チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー

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八章 決意する少女

復活の大魔道士

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 魔法陣から放たれた光が収まる頃、私はクマの縫いぐるみへと視線を向ける。

 アルアナが唱えた魔法が何なのかは私には分からないけど、たぶんアレクさんの魂を呼び起こす魔法なのだろうということだけは分かる。

「う……うう……、どこじゃ……ここは……?儂は一体……」

 暫くの間、縫いぐるみを見つめていると、縫いぐるみからうめき声みたいなものが聞こえ、縫いぐるみがゆっくりと動き出した。

 そして、その縫いぐるみから聞こえてくる声は紛れもなくアレクさんの声だったっ!

「どうやら成功のようだな」

 アルアナは自慢げに胸を反らすと、その大きな胸が揺れる。

 く……!ここぞとばかりに大きな胸を見せびらかせてくる……っ!

「アレクさん……?」

 アルアナの大きな胸は一先ず置いておいて、私はクマの縫いぐるみ……もとい、アレクさんへと話しかける。

「なんじゃ……?カナの声が聞こえるの……。カナも死んでしもうたのか……?」

「いえ、私はまだ生きてますよ。アレクさんの魂が蘇ったんですよ」

「何を言っておるんじゃ。儂はカナ、お主の手によって再び死の眠りに就いたはずじゃ」

「それについては私から説明させてもらおう。始めまして大魔道士アレクよ。私の名はアルアナだ。お前を死の眠りから呼び起こしたものだ」

 私と入れ替わるように今度はアルアナがアレクさんへと話し始めた。

「アルアナ……聞いたことがあるの。マーゼで活躍していたという大賢者のアルアナの事か?」

「そうだ、そのアルアナだ。お前は私の死霊魔術ネクロマンシーによって、魂だけだが再びこの地に生を受けたのだ」

「なるほどの、噂の大賢者殿の力ならそれくらい造作もないということか。それはそうと、アルアナという者はずいぶんと大きいのじゃの。よう見るとカナも大きいわい」

「えっと、それは私達が大きいんじゃなくて、アレクさんが小さいんだけど……」

「どういうことじゃ……?」

「今の自分の姿を見てみろ」

 アルアナは指をパチンと鳴らすと、姿見鏡が現れた。

 その鏡を見ながらアレクさんは手を動かしたり、足を動かしたり、さらには顔や体といった様々な所を動かしている。
 そして……。

「何じゃこりゃぁぁぁぁぁぁーーーー………っ!!!儂がクマの縫いぐるみになっておるではないかっ!!」

「すみません、アレクさん。それしかなかったので……」

 慌てふためきながら怒るアレクさんに私は苦笑しながら頬を掻いていた。

「落ち着け、アレク。そうまでしてでもお前の力が必要なのだ」

「儂の力が必要じゃと……?儂に何をさせようというのじゃ?」

「イービルアイを倒すのを手伝って貰いたい」

「イービルアイじゃと?あのマーゼを滅ぼしたという魔物のことか?」

「そうだ」

「分かった。じゃが、ここにおる3人だけで行くのか?それはちと厳しいぞ……」

「それについてだがカナ……、さっき行っていたカレンとは誰だ?」

「えっと、竜人族ドラゴニュートの女性だよ。つい最近知り合ったばかりの仲間だけど……」

「ドラゴニュートか……、確かに戦闘能力の高い種族だな」

「噂では、その気になれば単独で街一つ滅ぼせるとまで言われておるの。イービルアイを倒すには持って来いじゃろう」

「それで、そのカレンというドラゴニュートはどこにいるんだ?」

「カレンならマーゼの教会にいるよ」

「分かった」

 アルアナは目を閉じて手をかざすと、この神殿の入口の魔法陣が光だし、カレンが姿を表したのだったっ!


 ◆◆◆


~サイドストーリー~

 ーカレンー

 マーロウという僧侶から貰った茶を飲んでいるとカナがいないことにアタイは気が付いた

「そう言えば、カナの姿がないが、どこに行ったんだ?」

「カナさんでしたら、女神アルアナ様の所ですよ」

「女神アルアナ?」

「そうです、アルアナ教の女神ですよ」

 聞いたことのない名だ。

 アタイのいた村では宗教というものがなく、また勧誘しに来る者もいなかった。

 もっとも、あの辺境とも言えるガイラスの村にわざわざ宗教の勧誘に来る物好きはいないだろう。

「アタイもそのアルアナ様って人の所に行けるのか?」

「どうでしょうか……、アルアナ様の所に行けるかは限られています。己が望むもの、叶えたい目的に対して真摯に、そして邪な気持ちを抱くことなく、純粋な気持ちで望む者にしかアルアナ様にお会いすることが出来ません」

「そうか……」

 残念ながらアタイにはそのような立派な志はない。
 逆に言えばカナにはそれがあると言うことだろう。

 好きな人を助けたいと言っていたな。
 そのような感情でもないと無理という事か。

 尤も、アタイには叶えてもらいたいような望みも無いわけだが……。


 茶を飲み終わった頃、突然教会の一部が床が光り始めた。

「こ……これは……っ!?カレンさん!アルアナ様がお呼びですっ!すぐにこの光の中へと入って下さい……っ!!」

「え……?あ、ああ……」

 アタイはその光の中へと足を踏み入れると、アタイは光に包まれた……!

 そして気が付くと見知らぬ場所へと立っており、前の方にはカナとエルフの女、そしてクマの縫いぐるみが立っていたのだった……!
 ……クマ?
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