異世界魔物大図鑑 転生したら魔物使いとかいう職業になった俺は、とりあえず魔物を育てながら図鑑的なモノを作る事にしました

おーるぼん

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二章 〜下級魔物使い〜

六十三話 〝あのお方〟 その3

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簡単なあらすじ『〝あのお方〟とは?』



ジェリアからの質問を受けたサチエは〝あの魔物〟について話し始めた……

「その魔物は間違いなく、我々が『ザキ地方の守り神様』と崇めている魔物だろう。

あのお方は二十年程前に突然魔王城へと住み着くと、〝そこに存在している〟というだけで敵を退け、戦争を終わらせたのだ……

そこで我々はあのお方に敬意を払い、そう呼んでいる」

サチエは話し終えるとため息を一つ吐いた。
何故かやや顔を強張らせながら。

「な、何ですって!?守り神!?魔王城!?
なら、クボタさんは今……」

ジェリアは酷く驚いた様子でそう言う。

「そうだ……あのお方がそこに住んでいるのだから、もし何処かに運ばれたのならばクボタもそこに、魔王城にいる可能性が高い。

だからこそ、急がなければならないのだ。
あの場所はザキ地方で……いや、この国で最も危険な場所なのだからな」

サチエは言う。
そう、彼の表情の理由はこれだったのだ。

「そ、そんな……でも、まだクボタさんがそこにいると決まった訳じゃないですし、それにあの魔物は!あの魔物は知恵があるように見えました!

だからクボタさんの事もきっと助けてくれて、無事でいるはずです……!いえ、むしろそこまでの魔物にクボタさんが匿われているのなら、すごく安全なんじゃないですか?

そうですよね?サチエさん?ね?ね?」

顔を青くするジェリアを宥めながらコルリスはそう言った。

だが衝撃的な事実を知り、流石に彼女も動揺しているようだ。

「私もそう信じたい……信じたいが!

あのお方は魔物なんだ!
今まで自身の首を取ろうとした人間、魔物以外に危害を加えた事はないそうだが、そのお姿を現す事は我々アトラン族達の前にすらも殆どなく、声を聞けるのも儀式の時、それも一言だけ……

そんなあのお方が二人の前に突然現れ、そう言ったのだ……〝まだ我々に危害を加えていない〟というだけの、未だ謎に包まれている魔物が……

そうなれば、断言出来るはずがないだろう」

サチエはそこで一旦言葉を句切り、両の拳を握り締める。

そして数秒後、絞り出すようにこう答えた。

「とにかく、まずはクボタと逸れた場所を探すんだ。そこに居なかったら恐らく、彼は〝あそこ〟にいる……急ぐぞ」

その後、荒野には沈黙が訪れる……しかし、そこで歩みを止める者は誰一人としていなかった。



それから暫くして一行は『クボタとドラゴンゾンビがいたであろう』場所へと辿り着いた。

そこで焼け焦げ、短く刈り込まれている枯れ草達がその事を教えてくれたのだ。

しかし、既にそこにはクボタも、ドラゴンゾンビもいなかった。一人と一匹は、影も形すらも残さずにこの場を去っていたのだ。

いや、骸がなかっただけまだましなのかもしれないが、だとすると彼はやはり……

そのような考えが頭に浮かんでいるのだろう。
彼等は今、険しい顔をしていた。

「やはり、いないか……ならば、魔王城に行くしかないようだな」

そう言ったのはサチエだ。
彼はやや遠方にある魔王城を見据え、まるでそれが全ての元凶であるかのように睨んでいる。

「ええ……でもあんな所、私達だけで大丈夫かしら。いえ、でもそうしないと……」

次にジェリアが口を開く。

彼女は彼を助けたい気持ちと、魔王城へと足を踏み入れる事への不安、それがないまぜになっているかのような表情をしていた……

そして、二人のそんな表情を柔らかいものにして見せたのがコルリスとルーであった。

「…………大丈夫だよジェリアちゃん。きっと。

さあ行こう!私はクボタさんに……師匠に、まだ殆ど何も教わってないんだもの!このままいなくなられたら困っちゃうよ!ルーちゃんもそう思うよね?」

「むー!」

「よし!それじゃあ出発!」

そう言ってコルリスとルーは皆の先頭に立つと、誰の了承も得ないままに歩き始めたのだ。

だが、しっかりとした足取りで歩くルーの横で、コルリスはガタガタと震える脚を無理に動かし、前進を続けていた。

どうやらルーの方は彼を助けるという確固たる決意を持ってそうしているようだが、彼女の方はそれに便乗しただけで、実際の所は魔王城への侵入が怖くて怖くて仕方がないようである。

しかし、その背中からは恐れの気持ちと同時に、『彼女の持つ、彼への想い』も強く、痛い程にそれを見た者へと伝わっていた。

つまり、ああしてこそいるが彼女は本気なのだ。

本気で彼女は彼を助けたいと、戻って来て欲しいと、そう思っているのだ。〝あれ〟で彼女は、本気で魔王城まで行こうとしているのだ。

……同じ気持ちを持っているにも関わらず、現時点では最も非力な存在であろう彼女にそれが出来て、私達が躊躇しているのは可笑しな話ではないか。

そう、思ったのかもしれない。
二人は頬を緩め、彼女達に続いて歩き出す。

「……フフ、そうね。貴女の言う通りきっと大丈夫だわ。行きましょうコルリス。

でも、もう少しちゃんと歩きなさい?
行く前から転んで怪我でもしてたら世話ないわよ」

「ボソリ(クボタよ。良い弟子を持ったな)」

こうして一行は行き先を魔王城へと決め、再び歩み始めようとしていた…………

その時。
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