無貌の男~千変万化のスキルの力で無双する。

きゅうとす

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王都のQT

身の上話

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何から話したら良いのか分からないで居るとおじいちゃん?と思われる人から質問を受けた。
聞き上手なのかぽつりぽつり話すあたしの話を頷きながら、合いの手を入れながら聞いてくれる。
隣のおかあさん?は一生懸命にあたしの顔を見つめて涙ぐんでいる。いや、既に涙は止めどもなく流れていた。

「うん、あたしがおかあさん・・・あ、乳母でしたっけ、のメリーゼから聞いたのは魔物からお父さんが必死に守ってくれたという話でした。」

その大きな四足の魔物は街道の中央で待っていたという。馬が魔物に気づいて鳴き声を上げる間もなく襲われ、あっという間に2頭の馬は血を流して倒れ、魔物の体当たりで馬車も横倒しになった。メリーゼは魔物に襲われた事も分からずに馬車が倒れたことから背中を強打されて頭を打った。抱えていた赤子を必死にスキルで守りながら身体を丸める。
「早く逃げるんだ!」

御主人様の声に痛む身体で赤子を抱えながら馬車から這い出ると護衛の冒険者が魔物と戦っているのが見えた。二人の屈強な冒険者を前にしても怯まない魔物が唸り声を上げる。雇われた冒険者はC級でかなり強い筈だ。その冒険者達が魔物に翻弄されているように見える。
御主人様がメリーゼを倒れた馬車の影に隠し、魔物を馬車の影から覗く。

「お、奥様はどちらに?」
メリーゼが聞く。

「馬車の中で気絶しているみたいだ。心配だがむやみに動かさない方が危なくない。」
無事を聞いて安心したが御主人様が声を上げた。

「あ!不味い!護衛が殺られた。逃げるぞ!」

C級冒険者の二人を倒すほどの魔物から逃げられるのだろうかと疑問も浮かんだが御主人様から押されてメリーゼは森の方へ走り出した。
後を追い掛けて来る御主人様はご自分より赤子を優先したいらしい。飾りでしかない腰の剣を抜いて守るように付いてくる。森の奥から濁流の音がしているから行き止まりかも知れない。
そんな心配も他所に魔物が走り寄って来た。
御主人様が剣を振り、魔物を牽制する。振るたびにゴォと音がして魔物に当たる。音は御主人様のスキルの力だろう。身体から血を流している魔物は突風に少し怯んだが大した事がないと分かったのか、ゆっくりと近づいて来た。
「森の奥へ逃げろ!」

御主人様が逃げるように促したので足を縺れさせながら森に走る。後ろから御主人様の悲鳴が聞こえた。
無理に聞かないように懸命に走っていると背中を強烈な痛みと共に強打された。痛みに悲鳴を上げたが転げながら懸命に赤子を守る。転んだ拍子に御包みが解け、その上に背中が乗る。必死に目を明け足の方を見ると魔物が口から血を垂らしながら歩いてくる。メリーゼは必死に後ろへ足で這いずり、赤子を抱く。
真後ろから濁流音が聞こえたがスキルを使い、後ろから落ちた。

メリーゼはもう後が無いと分かって自分のスキルに掛けることにしたのだった。スキル『カプセル』は見えない力で自分の身体を覆い尽くす能力だ。自分の子供を流してしまい、悲しんでいるときに母乳を必要としている仕事が見つかり、乳母となった。かなり身分の高い貴族だった為にメリーゼの余り役に立たないと思われたスキルも喜ばれた。スキルは直接触れていれば思うような大きさで包み込めたし、触れていなくても小さな虫程度は近付かせないように出来たからだ。乳母の仕事には何かしらと有用だった。
ただ、余り強度が無く、衝撃に弱かったのだが必死にスキルを使ったためだったのか、何とか濁流に飲まれても赤子を抱いた自分を守ってくれた。守る事に必死で背中の痛みは何とか我慢出来ていた。

下流の流れが緩やかな所でスキルは自然と解け、メリーゼは痛みと共に岸に上がり、ふらふら歩いた。その場所は村の洗い場近くだったらしく村の女達がメリーゼを見つけてくれた。女達を見てメリーゼは気絶したらしい。
メリーゼが気付くと赤子を横に寝かされ大きく体中に包帯を巻かれていた。
メリーゼはその村で暫く体力が回復するまでお世話になり赤子を育てた。その村にも他に親のない赤子がいたお陰でメリーゼが世話をすることで村に滞在させて貰えた。離乳が始まる頃までその村にいたがメリーゼは自分の実家のつてを探してヨークゼンに向かった。

濁流に落ちる前に見た魔物の目を見てメリーゼは事件が意図的に狙われたものだと思った。狙っているのは自分が抱く赤子だと理解してしまった。
だからメリーゼは赤子が成長して話せるようになってからは「テレジア」と呼んで娘として育てていた。赤子の正体がバレないように。

ヨークゼンでメリーゼは地位の低い貴族や裕福な商人のメイドとして仕事をするようになった。自分の実家に行けばあの魔物を使った者に生きていると知られてしまうことを恐れたからだった。
「テレジア」は裕福では無いが元気にヨークゼンの街を生きていた。メイドのメリーゼの娘として4歳までは普通の子供だった。だが、メリーゼが背中の傷が元で体が不自由になり、働けなくなった。

メリーゼの容態は急激に悪化してあっという間に亡くなってしまった。


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