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二章 〜下級魔物使い〜
二十六話 早朝の戦い その3
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簡単なあらすじ『サイロ君との試合、開始です』
まるで本物の審判のように、毅然とした態度で佇むジェリア。
その後ろでは四匹の先遣隊ゴブリン、ミドルスライム、チビちゃんが俺達の試合を見物している。
まあ、彼等への指示を出すはずの者達が、今別の事をしているのだから、むしろそうするしかないのであろうが……
ところが、まだやってもいないのにもう飽き始めている者も存在するようで、先遣隊ゴブリンのうち二匹はミドルスライムやチビちゃんを持ち上げようとし。
ミドルスライムでは『重いけど持てるわ、お前いける?』、『凄いなお前』みたいな表情を。
チビちゃんでは『重!?』、『それは無理だろ』、みたいな表情をしていた……ゴブリンは意外と、表情豊かであるらしい。
そして後の二匹は俺、サイロ君をそれぞれ応援しているように見える。
それと、こちらを応援している方は恐らく、プチ男と一番仲の良かった奴だろう。アイツ良い奴だな。
そんな彼等にどうしても目が行き、気が散って仕方が無いが……もう試合はちゃんと始まっている。
自分が油断してどうするんだ。
俺はそう自らを律し、ユニタウルス、プチ男のいる正面へと視線を戻した。
幸い、試合はまだ大きな動きを見せてはおらず、
二匹は互いに良い位置を取るべく、どちらも時計回りに動いている。
だが、そのせいでいつまで経ってもそのぐるぐる移動は終わらずにいた。
サイロ君はそれを見てほんの少し、呆れたような表情をしている。
それはまるで、『クボタさんの魔物とは言え、プチスライム相手に何やってるんだコイツは……』とでも言いたげな様子だ。
しかし、そんな彼の表情に気付いた俺は勝利を確信し、身体から緊張を解き放つため、ため息を一つ吐き出した。
そう言えば聞いていなかったが、この様子だと彼はGランクと見て間違いはないだろう。
ここまで体格差があると言うのに旋回し、好位置を得ようとしているユニタウルス……
つまり、この魔物は目の前の球体をそうした後でないと攻撃してはならない『自分と同等、もしくは格上の相手』として捉えている。
(プチ男は逆に自分よりも重い相手なのでそうしているのだろう)
にも関わらず、彼はそんな表情をしているのだ。
確実にユニタウルスが今置かれている状況も、このような動きをしている理由も、今一つよく分かってはいないのだろう。
……まあ、こちらからすれば好都合だ。
俺とプチ男は頭脳と肉体、一人と一匹の力を合わせて戦えるのに対し。
あちらはユニタウルス一匹のみで戦っているようなものなのだから。
だからそう、例え彼が指示を出したとしても、やや的外れであろうそれを心配する必要はない。
そう考えた俺はプチ男に指示を出し、攻撃に移らせる事にした。
「プチ男!ユニタウルスの調子さえ狂わせればこっちの勝ちだ!
だから、まずは〝ぐるぐる〟をやるんだ!」
俺がそう言うと、プチ男はすぐにその場で縦回転を始めた。
これはプチ男が少々ふざけながら練習をしていた時、俺にやった事だ。
(ちなみに、俺の指示は他の魔物にも理解出来る可能性があるため。
敢えて技名はネーミングセンスのカケラも無く、またそれでいてプチ男達にもすぐ分かるようなものにしている……文句あるか?)
そして、俺がそうするよう指示を出した理由は……
「ああっ!」
突然、サイロ君が叫んだ。
ユニタウルスがよろめき、首を左右にぶんぶんと振っていたからだ。
その足は勿論止まっている。
……これだ。
これが目的だ。
プチ男の回転は割と強力であり、草の根や柔らかい土程度ならば吹き飛ばしてしまう。
ユニタウルスはそうして飛んで来た、土埃で視界を奪われてしまい、あのような行動をしているのだ。
そう、あの時の俺のように……とにかく。
今がチャンスである。
「今だ!」
俺の声と同時にプチ男は仕掛けた。
彼はユニタウルスが持つ一本角に張り付いたかと思うと、すぐ肉体を右方向へと急速に伸ばし。
次にそれを、再びすぐさま元に戻す事で逆方向への力を生み出し、相手の巨大を大きく揺さぶった。
すると、そうされたユニタウルスは。
バランスを崩され、背に土を付ける事となった。
……あれは、コイツの〝投げ〟だ。
「なるほど……」
左右へと回り込む程の時間も無く。
かと言って、真っ向から挑んで簡単に倒せる相手でも無いならばと。
まずは相手の体勢、ペースを崩せる投げを選択したワケか。
確かに、アイツの判断は一撃で勝負の決まるこのルールでは少し慎重過ぎるとも言えるが。
〝本番〟なら大正解の行動だ。
流石、我らのプチ男である。
ただし、綺麗に決まったとは言い難い。
ユニタウルスは傍から見れば、投げられたと言うよりも横転しただけのように見えたはずだ……もう少し、練習が必要であろう。
しかし、チビちゃんと戦った時と言い、コイツ実戦だと投げ技ばかりするようになった気がする。
気に入ったのだろうか?
ならば今度から『グラップラープチ男』と呼ぶ事に……は、しないが。
「そこまで!……で、良いかしら?
一応攻撃はされたワケだし」
「そう……っスね……
強いっスねクボタさん。完敗です」
そして審判、もといジェリアがそう言い。
また、サイロ君もそれに納得した事で。
クボタVSサイロ君の試合は無事、俺の勝利に終わった。
「やったなプチ……」
「流石プチ男様ね!」
そこで俺が、プチ男へと労いの言葉を掛けつつ撫で撫でしようとしたまさにその時。
ジェリアが俺の目前から、プチ男という名の対象物を奪い取った。
すると今度は、悲しげに宙を漂っていた俺の掌の下に、ミドルスライムが入って来る……
コイツ、ジェリアがプチ男ばっかりかまうからストレス溜まってるんじゃないか?
何にせよ、可哀想なヤツだな。
そう思った俺は対象が変わった事にも構わず、それを撫で撫でする。
「クボタさん!ありがとうございました!
負けましたけど、俄然やる気が出てきました!
俺も、コイツも、もっと強くなるために頑張ります!なんで気が向いたら、こうやってまた俺達と戦ってもらえませんか?」
サイロ君はユニタウルスを起こした後にそう言った。
その言葉に嘘があるはずもなく、やる気もたっぷりな様子だ。
彼は魔物が良いのだから、もっと経験を積めばなかなかの魔物使いになるに違いない。サイロ君とユニタウルスの成長には期待しておくとしよう。
「勿論だよ。君とその子……いや、特に君はもっと経験が必要みたいだからね」
「ええっ、俺ですか!?一応聞きますけど、それイヤミじゃないですよね!?」
「違う違う、だって君……」
「おやおや、クボタさんではありませんか」
その時、今は12月かと錯覚してしまいそうな容姿をしている人物が俺達の前へと現れた。
いや失礼。
サンタさんではなくて、サンディさんだ。
「あ、どうもサンディさん。
すみません、サイロ君の仕事の邪魔しちゃって」
俺は立ち上がり、彼へと挨拶する。
「いや、これは俺が!」
「いえいえ、構いませんよ。
それに、謝るのはこちらの方です。
サイロに何を頼まれたかは存じませんが、付き合わせてしまったようですからね」
弁明しようとするサイロ君を手で制し、サンディさんはそう言った。どうやらこの人にはお見通しらしい。
「お嬢さんもどうも…………」
だが、彼はジェリアを目にした直後、固まってしまった。
サイロ君と全く同じ反応だ……まさか。
と言う事は、もしかするとこの人も……
「クボタさん!
いけませんぞ!それはいけません!」
サンディさんは息を吹き返すかのようにして突然また動き始めると……
やはりと言うべきか、そのようにして声を上げ始めた。
ああやっぱり、この人も勘違いしてるな。
と言うか、本当に勘違いするの好きだなこの二人
は……
「ねえクボタさん?
一体、私達の何がいけないのかしら?」
ジェリアは俺の隣に立ち、そう言う。
それは、俺と君がね……
なんて、言えるはずも無く。
「ボソ……(もう良いって、もう説明がめんどくさいよ)
……さあ?
