描写集

雪乃都鳥

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1月

おばあさんと犬

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 私は、恋人を待っていた。犬の散歩道でもある道路の真ん中に整備された憩いの場。

 夕方の都会は、寂しくもあり寒くもあり。けれどそれが肥になって、恋焦がれていた。

 一方で私はそわそわもしていた。恋人が待ち遠しいのもあったが、それより勝るのは歩いている老人たちが私に話しかけないかどうかだった。

 話しかけられることの多い私だ。今日もとうとう話しかけられてしまった。おばあさんは隣のベンチに犬を上るように促していた。犬は若さはまだわずか残ってはいたが、すでに老衰しているようだった。
 
 こういうとひどく見えるようだが、きっと運動をさせていたのだろう。おばあさんは、「前は上れたんだけどねぇ」と空を仰いでいた。

 どうやら前に上らせたベンチが高かったようだ。犬は私が座った隣に、体を重たそうにしながらも足を折りたたんだ。

 犬は震えていた。よっぽど寒いのだろう。私は震える柴犬を、ここで初めて見た。

「あれももうじき咲くよ」

 おばあさんは、目をしばつかせながら桜を仰ぎ見た。「そうなんですか?」そう聞くと、当たり前だよと言われた。「そうですよね」そう言うと、おばあさんは笑った。


平成31年1月29日

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