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二章 〜下級魔物使い〜
五十二話 頭首様の悩み事 その2
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簡単なあらすじ『サチエが作った御守りを貰い、出掛けて行った家族は……』
沈黙が部屋に染み入ろうかという頃、漸くダマレイは口を開いた。
「恐らく、魔物に襲われたのでしょう。私が仲間からそれを聞き、彼等の元に駆け付けた時にはもう……
私達は彼等を手厚く葬りました。
使いの者に彼等の訃報を街へと報告に行かせても尚、遺体を引き取りに来る親族はいなかったので……もしかすると彼等は、異国から来た観光客だったのかもしれませんね。
そして、サチエはその日一日中、塞ぎ込んでいました。彼等の死に負い目を感じていたのでしょう。
あれはただの不慮の事故であり、あの子の渡した御守りがいけなかった訳でも、あの子自身がいけなかった訳でもないと言うのに……
翌日からでしたね。
サチエが一切の魔法の修練をやめ、武術にのめり込むようになったのは。
必死に武術の修練に打ち込むその姿に当初の私は、てっきり息子はもう、立ち直ったとばかり思っていたのですが……
サチエは学校でいつも魔法を教わっているはずの時刻になると、それを抜け出して来て突然、私に向かってこう言ったのです。
『父さん、私は魔法を二度と使わない。修練も必要ない。だからそれを教える時間も私だけは武術の修練が出来るよう、先生に口添えして欲しいんだ。あんなものでは誰も守る事など出来ない。武術でしか、己の力でしか、大切なものを守る事は出来ないんだ』
あの時はっきりと息子はそう言い切りました。
血が滴り落ちる程強く、拳を握り締めながら。
私は、それを認めませんでした。
魔法を覚える事は戦術の幅を広げる事にも繋がり、それこそ本当の力を……大切なものを守るための強さを求めている者には必要なものであり、息子にとっても勿論、これ以上ない程に必要なものでありましたから。
それに、私が息子の要求を聞き入れるという事は、『息子の作った御守りは失敗作だった。息子の〝大切なもの〟への想いは、何の意味もなかった』とあの子に言い放ってしまうようなもの……そんな気がしたのです。
そう考えた私と息子は激しく衝突しました。
しかし、私に似てしまったのでしょうか。
息子も絶対に自分の意見を曲げようとはしませんでしたね。
その後私に頼むのは無理だと考えた息子は、魔法の修練の時間になると学校を抜け出し、たった独りで武術の鍛錬をしていたようですね。
歳を重ね、そこを巣立つ時まで、ずっと……
そして、今でも息子の、魔法への拒絶は続いています。
…………そうです。
だから私は息子に……サチエに、魔法と、ひいては自分自身に、もう一度向き合って欲しいと願い続けているのです。
私も、あの時からずっと……」
そこでダマレイは再び昔を懐かしむような、悲しむような、そんなような瞳で宙を見、部屋にはまた沈黙が作り上げられようとしていた。
「……そうだったんですね、全然知りませんでした。
あんなにも僕と楽しそうに接してくれる息子さんに、そんな事があったなんて」
そして、俺は完全なる沈黙が訪れる前にそう言った。
彼がした過去の告白と、その時の彼とサチエの心情を思い、それを1秒でも早く、きちんと受け止めたのだという意思表示をしたかったのだ。
「いえ。
普段息子は気丈を装っているんですよ。
私の前では特に……恐らく、〝ここの者ではない〟クボタさんだったからこそ、息子はそのように接する事が出来たのでしょう。
この町にいる者の中で、サチエの過去を知らない者は年少者くらいしかいませんから……初めて出会った時の、貴方の事を話すサチエは珍しく嬉しそうな様子でしたよ。
最も、私がそれに気付いた途端、いつも通りのあの子に戻りましたがね」
ダマレイは言った。
葛藤や反抗期(?)……街で見せた様子からも何となく察しは付いていたが、やはりサチエも次期頭首とはいえど年相応の青年であったらしい。
まあそれは悪い事ではないし、むしろそのギャップも彼の魅力の一つであるとは思うが。
「…………クボタさん、こんな事を頼めるのは貴方しかいません。どうかお願いです。息子に、もう一度魔法を」
そしてまた、ダマレイが何かを決心したような表情で話し始めた……
その時だった。
「ど、どうしたんですか!?」
「サチエっ!?」
コルリスとジェリアの声が聞こえたかと思えば。
それと同時に扉を開け放ち、サチエが現れたのは。
