変異の町―create new life―

家頁愛造(やこうあいぞう)

文字の大きさ
19 / 44
第一章 相田一郎

気付き

しおりを挟む
 よしっ今日もうまく発音できたぞ。これなら文句は言われまい。どうだ!?

 「おはよう」

 少しの間を置いて奥から社長の挨拶が返ってきた。
 どうやら大丈夫なようだ。
 だが、珍しくその声にはとにかく活力が感じられない。
 
 おいおい……アンタ、いつも俺達に気合だの活気だの言ってたじゃないか。
 しかも事務所の人たちは俺の挨拶を無視して黙々とパソコンに向かってキーボードを叩いているときたもんだ。

 なんだかなぁ~。
 母さんもそうだしみんな天気が悪いから気分が沈んでいるんだろうか?
 これじゃあまるで俺が一番元気なんじゃないか。
 
 事務所を出て、やるせない気分で工場内へと入ると中では既に先輩たちが加工機やフォークリフトを操作していたりと作業に取り掛かっていた。

 まだ始業時間になっていないというのにみんな仕事熱心だ。
 こんなしょうもない会社でそんな忙しい時期でもないのに張り切っちゃって。
 あんまり急いだらやることなくなっちまうぞ……
 仕方ない。一人サボるわけにもいかないしまだ早いけど俺も仕事を始めるとするか。

 周りに流されるようにさっさと自分の持ち場へとつき、昨日の作業の続きを始める。

 穴あけ加工機を動かし、その待ち時間を空想にふけっている間、フォークリフトと天井クレーンの作動音が絶え間なく繰り返して何度も聞こえてくる。

 今日はやけに賑やかだ。
 しかしまあ、いつまでやってんだろうか?
 そんなに運ぶ物あったっけ?
 いきなり大量の仕事が入ったとか?
 それじゃあゆっくり仕事してられなくなるな……
 スケジュールの確認でもするか。
 
 持ち場を離れて皆の様子を見に行くと、フォークリフトを操作している金山さんが一番近くに居た。
 会社では金山さんが一番話しかけやすい相手だ。いつも冗談を交えて会話も面白いし、仕事のことに関してはけっこう真面目にいろいろ教えてくれる。

 「金山さーん! 今忙しいですか?」

 「……」

 「金山さーん! 聞こえてますか!?」

 金山さんは俺の呼びかけには反応せずフォークリフトを操作し続けている。
 いつもはすぐに手を止めて相手をしてくれるというのに……
 そんなに忙しいんだろうか?

 ん?
 何をしているんだ?

 同じ場所で移動することなく何も入っていない空のラックをリフトで上げきると、今度は地面まで降ろす。
 そしてまた同じように上げきると、また同じように降ろす。
 それをずっと繰り返している……
 何だこの意味のない作業は?

 あーそうか冗談好きの金山さんのことだ、またきっと俺をからかおうとふざけているんだろうな。

 「金山さーん、また冗談でやってるんでしょ?」

 呆れた様子で金山さんの顔を見ると、彼は無表情でただ正面だけを見ている。

 何かいつもの金山さんとは雰囲気が違う……

 「金山さん! どうしちゃったんですか? そろそろ真面目にやりましょうよ!」

 再三の呼びかけにも彼は全く反応しない。
 ずっと同じ単調な動作を繰り返している。

 そんなはずはない。何だかんだで仕事はきっちりこなす人だ。

 嫌な汗が流れた。

 おかしくなっている●●●●●●●●●!!
 
 気付きがある。そうだ……朝から何かみんなの様子がおかしい。
 母さんも社長も、事務所の人たちだってきっと……
 不自然なことだらけだった。
 これは偶然なのか? もしこれが何かの共通した原因によるものだというのなら大変なことになる!!

 急いで他の先輩の様子を確認しに行く。
 何かの間違いであってほしい。
 俺はそう願った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

僕らの10パーセントは無限大

華子
青春
 10%の確率でしか未来を生きられない少女と  過去に辛い経験をしたことがある幼ななじみと  やたらとポジティブなホームレス 「あり得ない今を生きてるんだったら、あり得ない未来だってあるんじゃねえの?」 「そうやって、信じたいものを信じて生きる人生って、楽しいもんだよ」    もし、あたなら。  10パーセントの確率で訪れる幸せな未来と  90パーセントの確率で訪れる悲惨な未来。  そのどちらを信じますか。 ***  心臓に病を患う和子(わこ)は、医者からアメリカでの手術を勧められるが、成功率10パーセントというあまりにも酷な現実に打ちひしがれ、渡米する勇気が出ずにいる。しかしこのまま日本にいても、死を待つだけ。  追い詰められた和子は、誰に何をされても気に食わない日々が続くが、そんな時出逢ったやたらとポジティブなホームレスに、段々と影響を受けていく。  幼ななじみの裕一にも支えられながら、彼女が前を向くまでの物語。

処理中です...