星に願いを

一色

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〜 Side story 4 〜

「そういえば、もうすぐ七夕だよね」
「あぁ。もうそんな時期か」

 忘れてたな……、なんて。
 雑誌を捲りながら呟けば、少しムッとした声に抗議された。
「なんで忘れちゃうのさ!毎年、二人で過ごそうって約束してるじゃん。晩御飯に僕がカレーを作って、それからー……」
 指折り数え始める姿に、笑いそうになるのを堪えて言った。
「嘘だよ、忘れてない。今年は何カレーにするんだ?」
 顔を上げれば、お前は笑顔だった。

「もちろんー……」

 そう言って見せてくれたとっておきのカレールーは、今でも戸棚に置かれたままだ。


****

7月4日(月)曇り

「今日は何を見てるんだ?」

 病室を訪ねれば、お前は相変わらず人形のような瞳でそこにいた。
「自分の手」
 シーツの上に投げ出された手はどこか寂しげで、俺はその隣に自分の手を置いた。
 本当はその手に触れたかった。
 けれど、触れて良い理由がどうしても見つからなかった。
 薄暗い部屋の中で、重なり合えない二つの手が、もどかしく並んでいる。
「どうして?」
「カレーを作っていた筈なんです。なぜか、毎年七夕の日に」

 でも、勘違いだったかな?

 その呟きに、俺は何も言えずに手を引いた。俺の手を追う瞳の奥には、今日も感情が映らない。

「お前のカレー……、食べたいな」

 唇から、どうしようもない想いが溢れる。
「ははっ。食べさせてあげたいけど、無理かなぁ……」
「どうして?」
 お前は可笑しそうに笑って言った。


「だって。君は、僕のイマジナリーフレンドだもん」


 この時、俺はどんな顔をしていただろうか?

 星すら見えない、曇天の夜。
『明日も隣にいられますように』

 決して触れられなかったのは、手なんかじゃなくて、お前が隠した心だった。
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