480 / 796
★寄り道・魔法王国フーガ編★
468:なんて無礼なのっ!?!?
しおりを挟む
「なぁおい……、あれって白薔薇の騎士団の団長だよな?」
「あぁ、ローズ・コーネリアさんだ。噂通り、すげぇ魔力の持ち主だな」
「俺、初めて見るぜ……」
「なんでも人嫌いで、町にはほとんど出て来ないらしいぞ」
「しっかし、なんであんなに怒ってんだ? おっかねぇ~」
「今、カービィって言ったか?」
「カービィってあの……、伝説の虹の魔導師?」
「そうさ。レイドアナの内戦で、ほら……」
「おぉ、あのカービィ・アド・ウェルサーか!? まだ町にいたのか?」
「いや、数年前に騎士団を辞めたって聞いたが、その後は知らねぇな」
ザワザワと騒めき立つ店内。
聞こえてくる言葉の数々に、俺は耳を澄ましていた。
どうやら、どこぞのフランス人形のようなあのゴスロリ幼女は、白薔薇の騎士団の団長らしい。
けど……
本当に彼女が、白薔薇の騎士団の団長なのか?
俺の頭の中には、無数のクエスチョンマークが浮かび上がる。
なんていうか……、その姿は、俺が想像していたのと全く違っているのだ。
もっとこう、筋肉ムキムキで、大きな鎧を身につけた、勇ましい女性だと思っていたのに……
俺の視界に映る彼女は、どこからどう見ても、か弱く可愛らしい女の子なのだ。
しかしながら、彼女の側に控えているウサギの人形……、あれは間違いなく、商船タイニック号に突然現れた、お口の悪いあのコニーちゃんだ。
コニーちゃんは団長のペットだって話だったから……、そう考えると、あのゴスロリ幼女は騎士団の団長に違いない。
ただちょっと、コニーちゃんの様子が、先程までとは随分違っているな。
なんだかこう、力一杯絞られたボロ雑巾のように、頭と下半身が微妙に捻れているのだ。
そして、その可愛らしいお顔は、かなり疲れた表情をしていた。
「カービィ! カービィ!? 何処にいるのっ!?? いるのは分かっているのよっ!?!? 出て来なさぁあぁぁ~いっ!!!!!」
白薔薇の騎士団の団長、ゴスロリ幼女ことローズ・コーネリアは、店の入り口で甲高い声を上げ続けている。
綺麗に巻かれた金髪を振り乱し、額に青筋を立てながら。
怒っていても、見た目が幼い少女なので、ビビリな俺でもさほど怖くない。
だけど、あんなに怒ってちゃ、可愛い顔が台無しだ。
「さて……、バレねぇうちにずらかるぜ」
コソコソと席を立とうとするカービィ。
「え? どこ?? 宿舎に帰るの???」
「いんや、宿舎には帰らねぇ。ギルド本部に潜入する。ローズがここにいるって事は、ノリリアが尋問から解放されたって事だ。今のうちに連れ出しちまえばいい」
「え……、えぇっ!? そんな事していいの!?? ……後で大変な事にならない???」
「まぁ~、なるだろうな。けど……、あいつが夢を諦めるよりはいいよ」
「あいつって……、ノリリアの事?」
「んだ。ピタラス諸島の探索、そしてアーレイク・ピタラスの墓塔の調査は、昔からのあいつの悲願なんだ。自分の為にも、故郷の為にも、あいつは今回のプロジェクトを成し遂げなくちゃならねぇ。それを阻む者がいるならおいらは……、誰であろうと許さねぇ。相手が例えローズであろうとな」
ニヤニヤと笑いながらではあるけれど、美少女カービィは似合わぬ口調で、なんだかとてもカッコいい事を言った。
ノリリアの悲願だとか、故郷の為だとか、その辺りの事情は俺にはよく分からないけれど……
でも、ピタラス諸島の残り二つの島の探索にノリリアがいないとなると、それはそれでとても不安だ。
副リーダーのアイビーはしっかりしてるし頼りになる。
他のメンバー達も凄い魔導師には違いないのだろうけれど、なんかこう……、違う。
やっぱり、ノリリアがいなくちゃね!
