羊毛を巡る一連の事件について〜ある国の騎士達の物語〜

さばとらのはは

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1-3.円卓会議と騎士の異動

72.円卓会議3日目

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円卓会議の三日目。

そこで起こった奇跡に新たな驚きは少ない。
朱く染まった部屋の中で、南方探索の任にある騎士の席では、名前と任務が光り輝き、宙に浮かび上がっている。

騎士の席にある誰かが神から与えられた権力を使用したのだろうと、会議室に集まった皆が口にした。
財務卿はどこか安心した様子で、南方探索の任にある騎士の名前を見上げた。

「失踪後未だ消息不明であった南方探索の任にある騎士は、まだ無事であるようだ。
騎士が任務の途中で既に命を落としていれば、神の御業は発動しない。
また神の御業により、彼女の席の異動も封じられた。

今年の円卓会議は、近年稀に見る多くの難題を抱えていた。
三日間という短い期間の中で、全ての執政の席は埋まり、行方不明であった騎士の安否も確認が取れた。
後は、騎士の在席者が少ないという意見が上がっていたな。
これについても、私の方へいくつか話が来ている。

では今日の会議を始めようではないか!」

その後会議室内では、空席の騎士の席について、有力諸侯の席についての議論が夕方まで交わされることとなった。
その結果、新たに一名が騎士の席に就任することになり、いく人かの諸侯の入れ替えも行なわれることが決まった。
三日間という時間をかけた今年の円卓会議は、騎士および諸侯の拍手とともに無事終了した。

円卓会議の後には宮殿で新任騎士の披露宴があるため、諸侯達は皆明るい調子で雑談を交わしながら、ゆったりとした足取りで会議室を後にしていく。

そして、会議室から皆が退出した後。
扉の鍵を預かる財務卿は、南方探索の任にある騎士の席を見つめていた。
誰もいない部屋でひとり呟く。
「全く…心配をかけさせおって。
彼女は子どもの頃から、このような突発的な事件に巻き込まれることが多い。
その度に己の手で道を拓いてきた子であるから、探索の任は彼女にとっての天職とでもいうべきか。
彼女が何もせずとも席の留保はなされ、それは生涯に渡って続くことが神の御業によって約束された。

なんと皮肉なことか。
私から3代に渡り、南方探索の任につく騎士を輩出することになろうとは。
それが彼女の意向であったとはいえ…幼い彼女にそれを背負わせたのは…
彼女が何故その席を望むのかも私には理解ができる。
無事に、彼女には無事に、この国に戻ってきて欲しい」

会議室の管理の任にある財務卿が毎日のように、南方探索の任にある騎士の安否を確認するため、この部屋を訪れることはまた別の話になる。
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