七草渚冴はループする

kyouta

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第10話 金曜日

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 教室に入ると皆のテンションがいつもより少し高い。それは今日が金曜日で週末だからだろう。僕も同じでテンションが高めだけど、これが週末だからなのかループ最終日だからなのかは分からない。

 金曜日の不満点はリストにしていない。というか出来なかった。この一週間で僕の人間関係が大きく変化したおかげで、何を不満に感じるのかも変化しているからだ。

 例えば、教室に入ればクラスメイトと挨拶を交わし、移動教室も一緒に移動し、お昼も何人かで机を合わせて島で食べる。そんなこと、ループする前の僕は想像出来るわけがない。

 これから先、人間関係の難しさを知っていくんだろうなとは思っている。些細な事で喧嘩をして、仲直りをして、友情を育んで行くんだろう。いや待て、これって高校二年生になって学ぶことなのか? もっと小学生とか、早ければ保育園で知るようなことなんじゃ……。

 まぁ、今までその機会を自分から手放していたんだろう。人と関わりたい、独りになりたくない、孤独を苦痛に感じる。そんな瞬間が全く無かったわけじゃない。

 寂しいよ。

 一人の時間は好きだけど、独りは寂しい。そんな天邪鬼な僕は、今やっと友人の暖かさを知りつつある。こんなことを健太に言うとからかわれるから絶対言わないけどね。

 
 今日は一日これといった出来事は無かった。放課後はいつも真っ直ぐ帰路に着くんだけど、今日はそうならないらしい。

「七草君、放課後時間ある?」

 6限が終わると委員長が真っ直ぐ僕の席へやってきた。

「いや、何もないよ」

「じゃあさ! 文化祭の話し合いの続きこの後やるんだけど一緒にどう? 七草君が案出してくれたからいてくれた方が助かるんだけど」

 確かに。言い出しっぺは僕だしね。

「もちろん大丈夫だよ」

 委員長は嬉しそうにカバンを取りに席へ戻っていった。僕も母に今日は遅くなると一言連絡を入れておく。初めてだな、遅くなるなんて連絡するのは。

 母からはすぐに返信が来て、今日はお赤飯ねとか意味の分からない事が書いてあった。初めて寄り道したくらいで赤飯を炊くな全く。

 でも、いいな、こうゆうの。放課後に友達と完全下校のギリギリまで居残りをして、その後近くのファミレスとかファストフード店で無駄話に花を咲かせる。まさに高校生の放課後って感じがしていいな。

 今日という日を僕は忘れないだろう。それくらい充実した1日だったし、疲労も同じく溜まった。まぁ、明日は土曜日だからゆっくり昼間で寝ていよう。帰宅してすぐベットへダイブした僕は、ループするかもしれないなんて不安は少しもなかった。
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