「うん……、よし! 行こうっ!! ノリリアを連れ出して、タイニック号に戻ろう!!!」
「そうこなくっちゃ! じゃ……、そっと裏口から出ようぜ?」
カービィの言葉に頷いて、俺たちはそっと席を立つ。
店の裏へと続く扉は、バーカウンターのすぐ側にある。
コソコソと歩いて、扉へと向かう俺とカービィ。
だがしかし……
「そこの者っ! 待ちなさいっ!!」
ローズの甲高い声が響いた。
……うん? 俺たちの事かしら??
ゆっくりと振り返る俺。
すると、閉じた傘の先を真っ直ぐとこちらに向けている、ローズの姿がそこにあった。
ヒャアァッ!? ば、バレたのっ!??
条件反射のように身を縮こめる俺。
美少女カービィはというと、腹を括ったのか、ゆっくりとローズの方へと体を向けた。
「な……、なんでしょう?」
女の子のふりして、裏声で喋るカービィ。
ぶっ!? 声高すぎるわっ!!
女の子でもそんな裏声の子はなかなかいないわっ!!!
あまりに下手くそなカービィの演技に、俺は吹き出しそうなのを必死で堪える。
「あなた、白薔薇の騎士団のローブを身につけているわね。なのに、団長の私に背を向けて、裏口から立ち去ろうとするのは何故かしら?? あまりに無作法ではなくて???」
ローズは、その風貌に似合わぬ冷たい視線をカービィに向ける。
その言葉から察するに、どうやらまだ、この美少女カービィが変態マーゲイ族のカービィであるという事はバレていないようだ。
そしてローズの視線の先にはカービィしかおらず、俺の小さな体は机の陰に入っている為、そのエメラルドグリーンの瞳には全く映っていない。
……よし。
俺の事は気にしてないみたいだから、このままそっと隠れていよう。
俺は静かにローブのフードを被り(裏返してないから、透明にはなってませんよ)、そろりそろりと机の下へ移動する。
「あ~っと……、お手洗いに行こうかな~って」
ぶふっ!?
だから、そんな裏声おかしいってば!!?
苦し紛れの言葉を振り絞る美少女カービィ。
「ふ~ん……。コニー! あの子のローブを取っておしまいっ!!」
甲高い声で、コニーちゃんに命令するローズ。
「ローズ!? ローブを取れってそんな!?? ……あ、でも、あの子は」
慌てるコニーちゃん。
どうやらコニーちゃんは、目の前の美少女がカービィだという事に気付いたようだ。
一人でアセアセとしている。
「構わないわっ! 私の騎士団に、あのような無礼な小娘は必要ないものっ!! さっさとローブを剥ぎ取りなさいっ!!!」
ひょえぇぇ~!? こ、怖いっ!!?
さっきまで平気だったけど、やっぱり怖いぞローズ団長っ!!!!
鬼のような形相でコニーちゃんに命令するローズを前に、周りの者達は皆完全にビビってしまっている。
その態度もさる事ながら、大半は、彼女の体から発せられる魔力の大きさに恐れおののいているのだろう。
魔力が全くない俺にも、ローズの身体を取り巻く、どこかトゲトゲしい緑色の魔力が見て取れるほどなのだから。
つまりは、自身の強大な魔力をその身の内に抑えきれないほどに、ローズは激怒していた。
「ったく……、横暴なのは全く変わってねぇな~」
そう言って美少女カービィは、いつもの調子、いつもの声で、ヘラヘラと笑った。
「なんですって!? 私が横暴っ!?? なんて無礼なのっ!?!? そんな事、これまで一度も言われたこ……、言われた、事……? まさか、あなたっ!?!!?」
目を見開き、より一層、身体中からメラメラと魔力を放つローズ。
店内にいた客は悲鳴を上げながら、その半数が外へと避難を始める。
やべぇ~、やべぇぞっ!?
どうすんだよカービィ!??
何がやばいのかは分からないが、俺の中の小動物的野生の勘が、今すぐ逃げろ! と告げている。
だがしかし、カービィは……
「なははは。おまいにバレねぇんなら、おいらの人化の術もなかなかのもんなんだな。……そうさ、おいらだよローズ。 虹の魔導師、カービィだ!」
キラーン☆ という効果音が似合いそうな爽やかな笑顔で、美少女カービィは両手をピースにして、馬鹿げたポーズを決めた。
あまりにダサいそのポーズに、俺は抑えていた口が緩んで……
「ぶはっ!?」
やっべ!? 何そのポーズ!??
プリクラ撮ってるJ Kかよっ!?!?
