チート無しっ！？黒髪の少女の異世界冒険記

二章 冒険者の少女

異世界のお宝

　着替えを済ませ、身だしなみを整えた私は改めて一階の冒険者ギルドのホールへと戻ると、そこにはいつの間に来たのか、ミリアさんとジェストさんの姿があり、一つのテーブル席へと座っていた。

　そして、私の姿を確認したファナさんに手招きをされるとそこへと向かうことにする。

「カナちゃん、戻ってきたね」

「ファナさん……先ほどはお見苦しいところを見せてしまい、すみませんでした……」

　私はミリアさん達が座っている席へと座ると真っ赤になった顔を俯かせる。

　ホント、穴があったら入りたい……。

「カナちゃん、ファナちゃんから聞いたわ。あられもない姿でここに降りて来たんですって？惜しかったわ、もう少し早く来ていれば可愛らしいカナちゃんの下着姿を見られたのに……」

　ミリアさんは頬杖を付きながら本当に悔しそうにため息をつくと、私の胸元へと視線を向ける。

　うん、本当にミリアさんが来る前に着替えれてよかった。
　もしあの時ミリアさんがいたら、今頃間違いなく襲われていたに違いない……。

『そんな事よりもカナ、闇夜のフェアリーから予告状が届いたと言うのは本当か？』

「あ、はい。これです」

　ジェストさんの言葉に私は一枚の紙をテーブルの上へと置くと、それをミリアさんとジェストさん、それにファナさんまでもが見つめていた。

「あなたの異世界のお宝をいただきます……ねぇ……。カナちゃん、異世界のお宝って持ってたっけ？」

　ファナさんの問いに私は腕組みをしながら考える……。

　異世界のお宝……異世界のお宝……。
　ここでの異世界だから……つまりは私が元いた世界のお宝って事……？

　しかしいくら考えてもそんなものは思いつかない。

「う～ん……無い……ですね……」

「じゃあ、カナちゃんが元いた世界にしか無い物とかはどうかしら？それならこの世界ではお宝になるんじゃないかしら』

「元の世界にしか無いもの……ですか……？それなら一応はありますけど……」

「それってどんなの？」

「えっと、スマホ……ですかね」

　元の世界にあって、しかも私の手元にありこの世界に無いもの、それはスマホ以外に思いつかなかった。

「すまほ……？なにそれ……？」

　スマホと言う単語にここにいる全員が頭に疑問符を浮かべていた。

　まあ、この世界には無い物だから知らないのは無理はない。

「持ってくるので待っていてください。」

　私は一度席を立つと、もう一度部屋へと戻り、スマホを持ってくる。


「えっと……これです」

「これが……すまほ……？」

　持って来たスマホをファナさんが恐る恐る触るもスマホはなんの反応も示さない。

　それもそのはず、一番最初にこの世界に来てオーガグリズリーに襲われた時に画面がバキバキに割れたままで電源すら入らないなのだから。

　もっとも、電源が入ったとしても、電池切れでどのみち動かないと思うけど……。

「確かにこれは私も見たことがないわね。これを闇夜のフェアリーが狙っているということかしら？」

『そのようだな……ん？』

　ミリアさんはファナさんから受け取った私のスマホを興味深そうに触っていると突然ジェストさんが他所へと視線を向けた。

「どうしたんですか？ジェストさん」

『いや……、何か視線を感じたような気がするのだが……気のせいか……？』

「それで、カナちゃんはどうするの？」

「どうするって言われても……壊れているとは言えみすみす盗まれるのも癪に触りますね……私としてはどうにかして捕まえたいところなのですが……」

『捕まえるはいいが、どうする気だ？』

　ミリアさんとジェストさんの言葉に頭をうんうんと悩ませていた私は一つの妙案を思いつくと、ミリアさんとジェストさんに協力を呼びかけたのだった。