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第一章 相田一郎
気付き
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よしっ今日もうまく発音できたぞ。これなら文句は言われまい。どうだ!?
「おはよう」
少しの間を置いて奥から社長の挨拶が返ってきた。
どうやら大丈夫なようだ。
だが、珍しくその声にはとにかく活力が感じられない。
おいおい……アンタ、いつも俺達に気合だの活気だの言ってたじゃないか。
しかも事務所の人たちは俺の挨拶を無視して黙々とパソコンに向かってキーボードを叩いているときたもんだ。
なんだかなぁ~。
母さんもそうだしみんな天気が悪いから気分が沈んでいるんだろうか?
これじゃあまるで俺が一番元気なんじゃないか。
事務所を出て、やるせない気分で工場内へと入ると中では既に先輩たちが加工機やフォークリフトを操作していたりと作業に取り掛かっていた。
まだ始業時間になっていないというのにみんな仕事熱心だ。
こんなしょうもない会社でそんな忙しい時期でもないのに張り切っちゃって。
あんまり急いだらやることなくなっちまうぞ……
仕方ない。一人サボるわけにもいかないしまだ早いけど俺も仕事を始めるとするか。
周りに流されるようにさっさと自分の持ち場へとつき、昨日の作業の続きを始める。
穴あけ加工機を動かし、その待ち時間を空想にふけっている間、フォークリフトと天井クレーンの作動音が絶え間なく繰り返して何度も聞こえてくる。
今日はやけに賑やかだ。
しかしまあ、いつまでやってんだろうか?
そんなに運ぶ物あったっけ?
いきなり大量の仕事が入ったとか?
それじゃあゆっくり仕事してられなくなるな……
スケジュールの確認でもするか。
持ち場を離れて皆の様子を見に行くと、フォークリフトを操作している金山さんが一番近くに居た。
会社では金山さんが一番話しかけやすい相手だ。いつも冗談を交えて会話も面白いし、仕事のことに関してはけっこう真面目にいろいろ教えてくれる。
「金山さーん! 今忙しいですか?」
「……」
「金山さーん! 聞こえてますか!?」
金山さんは俺の呼びかけには反応せずフォークリフトを操作し続けている。
いつもはすぐに手を止めて相手をしてくれるというのに……
そんなに忙しいんだろうか?
ん?
何をしているんだ?
同じ場所で移動することなく何も入っていない空のラックをリフトで上げきると、今度は地面まで降ろす。
そしてまた同じように上げきると、また同じように降ろす。
それをずっと繰り返している……
何だこの意味のない作業は?
あーそうか冗談好きの金山さんのことだ、またきっと俺をからかおうとふざけているんだろうな。
「金山さーん、また冗談でやってるんでしょ?」
呆れた様子で金山さんの顔を見ると、彼は無表情でただ正面だけを見ている。
何かいつもの金山さんとは雰囲気が違う……
「金山さん! どうしちゃったんですか? そろそろ真面目にやりましょうよ!」
再三の呼びかけにも彼は全く反応しない。
ずっと同じ単調な動作を繰り返している。
そんなはずはない。何だかんだで仕事はきっちりこなす人だ。
嫌な汗が流れた。
おかしくなっている!!
気付きがある。そうだ……朝から何かみんなの様子がおかしい。
母さんも社長も、事務所の人たちだってきっと……
不自然なことだらけだった。
これは偶然なのか? もしこれが何かの共通した原因によるものだというのなら大変なことになる!!
急いで他の先輩の様子を確認しに行く。
何かの間違いであってほしい。
俺はそう願った。
「おはよう」
少しの間を置いて奥から社長の挨拶が返ってきた。
どうやら大丈夫なようだ。
だが、珍しくその声にはとにかく活力が感じられない。
おいおい……アンタ、いつも俺達に気合だの活気だの言ってたじゃないか。
しかも事務所の人たちは俺の挨拶を無視して黙々とパソコンに向かってキーボードを叩いているときたもんだ。
なんだかなぁ~。
母さんもそうだしみんな天気が悪いから気分が沈んでいるんだろうか?
これじゃあまるで俺が一番元気なんじゃないか。
事務所を出て、やるせない気分で工場内へと入ると中では既に先輩たちが加工機やフォークリフトを操作していたりと作業に取り掛かっていた。
まだ始業時間になっていないというのにみんな仕事熱心だ。
こんなしょうもない会社でそんな忙しい時期でもないのに張り切っちゃって。
あんまり急いだらやることなくなっちまうぞ……
仕方ない。一人サボるわけにもいかないしまだ早いけど俺も仕事を始めるとするか。
周りに流されるようにさっさと自分の持ち場へとつき、昨日の作業の続きを始める。
穴あけ加工機を動かし、その待ち時間を空想にふけっている間、フォークリフトと天井クレーンの作動音が絶え間なく繰り返して何度も聞こえてくる。
今日はやけに賑やかだ。
しかしまあ、いつまでやってんだろうか?
そんなに運ぶ物あったっけ?
いきなり大量の仕事が入ったとか?
それじゃあゆっくり仕事してられなくなるな……
スケジュールの確認でもするか。
持ち場を離れて皆の様子を見に行くと、フォークリフトを操作している金山さんが一番近くに居た。
会社では金山さんが一番話しかけやすい相手だ。いつも冗談を交えて会話も面白いし、仕事のことに関してはけっこう真面目にいろいろ教えてくれる。
「金山さーん! 今忙しいですか?」
「……」
「金山さーん! 聞こえてますか!?」
金山さんは俺の呼びかけには反応せずフォークリフトを操作し続けている。
いつもはすぐに手を止めて相手をしてくれるというのに……
そんなに忙しいんだろうか?
ん?
何をしているんだ?
同じ場所で移動することなく何も入っていない空のラックをリフトで上げきると、今度は地面まで降ろす。
そしてまた同じように上げきると、また同じように降ろす。
それをずっと繰り返している……
何だこの意味のない作業は?
あーそうか冗談好きの金山さんのことだ、またきっと俺をからかおうとふざけているんだろうな。
「金山さーん、また冗談でやってるんでしょ?」
呆れた様子で金山さんの顔を見ると、彼は無表情でただ正面だけを見ている。
何かいつもの金山さんとは雰囲気が違う……
「金山さん! どうしちゃったんですか? そろそろ真面目にやりましょうよ!」
再三の呼びかけにも彼は全く反応しない。
ずっと同じ単調な動作を繰り返している。
そんなはずはない。何だかんだで仕事はきっちりこなす人だ。
嫌な汗が流れた。
おかしくなっている!!
気付きがある。そうだ……朝から何かみんなの様子がおかしい。
母さんも社長も、事務所の人たちだってきっと……
不自然なことだらけだった。
これは偶然なのか? もしこれが何かの共通した原因によるものだというのなら大変なことになる!!
急いで他の先輩の様子を確認しに行く。
何かの間違いであってほしい。
俺はそう願った。
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