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16.バッカスの地下

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「はあ、せっかくあの子を助けてあげたのに悪者扱いか。なんであの子喋れないんだろう。これから僕たちどうなっちゃうんだろう。どうしたら良いんだろう?」

地下牢に閉じ込められたキッドはぶつぶつと言う。


「知るかよ。処刑されるまでの間、今までの人生でも振り返ってたらどうだ?」

半ば諦め気味のガルーダは投げやりに答える。


「どこかに抜け穴があるはずですよ」

シルスラはあるはずもない抜け穴を懸命に探していた。

この地下牢は六つの房があるのだがシルスラたち以外は誰も入っていないようだ。そして三人とも同じ房に入れられていた。


「どうせ逝くなら楽に死なせて欲しいよな。俺たちを捕まえたあのおっさんに頼んでみるか」

ガルーダはもはや処分されることを受け入れているようだった。


「そ、そんなあ。僕まだ死にたくなんてないよ」

キッドの声はか細く震えていた。


皆、ゆっくりとしかし確実にこれからの処分を意識し始めついには誰も言葉を発しなくなっていた。



そして長い沈黙が続いたとき。


『どうやら大変なことになってるみたいだねえ。おぬしらまだ死にたくなんてないだろう?』

聞き覚えのある声がどこからか聞こえてきた。
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