429 / 796
★ピタラス諸島第三、ニベルー島編★
418:ミッション3
しおりを挟む
【ミッション3:ホムンクルスを殲滅せよ!】
パカラッ! パカラッ!! パカラッ!!!
「お!? 見えてきたぞっ!??」
カービィの声に、俺は前方を見やる。
そこには、まるでどこぞの国壁の様な、大きくて平たい三つの岩が並んでいた。
朝食を済ませ、テントを片付けて、俺たちは早々に移動を開始。
昨日と同じくカービィは箒、ギンロはレズハンの背に乗り、俺とカサチョとメラーニアはゲイロンの背に跨った。
森の中を小一時間ほど走ると、無事、目的地である三子岩まで辿り着いたのだった。
グレコが言っていた様に、タウラウの森は三子岩の場所で突然に終わっていた。
立ち並ぶ巨大な三つの岩の向こう側は、不自然なくらいに真っ直ぐな、なんの変哲もない平原が広がっている。
グレコとケンタウロス達、アイビーと白薔薇の騎士団の残留メンバーはまだ到着していないらしく、その姿は見当たらなかった。
「よし、着いた……、って、なんじゃありゃ?」
先頭を飛んでいたカービィが、三子岩の中央の岩の付近に降り立ち、その向こう側を見るなりそう言った。
何か見えるのだろうか? と、足を止めたゲイロンの背から飛び降りる俺とカサチョ。
小走りでカービィの元まで行き、三子岩より向こう側を見て……
「うわぁ……、マジか」
「これはまた……、奇怪な国でござるな。あれだけの透明ゆえ、遠目では拙者も気付けなかったでござるよ」
俺とカサチョはそう言って、口をまん丸に開けたまま固まってしまった。
ホムンクルスの国であるフラスコの国は、本当の本当に、フラスコの中にある国だった。
国の外周を形作っているのは、オレンジ色の高い煉瓦の壁。
その周りを、ほんのちょっとだけ水色がかっているガラスの様な物が、スッポリと覆っているのだ。
水色のガラスは、綺麗に湾曲しながら空へと伸びて、国全体を覆い尽くし、その上部の中央からは、同じくガラスの透明な煙突のような長い突起物が飛び出している。
つまりそれは……、でっかいでっかい……、巨大な丸底フラスコなのだった。
「んん? なぁ、何か煙みてぇなの出てねぇか?? ほら……、あの一番上んところ」
そう言ってカービィが指差しているのは、フラスコの口に当たる部分だ。
どうやらそれは、見た目通りに中が空洞で筒状をしているらしく、その口からは薄っすらとピンク色の煙が立ち上っていた。
「煙? ……拙者には見えぬでござるが」
なに? あれが見えないだと??
カサチョこいつ……、さては目が良くないな???
だから、遠目とはいえ、かなりインパクトのあるあれが見えなかったんだろう。
「僕には見えるよ。ピンク色の煙」
とりあえず、幻覚ではないという事をカービィに伝えたくて、俺はそう言った。
「モッモにも見えるのか!? って事は……、あれは魔力の放つオーラとは別もんだって事か。おまいには見えねぇもんな、魔力」
……ぬ、なんだろうな?
やんわりディスられた気がするぞっ!?
俺だって、たまには見える事もあるんだからな、魔力のオーラ!!!
カービィの言葉に俺が憤慨していると、後ろから来たギンロがポツリと呟く。
「妙な場所だな……」
そう言ったギンロの視線は、目の前の奇妙なフラスコの国ではなく、すぐそばの三子岩に向けられていた。
妙な場所、とはいったい……?
なんかギンロ、昨日から変な事ばっか言ってるよな。
どっかで誰かに呪われたんじゃない??
「妙って、何がだ?」
なんとなしに尋ねるカービィ。
「この岩……、自然に出来た物ではなさそうだ……。見ろ、あそこにも、あそこにも……。根元から折れていてわかりにくいが、この辺りにはかつて、この三子岩と似たような岩が、いくつも立っていたのではなかろうか?」
ギンロが指差す先を、俺たちは揃って見る。
するとそこには、俺たちの間近にある三子岩に比べればとても小さいが、それらしき岩が等間隔で、かなり遠方まで規則正しく並んでいるのだ。
……んん? いや、違うな。
地面のデコボコから考えるに、等間隔というよりも、それこそ昔は岩が連なって壁を成していたかのような、そんな風にも見て取れる。
というか……、ギンロがそんな事に気付くなんて、とっても意外だ。
いつもはボーッとしてるのにね。
「どうなってんだ? これは……、まさか、岩の壁でもあったのか?? 誰かがここに、岩の壁を造った……???」
「だとしても、誰が何の為にでござるか? 確かに岩はあるでござるが……。これじゃあまるで、フラスコの国を囲っているように見えるでござるな。彼の国はその昔、ここまで領土を保っていたのでござろうか??」
「いや……、それだと変じゃねぇか? 時が経つに連れて奴らの数が増え、領土を広げていったっていうなら分かるが、その逆だぞ?? ……ん~、わっかんねぇな~」
カサチョの言葉に、ポリポリと頭を掻くカービィ。
すると、俺のよく聞こえる耳に、沢山の蹄の音が聞こえて来た。
ケンタウロスが走る際に鳴り響く、なんとも間抜けな……、いや、軽快な足音だ。
そして……
「モッモ~! カービィ~!! ギンロ~!!!」
聞き覚えのある高い声が聞こえて、俺たちは背後を振り向く。
そこには、勇ましい女ケンタウロス、シーディアの背に跨って、大きく手を振るグレコの姿があった。
その背後に、大勢の武装したケンタウロスを引き連れているその様は、まさに馬の女王……
てかグレコ!
敵はすぐそこにいるんだよっ!?
大声出しちゃ駄目ぇえっ!!!
太陽が、空の真ん中まで登った頃。
晴天の下、俺たちは三子岩に集結した。
シーディア率いる武装ケンタウロスの集団、二百二十名。
アイビー率いる白薔薇の騎士団、九名。
そして、モッモ様御一行プラスメラーニアの五名。
総勢二百三十四名。
この大人数でフラスコの国を襲撃し、ホムンクルス達をやっつけて、ノリリア達を救出する。
(ちなみに騎士団のメンバーの詳細だが、ここにいるのはアイビー、レイズン、エクリュにブリック、モーブとヤーリュとロビンズ、そしてチリアンとカサチョの九名。フラスコの国に向かって連絡が取れなくなっているのが、ノリリア、インディゴ、サン、ポピー、メイクイ、ライラック、パロット学士とミルクの八名だ)
そして、みんなが揃った所で、カービィが今回の作戦を発表した。
俺が先陣切って戦いに向かうという、あの無謀かつ危険極まりない馬鹿げた作戦だ。
俺は、そんなのきっと、みんな反対するさっ! と、たかを括ってのだが……
「名案ね。それで行きましょう!」
なんとっ!?
止めてくれるはずと期待していたグレコが、真っ先に賛成してしまったではないかっ!??
グレコぉっ!???
見損なったぞぉおぉぉっ!!!!!
「しかし、それではモッモさんがあまりに危険では?」
止めに入ってくれたのは、騎士団のアイビーだ。
さすがは今回のプロジェクトの副リーダーである、ただイケメンなだけのエルフでは無い。
ちなみに余談だが、アイビーはいつも、コロンか何かをつけているようだ。
ノリリア曰くそれは、甘ったるくて嫌な匂い、らしいが……、優しいアイビーにピッタリの、品の良い香りだと、俺は思っている。
そんなアイビーの、俺の無力さ加減を重々鑑みてくれている発言に対し、信じられない事を言ったのはカサチョだ。
「石化魔法がホムンクルスに対抗する唯一の方法なのでござる。拙者とカビやんで先陣を切っても良いが、それだと後が不安故……。モッモ殿には申し訳ないが、捨て駒になってもらうでござるよ」
俺は目をひん剥いて驚いた。
すぅっ!? 捨て駒だとぉおぉぉっ!??
そんなつもりだったのかカサチョこの野郎っ!?!?
「……案ずるな、小さいの。私が背に乗せて走ってやる。先陣を切るのはこの私、ケンタウロスが蹄族の次期族長、シーディアだっ!」
おおうっ!? いつに増しても勇ましいですな、シーディア様っ!!
しかし、お尻に注意なさいませっ!!?
ど変態ピンク毛玉野郎が、チラチラとあなたのお尻を見ては鼻の下を伸ばしてますよっ!?!?
「モッモよ、安心しろ。シーディア殿の背は、我が守る故」
ギンロも鼻息が荒いですね。
シーディアの背中って……、要はシーディアに対して良い格好がしたいだけでしょ?
俺を守る為ではないよねそれ??
下心が丸見えですよぉおっ!?!?
「いよっし! じゃあ行くかっ!? ホムンクルス供を倒しにぃっ!!!」
「おぉお~~~!!!!!」
カービィの号令に、高く武器を振り上げて、雄叫びを上げるケンタウロス達。
今まさに、命懸けの戦いが、始まろうとしていた。
……い~や。
ちょっと待てぇ~いっ!?
俺はまだ了承してないぞぉっ!??
そ、そんな作戦……
いっ……、嫌だぁああぁぁぁっ!!!!
