【完結】異世界転生したら無能スキル「収納」で追放されたけど、覚醒したら最強だった件

すくらった

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5.『ふじょし』がきた!

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キュラキュラキュラ……
大平原に、キャタピラの音が響く。
頭蓋骨と大腿骨を組み合わせた不気味なキャタピラの上には、革製の豪華な椅子が乗っていて、ねじ曲がった小さな角を生やした少女が座っていた。
少女は、目の前の小さなデバイスに夢中になっている。

「ベリアル……俺はお前のことが……」
「ダメだよアーク、俺たち男同士じゃないか」
「性別なんて、俺たちの愛の前じゃ大した問題じゃない」

画面の中の美青年たちが額を付け合い、少女がにへらっと笑みを浮かべる。今にもよだれが出そうだ。

「アーク、それh」
(ピロポン)
(魔王軍全体通知、ゴブリンウルフが人間にやられ、魂が魔界に帰ってきた。悔しいって泣いている)

「!」
少女のこめかみに青筋が浮かぶ。

ゲームが再開される。
「ベリアル……どれだけお前が拒絶しても、俺はお前が好きなんだ!」
「ああ、神はなぜ、俺たちを男同士につくっ」
(ピロポン)
(魔王軍全体通知、シャドーパンサーが人間に倒されて戻ってきました。炎魔法を使われたとのこと。場所は人間たちの街の近くの森)
(オークマン:まじか、森の中で炎使うとか悪魔かな?)
(シャドパンくん:魔法使いの女は素人って感じで、見る限り炎魔法しか使えなかった、だからだと思う)
(オークマン:あ、全体で流しちゃった、スマソ)
(ピロポン)
(魔王軍全体通知:現在殺モンスター、モンスター傷害の容疑者たちは、大平原を移動中の模様)
(ドラゴ:あそこ広いっすからね、俺、空から探してきます)

少女のこめかみの青筋が、はっきりくっきりになり、少女はついに爆発した。

「うるっさーい!」
思いっきり叫んで、直後にハァハァと息切れする。

「落ち着け、落ち着け我よ。捕らえた転生者から、『げえむ』とか言う装置のことを聞いて、我は魔王軍技術部に伝聞情報だけで作らせてみた。これはいい。あの転生者の女は、『びぃえるげぇむ』とかいうのが面白いですよとかいうから、これまた魔王軍文芸部に脚本を作らせ、音楽部やら芸能部やら、魔王軍の総力をあげて『げぇむ』にしてみた。これもとてもよい」
少女はニヤけたが、すぐに渋い顔になった。

「ただ、『すまほ』とかいうものの話を聞いた時、なんだ『でんぱ』とやらを使うだけで、『げぇむ』とだいたい同じか。二つ持つのは面倒だ、一つでいいじゃんか、とした。これが我の失敗だった」少女が頭を抱える。
「魔電波ネットワークを整備して『すまほ』運用可能にしたら……まさか我が魔界で、こんなに『ちゃっと』が流行るとは。通知がうるさくて仕方ない」少女は考え込む。

「技術部に作り直させるか?いやダメだ。この『げぇむ』を作らせた時でさえ、パパに予算がとかグチグチ言われた」
少女は父親、すなわち大魔王のことを思い浮かべた。

「やはり、我が直接そいつらを倒して、こいつらについての情報伝達を終わらせるしかない。どこにいるのだ。絶対に探し出してやっつけてやる」

キュラキュラキュラキュラ……
はるかな大平原を、魔王令嬢と骸骨戦車はどこまでも進んでいった。

ユウトは、自室のようなベッドでゆっくりと寝ることで、スッキリ目覚める事ができた。
「やっぱり実家っていいものだなぁ」
少年は、すこし心がしんみりとした。自然と目が潤んでくる。
「いけないいけない」
ユウトは頭を振ると、目をつぶって念じ、袋の外へ出ていった。

「あら、おはようございます」
アヴリルが目覚めて家から出ると、ユウトが自作の剣を使い、鎧を身につけて、一生懸命素振りをしているところだった。
「精が出ますね」
アヴリルが微笑む。
「いや、ちょっと色々考えちゃってさ、この世界のこととか、元の世界のこととか……頭をスッキリさせたくって、ね!」
剣を振りながらユウトが答える。
「ふーん……そういえばユウトさん」
「ん?」
「ユウトさんのことを……じゃない、ユウトさんの能力について色々考えてたんですが」
アヴリルが頬を染める。

「ユウトさんは、自分で『見たことがない生物』なんてものも作れるのですか?」
「見たことがないもの?」
ユウトが剣を止めて、少女を見つめる。
「そう、例えばこの世界にいる『ドラゴン』なんてみたことありますか?」
「ドラゴン、かぁ」
彼はクロウたちのパーティにいた時のことまで含めて思い返してみた。もっとも、あの時は少しでも顔を出そうとすると怒鳴られたので、モンスターの容姿など、ろくに見てはいないのだが。
「んー、ない、と思う」
「では、『一度もドラゴンを見たことがない状態で、ドラゴンを出す』ことを考えてみてほしいのです」
アヴリルの瞳が知的好奇心でキラリと光る。
「面白そうだな。んじゃ、外で実験してみるか」
「面白そうですにゃ!」
いつの間にかミャウも起きてきていて、目をキラキラさせている。
「おはよう、ミャウ。じゃあ行ってみようか」
ユウトは自室に戻り、鎧を脱いで剣を立てかける。
「帰ってきたら続きやろっと」
「鎧着て素振りしてたのにゃ?」
「うん、できるだけ実戦に近い形で素振りしたくて」
「さすがです、ユウトさん」

