罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

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瀬玲奈の章 ギャル気質なガールフレンド

恋の自覚と行動への一歩

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 翌日……僕はベッドに寝転がり、天井を見つめていた。

 今日は日曜日、しかし外はあいにくの雨……。
 どこかに出かける気にもならず、ただボンヤリとしていると頭に浮かぶのは瀬玲奈の事。

(たぶん……いや、間違いなく僕は瀬玲奈の事が好きなんだと思う)

 でも、どっちの好き……?
 友達として?それとも一人の女の子として……?

 自分のことのはずなのに、答えは頭の中にかかった霧のように、ぼんやりしていて掴めなかった。

 瀬玲奈と一緒にいるのは楽しいし、居心地もいい。
 でも、それなら高藤や悠人といった男友達とどう違うのかと言われると、うまく説明できないけどなんか違うような気がする。

 高藤や悠人とバカを言い合ったり遊んだりするのは楽しいけど、ずっと一緒にいたいかと言われるとそうでもない。
 でも、瀬玲奈となら、ずっと一緒にいたいと思える。
 彼女のことを考えるだけで、胸が少し苦しくなる。

 僕はスマホを手に取るも、昨日送ったメールの返事は未だにないことに寂しさと、少しの苛立ちが胸に残る。

「ああもう……!この気持ちはなんなんだよ……!」

 僕はベッドから起き上がると頭をガシガシと搔く。

 分からない!
 自分の気持ちも、瀬玲奈のことも、彼女とどうなりたいのかということも……!
 分からないことが余計にでも僕を苛立たせる。

(こういう時は気分転換だ……!)

 ベッドから立ち上がると、机に座ってパソコンを立ち上げ、エリシア・オンラインを起動する。

(単調な戦闘やクエストだとまた瀬玲奈のことで頭を悩ませてしまいそうだな……)

 そう思った僕は、カナタを操作しヴァルキュリアと戦う事にした。

 ヴァルツァの街を出て、荒野を進ませるとヴァルキュリアの姿が見えてくる。
 カナタに剣を構えさせ、ヴァルキュリアへと突っ込ませる。

 カナタはヴァルキュリアに攻撃を当てるとすぐに反撃をしてくる。
 僕はコントローラーを操作してカナタにバッグステップをさせ回避させるも、あっという間にヴァルキュリアに囲まれやられてしまう……。

 画面の端が赤くなり、「カナタは力尽きた……」というログが流れる。

「くそ……!」

 カナタを拠点に戻らせると、残り体力1で復活する。
 体力を回復させたあと、再びヴァルキュリアに挑むもすぐにまた囲まれてやられてしまう……。

「まだだ……!」

 僕は何度もヴァルキュリアに挑むもそのたびにやられてはカナタを拠点に戻らせる。
 何度やっても瀬玲奈のようなギリギリの動きが出来ない。
 そのことがなぜか僕を苛立たせる。

 なぜこんなにも僕は苛立っているのだろう……?

 この前みたいに瀬玲奈に寄生するのが嫌だから?
 それもあると思うけど、たぶんそれだけじゃない。

(じゃあなんで……?)

 もう一人の僕が頭の中で僕に問いかけてくる。
 瀬玲奈と対等にいたいから。

(ゲームなのに?)

 ゲームだからとかじゃない、きっと……僕は瀬玲奈に守られるだけというのが嫌なんだ。

(なんで?)

 僕が……瀬玲奈を守りたいから

(なんで守りたいの?)

 ……それは。

(わからないの?)

 ……好きだから。

(どう好きなの?)

 分からない……。

(深く考えすぎじゃないの?)

 深く考えすぎ……?
 僕は改めて瀬玲奈のことを考える。

 あの笑顔。  
 クレープを頬張るときの無邪気な表情。  
 ゲームの中でピンチになっても、絶対に諦めないあの真っ直ぐな目。

 ……そして、昨日のあの逃げるような後ろ姿。

 あのとき、僕は何もできなかった。  
 ただ、呆然と見送ることしかできなかった。

(あのとき……追いかければよかった)

 胸の奥が、またきゅうっと締めつけられる。  
 あのときの瀬玲奈の表情……驚きと戸惑い、そして少しの寂しさが混ざった、あの表情が頭から離れない。

 なぜ離れないのか……それは瀬玲奈のあんな顔を見たくなかったから。

 例えば高藤や悠人があんな顔していたら、少しは心配するかもしれないけどそこまで気になったかというとならない。
 亜希が同じ顔をしてもきっと瀬玲奈の時と同じ気持ちを抱くかというとならないかもしれない。
 ……もちろん、心配はする。
 けど——瀬玲奈の時とは違う。

(つまり瀬玲奈はただの友達じゃない……?)

 そうか……、僕は瀬玲奈が一人の女の子として好きなんだ……。
 そう思うと分からなかった自分の気持ちが嘘のように見えだした。
 まるで霧が晴れたかのように……。

 ──ピロン。

 突然、スマホが震えた。

 画面を見ると、瀬玲奈からのメールが届いていた。

――昨日はごめん。ちゃんと話したいことがあるから、時間あるときに会えないかな?――

 その一文を読んだ瞬間、胸の奥が熱くなる。

(……瀬玲奈)

 僕は深呼吸をして、スマホに指を走らせる。

――うん、会おう。今日の午後、商店街のカフェでどう?――

 送信ボタンを押すと、胸がドクンと脈打った。

――わかった――

 僕は瀬玲奈の返信を確認すると、ゲームをログアウトして窓の外を見る。
 雨はまだ降っていた。
 でも、空の向こうが、ほんの少しだけ明るくなった気がした。


 ~サイドストーリー~


 ──瀬玲奈──


 翌日、ウチは、重たい気分で目を覚ました。
 窓の外には、ウチの気分を映すような静かな雨が降っていた。

 頭の中で浮かぶのは昨日カナタっちを置いて逃げてしまったことと、亜希とミオっちの言葉。

 ふたりはウチに恋のライバルだと言ってくれたけど、もしウチが反対の立場だったらきっと……ううん、絶対に許せない。
 でも、亜希とミオっちは怒ったり罵声したりするのではなく、友情を選んでくれた。

 嬉しかった。
 でも……、同時にこれまでカナタっちとの関係を築いてきたウチのほうが、ふたりよりも“先に進んでる”って、どこかで思ってた自分がいた。

 友達を裏切るだけじゃなく、ライバルだと言ってくれたふたりに対して勝ち誇ったかのように笑うもう一人の自分……。
 ウチのなかにこんな自分がいたなんて知らなかった。
 
 こんな奴がカナタっちを好きでいていいはずがない!

 カナタっちには亜希やミオっちのほうがきっと似合ってる。
 ウチはただの友達として……ううん、いっそ身を引くべきだ。

 そのとき、カナタっちからのメッセにまだ返事をしていないことに気づいた。

「ウチ……、心配してくれてるカナタっちにも返事返してない……」

 本当に最低だと思う。
 自分で自分がイヤになる。

 ウチは、涙をこぼしながらメッセを打った。
 それは、カナタっちとの関係に、終わりを告げるための一通だった。
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