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旅立ち
城塞都市アバンド
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◆他の冒険者と共に街に戻る
赤髪のムメイ以外に俺に話し掛けてくる者は居なかった。俺に興味を抱いているのは時折感じる視線で分かるがあからさまでは無い。赤髪のムメイも俺が魔族である事を隠しがっているのを知って俺についての質問は避けてくれている。
「なぁムメイ、何処に向かっているんだ?」
俺はスライムに転生したせいで地理に詳しくない。せいぜいデーモンスパイダーの居た森が『クロツ川東に広がる森』としか分からない。
「領主レオニード女伯爵が治める領都アバンドね。ここから徒歩で1日も掛からないわ。夕方には着くわ。」
近っ!めっちゃ近っ!領都ってことはそれなりに大きい街だろ?なのにその近くにデーモンスパイダーみたいな魔物が徘徊する森があるなんて、危険じゃない?
俺の危惧を感じたのかさらに説明を続ける。
「クロツ川があるわ。流れは穏やかだけど川幅があるから魔物は渡って来ないわ。天然の防壁って所かしら」
なるほど、魔物が水を嫌うのが有利に働いていると言う訳だ。
「それでも守りはしてあるのよ」
話をしている内に森を抜け、川岸に出る。そこから少し上流に向かって歩き、船渡し場に出た。
桟橋に渡る場所には酷く嫌な匂いを漂わせるランプのような物があった。俺の顔が歪んでいるのに気付き、赤髪のムメイが笑う。
「あれは魔物避けの魔導具ね。あたし達には嫌な気分にさせるだけの物だけど魔物は近寄れないわ」
なるほど、そう言う魔導具で桟橋を守っているのか。
赤銅色の全身鎧のバイハイドが桟橋の船乗りに声を掛けてお金を渡していた。俺も金を出したほうが良いのかと赤髪のムメイを見ると首を横に振られた。
「あの小舟に全員乗れるのか?」
「大丈夫よ、ああ見えて10人以上乗れるのよ」
俺は全身鎧のバイハイドや黒狼のジエイドを見て心配になる。人間の時と違ってスライムの身体なら水も怖くない。・・・スライムって呼吸してないな。まぁ赤髪のムメイを信用する事にしよう。
近くで渡し船に乗ると意外と幅広で船底も深かった。乱暴に全身鎧のバイハイドや黒狼のジエイドが乗っても余り揺れていなかったたのだ。
船に揺られること30分余り、無事に対岸に着いて岸に上がってようやく俺は落ち着くことが出来た。
川に橋は無く、馬車も乗せられる程の大型の渡し舟もあるらしい。川に橋が無いのもわざとらしいな。
人が踏み固めた様な道を往くと石畳の幅広の街道に出た。ここを進むと領都に出るらしい。俺達は石畳の横を歩いていく。んん?何故だと疑問が湧き、ムメイに聞く。
「お金が取られるのよ」
赤髪のムメイによると石畳は馬車が通る為に整備されていて貴族の馬車や豪商の馬車が使うのだそうだ。警備の騎士が巡回していて、冒険者や許可の無い馬車を見つけると問答無用で違反金を取られるらしい。だから街道を馬車で移動するときは都市で通行許可証を発行して貰い、利用するのだとか。う~ん、世知辛い。
ただ、街道沿いに移動すれば魔物避けも定期的に設置されているから安全のために冒険者も石畳の横を歩くと教えられた。なるほどなぁ。
それから領主レオニード女伯爵が治める領都アバンドについても教えられた。赤髪のムメイも遠目でしか見たことが無いらしいがとてもケバい老女らしい。金にがめつくて税金もしっかり取られるらしい。でも内政は煩いせいで治安はとても良いそうだ。冒険者同士の諍いには不介入でも市民を巻き込んだ事件は徹底的に暴かれると言う。
冒険者や社屋を持たない商人には市民権が与えられない。でも、金を積むか家を購入することで市民権を得られるそうだ。だから冒険者はクランを設立してそこに所属する事で市民として暮らすことが出来る。赤髪のムメイもクラン『光耀団』に所属する事で市民として扱って貰えるらしいぞ。
でも、市民となるとバカ高い税金を取られる。
市民権を持たずに領都アバンドに入場する者はあらゆる施設で高額の使用料を取られるらしい。それ故、領都外にテント暮らしをするスラムができている。これを良しとしない領主レオニード女伯爵の命を受けた騎士団が時たま追い立てをするらしい。
俺としては冒険者ギルドに登録したら早々に出て、世界を見て回りたい所だ。俺の顔を見て赤髪のムメイは盛んにクラン『光耀団』に所属する事を勧めて来た。市民権が得られるから領都だけでなく他の都市でも市民として施設が安く利用出来る。冒険者ギルド所属だけだと入場料金を取る都市があるがクラン『光耀団』に入っていれば無料になるらしい。
「だがなぁ、メリットもあるだろうがデメリットもあるだろ。」
俺の言葉に赤髪のムメイはニヤニヤして言った。
「あたしと組め。そうすればクラン長の命令以外は全部無視出来る!」
赤髪のムメイはクラン『光耀団』にあって特別な地位にあり、大きな裁量権を持っているのだと言うんだ。今までは赤髪のムメイのお眼鏡に叶う奴は居なかったが俺は特別だとニヤニヤしやがった。俺が魔族である事以外に何があるってんだ。まぁ、ムメイの庇護下にあれば色々と都合は良いかも知れない。
「直ぐには決められない」
俺の言葉にムスッとしたがあい変わらず離れる積りは無いようだ。
赤髪のムメイ以外に俺に話し掛けてくる者は居なかった。俺に興味を抱いているのは時折感じる視線で分かるがあからさまでは無い。赤髪のムメイも俺が魔族である事を隠しがっているのを知って俺についての質問は避けてくれている。
「なぁムメイ、何処に向かっているんだ?」
俺はスライムに転生したせいで地理に詳しくない。せいぜいデーモンスパイダーの居た森が『クロツ川東に広がる森』としか分からない。
「領主レオニード女伯爵が治める領都アバンドね。ここから徒歩で1日も掛からないわ。夕方には着くわ。」
近っ!めっちゃ近っ!領都ってことはそれなりに大きい街だろ?なのにその近くにデーモンスパイダーみたいな魔物が徘徊する森があるなんて、危険じゃない?
