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★ピタラス諸島第三、ニベルー島編★

444:ドッカーーーーーン!!!

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「消えたっ!? 透化魔法でござるかっ!??」

   カサチョの言葉に、そこにいる白薔薇の騎士団の全員に緊張感が走る。

「いや、魔法じゃなさそうだぞ。魔力の流れが全く感じられねぇ……」

   いつになく真剣な顔で、髭をピンと伸ばしながら、カービィが呟いた。
   その時だった!

   ドッカーーーーーン!!!

「わわっ!? なんだっ!??」

   どこからか物凄い爆破音が鳴り響き、足元がグラグラと大きく揺れた。
   慌てて階段の柵に掴まる俺。
   カービィ達は、みんな揃ってその場に伏せた。

   揺れは数秒後に収まったものの、何やらとても嫌な予感がする……

「ポポ!? モッモちゃん! 無事ポッ!??」

   一番最初に俺の身を案じてくれたのはノリリアだった。
   そのお顔は、可愛らしい円らな瞳がいつもより少しだけ腫れていて、沢山泣いた後だと分かるものだった。

「だっ! 大丈夫っ!! それより、メラーニアと……、あ、あとメイクイとポピーが」

   ドゥオッ……、カァーーーーーーン!!!!!

「きゃあっ!?!?」

   ぬぉおっ!? なんだぁあっ!??

   再度鳴り響く爆音。
   それと同時に、二階の製造室の、あの頑丈そうな扉が勢いよく吹っ飛んで、宙を舞った。
   製造室の中では炎が上がっているようで、もくもくと黒い煙が流れ出てくる。

「くっそ、あの親父……、城を崩壊させるつもりだ! 全員急いで退去!!」

   カービィが号令をかけるも、

「待つポ! メイクイとポピーの救出をするポッ!! モッモちゃん、二人はどこにっ!??」

   さすがはノリリア、だてに白薔薇の騎士団副団長を名乗ってないな。
   責任感半端ないっ!

「ふっ、二人はそっちの! 研究室の中にっ!! でも」

「こっちポねっ!? みんな行くポよっ!!」

   俺の言葉が終わらぬうちに、ノリリアが号令をかける。
   岩人間のブリックが、研究室の重い扉を拳一つで破壊する。  
   そして騎士団のみんなは、次々と研究室へと駆け込んで行った。

   あぁっ!? 待って!!
   研究室の中ではあるけれど、更にその……、壁の中のね!!?
   うぅ、説明出来ないっ!!!!
   さっきまで俺がいた場所……、お化けテジーのいたあの狭い小部屋は、一体何なんだっ!?!!?

   しかしながら、俺の心配を他所に、アイビーがポピーを抱えて、すぐさま研究室から出てきたではないか。
   その後には、メイクイをおぶったブリックが続いた。

   おぉっ!? どうなってんだ!??
   まさかノリリアたち、すぐにあの部屋を見つけたのかっ!?!?
   すっげぇええぇっ!!!!!
   
「モッモ、大丈夫!?」

   救出されたメイクイとポピーに視線が釘付けになっている俺に、グレコとギンロが駆け寄ってきた。
   なんだか、とっても久しぶりに二人に会えたような気になって、ホッとして……
   俺の目には一瞬で、ブワッ! と涙が溜まった。

「グッ!? ギッ!?? こ、怖かっ……、いや! 大丈夫っ!!」  

   溢れ出そうになる涙を両手で隠し、俺はあえてそう言った。
   本当はめちゃくちゃ怖かったけど……、でも何とかなった!
   だから泣かないぞっ!!

「良かった無事で……。ねぇ、メラーニアを知らない? こっちにはゴリラーンだけが戻ってきたんだけど……??」

「あっ! メラーニア!! そうだよ、メラーニアを助けないとっ!!!」

   三階の玉座の間で、黒い檻の中に閉じ込められたままのメラーニアを思い出し、俺は慌てて上階を指差した。
   するとまた!

   ドカンッ! ドカンッ!! ドッカァーーーン!!!

   城の何処かで、立て続けに三度、爆発が起きた。
   足元は大きく揺れて、壁や床に亀裂が走る。

「ここは長くないでござるな……? ノリリア殿! 拙者の空間魔法で皆を外へ運ぶでござるよっ!! 杖を拝借したいっ!!!」

   研究室内に向かって、カサチョが叫ぶ。

「まだポ! 生存者が複数いるポね!! 見捨ててはいけないポ!!!」

   研究室の中から、ノリリアはそう答えた。
   生存者とは恐らく、研究室に無数にあった、あの檻の中に捕らえられている様々な種族の者達の事だろう。
   俺の記憶が正しければ、もはやみんな衰弱しきっていて、虫の息だったはずだけど……、そんな見ず知らずの相手でも、ノリリアはきっと見捨てはしない。

「カサチョ、おいらの杖使え! モッモ、グレコさん、ギンロ!! 先に外に出ろっ!!!」

   カサチョに自らの杖を渡し、俺たちにこちらに来るようにと手招きするカービィ。
   杖を手にしたカサチョは、すぐさま袴の内側から魔道書を取り出して、何かの呪文を唱え始める。
   そして、二階の廊下の床に水色の魔法陣が浮かび上がったかと思うと、そこには同じ色の光る巨大な球が出現した。
   その玉は不思議な事に、どこかの風景を写している。
   見た事のある街並みと、大勢のケンタウロス達。
   あの光景は恐らく……、この城の真ん前だ。

   ポピーを抱えたアイビーは、すぐさまその玉の中へと入り込んだ。
   メイクイをおぶったブリックが後に続く。

   なるほど、あの玉は外と繋がってるんだな!
   あれが空間魔法ってやつか!?
   ……てか、そんなものが使えるなんて、やっぱり只者じゃないなカサチョめっ!!!

「けどカービィ! 上にメラーニアがいるらしいのっ!! 私達で助けに行くわっ!!!」

   勇ましく言い放つグレコ。

「分かった! ここで待ってる!!」

   カービィの言葉に、グレコはこくんと頷く。
   そして、慣れた手付きで俺をヒョイと抱え、小脇に挟んで、階段を猛ダッシュ!
   ギンロがその後に続く。

   あぁっ!? 下ろしてよぉっ!??
   階段くらい自分で上れるよぉおっ!!!!

   しかしながら、俺が階段を登り切るのにかかった時間の半分ほどで、グレコは三階へと辿り着いた。

   くそぅ……、これが、足の長さの違いってやつか!?

「こ……、ここ!? この中なのっ!!?」

   悲鳴にも近い声を、グレコが発する。
   するりとグレコの腕を抜け、自分の足で立った俺も、目の前の光景に絶句する。

   玉座の間へと続く入り口は、その形が大きく変形し、グニャリと曲がっていて……
   更には真っ赤な炎が、容赦なくメラメラと立ち上っているのだ。
   恐らく、さっきの三連続の爆発は、この中で起きたものなのだろう。

   だけど……、だけどこの中には……
   まだメラーニアがっ!?

「めっ!? メラーニアぁああっ!!?」
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