24 / 91
第一章
23. 目覚め
しおりを挟む
窓から差し込む太陽が眩しい。
目覚めると、裸のまま広いベッドの上に一人だった。
少し気怠い体をなんとか起こし、手近にあったブランケットを肩から羽織る。
寝室からそっと抜け出せば、リビングにも早川の姿はなかった。
いないことに安堵の溜息を吐くが、胸はなんだかモヤモヤしてしまう。
昨夜のことは、朧げにだが覚えていた。
リュックからスマホを取り出すと、祥吾と暁人から着信とメッセージがたくさん残っていた。どれも俺を心配する内容で、申し訳なくなる。それらを眺めている間に、最新のメッセージが届いた。
【今日休み?もうすぐ講義始まるぞ。】
それは、祥吾だった。
驚いて時計を見れば、時刻はとうに十時を回っていた。
けれど、どうしても支度なんてする気になれない。
【昨日はごめん。今日は休む。】
それだけ打って、ソファーに倒れ込んだ。
ぼんやりと天井を見上げながら右手を翳せば、手首には赤い痕があった。
何かと思い、近くで見る。
それは、小さな鬱血痕だった。
途端に、絡め取るように握り込まれた右手の熱がぶり返す。
『いいよ、もっと触って?』
落とされた噛み付くような口付けの痛みを思い出し、たまらずブランケットに顔を埋める。しかし、瞳を閉じてしまえば、より鮮明に早川の姿がまぶたの裏に浮かんだ。
綿菓子のように白く滑らかな肌。
ミルクティーのように甘そうな髪。
宝石を詰め込んだようなヘーゼルの瞳。
彼を象るもの全てが、甘く綺麗なものでできていると思っていた。
バスに乗ってはしゃぐ姿も、
甘いものが大好きなところも、
さりげない気遣いができる優しさも、
彼はどんな姿でも、キラキラした王子様なのだと、信じて疑わなかった。
……でも違った。
昨夜の彼は、まるで俺を頭から喰べてしまえそうなほど成熟した獣だったのだ。
それを、嫌というほど知ってしまった。
(でも、嫌じゃなかった……)
茹だるような思考のままブランケットに包まれば、あの爽やかで甘い香りが鼻をくすぐる。頭の中で囁きが響いた。
『今度、ここにいれようね』
荒い息遣いの合間で囁かれた、少し掠れた甘ったるい声。
それを思い出した瞬間、体の中心がきゅんと切なく疼き、慌てて頭を強く振った。
「~……っ、ゃ、ありえねぇ」
そう呟けば、いつもはない喉の違和感に余計に悶える羽目になる。
(あんな声まで出して……、これからどんな顔して会えばいいんだよっ!)
バタバタと広いソファーの上で暴れていると、ついに床へと転がり落ちてしまった。
「いっ……、った!」
突然の衝撃と痛みに、目が覚めるような心地だった。
しかし、ジンジンとした痛みが引いた頃、ようやく頭は冷静になる。早川さんはー……
「……なんで、あんなことしたんだろ」
そんな疑問を零した時だった。
不意に、玄関でガチャガチャとドアノブを動かす音がする。
「早川さん……?」
そう呟けば、一人きりの部屋にインターホンが鳴り響いた。
目覚めると、裸のまま広いベッドの上に一人だった。
少し気怠い体をなんとか起こし、手近にあったブランケットを肩から羽織る。
寝室からそっと抜け出せば、リビングにも早川の姿はなかった。
いないことに安堵の溜息を吐くが、胸はなんだかモヤモヤしてしまう。
昨夜のことは、朧げにだが覚えていた。
リュックからスマホを取り出すと、祥吾と暁人から着信とメッセージがたくさん残っていた。どれも俺を心配する内容で、申し訳なくなる。それらを眺めている間に、最新のメッセージが届いた。
【今日休み?もうすぐ講義始まるぞ。】
それは、祥吾だった。
驚いて時計を見れば、時刻はとうに十時を回っていた。
けれど、どうしても支度なんてする気になれない。
【昨日はごめん。今日は休む。】
それだけ打って、ソファーに倒れ込んだ。
ぼんやりと天井を見上げながら右手を翳せば、手首には赤い痕があった。
何かと思い、近くで見る。
それは、小さな鬱血痕だった。
途端に、絡め取るように握り込まれた右手の熱がぶり返す。
『いいよ、もっと触って?』
落とされた噛み付くような口付けの痛みを思い出し、たまらずブランケットに顔を埋める。しかし、瞳を閉じてしまえば、より鮮明に早川の姿がまぶたの裏に浮かんだ。
綿菓子のように白く滑らかな肌。
ミルクティーのように甘そうな髪。
宝石を詰め込んだようなヘーゼルの瞳。
彼を象るもの全てが、甘く綺麗なものでできていると思っていた。
バスに乗ってはしゃぐ姿も、
甘いものが大好きなところも、
さりげない気遣いができる優しさも、
彼はどんな姿でも、キラキラした王子様なのだと、信じて疑わなかった。
……でも違った。
昨夜の彼は、まるで俺を頭から喰べてしまえそうなほど成熟した獣だったのだ。
それを、嫌というほど知ってしまった。
(でも、嫌じゃなかった……)
茹だるような思考のままブランケットに包まれば、あの爽やかで甘い香りが鼻をくすぐる。頭の中で囁きが響いた。
『今度、ここにいれようね』
荒い息遣いの合間で囁かれた、少し掠れた甘ったるい声。
それを思い出した瞬間、体の中心がきゅんと切なく疼き、慌てて頭を強く振った。
「~……っ、ゃ、ありえねぇ」
そう呟けば、いつもはない喉の違和感に余計に悶える羽目になる。
(あんな声まで出して……、これからどんな顔して会えばいいんだよっ!)
バタバタと広いソファーの上で暴れていると、ついに床へと転がり落ちてしまった。
「いっ……、った!」
突然の衝撃と痛みに、目が覚めるような心地だった。
しかし、ジンジンとした痛みが引いた頃、ようやく頭は冷静になる。早川さんはー……
「……なんで、あんなことしたんだろ」
そんな疑問を零した時だった。
不意に、玄関でガチャガチャとドアノブを動かす音がする。
「早川さん……?」
そう呟けば、一人きりの部屋にインターホンが鳴り響いた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
40
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる