異世界強制お引越し 魔力なしでも冒険者

緑ノ深更

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1章

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怖い夢を見た気がする。
弟たちか俺か。って選ばされて急に知らないところに連れて行かれる夢。
相手の声は思い出せるけど、それ以外は何もかもぼんやりしてる。

引っ越し先は…違う世界?新しい環境?
もう戻れない…戻れない!?

ハッと意識が覚醒した。
地面に座っているようだ。背後にはあの大木によく似た木。
でも周りの景色は全く違った。草地の広場。その奥には鬱蒼とした森。爺ちゃん家の裏山っていう規模の森じゃない。
それに何も聞こえない。蝉の声も鳥の鳴き声も。

もう一度周りを見回して、気づいた。
うっすら明るいのは、夕方だからだと思ってた。でも違った。周りが光ってた。
木も、葉っぱも、足元の草も。
夜桜のライトアップみたいだけど、そうじゃなく、木が、葉っぱが、草が、輪郭に沿ってぼんやり光ってる。

「やばい…なんだこれ…やばいって…」

状況がわかってたら綺麗だと思えるだろうけど、何もわからない不安の中では只々不気味に感じた。
違う世界の新しい環境って言われて、学校を辞めて働きながら暮らすとか、最悪外国を想像してたんだけど…日本じゃないのは確定。外国には光ってるとこあったりする?TVで観たことはないけど…。
神様?が迎えに来るのかな…。
とりあえず迷子の鉄則を守って動かないことにする。

どうしたらいいのかわからなくて、ぼんやり空を見ていて気がついた。
何か小さな粒の様なものが飛んでいる。
空にじゃない。5ミリくらいのうっすら光った粒が空気中にいっぱい、みっしり飛んでる!

気づいたら、もうダメだった。
触れないし、くっつく訳じゃないし、痛くも痒くもないけど、何なのかわからないし、吸い込んでも大丈夫なのかもわからない。
手遅れかもしれないけど、できるだけ浅く息をして、できるだけ動かないように身体を縮めて座る。
粒がそれぞれ光っているので、気づいてしまうと微妙に眩しいし、視界がうっとうしい。

頭を立てた膝の上に伏せて目をつぶる。

迎えはたぶん来ない。
でも行くところもない。
次に目を開けたら、全部夢だったってなってないかな…
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