「いい加減にしてくれ父さん!!父さんは……アンタは!!私をこれ以上辱めて何がしたいんだ!!」
それだけ言うと、サチエは駆け出して行った……
沈黙が部屋に染み入ろうかという頃、漸くダマレイは口を開いた。
「恐らく、魔物に襲われたのでしょう。私が仲間からそれを聞き、彼等の元に駆け付けた時にはもう……
私達は彼等を手厚く葬りました。
使いの者に彼等の訃報を街へと報告に行かせても尚、遺体を引き取りに来る親族はいなかったので……もしかすると彼等は、異国から来た観光客だったのかもしれませんね。
そして、サチエはその日一日中、塞ぎ込んでいました。彼等の死に負い目を感じていたのでしょう。
あれはただの不慮の事故であり、あの子の渡した御守りがいけなかった訳でも、あの子自身がいけなかった訳でもないと言うのに……
翌日からでしたね。
サチエが一切の魔法の修練をやめ、武術にのめり込むようになったのは。
必死に武術の修練に打ち込むその姿に当初の私は、てっきり息子はもう、立ち直ったとばかり思っていたのですが……
サチエは学校でいつも魔法を教わっているはずの時刻になると、それを抜け出して来て突然、私に向かってこう言ったのです。
『父さん、私は魔法を二度と使わない。修練も必要ない。だからそれを教える時間も私だけは武術の修練が出来るよう、先生に口添えして欲しいんだ。あんなものでは誰も守る事など出来ない。武術でしか、己の力でしか、大切なものを守る事は出来ないんだ』
あの時はっきりと息子はそう言い切りました。
血が滴り落ちる程強く、拳を握り締めながら。
私は、それを認めませんでした。
魔法を覚える事は戦術の幅を広げる事にも繋がり、それこそ本当の力を……大切なものを守るための強さを求めている者には必要なものであり、息子にとっても勿論、これ以上ない程に必要なものでありましたから。
それに、私が息子の要求を聞き入れるという事は、『息子の作った御守りは失敗作だった。息子の〝大切なもの〟への想いは、何の意味もなかった』とあの子に言い放ってしまうようなもの……そんな気がしたのです。
そう考えた私と息子は激しく衝突しました。
しかし、私に似てしまったのでしょうか。
息子も絶対に自分の意見を曲げようとはしませんでしたね。
その後私に頼むのは無理だと考えた息子は、魔法の修練の時間になると学校を抜け出し、たった独りで武術の鍛錬をしていたようですね。
歳を重ね、そこを巣立つ時まで、ずっと……
そして、今でも息子の、魔法への拒絶は続いています。
…………そうです。
だから私は息子に……サチエに、魔法と、ひいては自分自身に、もう一度向き合って欲しいと願い続けているのです。
私も、あの時からずっと……」
そこでダマレイは再び昔を懐かしむような、悲しむような、そんなような瞳で宙を見、部屋にはまた沈黙が作り上げられようとしていた。
「……そうだったんですね、全然知りませんでした。
あんなにも僕と楽しそうに接してくれる息子さんに、そんな事があったなんて」
そして、俺は完全なる沈黙が訪れる前にそう言った。
彼がした過去の告白と、その時の彼とサチエの心情を思い、それを1秒でも早く、きちんと受け止めたのだという意思表示をしたかったのだ。
「いえ。
普段息子は気丈を装っているんですよ。
私の前では特に……恐らく、〝ここの者ではない〟クボタさんだったからこそ、息子はそのように接する事が出来たのでしょう。
この町にいる者の中で、サチエの過去を知らない者は年少者くらいしかいませんから……初めて出会った時の、貴方の事を話すサチエは珍しく嬉しそうな様子でしたよ。
最も、私がそれに気付いた途端、いつも通りのあの子に戻りましたがね」
ダマレイは言った。
葛藤や反抗期(?)……街で見せた様子からも何となく察しは付いていたが、やはりサチエも次期頭首とはいえど年相応の青年であったらしい。
まあそれは悪い事ではないし、むしろそのギャップも彼の魅力の一つであるとは思うが。
「…………クボタさん、こんな事を頼めるのは貴方しかいません。どうかお願いです。息子に、もう一度魔法を」
そしてまた、ダマレイが何かを決心したような表情で話し始めた……
その時だった。
「ど、どうしたんですか!?」
「サチエっ!?」
コルリスとジェリアの声が聞こえたかと思えば。
それと同時に扉を開け放ち、サチエが現れたのは。
「いい加減にしてくれ父さん!!父さんは……アンタは!!私をこれ以上辱めて何がしたいんだ!!」
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