方の事を聞いて確信したわ。
あの子はここにいるって、やっぱり私が初めてあの子にあげた餌だった、ラッカソウの種があるここにいるんだって。
今を逃せば、もうあの子には二度と会えないかもしれない……だから!だから私は!私はあの子に戻って来てほしいの!」
そこで再び言葉を止めたジェリアは、俺に顔を向け、頬を伝う涙を曝け出している事にも構わずこう言った。
「クボタさん……貴方にはそれを側で見ていて欲しいの。
何故だか分からないけれど涙が溢れてきて、あの子にしっかりと気持ちを伝えられるか心配だから」
それを聞いた俺は、ジェリアの頭の上にいるプチ男で優しく彼女の涙を拭き取りながら、言った。
「……分かった。
俺に出来る事も、君の気持ちもね」
(帰ろうよ!正直めちゃくちゃ怖いわ!)
そう叫ぶもう一人の俺を、どうにか抑えながら。
0
あなたにおすすめの小説
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした
渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞!
2024/02/21(水)1巻発売!
2024/07/22(月)2巻発売!(コミカライズ企画進行中発表!)
2024/12/16(月)3巻発売!
2025/04/14(月)4巻発売!
応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!!
刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました!
旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』
=====
車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。
そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。
女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。
それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。
※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる