異世界魔物大図鑑 転生したら魔物使いとかいう職業になった俺は、とりあえず魔物を育てながら図鑑的なモノを作る事にしました

おーるぼん

文字の大きさ
84 / 515
二章 〜下級魔物使い〜

二十六話 早朝の戦い その3

しおりを挟む
簡単なあらすじ『サイロ君との試合、開始です』



まるで本物の審判のように、毅然とした態度で佇むジェリア。

その後ろでは四匹の先遣隊ゴブリン、ミドルスライム、チビちゃんが俺達の試合を見物している。

まあ、彼等への指示を出すはずの者達が、今別の事をしているのだから、むしろそうするしかないのであろうが……

ところが、まだやってもいないのにもう飽き始めている者も存在するようで、先遣隊ゴブリンのうち二匹はミドルスライムやチビちゃんを持ち上げようとし。

ミドルスライムでは『重いけど持てるわ、お前いける?』、『凄いなお前』みたいな表情を。

チビちゃんでは『重!?』、『それは無理だろ』、みたいな表情をしていた……ゴブリンは意外と、表情豊かであるらしい。

そして後の二匹は俺、サイロ君をそれぞれ応援しているように見える。

それと、こちらを応援している方は恐らく、プチ男と一番仲の良かった奴だろう。アイツ良い奴だな。

そんな彼等にどうしても目が行き、気が散って仕方が無いが……もう試合はちゃんと始まっている。

自分が油断してどうするんだ。
俺はそう自らを律し、ユニタウルス、プチ男のいる正面へと視線を戻した。

幸い、試合はまだ大きな動きを見せてはおらず、
二匹は互いに良い位置を取るべく、どちらも時計回りに動いている。

だが、そのせいでいつまで経ってもそのぐるぐる移動は終わらずにいた。

サイロ君はそれを見てほんの少し、呆れたような表情をしている。

それはまるで、『クボタさんの魔物とは言え、プチスライム相手に何やってるんだコイツは……』とでも言いたげな様子だ。

しかし、そんな彼の表情に気付いた俺は勝利を確信し、身体から緊張を解き放つため、ため息を一つ吐き出した。

そう言えば聞いていなかったが、この様子だと彼はGランクと見て間違いはないだろう。

ここまで体格差があると言うのに旋回し、好位置を得ようとしているユニタウルス……

つまり、この魔物は目の前の球体をそうした後でないと攻撃してはならない『自分と同等、もしくは格上の相手』として捉えている。

(プチ男は逆に自分よりも重い相手なのでそうしているのだろう)

にも関わらず、彼はそんな表情をしているのだ。
確実にユニタウルスが今置かれている状況も、このような動きをしている理由も、今一つよく分かってはいないのだろう。

……まあ、こちらからすれば好都合だ。

俺とプチ男は頭脳と肉体、一人と一匹の力を合わせて戦えるのに対し。

あちらはユニタウルス一匹のみで戦っているようなものなのだから。

だからそう、例え彼が指示を出したとしても、やや的外れであろうそれを心配する必要はない。

そう考えた俺はプチ男に指示を出し、攻撃に移らせる事にした。

「プチ男!ユニタウルスの調子さえ狂わせればこっちの勝ちだ!

だから、まずは〝ぐるぐる〟をやるんだ!」

俺がそう言うと、プチ男はすぐにその場で縦回転を始めた。

これはプチ男が少々ふざけながら練習をしていた時、俺にやった事だ。

(ちなみに、俺の指示は他の魔物にも理解出来る可能性があるため。

敢えて技名はネーミングセンスのカケラも無く、またそれでいてプチ男達にもすぐ分かるようなものにしている……文句あるか?)

