罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー

文字の大きさ
196 / 223
瀬玲奈の章 ギャル気質なガールフレンド

恋の自覚と行動への一歩

しおりを挟む
 翌日……僕はベッドに寝転がり、天井を見つめていた。

 今日は日曜日、しかし外はあいにくの雨……。
 どこかに出かける気にもならず、ただボンヤリとしていると頭に浮かぶのは瀬玲奈の事。

(たぶん……いや、間違いなく僕は瀬玲奈の事が好きなんだと思う)

 でも、どっちの好き……?
 友達として?それとも一人の女の子として……?

 自分のことのはずなのに、答えは頭の中にかかった霧のように、ぼんやりしていて掴めなかった。

 瀬玲奈と一緒にいるのは楽しいし、居心地もいい。
 でも、それなら高藤や悠人といった男友達とどう違うのかと言われると、うまく説明できないけどなんか違うような気がする。

 高藤や悠人とバカを言い合ったり遊んだりするのは楽しいけど、ずっと一緒にいたいかと言われるとそうでもない。
 でも、瀬玲奈となら、ずっと一緒にいたいと思える。
 彼女のことを考えるだけで、胸が少し苦しくなる。

 僕はスマホを手に取るも、昨日送ったメールの返事は未だにないことに寂しさと、少しの苛立ちが胸に残る。

「ああもう……!この気持ちはなんなんだよ……!」

 僕はベッドから起き上がると頭をガシガシと搔く。

 分からない!
 自分の気持ちも、瀬玲奈のことも、彼女とどうなりたいのかということも……!
 分からないことが余計にでも僕を苛立たせる。

(こういう時は気分転換だ……!)

 ベッドから立ち上がると、机に座ってパソコンを立ち上げ、エリシア・オンラインを起動する。

(単調な戦闘やクエストだとまた瀬玲奈のことで頭を悩ませてしまいそうだな……)

 そう思った僕は、カナタを操作しヴァルキュリアと戦う事にした。

 ヴァルツァの街を出て、荒野を進ませるとヴァルキュリアの姿が見えてくる。
 カナタに剣を構えさせ、ヴァルキュリアへと突っ込ませる。

 カナタはヴァルキュリアに攻撃を当てるとすぐに反撃をしてくる。
 僕はコントローラーを操作してカナタにバッグステップをさせ回避させるも、あっという間にヴァルキュリアに囲まれやられてしまう……。

 画面の端が赤くなり、「カナタは力尽きた……」というログが流れる。

「くそ……!」

 カナタを拠点に戻らせると、残り体力1で復活する。
 体力を回復させたあと、再びヴァルキュリアに挑むもすぐにまた囲まれてやられてしまう……。

「まだだ……!」

 僕は何度もヴァルキュリアに挑むもそのたびにやられてはカナタを拠点に戻らせる。
 何度やっても瀬玲奈のようなギリギリの動きが出来ない。
 そのことがなぜか僕を苛立たせる。

 なぜこんなにも僕は苛立っているのだろう……?

 この前みたいに瀬玲奈に寄生するのが嫌だから?
 それもあると思うけど、たぶんそれだけじゃない。

(じゃあなんで……?)

 もう一人の僕が頭の中で僕に問いかけてくる。
 瀬玲奈と対等にいたいから。

(ゲームなのに?)

 ゲームだからとかじゃない、きっと……僕は瀬玲奈に守られるだけというのが嫌なんだ。

(なんで?)

 僕が……瀬玲奈を守りたいから

(なんで守りたいの?)

 ……それは。

(わからないの?)

 ……好きだから。

(どう好きなの?)

 分からない……。

(深く考えすぎじゃないの?)

 深く考えすぎ……?
 僕は改めて瀬玲奈のことを考える。

 あの笑顔。  
 クレープを頬張るときの無邪気な表情。  
 ゲームの中でピンチになっても、絶対に諦めないあの真っ直ぐな目。

 ……そして、昨日のあの逃げるような後ろ姿。

 あのとき、僕は何もできなかった。  
 ただ、呆然と見送ることしかできなかった。

(あのとき……追いかければよかった)

 胸の奥が、またきゅうっと締めつけられる。  
 あのときの瀬玲奈の表情……驚きと戸惑い、そして少しの寂しさが混ざった、あの表情が頭から離れない。

 なぜ離れないのか……それは瀬玲奈のあんな顔を見たくなかったから。

 例えば高藤や悠人があんな顔していたら、少しは心配するかもしれないけどそこまで気になったかというとならない。
 亜希が同じ顔をしてもきっと瀬玲奈の時と同じ気持ちを抱くかというとならないかもしれない。
 ……もちろん、心配はする。
 けど——瀬玲奈の時とは違う。

(つまり瀬玲奈はただの友達じゃない……?)

 そうか……、僕は瀬玲奈が一人の女の子として好きなんだ……。
 そう思うと分からなかった自分の気持ちが嘘のように見えだした。
 まるで霧が晴れたかのように……。

 ──ピロン。

 突然、スマホが震えた。

 画面を見ると、瀬玲奈からのメールが届いていた。

――昨日はごめん。ちゃんと話したいことがあるから、時間あるときに会えないかな?――

 その一文を読んだ瞬間、胸の奥が熱くなる。

(……瀬玲奈)

 僕は深呼吸をして、スマホに指を走らせる。

――うん、会おう。今日の午後、商店街のカフェでどう?――

 送信ボタンを押すと、胸がドクンと脈打った。

――わかった――

 僕は瀬玲奈の返信を確認すると、ゲームをログアウトして窓の外を見る。
 雨はまだ降っていた。
 でも、空の向こうが、ほんの少しだけ明るくなった気がした。


 ~サイドストーリー~


 ──瀬玲奈──


 翌日、ウチは、重たい気分で目を覚ました。
 窓の外には、ウチの気分を映すような静かな雨が降っていた。

 頭の中で浮かぶのは昨日カナタっちを置いて逃げてしまったことと、亜希とミオっちの言葉。

 ふたりはウチに恋のライバルだと言ってくれたけど、もしウチが反対の立場だったらきっと……ううん、絶対に許せない。
 でも、亜希とミオっちは怒ったり罵声したりするのではなく、友情を選んでくれた。

 嬉しかった。
 でも……、同時にこれまでカナタっちとの関係を築いてきたウチのほうが、ふたりよりも“先に進んでる”って、どこかで思ってた自分がいた。

 友達を裏切るだけじゃなく、ライバルだと言ってくれたふたりに対して勝ち誇ったかのように笑うもう一人の自分……。
 ウチのなかにこんな自分がいたなんて知らなかった。
 
 こんな奴がカナタっちを好きでいていいはずがない!

 カナタっちには亜希やミオっちのほうがきっと似合ってる。
 ウチはただの友達として……ううん、いっそ身を引くべきだ。

 そのとき、カナタっちからのメッセにまだ返事をしていないことに気づいた。

「ウチ……、心配してくれてるカナタっちにも返事返してない……」

 本当に最低だと思う。
 自分で自分がイヤになる。

 ウチは、涙をこぼしながらメッセを打った。
 それは、カナタっちとの関係に、終わりを告げるための一通だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

元おっさんの幼馴染育成計画

みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。 だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。 ※この作品は小説家になろうにも掲載しています。 ※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。

処理中です...