言いながら、三人は目を閉じて念じる。

『外へ』

次の瞬間、三人の姿は収納世界から消えていた。


一方その頃。
キュラキュラキュラ……
骸骨戦車に乗って、大平原を渡る少女。
「ん?」
彼女は目の前に、薄汚れた道具袋が捨ててあるのを見つけた。
並みの魔物なら、冒険者の落とし物か遺品だと思い、見向きもしなかっただろう。
だがそこはさすがに魔王令嬢。
袋が放つ、ただならぬ魔力を感知した。
「あれは……ただの道具袋ではないな。あの力、魔王殿の宝物庫にあってもおかしくないレベルだぞ。何なのだアレは」
令嬢は戦車から降りて、岩陰に隠れ、
「【透明化】」
骸骨戦車を隠し、様子を見る。

と、急に三人の人間が現れた。
「な?我の目でも捕らえられなかった。どこから出てきたのだあいつら……」
令嬢は三人の顔をじっと見る。
「あいつら、この間から魔界を騒がせている人間たちか?」

三人は何か話しながら、袋から離れる。
「今だ」
少女は袋にさささっと近寄り、袋を覗く。
「一体何が……えっ、思ったより広い、なにこれ。うわぁっ!」
少女は足を滑らせ、袋の中に落ちていった。

「この辺でいいかな。袋がここで、こっち方面に出してみる、でいい?」
「ええ、想定の大きさから考えて、障害物もなくスムーズに出せる場所かと」
三人は草原の中で足を止めた。
「では、ユウトさん」
「うん」
ユウトは心の中で念じる。
ドラゴン……首が長かった、ような……羽根が生えてたようななかったような……角ってあったっけ……

曖昧なイメージをまとめ、袋のことを考えながら、そこからドラゴンが出てくることをイメージする。
「出でよ!ドラゴン!」
袋に光が集まり、そして。

「ぽひゅー」
出てきたのは、子供が落書きで描いたような、適当な作画のドラゴンだった。
「えっ」
「ばなな」
ドラゴンは謎に一声鳴くと、消え去った。
「か……かわいいにゃ!」
ミャウの瞳が輝く。どうやら皮肉でもなんでもなく、本当にそう思っているらしい。
「ありがと、いい子だな」
ユウトはミャウを撫でる。
「えへへ」
猫少女が目を細める。
「うーん、ではこれは」
アヴリルがドラゴンの絵を見せる。
「これはドラゴンの写し絵です。これなら生きたドラゴンを生成できますか」
「待ってね、はっ!」
ユウトが手をかざす。
出てきたのは、写し絵とそっくりの巨大ドラゴン。
「おおー!」
喜んだのもつかの間、風に吹かれてドラゴンがパタンと倒れる。ドラゴンはただの大きなパネルだった。

「ふむ、これでわかりました」
アヴリルが説明する。
「ユウトさんは、
 
 ・素材を、魔獣系なら魔獣系で、同じ系統の素材をランクアップできる。自然物でもできる。
 ・素材を組み合わせて、武器防具の作成、および強化ができる。
 ・袋には無限収納と時間停止の魔法をかけており、中には様々なものを無限に収納でき、入れたものは劣化しない。
 ・ユウトさんの袋世界は、イメージすることで全員が思うものを作れる。外に持ち出せるかは不明。

ただし、
 ・ユウトさんが『実物を見たことがない』ものは作れない。
イメージで出すと、曖昧なものしか出ない。
 ・対象の絵を見せると、対象の絵がそのまま出る

このくらいですかね、わかったことは」
「おおー」ユウトとミャウが拍手する。
「な、なんですか?」
アヴリルが赤くなる。
「君、ホントに魔法使いの卵?賢者じゃないの?」
「そんな、ちょっとユウトさんのことを考えて、まとめただけです」
「嬉しいよ、アヴリル」
「うう……」
魔法使いは、耳まで染まっている。
「とにかく、色んなモノを生み出すには自分で見なきゃいけないわけだ。生成できるものを増やして、戦いに備えないとね」

三人は袋内に戻った。
「ん?」
クンクン、ミャウが辺りを嗅ぎ回る。
「どうしたミャウ?」
「なんか、ミャウたち以外の気配を感じるにゃお」
「そんなバカな。俺が生成した世界に俺たち以外がいるわけが」
「そうにゃおねー」
ミャウが自宅の部屋を開ける。

そこには、ハンモックに寝転がり、猫用クッキーをむさぼりつつ、ゲームをしているフードの少女がいた。

「ぎゃあああああ?」
「にゃあああああ!」
「出てってよ、えっち!」
「ごめんにゃ!」
バタンとドアを閉める。
「ん?」
ここは自分のうちだ。
ミャウはもう一度ドアを開けた。少女が寝転がってゲームをしている。
「お前、何してるにゃ!」
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