そして、俺がそうするよう指示を出した理由は……

「ああっ!」

突然、サイロ君が叫んだ。

ユニタウルスがよろめき、首を左右にぶんぶんと振っていたからだ。

その足は勿論止まっている。

……これだ。
これが目的だ。

プチ男の回転は割と強力であり、草の根や柔らかい土程度ならば吹き飛ばしてしまう。

ユニタウルスはそうして飛んで来た、土埃で視界を奪われてしまい、あのような行動をしているのだ。

そう、あの時の俺のように……とにかく。

今がチャンスである。

「今だ!」

俺の声と同時にプチ男は仕掛けた。

彼はユニタウルスが持つ一本角に張り付いたかと思うと、すぐ肉体を右方向へと急速に伸ばし。

次にそれを、再びすぐさま元に戻す事で逆方向への力を生み出し、相手の巨大を大きく揺さぶった。

すると、そうされたユニタウルスは。
バランスを崩され、背に土を付ける事となった。

……あれは、コイツの〝投げ〟だ。

「なるほど……」

左右へと回り込む程の時間も無く。
かと言って、真っ向から挑んで簡単に倒せる相手でも無いならばと。

まずは相手の体勢、ペースを崩せる投げを選択したワケか。

確かに、アイツの判断は一撃で勝負の決まるこのルールでは少し慎重過ぎるとも言えるが。

〝本番〟なら大正解の行動だ。
流石、我らのプチ男である。

ただし、綺麗に決まったとは言い難い。

ユニタウルスは傍から見れば、投げられたと言うよりも横転しただけのように見えたはずだ……もう少し、練習が必要であろう。

しかし、チビちゃんと戦った時と言い、コイツ実戦だと投げ技ばかりするようになった気がする。

気に入ったのだろうか?

ならば今度から『グラップラープチ男』と呼ぶ事に……は、しないが。

「そこまで!……で、良いかしら?
一応攻撃はされたワケだし」

「そう……っスね……
強いっスねクボタさん。完敗です」

そして審判、もといジェリアがそう言い。
また、サイロ君もそれに納得した事で。

クボタVSサイロ君の試合は無事、俺の勝利に終わった。

「やったなプチ……」

「流石プチ男様ね!」

そこで俺が、プチ男へと労いの言葉を掛けつつ撫で撫でしようとしたまさにその時。

ジェリアが俺の目前から、プチ男という名の対象物を奪い取った。

すると今度は、悲しげに宙を漂っていた俺の掌の下に、ミドルスライムが入って来る……

コイツ、ジェリアがプチ男ばっかりかまうからストレス溜まってるんじゃないか?

何にせよ、可哀想なヤツだな。

そう思った俺は対象が変わった事にも構わず、それを撫で撫でする。

「クボタさん!ありがとうございました!
負けましたけど、俄然やる気が出てきました!

俺も、コイツも、もっと強くなるために頑張ります!なんで気が向いたら、こうやってまた俺達と戦ってもらえませんか?」

サイロ君はユニタウルスを起こした後にそう言った。

その言葉に嘘があるはずもなく、やる気もたっぷりな様子だ。

彼は魔物が良いのだから、もっと経験を積めばなかなかの魔物使いになるに違いない。サイロ君とユニタウルスの成長には期待しておくとしよう。

「勿論だよ。君とその子……いや、特に君はもっと経験が必要みたいだからね」

「ええっ、俺ですか!?一応聞きますけど、それイヤミじゃないですよね!?」

「違う違う、だって君……」

「おやおや、クボタさんではありませんか」

その時、今は12月かと錯覚してしまいそうな容姿をしている人物が俺達の前へと現れた。

いや失礼。
サンタさんではなくて、サンディさんだ。

「あ、どうもサンディさん。
すみません、サイロ君の仕事の邪魔しちゃって」

俺は立ち上がり、彼へと挨拶する。

「いや、これは俺が!」

「いえいえ、構いませんよ。
それに、謝るのはこちらの方です。

サイロに何を頼まれたかは存じませんが、付き合わせてしまったようですからね」

弁明しようとするサイロ君を手で制し、サンディさんはそう言った。どうやらこの人にはお見通しらしい。

「お嬢さんもどうも…………」

だが、彼はジェリアを目にした直後、固まってしまった。

サイロ君と全く同じ反応だ……まさか。
と言う事は、もしかするとこの人も……

「クボタさん!
いけませんぞ!それはいけません!」

サンディさんは息を吹き返すかのようにして突然また動き始めると……

やはりと言うべきか、そのようにして声を上げ始めた。

ああやっぱり、この人も勘違いしてるな。
と言うか、本当に勘違いするの好きだなこの二人
は……

「ねえクボタさん?
一体、私達の何がいけないのかしら?」

ジェリアは俺の隣に立ち、そう言う。

それは、俺と君がね……
なんて、言えるはずも無く。

「ボソ……(もう良いって、もう説明がめんどくさいよ)

……さあ?

ジェリアちゃん、そろそろ行こうか。
じゃあサンディさん!また来ますね!」

「クボタさん!いけませんぞ!」

そして何もかもが面倒臭くなった俺は。

サンディさんに説明する義務を完全に放棄し、ジェリアの手を引いて坂道を駆け下った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした

渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞! 2024/02/21(水)1巻発売! 2024/07/22(月)2巻発売!(コミカライズ企画進行中発表!) 2024/12/16(月)3巻発売! 2025/04/14(月)4巻発売! 応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!! 刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました! 旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』 ===== 車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。 そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。 女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。 それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。 ※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

処理中です...