助けて母ちゃあぁぁ~んっ!!!!!
パカラッ! パカラッ!! パカラッ!!!
「お!? 見えてきたぞっ!??」
カービィの声に、俺は前方を見やる。
そこには、まるでどこぞの国壁の様な、大きくて平たい三つの岩が並んでいた。
朝食を済ませ、テントを片付けて、俺たちは早々に移動を開始。
昨日と同じくカービィは箒、ギンロはレズハンの背に乗り、俺とカサチョとメラーニアはゲイロンの背に跨った。
森の中を小一時間ほど走ると、無事、目的地である三子岩まで辿り着いたのだった。
グレコが言っていた様に、タウラウの森は三子岩の場所で突然に終わっていた。
立ち並ぶ巨大な三つの岩の向こう側は、不自然なくらいに真っ直ぐな、なんの変哲もない平原が広がっている。
グレコとケンタウロス達、アイビーと白薔薇の騎士団の残留メンバーはまだ到着していないらしく、その姿は見当たらなかった。
「よし、着いた……、って、なんじゃありゃ?」
先頭を飛んでいたカービィが、三子岩の中央の岩の付近に降り立ち、その向こう側を見るなりそう言った。
何か見えるのだろうか? と、足を止めたゲイロンの背から飛び降りる俺とカサチョ。
小走りでカービィの元まで行き、三子岩より向こう側を見て……
「うわぁ……、マジか」
「これはまた……、奇怪な国でござるな。あれだけの透明ゆえ、遠目では拙者も気付けなかったでござるよ」
俺とカサチョはそう言って、口をまん丸に開けたまま固まってしまった。
ホムンクルスの国であるフラスコの国は、本当の本当に、フラスコの中にある国だった。
国の外周を形作っているのは、オレンジ色の高い煉瓦の壁。
その周りを、ほんのちょっとだけ水色がかっているガラスの様な物が、スッポリと覆っているのだ。
水色のガラスは、綺麗に湾曲しながら空へと伸びて、国全体を覆い尽くし、その上部の中央からは、同じくガラスの透明な煙突のような長い突起物が飛び出している。
つまりそれは……、でっかいでっかい……、巨大な丸底フラスコなのだった。
「んん? なぁ、何か煙みてぇなの出てねぇか?? ほら……、あの一番上んところ」
そう言ってカービィが指差しているのは、フラスコの口に当たる部分だ。
どうやらそれは、見た目通りに中が空洞で筒状をしているらしく、その口からは薄っすらとピンク色の煙が立ち上っていた。
「煙? ……拙者には見えぬでござるが」
なに? あれが見えないだと??
カサチョこいつ……、さては目が良くないな???
だから、遠目とはいえ、かなりインパクトのあるあれが見えなかったんだろう。
「僕には見えるよ。ピンク色の煙」
とりあえず、幻覚ではないという事をカービィに伝えたくて、俺はそう言った。
「モッモにも見えるのか!? って事は……、あれは魔力の放つオーラとは別もんだって事か。おまいには見えねぇもんな、魔力」
……ぬ、なんだろうな?
やんわりディスられた気がするぞっ!?
俺だって、たまには見える事もあるんだからな、魔力のオーラ!!!
カービィの言葉に俺が憤慨していると、後ろから来たギンロがポツリと呟く。
「妙な場所だな……」
そう言ったギンロの視線は、目の前の奇妙なフラスコの国ではなく、すぐそばの三子岩に向けられていた。
妙な場所、とはいったい……?
なんかギンロ、昨日から変な事ばっか言ってるよな。
どっかで誰かに呪われたんじゃない??
「妙って、何がだ?」
なんとなしに尋ねるカービィ。
「この岩……、自然に出来た物ではなさそうだ……。見ろ、あそこにも、あそこにも……。根元から折れていてわかりにくいが、この辺りにはかつて、この三子岩と似たような岩が、いくつも立っていたのではなかろうか?」
ギンロが指差す先を、俺たちは揃って見る。
するとそこには、俺たちの間近にある三子岩に比べればとても小さいが、それらしき岩が等間隔で、かなり遠方まで規則正しく並んでいるのだ。
……んん? いや、違うな。
地面のデコボコから考えるに、等間隔というよりも、それこそ昔は岩が連なって壁を成していたかのような、そんな風にも見て取れる。
というか……、ギンロがそんな事に気付くなんて、とっても意外だ。
いつもはボーッとしてるのにね。
「どうなってんだ? これは……、まさか、岩の壁でもあったのか?? 誰かがここに、岩の壁を造った……???」
「だとしても、誰が何の為にでござるか? 確かに岩はあるでござるが……。これじゃあまるで、フラスコの国を囲っているように見えるでござるな。彼の国はその昔、ここまで領土を保っていたのでござろうか??」
「いや……、それだと変じゃねぇか? 時が経つに連れて奴らの数が増え、領土を広げていったっていうなら分かるが、その逆だぞ?? ……ん~、わっかんねぇな~」
カサチョの言葉に、ポリポリと頭を掻くカービィ。
すると、俺のよく聞こえる耳に、沢山の蹄の音が聞こえて来た。
ケンタウロスが走る際に鳴り響く、なんとも間抜けな……、いや、軽快な足音だ。
そして……
「モッモ~! カービィ~!! ギンロ~!!!」
聞き覚えのある高い声が聞こえて、俺たちは背後を振り向く。
そこには、勇ましい女ケンタウロス、シーディアの背に跨って、大きく手を振るグレコの姿があった。
その背後に、大勢の武装したケンタウロスを引き連れているその様は、まさに馬の女王……
てかグレコ!
敵はすぐそこにいるんだよっ!?
大声出しちゃ駄目ぇえっ!!!
太陽が、空の真ん中まで登った頃。
晴天の下、俺たちは三子岩に集結した。
シーディア率いる武装ケンタウロスの集団、二百二十名。
アイビー率いる白薔薇の騎士団、九名。
そして、モッモ様御一行プラスメラーニアの五名。
総勢二百三十四名。
この大人数でフラスコの国を襲撃し、ホムンクルス達をやっつけて、ノリリア達を救出する。
(ちなみに騎士団のメンバーの詳細だが、ここにいるのはアイビー、レイズン、エクリュにブリック、モーブとヤーリュとロビンズ、そしてチリアンとカサチョの九名。フラスコの国に向かって連絡が取れなくなっているのが、ノリリア、インディゴ、サン、ポピー、メイクイ、ライラック、パロット学士とミルクの八名だ)
そして、みんなが揃った所で、カービィが今回の作戦を発表した。
俺が先陣切って戦いに向かうという、あの無謀かつ危険極まりない馬鹿げた作戦だ。
俺は、そんなのきっと、みんな反対するさっ! と、たかを括ってのだが……
「名案ね。それで行きましょう!」
なんとっ!?
止めてくれるはずと期待していたグレコが、真っ先に賛成してしまったではないかっ!??
グレコぉっ!???
見損なったぞぉおぉぉっ!!!!!
「しかし、それではモッモさんがあまりに危険では?」
止めに入ってくれたのは、騎士団のアイビーだ。
さすがは今回のプロジェクトの副リーダーである、ただイケメンなだけのエルフでは無い。
ちなみに余談だが、アイビーはいつも、コロンか何かをつけているようだ。
ノリリア曰くそれは、甘ったるくて嫌な匂い、らしいが……、優しいアイビーにピッタリの、品の良い香りだと、俺は思っている。
そんなアイビーの、俺の無力さ加減を重々鑑みてくれている発言に対し、信じられない事を言ったのはカサチョだ。
「石化魔法がホムンクルスに対抗する唯一の方法なのでござる。拙者とカビやんで先陣を切っても良いが、それだと後が不安故……。モッモ殿には申し訳ないが、捨て駒になってもらうでござるよ」
俺は目をひん剥いて驚いた。
すぅっ!? 捨て駒だとぉおぉぉっ!??
そんなつもりだったのかカサチョこの野郎っ!?!?
「……案ずるな、小さいの。私が背に乗せて走ってやる。先陣を切るのはこの私、ケンタウロスが蹄族の次期族長、シーディアだっ!」
おおうっ!? いつに増しても勇ましいですな、シーディア様っ!!
しかし、お尻に注意なさいませっ!!?
ど変態ピンク毛玉野郎が、チラチラとあなたのお尻を見ては鼻の下を伸ばしてますよっ!?!?
「モッモよ、安心しろ。シーディア殿の背は、我が守る故」
ギンロも鼻息が荒いですね。
シーディアの背中って……、要はシーディアに対して良い格好がしたいだけでしょ?
俺を守る為ではないよねそれ??
下心が丸見えですよぉおっ!?!?
「いよっし! じゃあ行くかっ!? ホムンクルス供を倒しにぃっ!!!」
「おぉお~~~!!!!!」
カービィの号令に、高く武器を振り上げて、雄叫びを上げるケンタウロス達。
今まさに、命懸けの戦いが、始まろうとしていた。
……い~や。
ちょっと待てぇ~いっ!?
俺はまだ了承してないぞぉっ!??
そ、そんな作戦……
いっ……、嫌だぁああぁぁぁっ!!!!
助けて母ちゃあぁぁ~んっ!!!!!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
482
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる