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39.一方、門番たちは

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「このドラゴンいきなり炎吐いてきたりしないだろうな。ずっとこっち睨んでるぞ」

ミイラが乗ってきたブラックドラゴンはシルスラ達がその場を離れた後も魔王城の門の前に残り続けていた。


「まさか。ボーン様のドラゴンですよ。そんなことあるはずないでしょ」

もう一人の門番が言う。
どうやら先輩と後輩の関係のようだ。


「それもそうだよな。ブラックドラゴンはドラゴンの中でもかなり上位の種だし利口なはずだよな」

先輩の門番は無理やり気持ちを落ち着かせた。


「そうですよ。それにほら。よく見ると可愛い顔してるじゃないですか」

後輩の方も先輩と同じように落ち着くように笑顔で言った。しかしその笑顔はかなり引きつっているようだった。


「しかしボーン様が戻って来られるなんて驚きましたよね。またボーン様と一緒に戦える日が戻ってくるんですかね?」

ドラゴンから目をそらすように後輩は言った。


「そうなって欲しいな。今の魔王軍は色々と体制がおかしくなっているからな。魔王様も人が変わってしまったようだし」

魔王軍で働くモンスターの中にも最近の魔王を不審に思うものもいるようだ。


「今の魔王軍は金がかかり過ぎですよ。おかげで僕、家族サービスできなくて」

後輩は頭をかきながら言った。


「わかるぞ。俺も今月ピンチでな。悪いがしばらく飯は奢れんぞ」

先輩は必死の眼差しで後輩に訴える。


「でもボーン様が戻ってきたんですからきっと大丈夫。信じましょう」

ボーンことミイラは部下からの信頼はかなり厚いようだ。


「そうだな。俺もかなり期待してるぞ。そろそろ階段登り終わっただろうか?」

「どうですかね。あの階段死ぬほど長いですからね」

彼らもあの螺旋階段を登るのは辛い様子だ。


「さ、無駄話はこれくらいにしてちゃんと仕事するぞ」

今後の魔王軍の変革に期待して先輩は後輩に言った。


すると前方から低い唸り声が響いてきた。


「あ、これってもしかして」

後輩が言う。

ドラゴンは雄叫びとともに豪炎を口から噴き出した。


「やっぱり火を吐くんだな」

後輩の嫌な予想は当たった。


「まあドラゴンですから」

黒焦げになったところで門番たちは仕切り直すように門を見張り始めた。
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