ジェリアちゃん、そろそろ行こうか。
じゃあサンディさん!また来ますね!」
「クボタさん!いけませんぞ!」
そして何もかもが面倒臭くなった俺は。
サンディさんに説明する義務を完全に放棄し、ジェリアの手を引いて坂道を駆け下った。
まるで本物の審判のように、毅然とした態度で佇むジェリア。
その後ろでは四匹の先遣隊ゴブリン、ミドルスライム、チビちゃんが俺達の試合を見物している。
まあ、彼等への指示を出すはずの者達が、今別の事をしているのだから、むしろそうするしかないのであろうが……
ところが、まだやってもいないのにもう飽き始めている者も存在するようで、先遣隊ゴブリンのうち二匹はミドルスライムやチビちゃんを持ち上げようとし。
ミドルスライムでは『重いけど持てるわ、お前いける?』、『凄いなお前』みたいな表情を。
チビちゃんでは『重!?』、『それは無理だろ』、みたいな表情をしていた……ゴブリンは意外と、表情豊かであるらしい。
そして後の二匹は俺、サイロ君をそれぞれ応援しているように見える。
それと、こちらを応援している方は恐らく、プチ男と一番仲の良かった奴だろう。アイツ良い奴だな。
そんな彼等にどうしても目が行き、気が散って仕方が無いが……もう試合はちゃんと始まっている。
自分が油断してどうするんだ。
俺はそう自らを律し、ユニタウルス、プチ男のいる正面へと視線を戻した。
幸い、試合はまだ大きな動きを見せてはおらず、
二匹は互いに良い位置を取るべく、どちらも時計回りに動いている。
だが、そのせいでいつまで経ってもそのぐるぐる移動は終わらずにいた。
サイロ君はそれを見てほんの少し、呆れたような表情をしている。
それはまるで、『クボタさんの魔物とは言え、プチスライム相手に何やってるんだコイツは……』とでも言いたげな様子だ。
しかし、そんな彼の表情に気付いた俺は勝利を確信し、身体から緊張を解き放つため、ため息を一つ吐き出した。
そう言えば聞いていなかったが、この様子だと彼はGランクと見て間違いはないだろう。
ここまで体格差があると言うのに旋回し、好位置を得ようとしているユニタウルス……
つまり、この魔物は目の前の球体をそうした後でないと攻撃してはならない『自分と同等、もしくは格上の相手』として捉えている。
(プチ男は逆に自分よりも重い相手なのでそうしているのだろう)
にも関わらず、彼はそんな表情をしているのだ。
確実にユニタウルスが今置かれている状況も、このような動きをしている理由も、今一つよく分かってはいないのだろう。
……まあ、こちらからすれば好都合だ。
俺とプチ男は頭脳と肉体、一人と一匹の力を合わせて戦えるのに対し。
あちらはユニタウルス一匹のみで戦っているようなものなのだから。
だからそう、例え彼が指示を出したとしても、やや的外れであろうそれを心配する必要はない。
そう考えた俺はプチ男に指示を出し、攻撃に移らせる事にした。
「プチ男!ユニタウルスの調子さえ狂わせればこっちの勝ちだ!
だから、まずは〝ぐるぐる〟をやるんだ!」
俺がそう言うと、プチ男はすぐにその場で縦回転を始めた。
これはプチ男が少々ふざけながら練習をしていた時、俺にやった事だ。
(ちなみに、俺の指示は他の魔物にも理解出来る可能性があるため。
敢えて技名はネーミングセンスのカケラも無く、またそれでいてプチ男達にもすぐ分かるようなものにしている……文句あるか?)