俺の危惧を感じたのかさらに説明を続ける。
「クロツ川があるわ。流れは穏やかだけど川幅があるから魔物は渡って来ないわ。天然の防壁って所かしら」
なるほど、魔物が水を嫌うのが有利に働いていると言う訳だ。
「それでも守りはしてあるのよ」
話をしている内に森を抜け、川岸に出る。そこから少し上流に向かって歩き、船渡し場に出た。
桟橋に渡る場所には酷く嫌な匂いを漂わせるランプのような物があった。俺の顔が歪んでいるのに気付き、赤髪のムメイが笑う。
「あれは魔物避けの魔導具ね。あたし達には嫌な気分にさせるだけの物だけど魔物は近寄れないわ」
なるほど、そう言う魔導具で桟橋を守っているのか。
赤銅色の全身鎧のバイハイドが桟橋の船乗りに声を掛けてお金を渡していた。俺も金を出したほうが良いのかと赤髪のムメイを見ると首を横に振られた。
「あの小舟に全員乗れるのか?」
「大丈夫よ、ああ見えて10人以上乗れるのよ」
俺は全身鎧のバイハイドや黒狼のジエイドを見て心配になる。人間の時と違ってスライムの身体なら水も怖くない。・・・スライムって呼吸してないな。まぁ赤髪のムメイを信用する事にしよう。
近くで渡し船に乗ると意外と幅広で船底も深かった。乱暴に全身鎧のバイハイドや黒狼のジエイドが乗っても余り揺れていなかったたのだ。
船に揺られること30分余り、無事に対岸に着いて岸に上がってようやく俺は落ち着くことが出来た。
川に橋は無く、馬車も乗せられる程の大型の渡し舟もあるらしい。川に橋が無いのもわざとらしいな。
人が踏み固めた様な道を往くと石畳の幅広の街道に出た。ここを進むと領都に出るらしい。俺達は石畳の横を歩いていく。んん?何故だと疑問が湧き、ムメイに聞く。
「お金が取られるのよ」
赤髪のムメイによると石畳は馬車が通る為に整備されていて貴族の馬車や豪商の馬車が使うのだそうだ。警備の騎士が巡回していて、冒険者や許可の無い馬車を見つけると問答無用で違反金を取られるらしい。だから街道を馬車で移動するときは都市で通行許可証を発行して貰い、利用するのだとか。う~ん、世知辛い。
ただ、街道沿いに移動すれば魔物避けも定期的に設置されているから安全のために冒険者も石畳の横を歩くと教えられた。なるほどなぁ。
それから領主レオニード女伯爵が治める領都アバンドについても教えられた。赤髪のムメイも遠目でしか見たことが無いらしいがとてもケバい老女らしい。金にがめつくて税金もしっかり取られるらしい。でも内政は煩いせいで治安はとても良いそうだ。冒険者同士の諍いには不介入でも市民を巻き込んだ事件は徹底的に暴かれると言う。
冒険者や社屋を持たない商人には市民権が与えられない。でも、金を積むか家を購入することで市民権を得られるそうだ。だから冒険者はクランを設立してそこに所属する事で市民として暮らすことが出来る。赤髪のムメイもクラン『光耀団』に所属する事で市民として扱って貰えるらしいぞ。
でも、市民となるとバカ高い税金を取られる。
市民権を持たずに領都アバンドに入場する者はあらゆる施設で高額の使用料を取られるらしい。それ故、領都外にテント暮らしをするスラムができている。これを良しとしない領主レオニード女伯爵の命を受けた騎士団が時たま追い立てをするらしい。
俺としては冒険者ギルドに登録したら早々に出て、世界を見て回りたい所だ。俺の顔を見て赤髪のムメイは盛んにクラン『光耀団』に所属する事を勧めて来た。市民権が得られるから領都だけでなく他の都市でも市民として施設が安く利用出来る。冒険者ギルド所属だけだと入場料金を取る都市があるがクラン『光耀団』に入っていれば無料になるらしい。
「だがなぁ、メリットもあるだろうがデメリットもあるだろ。」
俺の言葉に赤髪のムメイはニヤニヤして言った。
「あたしと組め。そうすればクラン長の命令以外は全部無視出来る!」
赤髪のムメイはクラン『光耀団』にあって特別な地位にあり、大きな裁量権を持っているのだと言うんだ。今までは赤髪のムメイのお眼鏡に叶う奴は居なかったが俺は特別だとニヤニヤしやがった。俺が魔族である事以外に何があるってんだ。まぁ、ムメイの庇護下にあれば色々と都合は良いかも知れない。
「直ぐには決められない」
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