……くっ、ぐふふふふ、可愛いわっ!!!!!
机の下で、盛大に吹き出すのだった。
「あぁ、ローズ・コーネリアさんだ。噂通り、すげぇ魔力の持ち主だな」
「俺、初めて見るぜ……」
「なんでも人嫌いで、町にはほとんど出て来ないらしいぞ」
「しっかし、なんであんなに怒ってんだ? おっかねぇ~」
「今、カービィって言ったか?」
「カービィってあの……、伝説の虹の魔導師?」
「そうさ。レイドアナの内戦で、ほら……」
「おぉ、あのカービィ・アド・ウェルサーか!? まだ町にいたのか?」
「いや、数年前に騎士団を辞めたって聞いたが、その後は知らねぇな」
ザワザワと騒めき立つ店内。
聞こえてくる言葉の数々に、俺は耳を澄ましていた。
どうやら、どこぞのフランス人形のようなあのゴスロリ幼女は、白薔薇の騎士団の団長らしい。
けど……
本当に彼女が、白薔薇の騎士団の団長なのか?
俺の頭の中には、無数のクエスチョンマークが浮かび上がる。
なんていうか……、その姿は、俺が想像していたのと全く違っているのだ。
もっとこう、筋肉ムキムキで、大きな鎧を身につけた、勇ましい女性だと思っていたのに……
俺の視界に映る彼女は、どこからどう見ても、か弱く可愛らしい女の子なのだ。
しかしながら、彼女の側に控えているウサギの人形……、あれは間違いなく、商船タイニック号に突然現れた、お口の悪いあのコニーちゃんだ。
コニーちゃんは団長のペットだって話だったから……、そう考えると、あのゴスロリ幼女は騎士団の団長に違いない。
ただちょっと、コニーちゃんの様子が、先程までとは随分違っているな。
なんだかこう、力一杯絞られたボロ雑巾のように、頭と下半身が微妙に捻れているのだ。
そして、その可愛らしいお顔は、かなり疲れた表情をしていた。
「カービィ! カービィ!? 何処にいるのっ!?? いるのは分かっているのよっ!?!? 出て来なさぁあぁぁ~いっ!!!!!」
白薔薇の騎士団の団長、ゴスロリ幼女ことローズ・コーネリアは、店の入り口で甲高い声を上げ続けている。
綺麗に巻かれた金髪を振り乱し、額に青筋を立てながら。
怒っていても、見た目が幼い少女なので、ビビリな俺でもさほど怖くない。
だけど、あんなに怒ってちゃ、可愛い顔が台無しだ。
「さて……、バレねぇうちにずらかるぜ」
コソコソと席を立とうとするカービィ。
「え? どこ?? 宿舎に帰るの???」
「いんや、宿舎には帰らねぇ。ギルド本部に潜入する。ローズがここにいるって事は、ノリリアが尋問から解放されたって事だ。今のうちに連れ出しちまえばいい」
「え……、えぇっ!? そんな事していいの!?? ……後で大変な事にならない???」
「まぁ~、なるだろうな。けど……、あいつが夢を諦めるよりはいいよ」
「あいつって……、ノリリアの事?」
「んだ。ピタラス諸島の探索、そしてアーレイク・ピタラスの墓塔の調査は、昔からのあいつの悲願なんだ。自分の為にも、故郷の為にも、あいつは今回のプロジェクトを成し遂げなくちゃならねぇ。それを阻む者がいるならおいらは……、誰であろうと許さねぇ。相手が例えローズであろうとな」
ニヤニヤと笑いながらではあるけれど、美少女カービィは似合わぬ口調で、なんだかとてもカッコいい事を言った。
ノリリアの悲願だとか、故郷の為だとか、その辺りの事情は俺にはよく分からないけれど……
でも、ピタラス諸島の残り二つの島の探索にノリリアがいないとなると、それはそれでとても不安だ。
副リーダーのアイビーはしっかりしてるし頼りになる。
他のメンバー達も凄い魔導師には違いないのだろうけれど、なんかこう……、違う。
やっぱり、ノリリアがいなくちゃね!
「うん……、よし! 行こうっ!! ノリリアを連れ出して、タイニック号に戻ろう!!!」
「そうこなくっちゃ! じゃ……、そっと裏口から出ようぜ?」
カービィの言葉に頷いて、俺たちはそっと席を立つ。
店の裏へと続く扉は、バーカウンターのすぐ側にある。
コソコソと歩いて、扉へと向かう俺とカービィ。
だがしかし……
「そこの者っ! 待ちなさいっ!!」
ローズの甲高い声が響いた。
……うん? 俺たちの事かしら??
ゆっくりと振り返る俺。
すると、閉じた傘の先を真っ直ぐとこちらに向けている、ローズの姿がそこにあった。
ヒャアァッ!? ば、バレたのっ!??
条件反射のように身を縮こめる俺。
美少女カービィはというと、腹を括ったのか、ゆっくりとローズの方へと体を向けた。
「な……、なんでしょう?」
女の子のふりして、裏声で喋るカービィ。
ぶっ!? 声高すぎるわっ!!
女の子でもそんな裏声の子はなかなかいないわっ!!!
あまりに下手くそなカービィの演技に、俺は吹き出しそうなのを必死で堪える。
「あなた、白薔薇の騎士団のローブを身につけているわね。なのに、団長の私に背を向けて、裏口から立ち去ろうとするのは何故かしら?? あまりに無作法ではなくて???」
ローズは、その風貌に似合わぬ冷たい視線をカービィに向ける。
その言葉から察するに、どうやらまだ、この美少女カービィが変態マーゲイ族のカービィであるという事はバレていないようだ。
そしてローズの視線の先にはカービィしかおらず、俺の小さな体は机の陰に入っている為、そのエメラルドグリーンの瞳には全く映っていない。
……よし。
俺の事は気にしてないみたいだから、このままそっと隠れていよう。
俺は静かにローブのフードを被り(裏返してないから、透明にはなってませんよ)、そろりそろりと机の下へ移動する。
「あ~っと……、お手洗いに行こうかな~って」
ぶふっ!?
だから、そんな裏声おかしいってば!!?
苦し紛れの言葉を振り絞る美少女カービィ。
「ふ~ん……。コニー! あの子のローブを取っておしまいっ!!」
甲高い声で、コニーちゃんに命令するローズ。
「ローズ!? ローブを取れってそんな!?? ……あ、でも、あの子は」
慌てるコニーちゃん。
どうやらコニーちゃんは、目の前の美少女がカービィだという事に気付いたようだ。
一人でアセアセとしている。
「構わないわっ! 私の騎士団に、あのような無礼な小娘は必要ないものっ!! さっさとローブを剥ぎ取りなさいっ!!!」
ひょえぇぇ~!? こ、怖いっ!!?
さっきまで平気だったけど、やっぱり怖いぞローズ団長っ!!!!
鬼のような形相でコニーちゃんに命令するローズを前に、周りの者達は皆完全にビビってしまっている。
その態度もさる事ながら、大半は、彼女の体から発せられる魔力の大きさに恐れおののいているのだろう。
魔力が全くない俺にも、ローズの身体を取り巻く、どこかトゲトゲしい緑色の魔力が見て取れるほどなのだから。
つまりは、自身の強大な魔力をその身の内に抑えきれないほどに、ローズは激怒していた。
「ったく……、横暴なのは全く変わってねぇな~」
そう言って美少女カービィは、いつもの調子、いつもの声で、ヘラヘラと笑った。
「なんですって!? 私が横暴っ!?? なんて無礼なのっ!?!? そんな事、これまで一度も言われたこ……、言われた、事……? まさか、あなたっ!?!!?」
目を見開き、より一層、身体中からメラメラと魔力を放つローズ。
店内にいた客は悲鳴を上げながら、その半数が外へと避難を始める。
やべぇ~、やべぇぞっ!?
どうすんだよカービィ!??
何がやばいのかは分からないが、俺の中の小動物的野生の勘が、今すぐ逃げろ! と告げている。
だがしかし、カービィは……
「なははは。おまいにバレねぇんなら、おいらの人化の術もなかなかのもんなんだな。……そうさ、おいらだよローズ。 虹の魔導師、カービィだ!」
キラーン☆ という効果音が似合いそうな爽やかな笑顔で、美少女カービィは両手をピースにして、馬鹿げたポーズを決めた。
あまりにダサいそのポーズに、俺は抑えていた口が緩んで……
「ぶはっ!?」
やっべ!? 何そのポーズ!??
プリクラ撮ってるJ Kかよっ!?!?
……くっ、ぐふふふふ、可愛いわっ!!!!!
机の下で、盛大に吹き出すのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
482
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる