117 / 515
二章 〜下級魔物使い〜
五十五話 伸び上がる影
しおりを挟む
簡単なあらすじ『オークを食べた、その魔物は……?』
突如身を襲った激痛に頭を抱えている俺と、そんな俺を見て狼狽えるサチエ。
いや……正確に言えば、彼が狼狽えているのはそのせい〝だけ〟ではないな。
目の前にいる、三匹のオークを喰らったアンデッドのような魔物も、その原因の一つなのだから……
〝またやってしまった。すまない。許してくれ……
私も、すぐに行くから〟
〝その声〟の雰囲気が変わった。
先程までは弱々しく、最早形無き者達に謝罪し続けるばかりだったそれが、たった今何かしらの覚悟を持ったようだ。
その者の声が今までよりも鋭く、それでいて力強く、俺の頭に響き渡ったのだから間違いはないであろう。
「クボタ!大丈夫か!?立てるか!?立てるなら今からでも逃げろ!私が時間を稼ぐ!」
サチエはそう言い、魔物に向けて短剣を突き出す。
その頬を一筋の汗が伝った。
緊張しているのだろう。敵は未知であり、味方はこの有様なのだ……そうなるのも仕方がない。
だが、その緊張はあくまでも『目の前のもの』に対してだけであり、『不可思議なもの』に対してではないように見える。
もしかするとサチエにはこの声が聞こえていないのかもしれない。
いや、先程からそれについて驚く様子はないのだし、それはほぼ確定であろう。
それよりもだ……サチエを、サチエをこんなものとたった一人で戦わせるワケにはいかない!
そう思った俺は何とか立ち上がり、それと戦うため両拳を顎程の高さにまで持ち上げた。
〝ク……いや、英雄よ。やっと戦う意志を見せてくれたね。そうだ、それで良い。
『こうなったせいで』苦しむ仲間達を天に返してやる事も出来ず……自死すらも出来ず……
それでも尚、こんな哀れな魔物について来てくれる者達、それを殺してしまう程堕ちた私は、君に倒される事を待ち望んでいたんだ〟
その時に、また何者かが声を発した。
……今〝それと〟戦おうとする意思表示をした者は俺だけであり、サチエがそのような事を言うはずもない。
やはり声の主は、あのアンデッドらしき魔物で間違いはないのだろう……与えられた覚えのない別称で呼ばれている理由までは分からないが。
〝しかし……何故だろう。
君はどうやら『まだ弱い』ようだね。
私の声を聞くだけでも苦しんでいるように見える。姿を取り戻しても尚、完全なる復活はまだ出来ていないのか……
まあ、仕方がない。
なら英雄よ、これで話すのはやめるから、我慢してよく聞いてくれ。
私の弱点は生前と変わらず、ここだ。
さあ、じっとしているから、今のうちに倒しておくれ。私の体が、君達を殺さないうちに……
さあ、今こそ君が私とした約束を果たす時だ!
私がこうなった時、君の手で終わらせてくれるという約束を!〟
そう言うと、アンデッドのようなその魔物は突然伸び上がり、本体を曝け出して見せた。
何と言う事だ……俺達が見ていたのは、そのたった一部であったようだ。
その魔物は長い首と逞しかったであろう爬虫類のような体、それと大きな翼を持つ、ドラゴンだったのだから。
そう、俺達が見、アンデッドだと予測していたアレは、巨大なドラゴンの……それも、アンデッドとなっているドラゴンの頭だったのだ。
そのドラゴンだったものは今、〝かつての心臓〟が俺達に見えるよう、肋骨を自身の爪で外側に広げている。
爪、肋骨は共にみしみしと音を慣らし、それすらも持ち主の苦しみがどれ程のものであったかを、俺達に訴えているような気がした。
「ドラゴンゾンビ……コイツは、私達では…………頼むクボタ、逃げてくれ。
そうでなければ、二人共……」
サチエはますます身を固くし、俺に逃げるように言う。やはり彼には、この魔物の声は聞こえていないようだ。
なら、魔物がしたらしき約束の事も知らないのであろう……俺も同じではあるが。
しかし、あの声は真に迫っていた。
だとすれば、アイツは俺が倒してやらなければならない……出来るだろうか。
「ごめん、それは出来ない。どうやらコイツは、俺が倒さなきゃならない……みたいなんだ」
「クボタ!?何を言って……うっ」
「サチエっ!?」
その時、突然サチエが倒れた。
彼の頭上には久しく見ていなかった、あの球体のようなものが浮かんでいる。
「クボタさん……!待ってください!
それは……その約束は!
僕が果たさなければならないものです!」
それはやはり、自称神様だった。
突如身を襲った激痛に頭を抱えている俺と、そんな俺を見て狼狽えるサチエ。
いや……正確に言えば、彼が狼狽えているのはそのせい〝だけ〟ではないな。
目の前にいる、三匹のオークを喰らったアンデッドのような魔物も、その原因の一つなのだから……
〝またやってしまった。すまない。許してくれ……
私も、すぐに行くから〟
〝その声〟の雰囲気が変わった。
先程までは弱々しく、最早形無き者達に謝罪し続けるばかりだったそれが、たった今何かしらの覚悟を持ったようだ。
その者の声が今までよりも鋭く、それでいて力強く、俺の頭に響き渡ったのだから間違いはないであろう。
「クボタ!大丈夫か!?立てるか!?立てるなら今からでも逃げろ!私が時間を稼ぐ!」
サチエはそう言い、魔物に向けて短剣を突き出す。
その頬を一筋の汗が伝った。
緊張しているのだろう。敵は未知であり、味方はこの有様なのだ……そうなるのも仕方がない。
だが、その緊張はあくまでも『目の前のもの』に対してだけであり、『不可思議なもの』に対してではないように見える。
もしかするとサチエにはこの声が聞こえていないのかもしれない。
いや、先程からそれについて驚く様子はないのだし、それはほぼ確定であろう。
それよりもだ……サチエを、サチエをこんなものとたった一人で戦わせるワケにはいかない!
そう思った俺は何とか立ち上がり、それと戦うため両拳を顎程の高さにまで持ち上げた。
〝ク……いや、英雄よ。やっと戦う意志を見せてくれたね。そうだ、それで良い。
『こうなったせいで』苦しむ仲間達を天に返してやる事も出来ず……自死すらも出来ず……
それでも尚、こんな哀れな魔物について来てくれる者達、それを殺してしまう程堕ちた私は、君に倒される事を待ち望んでいたんだ〟
その時に、また何者かが声を発した。
……今〝それと〟戦おうとする意思表示をした者は俺だけであり、サチエがそのような事を言うはずもない。
やはり声の主は、あのアンデッドらしき魔物で間違いはないのだろう……与えられた覚えのない別称で呼ばれている理由までは分からないが。
〝しかし……何故だろう。
君はどうやら『まだ弱い』ようだね。
私の声を聞くだけでも苦しんでいるように見える。姿を取り戻しても尚、完全なる復活はまだ出来ていないのか……
まあ、仕方がない。
なら英雄よ、これで話すのはやめるから、我慢してよく聞いてくれ。
私の弱点は生前と変わらず、ここだ。
さあ、じっとしているから、今のうちに倒しておくれ。私の体が、君達を殺さないうちに……
さあ、今こそ君が私とした約束を果たす時だ!
私がこうなった時、君の手で終わらせてくれるという約束を!〟
そう言うと、アンデッドのようなその魔物は突然伸び上がり、本体を曝け出して見せた。
何と言う事だ……俺達が見ていたのは、そのたった一部であったようだ。
その魔物は長い首と逞しかったであろう爬虫類のような体、それと大きな翼を持つ、ドラゴンだったのだから。
そう、俺達が見、アンデッドだと予測していたアレは、巨大なドラゴンの……それも、アンデッドとなっているドラゴンの頭だったのだ。
そのドラゴンだったものは今、〝かつての心臓〟が俺達に見えるよう、肋骨を自身の爪で外側に広げている。
爪、肋骨は共にみしみしと音を慣らし、それすらも持ち主の苦しみがどれ程のものであったかを、俺達に訴えているような気がした。
「ドラゴンゾンビ……コイツは、私達では…………頼むクボタ、逃げてくれ。
そうでなければ、二人共……」
サチエはますます身を固くし、俺に逃げるように言う。やはり彼には、この魔物の声は聞こえていないようだ。
なら、魔物がしたらしき約束の事も知らないのであろう……俺も同じではあるが。
しかし、あの声は真に迫っていた。
だとすれば、アイツは俺が倒してやらなければならない……出来るだろうか。
「ごめん、それは出来ない。どうやらコイツは、俺が倒さなきゃならない……みたいなんだ」
「クボタ!?何を言って……うっ」
「サチエっ!?」
その時、突然サチエが倒れた。
彼の頭上には久しく見ていなかった、あの球体のようなものが浮かんでいる。
「クボタさん……!待ってください!
それは……その約束は!
僕が果たさなければならないものです!」
それはやはり、自称神様だった。
0
あなたにおすすめの小説
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした
渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞!
2024/02/21(水)1巻発売!
2024/07/22(月)2巻発売!(コミカライズ企画進行中発表!)
2024/12/16(月)3巻発売!
2025/04/14(月)4巻発売!
応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!!
刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました!
旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』
=====
車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。
そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。
女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。
それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。
※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる