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第5章:出会いは偶然か、必然か……
5:ペンダント
しおりを挟むどれ程の時間が経ったのか……
中の様子を知らない者達が、店の中に入ってきた。
それぞれ、ジークの姿を目にして驚きはしたものの、先ほどのように酒を煽っているわけでもなく、大声を出しているわけでもないので、店の中はいつもの騒がしさを取り戻しつつあった。
リオ、マンマチャック、ジーク、そしてエナルカは、考えがまとまらないまま、また、良い考えが浮かばぬままに、その場から動けずにいた。
ただ、これだけはわかっていた。
頼るべき相手は、もはやいない……
そして、リオが口にした。
「僕しか、いないじゃないか」
その言葉に、残りの三人は、ハッとした表情になる。
もはや、誰かに頼り、指示に従って動けばいい、などという甘い考えは、捨てなければいけない。
これからは己で考え、行動し、己で道を切り開いていかねばならない。
師が亡くなった時に、そう誓ったのではなかったのか?
四人が四人とも、自分自信に問い掛け、そして思い出していた。
師を亡くし、旅に出た時の気持ちを……
すると、ジークが徐に口を開く。
「俺はレイニーヌに、ケットネーゼを探せと言われた。お前は?」
ジークはマンマチャックを指さしている。
「自分は、魔導師クレイマンを探せと……」
リオを見るマンマチャック。
「そうだったの!? 僕は……。僕は魔導師シドラーさんを……」
ちらりとエナルカを見るリオ。
「私はレイニーヌ様を……。どうやら私達は皆、出会うべくして出会ったようですね」
泣きはらした目を擦りながら、エナルカは静かに、しかし力強く、そう言った。
「そうですね、自分も考えていました。どうやら自分達は、こうなる運命ではなかったのかと……」
マンマチャックの言葉に、ジークは納得した様子だったが、リオはまだよくわかっていない様子だ。
「でも……。クレイマンさんは、シドラーさんに何をさせたかったんだろう?」
そう言って、服の内側にある、首から下げているペンダントを取り出すリオ。
歪な形をしたそれは、虹色に輝く石でできている。
それを目にした他の三人が、「あっ!」と声を出した。
「あなたそれっ!? それ私のものととてもよく似ているわ!」
早口でそう言ったエナルカが取り出したのは、シドラーより受け取ったペンダントだ。
こちらも、およそ美しいとは言えない形の、虹色の石でできたものだ。
「俺も持ってるぜ、ほら……」
ジークは、首にかけるには紐が短いらしく、手首に巻いたリストバンドのようなものの下に、それを隠していた。
こちらも、二人とは違う形だが、同じ虹色の石だ。
三人の目がマンマチャックに向かう。
「あ、自分もあります。けど、今は持ってませんよ? 何か大事な物なのですか?」
三人の表情が一様に崩れる。
「これは、クレイマンさんの形見だ。僕は、これを持って、シドラーさんを探せと言われたんだ!」
「私もこれはシドラー様の形見よ! 守護魔法がかかっていて身を守ってくれるって! これを持ってレイニーヌ様を探しに行けって!」
「守護魔法云々は知らねぇが、レイニーヌが死ぬ間際に俺に託したもんだ。きっと大事なもんに違いねぇ。なのに……。なんでお前は肌身離さず持ってねぇんだよ?」
三人は、怪訝な顔でマンマチャックを見つめる。
困ったマンマチャックは、真実を話した。
「あ、その……。小さい頃に、おもちゃだと言って父がくれたものですから……。自分にはそのような特別な意味がなくて……」
四人の会話は、ここで一旦途切れてしまった。
「あ! ありましたっ!」
宿屋に戻って、自分の荷物を漁っていたマンマチャックが虹色の石のペンダントを見つけたのは、夕方になってからの事だった。
あまりに店に長居してしまっていた為に、四人は一度、宿屋へ帰る事にした。
ジークとエナルカは、今日王都についたらしく、泊まる所がまだないと言った。
そこでマンマチャックは、リオと二人で宿泊している宿屋に二人を連れてきたのだった。
せっかく出会えたのだから、今後の事をゆっくりと話したい、そう考えたのだ。
見かけで人を判断しない宿屋の女将は、大きなジークと、変わった格好をしたエナルカに対して、快く宿泊する事を許可してくれた。
マンマチャックとリオの部屋で、それぞれのペンダントを持ち寄ると、リオがある事に気付いた。
「ねぇ、これって……。一つにできない?」
その言葉に、それぞれのペンダントをベッドに並べ、結合できそうな部分をパズルのように合わせていく。
するとそれらは、綺麗な五角形の形になった。
「おぉ、すげぇ……。けどよ、真ん中が空いてるぜ?」
ジークの言葉通り、四つのペンダントは五角形を作り上げたものの、その真ん中には歪な穴が空いているのだ。
「そうね……。それにどうしてこの形なのかしら? こんな形の魔法陣なんて私は知らないわ、誰か知っている?」
いつもの調子を取り戻したのか、エナルカは早口だ。
「魔法陣は大体が円で作られています。このような五角形の魔法陣は見た事が……。魔法陣とは関係ないのでは?」
マンマチャックは、太い腕を胸の前で腕組みして考える。
「ねぇ、誰かがもう一つ、持っているんじゃないかな?」
リオの言葉に、ジークが首を傾げる。
「誰かって誰だよ? 他に誰が……、あっ!?」
そこまで言って、リオの言葉の意味が、三人には理解できた。
口にしたのはマンマチャックだった。
「五大賢者の一人、常闇の主、魔導師ロドネス……」
その言葉に納得したのはジークとエナルカの二人で、リオはその人物が誰だか分かっていないような顔をしている。
「そうねそうよきっとそうだわ! どうして気付かなかったのかしら!?」
エナルカが頭を抱える。
「確かに、その可能性が高いな……。けどよ、思ったんだが、このペンダントがこうやってくっついて何かの形になるからって、どうなるんだ?」
ぽりぽりと頭を掻くジーク。
「この虹色の石は恐らく、魔封じの石、マハカム魔岩だと思われます。マハカム魔岩とは主に、何かの災厄や、狂暴な魔物を封じる時に使う石です」
マンマチャックの言葉に、深く頷くエナルカ。
「そう! 私もそれを考えていたの! けれど一つのペンダントだけでは何かを封じるには余りにも小さいし微弱だしで信じてなかった。でもきっと全部を合わせると力を発揮したんだと思うの!」
エナルカの早口を、リオは聞き取れない。
「じゃあ、俺らの持っていたペンダントは、魔封じに使われていたマハカム魔岩の一部で、五大賢者が意図して別々に持っていたって考えられるな。けど……、何の為にだ? 魔封じの石ってのはあれだろ? この国の……、いや、この世界のどこかに、外に出しちゃいけねぇ何かがあって、それを封じたって証だろ? それをなんだってこんな、五つに割るんだよ……?」
ジークの言葉で、今何が話し合われているのかがようやく理解できたリオ。
「これは推測ですが……。その昔、五大賢者と呼ばれた魔導師五人が、強大な敵を前にして、個々の力では及ばず、五人の力でもって何とかその敵を封じた。その際に、このマハカム魔岩を使った。しかし、一人がそれを持っていれば、良からぬ企みをする者達に命を狙われる。石が奪われてしまえば、容易に封印を解かれ兼ねない。そのリスクを少しでも回避する為に、魔封じの石を五つに分けた、ということではないでしょうか?」
マンマチャックの言葉に、三人が頷く。
「じゃあ……、その……、常闇の主、ロドネスさん? その人を探してみる? 五大賢者の一人なんだったら、きっと、僕たちの師が何をしようとしていたのかわかるよね。このペンダントの意味も、知っているはずだよね?」
リオの言葉に、三人は大きく頷いた。
こうして、出会うべくして出会った、五大賢者の弟子である四人の物語が、今、幕を開けたのであった。
五大賢者の一人、常闇の主、ロドネスを探す。
どこにいるのか、果たして生きているのか、四人には皆目見当もつかない。
それでも、四人が四人とも、若き心に決意の炎を灯していた。
師の残した思いと、それぞれのペンダントを胸に、新たな旅が始まろうとしていた。
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