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7.おっさん、踊らされる
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ガルド、ミナ、リリスは、次なる試練の地、オースネスに到着した。オースネスは、楽園を思わせる、海と文明が一体化した美しい村だった。
エメラルドグリーンの海が珊瑚礁に縁取られ、オオギザの木--切れ込みの入った平たくて大きな葉を持つ、南方の樹木--が白い砂浜でそよぐ。家々は極彩色の花で飾られ、屋根には貝殻や七色にきらめく鉱石が輝く。村人たちは日焼けした肌に薄布やパレオをまとい、カヌーで海を滑り、魚を獲る。
浜辺では子供たちが貝殻で遊び、女たちが特産の芋を動物の乳で煮込み、男たちが網を編む。遠くで南国の弦楽器と太鼓の音が響き、波の調べと溶け合う。市場では焼いた果実や魚の香りが漂い、海風が塩と花の甘さを運ぶ。まるで絵画のように美しい地、それがオースネスであった。
一行を出迎えたのは、水のガーディアン、メロだった。パレオが似合う健康的な肢体の少女で、長い黒髪に白く可憐な花を挿し、貝殻の首飾りが胸で揺れる。「テラハ!あっ、テラハってのはここらへんの挨拶だよ! ガルドさん、ミナさん、リリスさん、ようこそオースネスへ!」メロは白い歯を見せて笑い、続けた。「水の試練を受けに来たのは知ってるよ。でも、今日、村で水着コンテストがあってね。試練、明日でもいい?」
「こんなのばっかりね」リリスが杖を肩に担ぎ、ため息をついた。「なんか、ゆるいなぁ」
「じゃあ、今日は村を観光しようよ!」ミナがポーチを握り、目を輝かせた。「海、めっちゃ綺麗だし、焼き魚食べたい!」
ガルドは海を見つめ、ぼんやりしていた。リリスがニヤリと笑い、からかった。「ねえ、おっさん。水着コンテストが見たいの?」
「な、なに!? 違うぞ!」ガルドが慌てて手を振ると、ミナが頬を膨らませ、ガルドを睨んだ。「ガルドさんのえっち!」
「だから、誤解だって!」ガルドが頭をかく。
そんな和やかな空気を引き裂いたのは、浜辺の向こうの叫び声と怒号だった。村人たちが集まっている。メロの顔が途端にこわばった。
「向こうが騒がしい!何かあったんだ!」
慌てて走り出すメロの後を、ガルド一行は追いかけた。
一行が駆けつけると、モリを持った漁師の男が暴れていた。腰布を巻いた大柄な男が、目を血走らせ、モリを無茶苦茶に振り回している。「うおおおっ!」獣のような男の叫び声に、村人たちが怯えて逃げ回る。
「テコボクさん!テコボクさん、どうしたの?!お願い!正気に戻って!」メロが悲痛な叫びをあげる。
「んのやろっ!」
ガルドが漁師の前に飛び出し、【鉄壁】を発動した。「落ち着け!」鉄鎧が輝き、モリの突きを弾く。メロが素早く動く。「【水竜の弾丸】!」彼女の手から水の弾が放たれ、モリを男の手から弾き飛ばした。
男はよろめき、体から黒い瘴気が溢れ出した。ガルドが歯を噛み締める。「これは……銀狼の牙と同じ瘴気だ!」男は、溢れ出る瘴気を両腕に凝縮し、新たなモリを生成した。瘴気のモリがギラリと光り、ガルドに襲いかかる。「死ねえ!」
「くっ!」
ガルドは【鉄壁】でモリを受け止め、剣で反撃。「ミナ、援護!」ガルドの声に、ミナが凍結瓶をなげる。瓶が砕け、男の足元が凍りだす。その隙にリリスが瘴気のモリに向けて【烈焰弾】を放つ。「そのモリさえ燃やせば!」炎が瘴気を焦がすが、溢れる瘴気が逆に炎を飲み込んでしまう。「ちっ、厄介な瘴気ね!」リリスが舌打ちした。
メロは、戦いながら男の瘴気を観察していた。「この瘴気…体に染み込んでる! 水で洗い流せないかな?」彼女は波打ち際に走り、両手を海に浸した。「【浄水の螺旋】!」清浄な海で強化されたメロの腕から、青い水流が螺旋状に渦を巻いて飛び、水流が男を包む。水は瘴気を剥がすように輝き、漆黒の輝きが薄れる。「メロさん!効いてるよ!」ミナが叫ぶ。ガルドが剣を振り、瘴気のモリを弾き飛ばした。「今だ、リリス!」
「ええ!【熱波動】!」
リリスは男を傷つけないように、男の前に微弱な熱波を発生させ、瘴気の弱った男を吹き飛ばす。男は倒れ、瘴気が消滅して意識を失った。
「やった!」ミナが跳ね、村人たちが安堵の息をつく。「【浄水の螺旋】は、水の浄化力で穢れを洗い流す技。瘴気を体から剥がせるの!」メロの説明にガルドが親指を立てる。「瘴気を洗い流す技か、すげぇぜ」
だが、騒ぎは収まらなかった。漁港、市場、村の広場から次々と叫び声が響く。一行が駆けつけると、村人全員が瘴気に支配されていた。女が魚をさばくナイフを振り回し、若者がカヌーの櫂で暴れ、子供までが貝殻を投げつける。瘴気のオーラが村を覆い、まるで黒い霧が漂うようだ。「なんて数……!」リリスが杖を構え直す。
「【浄水の螺旋】!」メロが水流を放つが、一人一人浄化していてもきりがない。まさに焼け石に水だった。「ダメ、数が多すぎる!皆が瘴気に飲み込まれるスピードに追いつかないよ!」
ガルドが剣を握り、叫んだ。「援軍だ! ミナ、キャノを呼べ!」ミナが召喚ボールを投げ、「キャノさん、来て!」と叫ぶ。青い光が弾け、金髪の有翼人キャノが現れる。「キャノ、参上であります! 状況は!?」
「村人が瘴気に支配されてる! キャノの風とメロの水を合わせるんだ!」ガルドが指示を出す。ミナが腕輪を掲げる。「私が【融合】するよ! キャノさん、メロさん、準備して!」
キャノが翼を広げ、「了解!【トルネベルデ】であります!」と叫び、風の渦がオースネスの村全体を取り囲む、そこへメロが「これで浄化するよ!【浄水の螺旋】!」と水流を竜巻に重ねた。ミナが腕輪を掲げ、「【融合】!」と叫ぶ。
「風と」「水を」「今、一つに!」
風と水が融合し、生成された黒雲から、浄水の大雨が村に降り注ぐ。青く輝く雨は瘴気を洗い流し、村人たちの体から黒いオーラが消滅していく。暴れていた村人たちが次々と膝をつき、意識を失っていった。
「やった! 成功だ!」ミナが腕を振りながら、ぴょんぴょんと跳ねた。村人たちが目を覚まし、呆然と周囲を見回す。メロが安堵の息をつき、「良かった……みんな無事だね」と微笑んだ。キャノが敬礼し、「任務完了、であります!」とボールに触れ、戻っていく。
「……!」
そしてガルドは見た。村人とは明らかに異質な、フードの男がにやりと笑って走り去るのを。
「待ちやがれ!」ガルドは男を追おうとしたが、すぐに見失ってしまった。
「ゼクスたちは、魔物になったんじゃねぇ……瘴気を……取り込まされたんだ……そして今度はここの村人全員に……次に会ったら、ただじゃおかねえ」
ガルドは眉を寄せ、歯を食いしばって男の消えた方角を睨みつけた。
その日の夕方、メロが一行を浜辺に案内し、言った。「試練、予定通り明日でいい? 今日はお祭り、楽しんでって!」
夕暮れのオースネスは、南国の華やかさに包まれていた。砂浜にオオギザの木で作ったステージが立ち、たいまつの炎が揺れる。村の娘たちがパレオや貝殻の水着をまとい、南国の調べに合わせて伝統舞踊を踊る。観客席では果実のジュースやグリルした魚が振る舞われ、笑い声が響く。ガルドは桟敷席に座った。
「あれ?ミナとリリスは?」とガルドがキョロキョロすると、隣の男が人懐っこく答えた。
「あんたのお連れさんかい?彼女たちなら水着コンテストに参加するってさ。メロが半ば強引に参加させたみたいけどね。ガハハハ」
ガルドは一瞬呆気に取られた。
「ええー?!」
水着コンテストは滞りなく進み、ミナとリリス、そしてメロの順番がやって来た。
「さぁ、次の参加者は、はるか遠方よりやって来た美しき冒険者、ミナさんにリリスさん、そして我らがメロ!拍手!」
観客席から割れんばかりの拍手が鳴る。
ミナは白いビキニにパレオをまとった、清楚で可憐な姿でステージに登場した。亜麻色のツインテールが揺れ、笑顔が観客を魅了する。
「こんなの、恥ずかしいな……」恥じらいを見せる乙女に、観客が口笛と拍手を送る。
リリスは炎のように赤い水着で、赤毛をなびかせ、両手に炎を纏わせて一回転し、自信満々にポーズを決める。「私の炎、負けるわけないでしょ!」とリリスが叫ぶと、観客が沸きたった。
メロも白い花を髪飾りに、貝殻のビキニで登場し、優雅なダンスで喝采を浴びる。
「いいぞー!メロちゃーん!」
ファンの男たちが声援を飛ばす。
「さぁ、これで全員の紹介が終わりました。ただいま審査中です」ミナもリリスもメロも、そして観客席でガルドも固唾を飲んで見守る。
「それでは結果発表!優勝は……」ドコドコドコと太鼓の音が響き渡る。
「ミナさんです!」会場が拍手に包まれる。「ミナさんの純粋な笑顔が、オースネスの海の輝きを体現していました!」審査員の言葉に、ミナが「え、ほんと!? やった!」とステージ上で跳びはね、観客が拍手で祝福した。メロもニコニコしながら拍手する。リリスが「ちっ、この私が負けるなんて」と唇を尖らせつつ、ミナに笑いかけた。「ま、今回は譲ってやるわ」
ガルドは拍手し、「ミナ、似合ってたぞ」と言うと、ミナが「ガルドさんのえっち!」と顔を赤らめた。水着大会は、こうして大盛況のうちに幕を閉じた。
翌朝、浜辺に祭りの残骸が残る中、メロが一行を海辺の岩場に案内した。波が岩を洗い、朝日が海面をキラキラ照らす。
「待っててね」
メロが歌を歌いだした。寄せては引く波のような、不思議な歌。初めて聴くのにどこか懐かしい、そんな歌だった。
と、海が渦を巻き、青いドレスをまとった女神が現れた。「我が名は水の大精霊アクアリス。そなたらの勇気と絆、しかと見た。村を瘴気から救った知恵と力に敬意を表す。力は既に示された」
「じゃあ珠を……」ガルドが言うと、「とはいえ、何もなしで試練クリアというのもつまらんのう……」とアクアリスは頬に手を当て、考えた。
「そうじゃ、男」
「な、なんですか」
「お前、メロの踊りを見とったじゃろ」
「ええ、まぁ」
「アレを踊れ」
「は、はぁ?」
ミナとリリスがニヤッとしてガルドのほうを振り向く。メロもニコニコしている。
「ガルドさーん」
「おっさん」
「お、俺は踊らねぇぞ」
「ほうそうか、では水の珠もなしじゃな」
「おっさん、覚悟決めなよ」
「私たちにだけ恥ずかしい想いさせるなんて不公平だよ」
「ガルドさん、はい、腰みのだよ」
いつの間にかメロが民族衣装を持ってきていた。
「分かったよ、分かりましたよ!誰得だよ俺のダンスシーンなんて!」
女神と女性3人に見守られ、「トホホ……」ガルドは腕を波のように揺らしながら左右に動く伝統舞踊を披露する羽目になったのだった。
すっかり満足したアクアリスは微笑み、ガルドに「水の珠」を手渡した。「瘴気の脅威に立ち向かうそなたらに、この力を授ける」
「……ありがとよ」ガルドは複雑な顔で受け取る。
アクアリスはメロに視線を向け、「メロ、そなたも彼らの旅に同行せよ」と命じた。メロは笑顔で頷き、「テラハ! 召喚ボール、貸して!」とガルドに手を差し出し、ガルドはボールを手渡した。青い光とともにメロの登録が完了する。
「これでメロさんも仲間だね!」とミナがいい、メロも微笑み返した。
アクアリスが静かに告げた。「次は、炎の国ヤーパへ向かうがよい。炎の大精霊がそなたらを待つ」
