Hearts Seeker ~天使と悪魔の共謀策~

玉美-tamami-

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第1章:それぞれの為に

エピローグ

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 午前一時の鐘が鳴る。

 町中が寝静まっているこの時間に、一際騒がしい場所が一つだけ……。
 デトワール家の屋敷の周りには、巨大なライトがいくつも設置されて昼間よりも明るく、沢山の警察官と複数の馬と、救急に駆け付けた町医者たちで溢れかえっている。
 真紅の悪魔によって怪我を負った者たちは大勢いたが、不思議とみな軽傷だった。
 だが、建物の崩壊は目に見えて酷い有様なために、辺りは騒然としている。
 そんな中、家主であるナリッサ・デトワールは、なぜか満足気な表情で一人、月を眺めている。

「そのように穏やかな表情を見るのは、初めてかも知れませんな」

 ナリッサに声を掛けたのは、警察署の第二級犯罪捜査室長官ディック・ノートン。

「ふふふ。古い知人に再開できて、長年の悩みからも解放されたんですもの……。どんなにこの日を待ち望んだことか……」

 そう言って微笑むナリッサに、ノートンは顔をしかめる。

「これほどの惨事を起こしておきながら、あなたはまだ、あの者たちを許すと?」

 ノートンの言葉に、ナリッサは溜め息をつく。

「あなたは何もわかっていないわね……。考えてもみなさい。最初に盗んだのはどちらなのか……。私はただ、遠い日にこの世を去ったある方の遺品を、その家族に返しただけ。それに、あの手配書が出た時、私はいの一番にあなたに連絡したはずよ? 天使の翼という犯罪者は、ロゼッタという名の女性であり、そのうちに必ずこの家に来る。その前に彼女を探し出して、客人として我が家に迎えたい、とね……。なのにあなたは……。まぁもういいわ、済んだことよ。これでもう、思い残すことはないのだから」

 微笑むナリッサに、ノートンはふんっと鼻を鳴らす。

「ロゼッタと言う名の女性はこの町に沢山おります。それに、犯罪者をあなたの家に客人として招くなど、町長としての資質が疑われ兼ねない。私は間違った事など何一つしていないつもりですがね。あの二人はれっきとした犯罪者です。間違った情報を、他の者には漏らさないようにしてください」

 そう言い残し、この場を去ろうと向きを変えたノートンが、最後にこう告げた。

「あなたが歩けるようになったら、あなたの孫をこの屋敷に連れてきますからね……」

 ナリッサは、キラリと光る滴を零し、滲んだ夜空を見上げていた。 





*第1章、完*
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