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初めてのデート
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下校途中の食堂前に柊士の大型バイクが停めてあった。
「1人で乗れるか?」
以前 当て馬のような扱いをされた記憶が甦る。
「町田先輩 さっきの事 冗談とかじゃないですよね? また 前みたいなの 私 嫌ですから。次あったら 絶交します!」
ヘルメットを被せられ、顎紐を調整されながら、目の前の柊士に言い放つ。
その瞬間、顎紐に触れていた柊士の指が止まった。いきなりヘルメットごと頭を引き寄せられ 不意に唇を塞がれる。
ーーヒャッ。
声にならない息が漏れ
その息さえも柊士に奪われる。
やがて唇が離れると
「本気だから、…わかっただろ?」
ヘルメット越しに町田柊士の低い声が響いた。
緊張で体がこわばり バイクの後部にうまく跨がれそうにない。
「俺の肩使え。ステップに足掛けて
ほら 跨がれっ!」
繭が全体重をかけたとしても びくともしな肩。シャツ越しでもわかる逞しい身体。
一度乗った経験と、心と身体の距離がすこし近づいたことで繭は、バイクを操る町田柊士の逞しい背中に安心して体を委ねる事ができた。
柊士のバイクは東名高速道路から首都高速を抜けお台場海浜公園近くの倉庫が立ち並ぶ一角で停止した。
「後ろ 上手く乗れたな」
柊士はフルフェイスのヘルメットを外しまだ腰にしがみつく繭の腕に触れた。
「怖かった」
「ゆっくり降りな、乗る時と逆な」
力の入った繭の腕をそっとほぐすように腰から腕を離すのを手伝ってやる。
先に彼女がバイクから降りたのを確認し柊士もバイクから降りた。
「お台場は?」
「初めて」
今時 台場が初めてとはーー
「今日 純也がTコレイベントに出るから、藍川連れて来いってさ」
「ファッションイベント? うわー…気遅れしそう…」
絶対ムリ…
「気にすんな 俺の側にいろ」
柊士に手をひかれそのままイベント会場へ向かう。人の波が大きく膨れ上がり倉庫入り口にはファッショナブルな女の子やヒップホップ系カップル、欧米系やアフリカ系外国人など多種多様なファッショニスタが殺到している。
思わず、柊士の手を強く握り返す繭。
柊士に導かれ、会場入り口の係員に
純也から渡されていたIDカードを提示する。
「こちらからお入りください」
案内された入り口には [VIP Access]の表示。
長い列を素通りし、専用通路を進むと舞台袖から楽屋に直接入る事ができた。
楽屋では、男女問わず大勢のモデル達が専属のスタイリストに囲まれ、煌びやかに飾り立てられている。衣装や化粧が崩れないよう慎重に飲み物を口にする者、緊張をほぐすかのように談笑する者 その空間はまるで異世界のような華やかさだった。
その中心に 飛島純也はいた。
「柊ちゃん! こっち こっち」
大きく手を振り ぴょんと飛び跳ねた。
その派手な行動に 周りのスタッフやモデル達の視線が一斉に飛島純也に向けられる。
柊士は小さく息を吐き、軽く腕を上げてこたえる。
この場の雰囲気に馴染むつもりは毛頭無い。
招待してくれた純也へ義理を果たすただそれだけだった。
純也の視界には、周りの人間など全く入っていない。ただ柊士と繭に向けた行動だった。
「柊ちゃん こっち来いよ!ほらっ」
柊士は繭の手を強く握り 人混みの間を割くように進みながらも 彼の表情は変わらない。
軽薄な会話 軽すぎる笑い声 作られた虚像
俺達の居場所じゃない。
純也専用のスペースまで辿り着くと
「純也 義理は果たしたから じゃあな」
「えー柊ちゃん、来たばっかじゃん!」
純也の情けない声で
周りの視線が柊士と繭に注がれる。
柊士は純也の取り巻き連中を尻目に
「藍川 かえるぞ」
「うん」
繭は繋いだ手を強く握り返した。
その温もりだけがこの空間のなかで唯一、確かなものだった。
「1人で乗れるか?」
以前 当て馬のような扱いをされた記憶が甦る。
「町田先輩 さっきの事 冗談とかじゃないですよね? また 前みたいなの 私 嫌ですから。次あったら 絶交します!」
ヘルメットを被せられ、顎紐を調整されながら、目の前の柊士に言い放つ。
その瞬間、顎紐に触れていた柊士の指が止まった。いきなりヘルメットごと頭を引き寄せられ 不意に唇を塞がれる。
ーーヒャッ。
声にならない息が漏れ
その息さえも柊士に奪われる。
やがて唇が離れると
「本気だから、…わかっただろ?」
ヘルメット越しに町田柊士の低い声が響いた。
緊張で体がこわばり バイクの後部にうまく跨がれそうにない。
「俺の肩使え。ステップに足掛けて
ほら 跨がれっ!」
繭が全体重をかけたとしても びくともしな肩。シャツ越しでもわかる逞しい身体。
一度乗った経験と、心と身体の距離がすこし近づいたことで繭は、バイクを操る町田柊士の逞しい背中に安心して体を委ねる事ができた。
柊士のバイクは東名高速道路から首都高速を抜けお台場海浜公園近くの倉庫が立ち並ぶ一角で停止した。
「後ろ 上手く乗れたな」
柊士はフルフェイスのヘルメットを外しまだ腰にしがみつく繭の腕に触れた。
「怖かった」
「ゆっくり降りな、乗る時と逆な」
力の入った繭の腕をそっとほぐすように腰から腕を離すのを手伝ってやる。
先に彼女がバイクから降りたのを確認し柊士もバイクから降りた。
「お台場は?」
「初めて」
今時 台場が初めてとはーー
「今日 純也がTコレイベントに出るから、藍川連れて来いってさ」
「ファッションイベント? うわー…気遅れしそう…」
絶対ムリ…
「気にすんな 俺の側にいろ」
柊士に手をひかれそのままイベント会場へ向かう。人の波が大きく膨れ上がり倉庫入り口にはファッショナブルな女の子やヒップホップ系カップル、欧米系やアフリカ系外国人など多種多様なファッショニスタが殺到している。
思わず、柊士の手を強く握り返す繭。
柊士に導かれ、会場入り口の係員に
純也から渡されていたIDカードを提示する。
「こちらからお入りください」
案内された入り口には [VIP Access]の表示。
長い列を素通りし、専用通路を進むと舞台袖から楽屋に直接入る事ができた。
楽屋では、男女問わず大勢のモデル達が専属のスタイリストに囲まれ、煌びやかに飾り立てられている。衣装や化粧が崩れないよう慎重に飲み物を口にする者、緊張をほぐすかのように談笑する者 その空間はまるで異世界のような華やかさだった。
その中心に 飛島純也はいた。
「柊ちゃん! こっち こっち」
大きく手を振り ぴょんと飛び跳ねた。
その派手な行動に 周りのスタッフやモデル達の視線が一斉に飛島純也に向けられる。
柊士は小さく息を吐き、軽く腕を上げてこたえる。
この場の雰囲気に馴染むつもりは毛頭無い。
招待してくれた純也へ義理を果たすただそれだけだった。
純也の視界には、周りの人間など全く入っていない。ただ柊士と繭に向けた行動だった。
「柊ちゃん こっち来いよ!ほらっ」
柊士は繭の手を強く握り 人混みの間を割くように進みながらも 彼の表情は変わらない。
軽薄な会話 軽すぎる笑い声 作られた虚像
俺達の居場所じゃない。
純也専用のスペースまで辿り着くと
「純也 義理は果たしたから じゃあな」
「えー柊ちゃん、来たばっかじゃん!」
純也の情けない声で
周りの視線が柊士と繭に注がれる。
柊士は純也の取り巻き連中を尻目に
「藍川 かえるぞ」
「うん」
繭は繋いだ手を強く握り返した。
その温もりだけがこの空間のなかで唯一、確かなものだった。
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