ガルドは水の珠を握り、仲間を見やった。「次はヤーパだ……行くぜっ」
「炎! 私の本領発揮ね!」リリスが杖を振る。
「水着コンテスト、楽しかった! 炎の国も楽しもー!」ポーチを握り、ミナが跳ねる。
メロが花を髪に挿し直し、笑った。「テラハ!いつでも呼んでね!」
一行はオースネスの波音を聞きながら、炎の国へ向けて歩き出した。水の珠がガルドの手で輝き、八大精霊の試練がまた一歩進んだのだった。
エメラルドグリーンの海が珊瑚礁に縁取られ、オオギザの木--切れ込みの入った平たくて大きな葉を持つ、南方の樹木--が白い砂浜でそよぐ。家々は極彩色の花で飾られ、屋根には貝殻や七色にきらめく鉱石が輝く。村人たちは日焼けした肌に薄布やパレオをまとい、カヌーで海を滑り、魚を獲る。
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一行を出迎えたのは、水のガーディアン、メロだった。パレオが似合う健康的な肢体の少女で、長い黒髪に白く可憐な花を挿し、貝殻の首飾りが胸で揺れる。「テラハ!あっ、テラハってのはここらへんの挨拶だよ! ガルドさん、ミナさん、リリスさん、ようこそオースネスへ!」メロは白い歯を見せて笑い、続けた。「水の試練を受けに来たのは知ってるよ。でも、今日、村で水着コンテストがあってね。試練、明日でもいい?」
「こんなのばっかりね」リリスが杖を肩に担ぎ、ため息をついた。「なんか、ゆるいなぁ」
「じゃあ、今日は村を観光しようよ!」ミナがポーチを握り、目を輝かせた。「海、めっちゃ綺麗だし、焼き魚食べたい!」
ガルドは海を見つめ、ぼんやりしていた。リリスがニヤリと笑い、からかった。「ねえ、おっさん。水着コンテストが見たいの?」
「な、なに!? 違うぞ!」ガルドが慌てて手を振ると、ミナが頬を膨らませ、ガルドを睨んだ。「ガルドさんのえっち!」
「だから、誤解だって!」ガルドが頭をかく。
そんな和やかな空気を引き裂いたのは、浜辺の向こうの叫び声と怒号だった。村人たちが集まっている。メロの顔が途端にこわばった。
「向こうが騒がしい!何かあったんだ!」
慌てて走り出すメロの後を、ガルド一行は追いかけた。
一行が駆けつけると、モリを持った漁師の男が暴れていた。腰布を巻いた大柄な男が、目を血走らせ、モリを無茶苦茶に振り回している。「うおおおっ!」獣のような男の叫び声に、村人たちが怯えて逃げ回る。
「テコボクさん!テコボクさん、どうしたの?!お願い!正気に戻って!」メロが悲痛な叫びをあげる。
「んのやろっ!」
ガルドが漁師の前に飛び出し、【鉄壁】を発動した。「落ち着け!」鉄鎧が輝き、モリの突きを弾く。メロが素早く動く。「【水竜の弾丸】!」彼女の手から水の弾が放たれ、モリを男の手から弾き飛ばした。
男はよろめき、体から黒い瘴気が溢れ出した。ガルドが歯を噛み締める。「これは……銀狼の牙と同じ瘴気だ!」男は、溢れ出る瘴気を両腕に凝縮し、新たなモリを生成した。瘴気のモリがギラリと光り、ガルドに襲いかかる。「死ねえ!」
「くっ!」
ガルドは【鉄壁】でモリを受け止め、剣で反撃。「ミナ、援護!」ガルドの声に、ミナが凍結瓶をなげる。瓶が砕け、男の足元が凍りだす。その隙にリリスが瘴気のモリに向けて【烈焰弾】を放つ。「そのモリさえ燃やせば!」炎が瘴気を焦がすが、溢れる瘴気が逆に炎を飲み込んでしまう。「ちっ、厄介な瘴気ね!」リリスが舌打ちした。
メロは、戦いながら男の瘴気を観察していた。「この瘴気…体に染み込んでる! 水で洗い流せないかな?」彼女は波打ち際に走り、両手を海に浸した。「【浄水の螺旋】!」清浄な海で強化されたメロの腕から、青い水流が螺旋状に渦を巻いて飛び、水流が男を包む。水は瘴気を剥がすように輝き、漆黒の輝きが薄れる。「メロさん!効いてるよ!」ミナが叫ぶ。ガルドが剣を振り、瘴気のモリを弾き飛ばした。「今だ、リリス!」
