OVER-DRIVE

陽芹孝介

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第十六話 賞金稼ぎと剣士の国ドレル

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  ……剣士の街ドレル……


  エルサ平原からさらに南に下った街ドレル……南に位置する事もあり、一年を通して暖かい気候で、夏を除いては住みやすい街としても有名だ。
  街に建つ様々な建物は、煉瓦を基調とした建造物が多く、煉瓦独特の多彩や色彩が街を彩り、写真家や画家などが好みそうな、オシャレな町作りがされている。
  祭典前もあり入港審査が、普段より厳しめだったが、アデルのエージェントであるジュノスが一緒だったおかけで、ロック達はすんなりと入港できた。
 「それにしても……暑いなぁ……」
  そのオシャレな街を、気の抜けた表情で歩くロックに、同行していたエリスが言った。
 「南だもん……しかたないよ」
  ロックはいつも通りのツナギスタイルに、袖を腰で結んで刀を差し、上半身は青いチェッカー柄のネルシャツを羽織っている……いつもと違うのはツナギの裾が七分丈だと言うことだ。
  エリスに関してはデニムのホットパンツに黒いキャミソール……デニムからはみ出る太股が眩しい。
  街は祭典前もあってか賑わいがあり、多民族が入り交じって、まるで観光地のようだ。
  ただその中でガラの悪そうな連中や、それを見張るように歩き回る剣士達もいる。
  ガラの悪そうな連中は賞金稼ぎで、剣士達はおそらく、街を取り締まるドレルの剣士だろう。
 「なんか色んな人がいて……ゴチャゴチャしてるね」
  そう街の感想を言うエリスに、ロックが言った。
 「昔に比べたら華やかになった方だぜ……以前は剣士だらけで、殺伐とした街だったからな」
 「ロック……来たことあるの?」
 「まぁな……ドレルはアデルに剣士を多く派遣していたからな……。俺も何度か視察で来たことがある」
 「へぇー……馴染みの街なんだ」
 「馴染みって程じゃねぇが、確か……ここの首長はまだ、あのタヌキオヤジだったと思うぜ」
  エリスは目を丸くした。
 「タヌキ……?」
  二人がそんな会話をしつつ街を歩いていると、二人を見張るように後を着けている二人組がいた。
  その中の一人の男が、ロックを睨みながら、リーダー格の長い黒髪を後ろで束ねた男に言った。
 「アシャ様……あの男……殿をタヌキなどと……」
  アシャと呼ばれる男は、優しそうな顔だったが、その視線は鋭くをロックに向けていた。
 「あの男の腰の物は……刀ではないのか?」
  おそらくアシャの部下である男は、少し戸惑った表情で言った。
 「えっ、ええ……刀ですね……あれは……」
 「あのようなダラけた感じの者が、刀を腰に挿すとは……許せぬ……」
  アシャの怒りの原因に、部下は顔をひきつらせた。
 「あの……アシャ様……。殿の悪口を言っているのですが……」
 「刀と言うのは侍と言われる、崇高な剣士が持つ剣と云われていると言うのに……あのような者が持っているとは……許せぬ……」
  アシャに部下の言葉は入っていないようだ。
 「追いますか?」
  部下の言葉に、アシャは頷いた。
 「無論だ……」
  剣士二人に後をつけられているのを、知ってか知らないでか、ロックとエリスは話をしながら、街を進んでいる。
 「そう言えば……あのジュノスって奴は?」
  エリスの疑問に、ロックは面倒くさそうに言った。
 「なんか……アデルの駐屯基地に行くってよ」
  ロックとエリスが大通りから少し外れて、裏路地に入ると、後をつけている剣士二人が行動を開始する。
 「アシャ様……奴ら路地に入りましたよ」
 「よしっ……声を掛けるぞ……」
  アシャがそう言うと、部下の男は真剣な表情になり、アシャに続いて路地に入った。
  アシャと部下が路地に入ると、ロックとエリスが二人を待ち構えるように待っていた。
 「なんだぁ?テメェらは?」
  ロックは二人を睨み付け、エリスは不安な面持ちで二人を見ている。
  まさか気づかれていると、思っていなかった二人は、目を見開いて言葉を失っている。
  ロックは睨み付けたまま続けた。
 「さっきから後をつけやがって……。なんだってんだ?」
  アシャは戸惑いながらも、腰の剣に手を当てて、ロックに言った。
 「お主……気づいていたのか?」
  アシャの言葉づかいに、ロックは呆気にとられた。
 「お主?」
  アシャは警戒しながら言った。
 「お主の、その腰の物は……刀だな?」
 「だったらなんだよ?」
  アシャはロックを睨み付けた。
 「お主の様なダラけた男が刀を持つなど……それだけで十分に怪しい……」
  無茶苦茶な言いがかりに、エリスは思わず笑ってしまい、ロックは不快感を露にした。
  「はぁっ?なんだそりゃ?……お前らドレルの剣士だろう?そんなんで俺を怪しい輩と思ってんのか?」
  ロックの言葉に、部下の男は気まずそうな表情をしたが……アシャには関係ないようだ。
 「問答無用っ!その腰の物を抜けっ!」
  アシャが今にも襲いかかりそうなので、エリスは危険を察知し、ロックから距離を取った。
 「こんな狭い所で戦り合うつもりかよ?」
  ロックは不快感を通り越して、呆れた表情になったが、やはりアシャには関係なかった。
 「抜かぬなら……そのまま朽ち果てるがいいっ!」
  アシャは剣を抜いて、ロックに斬りかかったが……ロックはなんなくかわした。
  ロックに攻撃をかわされたアシャは、少し戸惑ったが、すぐに不敵に笑った。
 「やるではないか……。だが……あくまでも抜かんか……」
  アシャの攻撃をかわしたロックを、部下も驚いている。
 「アシャ様の攻撃をかわすとは……。しかし……アシャ様がやる気を出してしまう……」
 「かなりの手練れのようだが……。必ず刀を抜かしてやるぞっ!」
  アシャは再び剣を振りかぶって、ロックに襲いかかった。
 「てか……話を聞けよ……」
  ロックはそう言いながら、先程の様に難なく攻撃をかわしたが……どういうわけか、かわしたはずの剣がロックの脇腹を目掛けて襲ってきた。
  ロックはその光景に目を見開いた。
 (剣筋が変わった!?)

