OVER-DRIVE

陽芹孝介

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第十五話 エルサ平原とハイキング

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  ……タジフ族キャンプ……


 「すっかりご馳走になったなぁ……。随分遅くなっちまった」
  そうギルが言うように、時刻は深夜に差し掛かろうとしていた。
 「皆心配してるね……多分……」
  苦笑いしてそう言うユイに、ギルは言った。
 「お前がいつまでも食ってっからだろっ」
  するとギルとユイを見送りに、キャンプの入口まで来ていた、族長のマルコが言った。
 「我々も引き留めてしまったからな……」
  マルコは相変わらず仏頂面で、側にいた側近は黙って頷いている。
 「いや……楽しかったぜ。飯も美味うまかったからな……」
  マルコがギルに言った。
 「主ら……ドレルへ向かうと言っていたな……」
 「それがどうかしたか?」 
  マルコは眉間にシワを寄せた。
 「近々ドレルでは祭典がある……それに伴い各地域の要人達がドレルに集りつつある……」
  ユイは目を丸くした。
 「祭典があるなら……当然でしょ?」
  マルコは言った。
 「ここ最近、多くの賞金首ハンターが……このエルサ平原を通過している」
  ギルが言った。
 「そいつらもドレルに向かったってか?」
  マルコは頷いた。
 「時期的に考えても、間違いなかろう……」
  ユイが言った。
 「ハンターが……なんで?」
  ユイの疑問にギルが答えた。
 「つまり……賞金首共もドレルにいるわけだ……」
  ギルは頭を抱えた。
 「厄介だな……」
  マルコは頷いたが、ユイは目を丸くしたままだ。
 「なんで?……確かにガラは悪くなるけど、アタシらが困る事なんてないでしょ?」
  ギルは呆れた様子で言った。
 「祭典のある時期に、それだけ賞金首が集まるって事は……。それに乗じた暗殺やテロが起こる可能性が高ぇってわけだ」
  ユイはやっと事の大きさに気付き、その場で狼狽えた。
 「ヤバイじゃんっ!巻き込まれるよっ!……ルートを変えなきゃっ!」
  ギルの頭には、自然とロックのふてぶてしい顔が浮かんだ。
 「へっ……野郎がそんな玉かよ……」


  ……ウィングフリースペース……

  すっかり帰りが遅くなったギルとユイが、ウィングに帰った頃には、すでに深夜だった。
  二人がフリースペースに戻ると、皆そこに揃っており、出迎えたエリスの表情は怒りに満ちていた。
 「アンタ達っ!こんな時間まで何やってたのっ!?」
  エリスの剣幕に、ギルは後退りし、ユイは慌ててこれまでの経緯を説明した。
  ユイの話にエリスは納得したようだったが、表情は相変わらず険しい。
 「だったら、連絡くらいしなさいよぉっ!心配するでしょっ……」
  ギルは面目無さそうに言った。
 「すまねぇ……。それより話の続きだが……次の目的地のドレルは、何やら一悶着ありそうだぜ」
  ユイが言った。
 「そうだよ……目的地を変更しようよ……」
  すると話を聞いていたジュノスが口を開いた。
 「そりゃぁ困りまさぁ……。俺が帰れなくなるんで……」
  ギルとユイは、ジュノスに対して怪訝な表情を向けた。
 「さっきから気になっていたが……誰だ?お前……」
  ジュノスは笑顔で答えた。
 「ロック先輩の一の後輩……ジュノスでさぁ……」
 「ジュノスはこれでもアデルのエージェントだ」
  ジンが補足を入れると、ギルは呆れた様子で言った。
 「こんなヘラヘラした野郎が、エージェントか……。アデルも長くねぇかもな」
  ジュノスは苦笑いした。
 「キツイ人ですねぇ……」
  ロックが言った。
 「コイツの事は居ないと思ってくれていい……」
 「先輩まで……酷いっすよ……」
  ロックはジュノスを無視した。
 「賞金稼ぎが集まってんなら……面白そうだけどな……」
  ユイは不安な面持ちで言った。
 「アンタ……行く気なんじゃ……」
  するとジンが言った。
 「資金を調達するにはもってこいだな……悪くない……」
  ジンの言葉にエリスは目を丸くした。
 「どうして?」
  ロックが言った。
 「賞金稼ぎが集まってるって事は……それだけ賞金首もいやがるからな」
  ギルも納得した表情をした。
 「確かに悪くねぇな……。金はあるに越した事はねぇ……」
  エリスが言った。
 「まさかハントする気?」
  エリスとユイは明らかに、ドレルを避けたいと言った表情だったが……ジンの一言で態度を豹変せざるおえなくなる。
 「ゴールドアイランドとライフシティーでの、ショッピングの費用がかさんで、資金が随分減ったのだが……」
  エリスとユイは声を揃えた。
 「ドレルに決定っ!」
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