星に願いを

一色

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〜 Side story 1 〜


「君、本当に彼の知り合いなんだよね?」

 そう尋ねて来たのは、救急車で運ばれた先の病院の医師だった。
「いや、疑っている訳じゃないんだよ。先程駆けつけてくれた彼のご家族に連絡をとってくれたのも君だしね。もう目を覚まして、意識もしっかりとしている。ただ、ねー……」
 少し言い淀んだ後、医師は困ったように頭を掻いた。
「どうやら、記憶が一部欠落しているようなんだ」
「欠落?覚えていないということですか?」
「そう。階段から転落した日のこととー……」
 ゆっくりと、その口が開かれる。


「君の存在」




7月1日(金)晴れ

 病室のドアを静かに開けると、お前はベッドに腰掛け窓を眺めていた。
 空の燃えるような赤が夜に溶け出してゆく逢魔が時。群青色に変化する空が、ただ白いだけの部屋を夜へと染め上げてゆく。
「何を見てるんだ?」
 そう声を掛ければ、柔らかく癖のない栗色の髪が振り返る。
 目が合えば、いつだって嬉しそうに笑ってくれる瞳は、どこか遠くを捉えたまま揺れ動くだけだった。
 そんな表情を見たのは初めてで、よく知っている筈のお前が、まるで知らない別人のように見えて焦燥に駆られた。
「何を見てるんだ?」
 震えそうになる喉を振り絞り、もう一度静かに尋ねる。
 すると、ようやく小さな唇は動いた。
「…………一番星」
 耳心地の良い声が返事をする。
 そっとベッドへ歩みを進め空を見上げれば、遠くの空に輝きが見える。
「あぁ、本当だ。もう星がでてる」
 しかし、お前は言った。

「きみ、だれ?」

 するりと零れた言葉は、簡単に俺の胸に爪を立ててえぐってゆく。
 俺は、空を見上げるフリをして、目の奥から迫り上がる熱を抑え込んだ。

 そうして、医師から告知されてから何度も頭の中で練習した台詞を吐く。


「俺は、お前の……友達だよ」


 そう紡げば、まるで人形のように感情を見せない瞳が、ゆっくりと微笑んだ。
感想 2

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