最強竜殺しの弟子

猫民のんたん

文字の大きさ
12 / 38
第一章 いざ、竜狩りへ

012 ダークマターの使い道

しおりを挟む
 指先で摘まむほど小さな塊の表面は、滑らかに白く艶めいている。

「それひとつでも、そこそこな値段なんだから。壊さないでよ?」

「へーい」

 ザックスは乳白色の石ころを木箱に放り込んだ。

「ちょっと、あんまり乱暴に扱わないでよ。ひとつ割れると、連鎖で他のも割れることがあるんだから」

「え、そうなのか?」

 ザックスは慌てて石を放り込んだ箱を覗き込む。が、特に変わった様子はなかった。

「ダークマターはもともと黒いんだけど、空気中に漂う微量な魔力を吸収して白くなるのよ。衝撃を与えて割ると、結晶構造が壊れて魔力を放出するの」

 マーブルは、装置の中へ角の載った台を押し込みながら、説明を続けた。

「白くなったダークマターは、何らかの形で強い魔力に触れても魔力を吸収するんだけど、許容量を超えると勝手に割れるわ」

 言いながら、マーブルは手袋を装着しだした。

「今からちょうど使うから、見てると良いわよ。ほら、どいて」

 マーブルがザックスの隣にやってくると、木箱から数粒の石を掴む。

 隣にあるテーブルに紙を敷いてから掴んだ石を転がし、黒い塊だけを手際よく取り分けて外した。残った乳白色の石を紙に包み、銀色の装置へと向かう。

 箱型の装置の上には、緑の液体が少量入ったケースがくっついていた。カプセルからの管のひとつが、ここにつながっていた。

 ケースの中に石を入れ、マーブルは手動ポンプで液体を汲み、そっと中身を満たした。

 次いでマーブルは、傍にある棚から金属製の板を取り出した。二枚の金属板が重なり、中央から太い突起が一枚を貫いて飛び出している。

 その板を突起が上になるようにケースの上へ重ねて蓋をするように取り付けると、マーブルは棚の引き出しから金槌を取り出した。

 コツコツと突起を叩いていくと、金属の板が液体に沈み始める。石を挟むようにして、金属板が石に密着した。

「それじゃ、始めるわよ。よく見てなさい」

 ザックスが固唾を呑んで液体を凝視する。

 マーブルが突起をひと叩きすると、接着していた石にひびが入った。同時に、緑の液体の色が、石を中心に黄色味を帯びていく。

 すると、隣の石が勝手に割れ始めた。そこからも黄色味が広がり、連鎖的に液体内の白色ダークマターが砕けていく。

 すぐに緑の液体は黄色に染め上げられた。

「おぉー、面白れぇな!」

 マーブルは金属板を取り外し、片付けながら、黄色くなった液体を見てはしゃいでいるザックスへ言葉をかける。

「この液体は、ちょうど翡翠竜の角に含まれてる成分に似たものなのよ。魔力を保持する性質があって、魔力を持つと色が変わるの。面白いでしょう?」

 片付け終わったマーブルは、棚から何もついてない金属板を取り出して来ると、黄色の液体で満たされたケースにかぶせた。

「さて、これで準備が整ったわ」

 箱型の装置を下に降ろし、翡翠竜の角が乗った台に被せると、台と装置の接着面を見回し、隙間なく重なっていることを確認する。

 マーブルが魔力プールが充填されたケースの下にあるスライドレバーをずらすと、黄色の液体は徐に銀箱へ吸い込まれていった。液体が半分くらいまで沈んだところで装置についたボタンを押すと、中で何かが回転する音が始まった。

「これは、魔力を利用した加工機械よ。魔力を動力として、中の刃が回転しているの」

 マーブルが話し、備え付けのレバーをゆっくりと下げていく。するとすぐに、加工機械がけたたましい叫び声をあげだした。

「うわっ! うるせぇっ!」

 ザックスは咄嗟に耳を塞ぐ。

「ちょっと我慢してね! 今、角を削ってるのよ!」

 しばらくして加工機械の金切り声が止むと、マーブルはレバーをゆっくりと上げて再びボタンを押した。加工機械の音はすぐに止んだが、二人の耳にはまだ金切り音の残響が木霊している。

 銀箱の横についた取手を掴んで持ち上げると、翡翠竜の角は綺麗に四角く切断されていた。

 マーブルは角を転がして切断面を下にする。角を動かしてまだ削られていない上下だった部分の位置を調整した。

「ごめんなさいね。もう一回やるから、うるさかったら耳を塞いでて」

「最初に言ってくれ!」

 再び、研究室に金切り音が炸裂した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...