パーフェクト・ドリーム

星野ステラ

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※ひとりあそび

 俺に覗きの趣味はない。ただ、この状況を無かったことにするのはもったいない。扉の向こうで尾上さんがオナニーしてるんだから、そんなの見たいに決まってる。





 会社を出てから渋滞に巻き込まれ、今日は帰りが遅くなってしまった。
 尾上さんにメッセージを送ったけれど、既読だけで返事がない。まあ、素っ気ないのはいつものことだ。ちゃんと見てくれていればそれでいい。
 玄関でただいまと声をかけ、家の中に入る。しかし、返事はない。
 電気は点いているし玄関に靴もあるのだから尾上さんは帰宅しているはずだ。何かに夢中になって俺の声に気づいていないか、疲れて眠っているのかもしれない。
 リビングで寝落ちしていることも考えて、できるだけ音を立てずにドアを開けた。
 ただ、そこにも尾上さんの姿はない。自室にいるらしい。
 夕飯どうしよう。温かいうちに食べてほしいけれど、寝ているのなら無理に起こしたくはない。
 とりあえず部屋を覗いてみるか。
 尾上さんの部屋のドアノブに手をかけた。起こさないよう、ゆっくりと少しづつドアを開ける。すると、僅かな隙間から何やら音がした。
「ん……」
 初めは寝息だと思った。
 しかし、すぐに違うと気がついて、体がフリーズした。
「んッ……ふぅ……っ」
 尾上さんの荒い息遣い、聞き慣れた水音。くぐもった声が時折漏れている。このちんぽにクるいやらしい声、これは……これはもしやオナニー?
 ──バレたらまずい!
 ここでバレたら、尾上さんのオナニーが見られない……! 
 これ以上ドアを開けたらバレてしまうかもしれない。でもほんの少しの隙間からでは尾上さんの痴態を拝めない。音だけ聞かされて、これじゃ生殺しだ。
 俺に残された道は二つ。リスクを承知でもう少しドアを開けるか、このまま音だけで楽しむか。頭の悪い二択に苦しんでいる間も尾上さんの悩ましい声は聞こえてくる。
「んっ……ン……」
 尾上さんは俺が帰ってきたことを知らない。家に自分一人だと思っているはずだが、必死に声を堪えている。もしかしたら、気持ちいいと唇を噛んでしまう癖があるから、そのせいかもしれない。
「はぁ……イけない」
 尾上さんのため息が聞こえる。さらにゴソゴソと物音がした。中で何をしているのか気になって仕方がない。
 俺はなりふり構わず四つん這いになり、ほんのわずかなドアの隙間に思い切り顔を近づけた。しかし、ほとんど何も見えない。音だけなのに、俺の頭の中はいっぱいいっぱいになってしまった。
 今度は液体をかき混ぜる音が聞こえる。水よりは粘着質で、じゃあこれは……この音はローションではないか。尾上さんって、オナニーにローション使うの? いや、もしかして……後ろ触ってるの?
 自分でアナルを解して、自分で気持ちいいところを探して自分でヨがっているんだとしたら──とにかくエロい。
 いつもは俺に見せない姿もきっと見れるはずだ。一人でぐちゃぐちゃになっているのなんて見たいに決まっている。
 それなのに、どうして俺は見られないんだよ!
「んん……ふう……」
 悩ましげな声が静かな室内に響く。俺はもうバレるのも承知で少しずつドアの隙間を広げていた。その甲斐もあって、少しだが尾上さんの姿が見えるようになっていた。
 尾上さんは足を抱えるように折りたたみ、横向きに寝転がってアナルに指を挿れている。おそらく二本は入っており、敏感に快楽を拾っている。
「ぁ……たかまつ、だめ」
 ──たかまつ、だめ♡
 思わず息をのんだ。顔が熱くて沸騰しそうだった。
 名前を呼ばれるなんて、全く思ってもみなかった。俺とのセックスを思い出しているのか、それとも妄想をしているのか。どちらにせよすごく嬉しかった。尾上さんの想像の中の俺は、どんなことをしているんだろう。
「や……あっ♡……あぅ」
 少し抑え気味の悩ましい声が聞こえる。
 俺は今、ギリギリのところにいる。
 必死に堪えていてもしっかり勃ってしまったし、本当は今すぐ出ていってすぐにハメたい。解されて蕩けたアナルにぶち込んで、思い切りピストンして、一番奥で射精したい。
 今だけじゃない、いつだってなけなしの理性で自身の本能と戦っている。そりゃあ、ナマがいいしナカに出したいよ。でも、現実はそうもいかないと分かっているんだ。
「あ️♡あっ️……イ、イく️、ィ……~ッ♡……けんたろ♡けんたろうッ️」
 嬌声は次第に大きくなっていく。俺の恋人が、何度も何度も俺の名前を呼んでいた。俺を求めながら絶頂する様で、プツリと糸が切れた。
 ──さようなら、俺の理性。
 我慢できるはずもなく、気づけば俺は部屋の中に押し入っていた。
「え……」
 尾上さんはビクビクと身体を震わせ、少し惚けた顔をしていた。突然現れた俺を見て恥ずかしくなったのだろう、手近にあったタオルで陰部を隠した。
「お、お前いつからいたんだよ!」
 頬を真っ赤に染め、肩で息をしている。俺がベッドに近づくと、怯えた様子で後ずさっていく。
「尾上さんごめん、付き合って」
「え? お前まさか……ちょっと待て、やめろって……!」
 ベルトを外し、急いでズボンと下着を下ろす。既に固くなったペニスが勢いよく飛び出した。
 硬く閉ざした尾上さんの膝を無理矢理開く。ベッドサイドの引き出しからコンドームを取り出して手早く装着し、まだ濡れそぼった入口にあてがった。
「あんなに俺のこと呼んでたけど、俺に抱かれたかった?」
 真正面から一突きで奥まで挿れた。
「やっ、あ゙ぁ️♡️♡ぅ……うあ♡だめ……だめ♡……まっ、て」
 指では届かなかった場所を何度もノックする。声を抑えることもできないのか、尾上さんからはだらしない喘ぎが漏れている。前立腺も気持ちいいけれど、奥も気持ちいいんだろう。
「はぁ……尾上さんかわいい。メッセージも送ったし、玄関でただいまって言ったよ。ねえ……ぜーんぶ気づかないくらい、夢中になってたんだ?」
「んっ️♡ん️……♡ちがっ……う」
「うそつき。尾上さんは気持ちいいこと好きだからね?」
 尾上さんは快楽に弱い。一度のセックスで何度か中イキして、ぐずぐずになりながら俺を求める。潮ばかり吹いてベッドを汚すこともある。そんな人が気持ちいいことが嫌いだなんて冗談もいいところだ。
「うぅ……ん️゙ンッ♡……ぉっ……♡」
「気持ちいいね、尾上さん」
 尾上さんの両手首を頭の上で掴みあげて覆い被さった。無理矢理唇を重ねると、中の締まりが良くなるから俺も調子に乗ってしまう。口の裏側を舌先で刺激すると、尾上さんの力が抜けて蕩けた顔になる。身体はビクビクと震え、自ら腰を動かしているようだった。
「えろ……俺でオナニーしないで」
「だって、気持ちいい……」
 さっきまで恥ずかしがって否定していたのに、もうグズグズになって俺のペニスを求めている。
 オナニーもいいけど、やっぱり俺じゃないとダメなんだって、そう思ってほしい。
「あ️♡あっ️……お゛くきもちい️♡……う゛う、っ️♡♡」
 尾上さんは力無く透明な液体を吐き出していた。身体はビクビクと震えている。尾上さんが準備していたタオルでは足りず、シーツにまでシミが着いてしまった。
「あーあ、もうイっちゃった。俺まだイってないのに」
 グリグリと奥を捏ねる度に身体が反応している。理性はもう消えていて、うつろな目で絶頂の余韻を味わっているようだ。
「尾上さん」
 ゆっくりと引き抜いてから、勢いよく奥に思い切りねじ込んだ。尾上さんは喘ぎ声というより、ほとんど悲鳴に近い声をあげている。
 惚けているところ申し訳ないけど、俺もイきたい。
「ああ゙ッ️! ァ♡……やらっ……ぁ♡待って、って……」
 激しくピストンを続け、イくことに集中した。 
 肉と肉がぶつかり合う音と、液体が混ざり合う卑猥な水音が室内に反響する。
 尾上さんは眉間にシワを寄せ、顔を真っ赤にしている。イキ続けて苦しいと俺に縋って、それもまた俺の劣情を刺激するのだとこの人は知らない。そんな姿でそんなことを言われても逆効果だと。
「尾上さん……ッ、俺もイっていい?」
「イ️♡️♡イってい、い……♡」
 いやらしく喘ぎ、痴態を晒す尾上さんにどうしようもなく興奮してしまう。それと同時に愛しいとも思う。こんなに可愛くてやらしい人が俺の恋人なんだ。
 込み上げる射精感に身を委ね、奥まで埋め込んでから吐精する。擦り付けるように何度かペニスを打ち付けた。
 一ミリすらないこの薄いゴムを越えたら、尾上さんの中に出せるのに──そう思ったら、気持ちが萎えることはなかった。
「今日もっかいできそう……付き合ってくれます?」
「え……?」
 無理矢理唇を奪って、答えは聞かないことにした。







「お前ほんと、ふざけんな……全然動けない」
 尾上さんはうつ伏せで腰をさすりながら怒っている。明日も仕事なのにだいぶ無理をさせてしまった。本当にめちゃくちゃ反省している。でも、すんごいやらしいんだもん。
「激しいの二回もするし……腰やったらどうするつもりだ」
「本当に、ごめんなさい!」
 やり過ぎたのは認める。尾上さんはボロボロで、起き上がるのもやっとだ。声もかすれている。
「で、でも。メッセージも返ってこないし、俺のただいまにも反応ないし、様子見に来たんですよ」
「……そのまま見なかったことにしてくれれば良かったのに」
 思い切り睨まれる。肩身が狭い。
「ごめんなさい。でも、我慢できないかな……」
「ああ……お前は我慢できないだろうな。俺が迂闊だった」
 ふと視線を逸らすと、ベッドにワイヤレスイヤホンが転がっている。おそらくスマホに繋がっているのだろう。
「あぁ、これですね。イヤホンしてるから気づかないんですよー。どんなの見てるのかな」
 焦る尾上さんをあしらってイヤホンを片耳に付けると、音声が聞こえる。動画を停止する時間も気力もなかったのだろう。
「あっ、こら!」
『あ️♡ああ♡️お、お゙くっ……! うぅ……う♡そんなの……ッ♡すぐ、出るッ……♡♡』
 思い切り喘ぐ男の声だった。AVかな。
『や、やだ、撮らないでッ……』
「へえ……こういうの好きなんですね」
 音声しか聞いていないけれど、ハメ撮りの動画なんだろう。
 尾上さんはハメ撮りが好きなのか。以前撮影した時も、嫌だって言っていたのに感度も良かったし、やっぱり尾上さんのダメはダメじゃない。
「……たまたま見てただけだよ」
「本当に?」
「……本当に」
 本当なのかだいぶ怪しい。嘘だったらどうしてあげようか。きっと尾上さんは恥ずかしがって本当のことを言ってくれないと思うけれど。 
「ああもう、しばらくシない……」
 尾上さんは頭から布団を被って隠れてしまった。どこまでも可愛い人だ。
「それはオナニー? それともセックス?」
「……両方」
 笑ってしまった。どうせ我慢できないのにね。
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