「ええ!【熱波動】!」
リリスは男を傷つけないように、男の前に微弱な熱波を発生させ、瘴気の弱った男を吹き飛ばす。男は倒れ、瘴気が消滅して意識を失った。
「やった!」ミナが跳ね、村人たちが安堵の息をつく。「【浄水の螺旋】は、水の浄化力で穢れを洗い流す技。瘴気を体から剥がせるの!」メロの説明にガルドが親指を立てる。「瘴気を洗い流す技か、すげぇぜ」
だが、騒ぎは収まらなかった。漁港、市場、村の広場から次々と叫び声が響く。一行が駆けつけると、村人全員が瘴気に支配されていた。女が魚をさばくナイフを振り回し、若者がカヌーの櫂で暴れ、子供までが貝殻を投げつける。瘴気のオーラが村を覆い、まるで黒い霧が漂うようだ。「なんて数……!」リリスが杖を構え直す。
「【浄水の螺旋】!」メロが水流を放つが、一人一人浄化していてもきりがない。まさに焼け石に水だった。「ダメ、数が多すぎる!皆が瘴気に飲み込まれるスピードに追いつかないよ!」
ガルドが剣を握り、叫んだ。「援軍だ! ミナ、キャノを呼べ!」ミナが召喚ボールを投げ、「キャノさん、来て!」と叫ぶ。青い光が弾け、金髪の有翼人キャノが現れる。「キャノ、参上であります! 状況は!?」
「村人が瘴気に支配されてる! キャノの風とメロの水を合わせるんだ!」ガルドが指示を出す。ミナが腕輪を掲げる。「私が【融合】するよ! キャノさん、メロさん、準備して!」
キャノが翼を広げ、「了解!【トルネベルデ】であります!」と叫び、風の渦がオースネスの村全体を取り囲む、そこへメロが「これで浄化するよ!【浄水の螺旋】!」と水流を竜巻に重ねた。ミナが腕輪を掲げ、「【融合】!」と叫ぶ。
「風と」「水を」「今、一つに!」
風と水が融合し、生成された黒雲から、浄水の大雨が村に降り注ぐ。青く輝く雨は瘴気を洗い流し、村人たちの体から黒いオーラが消滅していく。暴れていた村人たちが次々と膝をつき、意識を失っていった。
「やった! 成功だ!」ミナが腕を振りながら、ぴょんぴょんと跳ねた。村人たちが目を覚まし、呆然と周囲を見回す。メロが安堵の息をつき、「良かった……みんな無事だね」と微笑んだ。キャノが敬礼し、「任務完了、であります!」とボールに触れ、戻っていく。
「……!」
そしてガルドは見た。村人とは明らかに異質な、フードの男がにやりと笑って走り去るのを。
「待ちやがれ!」ガルドは男を追おうとしたが、すぐに見失ってしまった。
「ゼクスたちは、魔物になったんじゃねぇ……瘴気を……取り込まされたんだ……そして今度はここの村人全員に……次に会ったら、ただじゃおかねえ」
ガルドは眉を寄せ、歯を食いしばって男の消えた方角を睨みつけた。
その日の夕方、メロが一行を浜辺に案内し、言った。「試練、予定通り明日でいい? 今日はお祭り、楽しんでって!」
夕暮れのオースネスは、南国の華やかさに包まれていた。砂浜にオオギザの木で作ったステージが立ち、たいまつの炎が揺れる。村の娘たちがパレオや貝殻の水着をまとい、南国の調べに合わせて伝統舞踊を踊る。観客席では果実のジュースやグリルした魚が振る舞われ、笑い声が響く。ガルドは桟敷席に座った。
「あれ?ミナとリリスは?」とガルドがキョロキョロすると、隣の男が人懐っこく答えた。
「あんたのお連れさんかい?彼女たちなら水着コンテストに参加するってさ。メロが半ば強引に参加させたみたいけどね。ガハハハ」
ガルドは一瞬呆気に取られた。
「ええー?!」
水着コンテストは滞りなく進み、ミナとリリス、そしてメロの順番がやって来た。
「さぁ、次の参加者は、はるか遠方よりやって来た美しき冒険者、ミナさんにリリスさん、そして我らがメロ!拍手!」
観客席から割れんばかりの拍手が鳴る。
ミナは白いビキニにパレオをまとった、清楚で可憐な姿でステージに登場した。亜麻色のツインテールが揺れ、笑顔が観客を魅了する。
「こんなの、恥ずかしいな……」恥じらいを見せる乙女に、観客が口笛と拍手を送る。
リリスは炎のように赤い水着で、赤毛をなびかせ、両手に炎を纏わせて一回転し、自信満々にポーズを決める。「私の炎、負けるわけないでしょ!」とリリスが叫ぶと、観客が沸きたった。
メロも白い花を髪飾りに、貝殻のビキニで登場し、優雅なダンスで喝采を浴びる。
「いいぞー!メロちゃーん!」
ファンの男たちが声援を飛ばす。
「さぁ、これで全員の紹介が終わりました。ただいま審査中です」ミナもリリスもメロも、そして観客席でガルドも固唾を飲んで見守る。
「それでは結果発表!優勝は……」ドコドコドコと太鼓の音が響き渡る。
「ミナさんです!」会場が拍手に包まれる。「ミナさんの純粋な笑顔が、オースネスの海の輝きを体現していました!」審査員の言葉に、ミナが「え、ほんと!? やった!」とステージ上で跳びはね、観客が拍手で祝福した。メロもニコニコしながら拍手する。リリスが「ちっ、この私が負けるなんて」と唇を尖らせつつ、ミナに笑いかけた。「ま、今回は譲ってやるわ」
ガルドは拍手し、「ミナ、似合ってたぞ」と言うと、ミナが「ガルドさんのえっち!」と顔を赤らめた。水着大会は、こうして大盛況のうちに幕を閉じた。
翌朝、浜辺に祭りの残骸が残る中、メロが一行を海辺の岩場に案内した。波が岩を洗い、朝日が海面をキラキラ照らす。
「待っててね」
メロが歌を歌いだした。寄せては引く波のような、不思議な歌。初めて聴くのにどこか懐かしい、そんな歌だった。
と、海が渦を巻き、青いドレスをまとった女神が現れた。「我が名は水の大精霊アクアリス。そなたらの勇気と絆、しかと見た。村を瘴気から救った知恵と力に敬意を表す。力は既に示された」
「じゃあ珠を……」ガルドが言うと、「とはいえ、何もなしで試練クリアというのもつまらんのう……」とアクアリスは頬に手を当て、考えた。
「そうじゃ、男」
「な、なんですか」
「お前、メロの踊りを見とったじゃろ」
「ええ、まぁ」
「アレを踊れ」
「は、はぁ?」
ミナとリリスがニヤッとしてガルドのほうを振り向く。メロもニコニコしている。
「ガルドさーん」
「おっさん」
「お、俺は踊らねぇぞ」
「ほうそうか、では水の珠もなしじゃな」
「おっさん、覚悟決めなよ」
「私たちにだけ恥ずかしい想いさせるなんて不公平だよ」
「ガルドさん、はい、腰みのだよ」
いつの間にかメロが民族衣装を持ってきていた。
「分かったよ、分かりましたよ!誰得だよ俺のダンスシーンなんて!」
女神と女性3人に見守られ、「トホホ……」ガルドは腕を波のように揺らしながら左右に動く伝統舞踊を披露する羽目になったのだった。
すっかり満足したアクアリスは微笑み、ガルドに「水の珠」を手渡した。「瘴気の脅威に立ち向かうそなたらに、この力を授ける」
「……ありがとよ」ガルドは複雑な顔で受け取る。
アクアリスはメロに視線を向け、「メロ、そなたも彼らの旅に同行せよ」と命じた。メロは笑顔で頷き、「テラハ! 召喚ボール、貸して!」とガルドに手を差し出し、ガルドはボールを手渡した。青い光とともにメロの登録が完了する。
「これでメロさんも仲間だね!」とミナがいい、メロも微笑み返した。
アクアリスが静かに告げた。「次は、炎の国ヤーパへ向かうがよい。炎の大精霊がそなたらを待つ」
ガルドは水の珠を握り、仲間を見やった。「次はヤーパだ……行くぜっ」
「炎! 私の本領発揮ね!」リリスが杖を振る。
「水着コンテスト、楽しかった! 炎の国も楽しもー!」ポーチを握り、ミナが跳ねる。
メロが花を髪に挿し直し、笑った。「テラハ!いつでも呼んでね!」
一行はオースネスの波音を聞きながら、炎の国へ向けて歩き出した。水の珠がガルドの手で輝き、八大精霊の試練がまた一歩進んだのだった。
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これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~
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『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』
たったこの一言から、すべてが始まった。
ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。
そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。
それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。
ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。
スキルとは祝福か、呪いか……
ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!!
主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。
ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。
ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。
しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。
一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。
途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。
その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。
そして、世界存亡の危機。
全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した……
※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。
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現代日本で天才研究者だった相模登(さがみ のぼる)は、ある日突然、異世界へ転移した。 そこは『スキル』と『魔力』が全てを決める世界。
しかし登には、ステータス画面もなければ、魔力も、スキルも一切存在しなかった。
ただの一般人として迷宮に放り出された彼は、瀕死の女騎士と出会う。彼女の前には、使う者の命を瞬時に吸い尽くす『呪いの魔剣』が落ちていた。
武器はそれしかない。女騎士は絶望していたが、登は平然と魔剣を握りしめる。 「なぜ……生きていられるの?」 登には、剣が対価として要求する魔力は存在しない。故に、魔剣はデメリットなしの『ただのよく切れる剣』として機能した。
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