かわいくない弟ができた話

ななふみてん

文字の大きさ
13 / 15

13

しおりを挟む
 


 次に私が目を覚した時にいたのは病院のベッドの上だった。

 なんでも、脳震盪を起こし意識を手放したらしい。
 打った場所が場所なので一日入院することになった私は、早々にCT検査などもろもろと調べたが特に異常が見つからず終わり、次の日の夕方には帰宅することができた。
 頭と身体をアスファルトに思いっきり打ち付けた割には小さいたんこぶと打ち身ができただけで終わったのは自前の石頭のおかげか。
 打ち身は流石に痛むものの、後遺症とかできなくて良かったーとのん気に笑いながら帰ってきた私に父は青い顔をし、元妻のしでかしたことに始終平謝りをしながら事の顛末を教えてくれた。

 私が意識を失ったあの後、美幸さんは私たちの騒ぐ声にきづいて様子をうかがっていた近所の人の手によって通報され、複数人に取り押さえられ、無事警察に引き渡された。
 救急車も呼ばれていて私はすぐに病院へ。
 弟はひとまず近所の人に保護され、父や母にも連絡がいき、二人とも急いで仕事を切り上げかけつけてくれたとのことだった。
 大きな怪我は無かったものの立派な傷害罪ではあるので美幸さんはしかるべき処罰を受けるようだ。

 美幸さんが父と離婚した理由も、元鞘に収まろうとした理由も、警察の事情聴取や美幸さんのご両親、その他知り合いからの話を聞いた父からこうだったのではという推測もまじえて伝えられた。

 職場で役職持ちになった父は平社員の頃より忙しくなって家にいる時間が以前より少なくなり、父といられる時間が減り人恋しくなった美幸さんは友人と会うと偽り浮気を繰り返し、浮気相手に本気になった美幸さんは最後に父と弟を誹り離婚した。
 その後浮気相手と再婚したが新しい夫とは長くは続かず、今度はその夫に浮気され、捨てられたそうだ。美幸さんが、父たちにしたように。
 それからは実家に帰り、色々な男性とくっついたり別れたりしながらすごしてきたらしい。
 そうした日々が美幸さんにとっては不服だったのか。
 どういった理由かは知らないが久しぶりに訪れたこの町で弟を見かけ、幸せだった当時を思い出し、その再現を望んだ。
 どうして父も弟も美幸さんを歓迎してくれると思っていたのかはよく分からない。
 でも、私たちが分からないことが正解だとも思う。
 あの時の美幸さんは、正しく狂人だった。

「彼女は昔から多少他者依存や思い込みが人より強い方だとは思っていたが、あれほどになっているとは思わなかった。明里ちゃん、巻き込んでしまって本当にすまない」

 彼女は離婚後、県外に出ていった。彼女の実家も同じように県外だ。
 まさか戻ってくるとは思わず、同じ場所に住み続けたのは見通しが甘かった。
 私が突き飛ばされ怪我を負ったことに相当責任を感じているのか父はそう謝るけれど、元妻が元鞘を狙って来襲してくるなんて中々あることではない。
 誰が悪いか、といったらやっぱり美幸さんだ。
 大丈夫だよ、と答える私に引くことなく謝罪を続ける父を私と母でなだめたが納得させるのが大変だった。

 そして、弟はというと。

 部屋から引きこもるのを止め、再びリビングに現れるようになった。
 今はソファに座る私の隣に同じように座ってテレビを眺めている。
 弟は相変わらずあんまり喋らない。
 喋らない、が。

 私が病院から帰ってきた日から、何故か私の側から離れなくなった。

 流石にお風呂とトイレと寝るときは別々になるけれど。
    逆に言えばそれ以外は、家にいるときはずっと側にいるようなってしまったのだった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私はバーで強くなる

いりん
ライト文芸
33歳、佐々木ゆり。仕事に全力を注いできた……つもりだったのに。 プロジェクトは課長の愛人である後輩に取られ、親友は結婚、母からは元カレの話題が飛んできて、心はボロボロ。 やけ酒気分でふらりと入ったのは、知らないバー。 そこで出会ったのは、ハッキリ言うバーテンダーと、心にしみる一杯のカクテル。 私、ここからまた立ち上がる! 一杯ずつ、自分を取り戻していく。 人生の味を変える、ほろ酔いリスタートストーリー。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妻への最後の手紙

中七七三
ライト文芸
生きることに疲れた夫が妻へ送った最後の手紙の話。

『 ゆりかご 』 

設楽理沙
ライト文芸
  - - - - - 非公開予定でしたがもうしばらく公開します。- - - - ◉2025.7.2~……本文を少し見直ししています。 " 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始 の加筆修正有版になります。 2022.7.30 再掲載          ・・・・・・・・・・・  夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・  その後で私に残されたものは・・。 ―――― 「静かな夜のあとに」― 大人の再生を描く愛の物語 『静寂の夜を越えて、彼女はもう一度、愛を信じた――』 過去の痛み(不倫・別離)を“夜”として象徴し、 そのあとに芽吹く新しい愛を暗示。 [大人の再生と静かな愛] “嵐のような過去を静かに受け入れて、その先にある光を見つめる”  読後に“しっとりとした再生”を感じていただければ――――。 ――――            ・・・・・・・・・・ 芹 あさみ  36歳  専業主婦    娘:  ゆみ  中学2年生 13才 芹 裕輔   39歳  会社経営   息子: 拓哉   小学2年生  8才  早乙女京平  28歳  会社員  (家庭の事情があり、ホストクラブでアルバイト) 浅野エリカ   35歳  看護師 浅野マイケル  40歳  会社員 ❧イラストはAI生成画像自作  

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...