  ガキィーーンッ!

  たまらずロックは刀を抜刀して、アシャの剣を防いだ。
 「抜いたな……刀を……」
  刀を抜いたロックに、アシャは満足そうな表情だ。
  ロックは横飛びで剣をかわしたが、アシャがかわされた剣を振り切る直前に、剣筋を変えてロックを狙ったのだ。
  この様子にエリスも驚いた表情を見せた。
 (ロックに刀を抜かせた?)
  エリスが驚くのも無理はなく、これまでのロックなら、たかが街の喧嘩であれば刀を抜かずとも拳で済ませてきた。
  ロックは眉間にシワを寄せた。
 (コイツ……妙な剣を……)
  満足そうなアシャはロックに言った。
 「これで正々堂々と戦える……」
  アシャは剣を再び振りかぶり、ロックに襲いかかった。
  ロックはこの攻撃も難なくかわしたが……。

  ガキィーーンッ

 (剣の軌道が……また変わる……)
  ロックはなんとかアシャの攻撃を防いだが……攻勢のアシャの表情は険しくなった。
 (この男……また防いだ……)
  アシャはロックに防がれている剣に力をこめた。
 「この私の剣を二度も防ぐとは……お主、ただのチンピラではないな」
  ロックは剣を防ぎながら、アシャを睨み付けた。
 「誰がチンピラだっ!テメェ、話を聞けよ……善良な一般人をつかまえて……」
  アシャは後方にジャンプし、再びロックとの距離を取った。
 「お主の様な風貌で……崇高な武器である刀を持つこと事態が……許せぬのだ」
  アシャは剣を握る手に力をこめ、その様子にロックはげんなりした表情をしたが……ロックは自分の隣にそびえ立つ電柱に視線を移した。
  すると視線を移したロックに、アシャは襲いかかった。
 「よそ見をするなぁっ!」
  アシャはロックに勢い良く斬りかかったが……。

  ゴォーーーンッ!……ズズズッ!

 「なっ、何っ!?」
  ロックに斬りかかろうとしたその時……アシャの頭上に、電柱が音をたてて襲いかかってきた。ロックが刀で電柱を切断したのだ。
  これにはアシャもたまらず後方に逃げて、電柱が倒れるのを黙って待つしかなかった。

  ズゥーーーーンッ!

  轟音と共に電柱は倒壊し、その衝撃で狭い路地は砂埃で包まれた。
  アシャの部下も危険を察知し、反射的に後ずさりする。
 「凄い埃だっ!」
 「くっ、おのれっ……こしゃくなマネを……」
  アシャはこの砂埃に乗じて、ロックが攻撃してくると思い、身構えたが……。
 「…………なっ!?……」
  砂埃が晴れた頃には、ロック達の姿は路地になく、もぬけの殻だった。
  アシャは歯を食い縛った。
 「逃げられたか……」
 

  一方、アシャを撒くことに成功したロックとエリスは、ドレルの街を疾走していた。
 「なんで逃げなきゃならないのっ!」
  せっかくのショッピングを、トラブルによって台無しされたエリスは、ご機嫌斜めで走っている。
 「俺が知るかよっ!完全に言い掛かりだろっ!人を見かけで判断しやがって……」
 「アンタが胡散臭いからでしょっ!」
  どうやらエリスは、アシャの言い分も少しは納得しているようだ。
  ロックはエリスに口を尖らせた。
 「テメェまで何言ってやがるっ!」
 「それにしても……何だったの?アイツら……」
  ロックは難しい表情をした。
 「ドレルの剣士だろうけど……アイツ……結構やるぜ……」
  エリスはげんなりした表情をした。
 「でも……面倒くさそうなヤツだったね……」
  エリスの言葉に、ロックは思わず苦笑いした。
 「はは……違いねぇ……。とにかく、さっさと用事済ませて、ウィングに戻るぞ……」
  エリスは深く溜め息をついた。
 「はぁ……なんでこう……トラブルばっかかなぁ……」
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