罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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澪の章 寡黙なクラス委員長

澪、デートの余韻

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 ──澪──


 御堂君と別れたわたしは、アパートへと帰ると、玄関にお母さんの靴が置かれていた。

(確か今日は買い物に行くって言ってたけど……もう帰ってきたのかな……?)

 私は靴を脱いでリビングへと入るとお母さんの姿があった。

「ただいま……」

「あら、澪おかえりなさい。どこか出掛けてたの?」

「うん……友達と猫カフェに行ったり……ご飯を食べたりしてきた……」

「お友達って女の子?」

「……うん」

 本当は御堂君と一緒にいたのだけど、お父さんの一件や、付属中学の頃に男の子からからかわれていたことがあってからというもの、わたしが男の子と会ったりすることに過敏になっていた……。

 だからわたしはお母さんに余計な心配をさせないために『女の子と会っていた』と言う嘘をつく。

「お友達って、この前澪がクッキーを作って持っていってあげた子?」

「うん、そう……。今日はその友達遊んでた……」

「そう……、でも変に街を歩いていて澪が男の人から声をかけられたりしないか心配だわ……」

「それは大丈夫……」

 その時はきっと御堂君が昨日みたいに助けてくれる……。
 確か付属中学の時に御堂君が柔道を習ってると言ってたと思う。

 今はもう辞めてるみたいだけど……わたしが危ない時はきっと御堂君が助けてくれると信じてる……。

「やけに自信満々ね」

「その友達、柔道習ってた……」

「ああ、護身術の一環ね。それなら澪も安心だわ」

「うん……、それじゃあわたしは部屋に戻ってる……」

 わたしは冷蔵庫から冷えたお水が入ったペットボトルを取り出すと自室へと向かった。


 部屋に戻ると、私はバッグを部屋の壁に掛けると、ベッドの隅へと静かに座った。  
 昼間の喧騒が嘘みたいに、部屋の中は静かだった。

 ……御堂君と過ごした時間。
 猫カフェの空気……パンケーキの甘さ。
 全部、まだ胸の奥に残っている。

 私はスマホを取り出して、画面を見つめる。  
 特に通知はない。でも、何となく開いてしまう。

 ……送り狼。  
 あの言葉、冗談とほんの少しの本気のつもりだったけど……御堂君どう受け取ったかな。

 私はそっと胸元に手を当てる。  
 食べすぎたせいで、少しだけ膨らんでいるお腹。  
 でも、御堂君は……見てた。
 たぶん、胸の方も。

「いきなり大食いを見せたのはマズかったかな……」

 わたしはお腹を擦りながら一人呟く……。
 でもこれも計算の内……。

 下手にネコを被っていて、後々本性を知られて引かれるよりも、最初からわたしのことをある程度知っていてもらったほうが受け入れて貰いやすくなるはず……。

 私は冷蔵庫から持ってきた冷たい水を一口飲む。  
 口の中に残っていたパンケーキの甘さが、少しだけ薄れていく。

 でも、心の中の甘さはまだ、残ってる。

 御堂君の「おいしい」って言葉。  
 あれ、すごく嬉しかった。

 ……次は、御堂君が選ぶ場所。
 どんなところだろう。
 静かなところ……?騒がしいところ……?

 それとも……私が知らない、御堂君のとっておきの場所……?

「……御堂君の部屋という可能性も否定出来ない」

 私はスマホを伏せてベッドに横になると、そうなった時の光景を想像する……。

 御堂君の部屋で二人っきり……。
 ハグやキスをされる……?
 もしかしたらそれ以上の可能性だってあるかもしれない……。

『澪……好きだよ……』
  
 目を閉じると、御堂君がわたしへと告白してくれる光景が浮かび、わたしの顔が赤くなる……。

 御堂君……また、あなたとデートしたい……。

 わたしはそう思いながら待ち受け画面に映る御堂君を見つめていた……。
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