そして、俺がそうするよう指示を出した理由は……
「ああっ!」
突然、サイロ君が叫んだ。
ユニタウルスがよろめき、首を左右にぶんぶんと振っていたからだ。
その足は勿論止まっている。
……これだ。
これが目的だ。
プチ男の回転は割と強力であり、草の根や柔らかい土程度ならば吹き飛ばしてしまう。
ユニタウルスはそうして飛んで来た、土埃で視界を奪われてしまい、あのような行動をしているのだ。
そう、あの時の俺のように……とにかく。
今がチャンスである。
「今だ!」
俺の声と同時にプチ男は仕掛けた。
彼はユニタウルスが持つ一本角に張り付いたかと思うと、すぐ肉体を右方向へと急速に伸ばし。
次にそれを、再びすぐさま元に戻す事で逆方向への力を生み出し、相手の巨大を大きく揺さぶった。
すると、そうされたユニタウルスは。
バランスを崩され、背に土を付ける事となった。
……あれは、コイツの〝投げ〟だ。
「なるほど……」
左右へと回り込む程の時間も無く。
かと言って、真っ向から挑んで簡単に倒せる相手でも無いならばと。
まずは相手の体勢、ペースを崩せる投げを選択したワケか。
確かに、アイツの判断は一撃で勝負の決まるこのルールでは少し慎重過ぎるとも言えるが。
〝本番〟なら大正解の行動だ。
流石、我らのプチ男である。
ただし、綺麗に決まったとは言い難い。
ユニタウルスは傍から見れば、投げられたと言うよりも横転しただけのように見えたはずだ……もう少し、練習が必要であろう。
しかし、チビちゃんと戦った時と言い、コイツ実戦だと投げ技ばかりするようになった気がする。
気に入ったのだろうか?
ならば今度から『グラップラープチ男』と呼ぶ事に……は、しないが。
「そこまで!……で、良いかしら?
一応攻撃はされたワケだし」
「そう……っスね……
強いっスねクボタさん。完敗です」
そして審判、もといジェリアがそう言い。
また、サイロ君もそれに納得した事で。
クボタVSサイロ君の試合は無事、俺の勝利に終わった。
「やったなプチ……」
「流石プチ男様ね!」
そこで俺が、プチ男へと労いの言葉を掛けつつ撫で撫でしようとしたまさにその時。
ジェリアが俺の目前から、プチ男という名の対象物を奪い取った。
すると今度は、悲しげに宙を漂っていた俺の掌の下に、ミドルスライムが入って来る……
コイツ、ジェリアがプチ男ばっかりかまうからストレス溜まってるんじゃないか?
何にせよ、可哀想なヤツだな。
そう思った俺は対象が変わった事にも構わず、それを撫で撫でする。
「クボタさん!ありがとうございました!
負けましたけど、俄然やる気が出てきました!
俺も、コイツも、もっと強くなるために頑張ります!なんで気が向いたら、こうやってまた俺達と戦ってもらえませんか?」
サイロ君はユニタウルスを起こした後にそう言った。
その言葉に嘘があるはずもなく、やる気もたっぷりな様子だ。
彼は魔物が良いのだから、もっと経験を積めばなかなかの魔物使いになるに違いない。サイロ君とユニタウルスの成長には期待しておくとしよう。
「勿論だよ。君とその子……いや、特に君はもっと経験が必要みたいだからね」
「ええっ、俺ですか!?一応聞きますけど、それイヤミじゃないですよね!?」
「違う違う、だって君……」
「おやおや、クボタさんではありませんか」
その時、今は12月かと錯覚してしまいそうな容姿をしている人物が俺達の前へと現れた。
いや失礼。
サンタさんではなくて、サンディさんだ。
「あ、どうもサンディさん。
すみません、サイロ君の仕事の邪魔しちゃって」
俺は立ち上がり、彼へと挨拶する。
「いや、これは俺が!」
「いえいえ、構いませんよ。
それに、謝るのはこちらの方です。
サイロに何を頼まれたかは存じませんが、付き合わせてしまったようですからね」
弁明しようとするサイロ君を手で制し、サンディさんはそう言った。どうやらこの人にはお見通しらしい。
「お嬢さんもどうも…………」
だが、彼はジェリアを目にした直後、固まってしまった。
サイロ君と全く同じ反応だ……まさか。
と言う事は、もしかするとこの人も……
「クボタさん!
いけませんぞ!それはいけません!」
サンディさんは息を吹き返すかのようにして突然また動き始めると……
やはりと言うべきか、そのようにして声を上げ始めた。
ああやっぱり、この人も勘違いしてるな。
と言うか、本当に勘違いするの好きだなこの二人
は……
「ねえクボタさん?
一体、私達の何がいけないのかしら?」
ジェリアは俺の隣に立ち、そう言う。
それは、俺と君がね……
なんて、言えるはずも無く。
「ボソ……(もう良いって、もう説明がめんどくさいよ)
……さあ?
ジェリアちゃん、そろそろ行こうか。
じゃあサンディさん!また来ますね!」
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